AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

兄か 異形か

仮面ライダークウガ

EPISODE9「兄妹」

感想レビュー

 

-あらすじ-

激化していくグロンギクウガ、警察の戦い。警察はグロンギの潜伏場所を突き止め倒す作戦を決行せんとしていた。一方、熾烈な戦いの中でクウガとして多くのグロンギを討ち果たしてきた兄・雄介に対し、妹・みのりは兄が変わっていくかのような不安感を感じていた。

そんな中、新たなグロンギ「メ・ギイガ・ギ」のゲゲルが罪なき人々に牙を剥こうとしていた...

 

  • みのりの不安

今回の話の軸となった要素の一つとしては、やはりみのりが兄である五代さんがクウガとして戦い続けていることに対し不安を抱いていることを示す描写であると感じる。

OP明けのポレポレでおやっさん

「あいつ最近やたらヘトヘトになって帰ってくるんだよなぁ」「そのくせ、やる気満々ちゅうか、ノリノリっちゅうか...」

という台詞にみのりが表情を強張らせる様には、五代さんがクウガになって戦うことに乗り気になっているのではないか?とみのりが疑念を感じていることが強く見て取れるし、その後おやっさんのまとめた4号/クウガについての新聞記事の切り抜きを見ている際の「4号は生物兵器か」「戦いに見る4号の闘争本能」などの見出しをじっと見つめる姿には、兄がクウガという戦う存在に、身体が一時的にというだけでなく、心が少しずつ、という意味でも変貌しているのではないかと不安を膨らませていることが伺える。

前者に関しては当日が五代さんの誕生日(3/18 25歳の誕生日とのこと)であることと合わさり、五代さんが自分のことをそっちのけでクウガ/戦うことに傾倒しているようにみのりが感じているというのを示すことで、

後者については作中世界の多くの人々がクウガは「同じ異形の仲間を倒していっている異形の1匹」であり「闘争本能を表し戦う存在」であるという認識でいるという事実を見せ付け、みのりが「クウガ」という異形の存在に感じる一種の恐怖を浮かび上がらせることで、

それぞれみのりの心情を深く掘り下げて伝えており、作中世界の人々の認識についての描写などをしつつ、そこからキャラクターの心情をより描き出す作劇が巧い

視聴者である我々が五代さんは皆の為に純粋に戦ってるということを知ってる分、作中世界の人々にとって4号/クウガが結局「強力な力を持つ異形の怪物」と捉えられてるというギャップが余計にな...(おやっさんでさえ「4号は仲間を○してる)と直接的な表現で語ってたくらいだし) そうなってしまうのも人の心理として普通のことであるが

そしてそれらを経てみのりは五代さんに「もう...戦うの平気になっちゃった?」と思わず聞き、4号が味方かどうかという園児達の問いへの返しも「良い人でいて欲しいよね...ずっと」という自身の想いを強く込めたものになる、というのがまた胸にくる 今までの話でクウガになって戦う兄を笑顔で信じる姿が描かれてきたみのりだけど、それでも感じる不安はあるだろうし、上記のような状況とかが積み重なれば当然それはより大きくなるよなぁ こういうキャラの等身大な部分の描写を展開の中に敢えて混ぜ込むのはその人物に深みも出るし、人間味が濃く出てちょっと安心するよね(この辺はある意味冷徹非道なグロンギとの対比とも言うべきか)

 

一方、警察の方では未確認生命体/グロンギについて

・人間と同じ姿になりいずれもタトゥーを刻んでいること

・アジトのようなものを持ち複数箇所に潜伏していること

・彼らを指揮する存在がいるらしいこと

・人間以上の力を持ちながら何故か近隣住民に勘付かれると姿を眩ませること

などを突き止め、当初は未確認の存在に本能的に怯えていた警察犬の中から訓練の結果未確認生命体の特殊なフェロモンを嗅ぎ分けられる「ミカド号」が出てきたことや、未確認が嫌う成分を込めた鎮圧用の武器が配備されたことを受け、未確認のアジトを見つけ制圧する計画が開始されようとするなど、大きな動きが見られる展開に。警察がグロンギの凶行に手をこまねいているだけでなくこうして少しずつ相手の動向や弱点を見つけ追い詰めていく展開は頼もしくて良いよね。本作でクウガ以外にグロンギと戦う者達としての存在感がより際立つ

2話ではグロンギに怯え使い物にならなかった警察犬がグロンギを追う戦力となり、バヅーが工場の排気ガスを避けていた描写がグロンギへの有効な対策に繋がり、という感じで今までの出来事を経た着実な発展が描かれているのも良いポイントで、前話においてゴオマの音波を基に一条さんがバヂスの凶行を未然に防いだのも併せ、こういう積み重ねの描写が凄く好みの自分としてはとても高評価

一方で対策会議中の会話において、未確認の犠牲者が警察含め既に278名にも及んでいる事実が明かされており、グロンギの恐ろしさを容赦なく描き緊張感を保っているのも作劇として隙がないところ グロンギのこういう描写はほんと「もしグロンギが現実に現れたら...」みたいなのを強く想像させてくるから怖い

