AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

教えは今も...

仮面ライダークウガ

EPISODE11・12「約束/恩師」

感想レビュー

 

前後編エピとしてあまりに完成度高かったので本日は前後編まとめて複合レビューとなります いやぁ、めちゃくちゃ良かった...

-あらすじ-

小学校の教師「神崎昭二」は時代と共に移り変わってゆく生徒とそれを教え導く教師の在り方に悩み、教師として生きる活力を失いつつあった。しかしふとしたきっかけからかつての教え子である五代雄介と13年前に交わした約束のことを思い出す。
一方の五代も13年越しのその約束に胸を躍らせ、約束の場所へと向かおうとしていた。しかしそんな中、暴走するズ・ザイン・ダの凶行が繰り広げられ...

 

 

  • 失意の教師

「上からは子供達にゆとりを与えろと言われる

親達からは成績を上げろと言われる

子供達は別に未来に期待は無いと言う...」

神崎先生が憂いた教育現場の変化や突き付けられる理不尽は今現在の社会でも時折耳にする事だけど、こうして物語の中で取り上げられてる辺り、20年近く前の当時からこういう部分は表出し始めてたのかなぁ

 

「自分は今の子供達に何を与えられるのか?何も与えられるものはないんじゃあないのか?」とかつて子供達に色々なことを伝え導きたいと希望を持って入ったであろう教師という仕事に対し正しい在り方を見出せなくなり、人生そのものを悲観してさえいるかのようになっていた11話や12話前半の神崎先生の姿は本当に見ていて辛い...

これには先生自ら語った上記の教育現場の変化や理不尽に加え、子供達が志や教えを忘れ緩やかに変わっていってしまうことへの不安があったからなんだろうなぁと思う。冒頭の「子供達が自分達でやると決めて始めたにも関わらずやがて意識を向けられなくなり枯れ果ててしまった花壇」の描写なんかはその子供達の変化の象徴であろうと感じられるところで、子供達に自分達が何かを伝えてもそれは心に残らなかったり、やがて忘れられていってしまったりするんじゃないかという気持ちが強かったのであろうなと

かつての教え子の五代さんとの約束について断片的に思い出し、自分の教えが少しでも誰かの心に残っているんじゃないか、と自分が教師として在るべきか否かまで賭けて縋る想いで約束の場所の母校へ向かう途中でも、人が去り少しずつ昔と変わっていっている馴染みのあった母校付近の様や、子供達が減り取り壊されることとなったかつての母校といった光景を目にし「私が信じていたものは、消えていく運命のようです...」とまで悲観し、五代さんとの約束についてもだんだん信じられなくなっていく精神状態もまた胸にくるものがあったなぁ...この時の神崎先生の描写は本当に目に見えて無気力って感じで凄く真に迫るものがあり、演じられてる井上高志さんの表現力に唸った

 

  • 大暴れザイン

怒りを滾らせてますと言わんばかりの凄まじい形相に、人間相手に容赦なく迫り圧倒的な暴力を振るう様、とこの回のザインの描写はとてつもなく恐ろしい...今見てもインパクト大だわ

憤怒に震える様が物言わずとも表情でがっつりと伝わってくる表情作りといい、生身の五代さん相手に一切容赦無しの攻撃を繰り出してくるアクションシーンといい、AKIRAさんの演技がザインの無骨で激情家なキャラを恐るべき怪物に昇華させてて、いや改めてピッタリのキャスティングだなぁと思った

怪人態の時も、自慢のツノで人間を執拗に攻撃する11話序盤の痛々しい描写といい、マイティキックを自力で耐え切りクウガ相手に怪力を発揮し圧倒する様といい強さが存分に示されていて中ボス的な序盤の強敵として申し分ない存在感があり、ここ最近メへのゲゲル権移行で除け者にされたり、そのことで抗議に行こうと迂闊に動いたためにミカド号に嗅ぎ付けられたりと何かと良いとこが少なかったけど、面目躍如の大暴れだったのではなかろうか

後述のマイティキック強化の展開に大きな役割を果たした存在であることもそうだけれど、ズのリーダー格としての誇りを感じる振る舞いが随所随所に伺える場面もあったり、純粋な実力だとメとも張れそうなそのパワフルがあったりと印象深いグロンギの1人だよね

 

  • ジャンと実加

11話で描かれるクウガグロンギにまつわる発掘調査のため長野へ赴くジャンとその調査に助手として同行する実加のシーン、ここは7話、8話でのジャンと実加の初対面の出来事や、実加が五代さん達との会話を経て前を向くことができた流れからの地続きの描写としてとても好き。

自分の不用意な言動で実加を悲しませたことを悔やんだことから、自分にできることとして当初頼まれた調査にしっかり取り組もうとするジャン

亡き父の面影を追い悲しむだけでなく、父のために頑張ろうと自分にできることをやろうとするようになった実加

しっかり7話、8話の出来事を踏まえたキャラの成長の描写として綺麗にハマってるのが最高よね。暗い陰を落としたような7話、8話の雰囲気から明るい表情を見せてる実加がグッとくる

サブキャラ達の描写まで細かく拾うからこそ作品のドラマ部分の味わいがグッと深まってるなぁと感じますね 良い

 

今回の話の中にて、ビランとバルバ(バラのタトゥの女)がリント/人間の言葉を普通に喋り、往来で白昼堂々でゲゲルについて話す描写が登場。グロンギが人間およびその社会に少しずつ適応してる薄ら怖さが感じられるところであり、相変わらずグロンギサイドの描写の緊張感が色んな形で保たれ続けてるのは良いなぁ