 

  • がんばれゴオマ

ゲゲルで狩った人間の数を数えるグセパを拾い上げゲゲルをプレイする時を想像するも、バラのタトゥの女にあっさり取り上げられてしまい、あっ...て感じの切なそうな悔しそうな表情をするゴオマの姿が涙を誘う がんばれ(

他のグロンギが凶悪さを見せつける中でも度々人間臭い様を見せるから、この辺りからのゴオマはほんとグロンギ側のシーンにおける清涼剤よね...w 良いキャラしてるわ

 

  • 白銀の悪魔

今回ゲゲルに動き出したグロンギ「メ・ギイガ・ギ」、水中から人間態の状態でぬるりと這い上がって迫る、という絵面がもう既に恐怖(狙われた女子高生達も普通に不審者だと思ってビビってたでしょアレ)でインパクト抜群だし、襲撃方法が高温のイカ墨を吐きつけて相手を爆散させるというエグいものだしで、序盤のグロンギの中でも一際印象深い奴よね 初見当時もかなり恐ろしい奴としてしばらく覚えてた気がする

デザインに関してもグロンギが大抵生物的なイメージを意識してか鮮やかさの少ないカラーリングになってるのに対して白銀の眩い姿というのがよりビジュアルの印象深さを高めてるように思う よく見ると顔立ちも割と整っててグロンギの中でもなかなかのイケメンよな

 

  • 朝比奈奈々

長野へ向かおうとするジャンと東京駅で鉢合わせるという形で、上京してきた「朝比奈奈々」が初登場。全然覚えてなかったけどここが初登場だったんだなぁ

 

  • 榎田親子

榎田さんの息子・冴が初めて登場し、榎田親子の関係を感じさせる一幕もあった今回。グロンギ用の鎮圧武器を開発する活躍を見せた榎田さんだけど、その一方では未確認関連の事柄での多忙さから息子との約束を守りきれなかったり、せっかく一緒にいられる時間ができたと思ったら未確認の凶行が再び開始され、息子との約束を切り上げて行くことになり(今回は榎田さんが自ら現場に赴いていたが)...とグロンギとの戦いの場に身を置いていることで我が子との距離が生じつつあり...

榎田さんを慮り沈痛な面持ちになる一条さんと同じ気持ちになっちゃうよなぁここ...この親子の話は今後もクウガの人間ドラマを構成する話の一つとなるので必見

 

終盤にて邂逅したクウガとギイガは戦闘を開始。先制攻撃としてギイガが放った墨爆弾がクウガの肩に被弾し痛々しい傷が残る、という流れからしてほんとギイガの能力はこれまでのグロンギと比較してもビジュアルのインパクトが凄いよなぁ グロンギの強力な攻撃でクウガの装甲が傷付き痛々しい傷跡が残る演出はこれ以降も度々出てくるけど、敵の強大さがリアルに感じられる凄い演出だよなぁ、と改めて思う

クウガも負けじとギイガに飛び付き殴打を繰り返すのだけど、ここに4号と未確認出現のニュースを聞き、戦う兄の姿を想起してか表情を強張らせるみのりの姿が映像に挟まれるという演出がなされ、打撃を繰り出すクウガの必死の掛け声や生々しい打撃音も相まって胸にくる...尺としては凄まじく短いんだけど強烈な演出が多い戦闘シーンだなと

 

 

以上第9話、クウガとなった兄のことを強く信じていると思われていたみのりが実は密かに抱いていたクウガおよびそれに兄が変わっていくことへの不安感がピックアップされ、人間ドラマに比重が置かれたストーリーが濃密で思わず見入ってしまいました。

以前にも語ったけど、異形に変わったことに対する周囲の恐怖・不安という昭和仮面ライダー定番の要素を周囲の人々の反応にフォーカスすることでリアルに濃く掘り下げ、ストーリーに深みを与えるという作劇は凄いよなぁ 当時は勿論のこと、今見ても斬新

(子供達にとっては物足りないだろうけど)戦闘パートの短さを補うほどの緻密なストーリー展開・キャラ描写はやっぱりクウガの魅力だなと感じました

 

それでは今回はこの辺で

今回よりレビュースタイルを一新しやってみましたがいかがだったでしょうか 読みやすさ等の感想をくださると参考にもなるし嬉しいぞ!慣れるのに時間はかかるかもだが手探りしながらこれからも記事を沢山書いてく所存ですので今後もよろしくお願いします 気に入っていただけたら拡散もよろしくお願いします!

ではまた

 

 

余談:

五代さんが相変わらず隠しもせず口にする「クウガ」のワードをおやっさんが「(恋の)フーガ」だと思うというネタが冒頭にあり、なんのこっちゃか分からなかったので調べてみたら、1967年にザ・ピーナッツというアーティストの曲とのこと...分かるかそんなの!!!!!今から50年近く前だぞ(当時基準でも30年近く前だぞ)

絶対子供分からないでしょ(