そんな中でも相変わらずゲゲル参加を諦めておらず、そんな執着からバルバにお約束のようにぶん殴られるゴオマの安心感よ 懲りない奴だ、とか言われてたけどホントにな!もうメにゲゲルの権利は移ったって言ってたでしょ(

 

  • 教え-2000の技とサムズアップ-

自分と13年越しに会う約束まで交わすほど五代さんが何故こんな自分のことを慕うのか、と悲観的な想いに駆られながら五代さんに頼まれやって来た桜子さんと共に廃校で五代さんを待つ神崎先生は、桜子さんが語った言葉から五代さんがかつて自分と交わした約束とは「2000年までに2000の技を見つける」ことだったと思い出す。

五代さんが身に付けた2000番目の技-変身-で多くの人々の笑顔のために頑張っていることを聞き、五代さんが本当に約束を果たすと共に今も頑張っていることを聞き神崎先生は笑顔を見せる。

更に、桜子さんが五代さんのお馴染みの仕草として見せたサムズアップを目にした時、思わずそれにサムズアップで返した神崎先生は、はっとしたように何かを思い出す。

「これは...これは...!」

徐ろに教壇へと立つと、さながら昔教師としての子供達を導いていた時のように、熱く語り始める。

「五代雄介!こういうのを知っているか?

古代ローマで、満足できる、納得できる行動をしたものにだけ与えられる仕草だ

お前も、これに相応しい男になれ

お父さんが亡くなって、確かに悲しいだろう。でもそんな時こそ、お母さんや妹の笑顔のために頑張れる男になれ!

いつでも誰かの笑顔のために頑張れるって、素敵なことだと思わないか?

先生は...
先生は...そう思う

活気を取り戻した力強い声色で語る神崎先生の目からは、いつしか感動の涙が溢れていた

 

この一連のシーンがねぇ、最高だよね...ちょっと涙が溢れたわ

自分が教師として子供達を教え導いていくことへの意味を見失いかけていた神崎先生が、自分との約束や教えを立派に胸に刻んで今もそれに従い頑張っている五代さんのことを知り、自分が教師として生き誰かに伝えたことが変わらずちゃんと根付いていること、自分が教師として在ることは無駄なことなんかじゃなかったことに気付けて、最初の頃の無気力な様からだんだんと気力を取り戻し、さながら昔そうであったような熱い教師の頃に戻っていく描写が凄く感情を揺さぶる名シーンでした。控えめに言って最高

前述の気力を失った状態の神崎先生の描写と合わせてより光る部分だけど、五代さんとの約束とかについて思い出していくたび声色や表情に光というか力が戻っていくのがとても熱いのよ 改めて神崎先生を演じられてる井上さんの演技表現が素晴らしいなと
キャラの色んな感情とかがより伝わるようになってからの久しぶりの視聴になるけどこんな情緒溢れる素敵なシーンおよび流れだったんだなぁ...いやぁ良かった本当に

 

  • マイティキック

普通のキックを耐え切ってしまうザインに対抗するために、107番目の技「空中回転」を組み合わせることでより強力なキックを編み出し、再戦にてザイン自慢のツノさえもへし折り見事に勝利するこの流れ、仮面ライダーのスタンダードたるあの空中で回転し繰り出すライダーキックがここで逆転の一手として完成する熱さもさることながら、先生との約束で得て来た2000の技の一つがその完成の決め手となるという展開の鮮やかさも良いよね この回でやるからこその熱がこもってるのが好きなのよ

 

  • 約束の再会

教師としての在りようを再び見出して笑顔と気力を取り戻した神崎先生が夜も更けようという中で桜子さんと廃校を後にしようとしていた(ここの時間表示のテロップから時間帯が21:30を過ぎた時間になってるのが分かるんだけど、神崎先生がそれほどまでに五代さんのことをずっと信じて待っていたことが伺えてグッとくるし、廃校を後にしようとする時も五代さんのことをちゃんと理解できてるからこそ表情が晴れやかなのが良いよね)その時、バイクを走らせやって来た五代さんが登場。2人は遂に約束の再会を果たす。

門を乗り越えよろめきながらも駆け寄って来た五代さんを神崎先生が笑顔で出迎え、五代さんもそれに笑顔で返し、お互いサムズアップを交わす

というラストのこの一連のシーンには2人が言葉を交わす描写こそないんだけど、ここまでに2人の関係性を示す描写がしっかりと積み重ねられてただけに、ここで敢えて2人が語らう場面を挟まず、神崎先生が五代さんに教え伝え、五代さん自身もずっと大事にしてきた2人を繋ぐ象徴たるサムズアップを交わし合うという描写で締めたのは粋よね。多くを描かずとも伝わる感動ってのはこういうことだなぁと実感させられる良い演出だった

 

 

以上クウガ11・12話、五代さんの印象的な仕草・ワードとしてたびたび登場していた「サムズアップ」「2000(1999)の技」のルーツが描かれると共に、五代さんがそれらをとても大事にしておりそれ故に今の五代さんが形作られたことを示し、同時にそれが回り回ってかつてそれを教え伝えた神崎先生の教師として生きることへの希望に再び繋がる、という五代さんと神崎先生の「生徒と恩師」という関係の昇華の描写が本当に見事で、神崎先生をメインに展開されていくドラマがひたすらに胸に響く名エピソードでした。そしてそれらのドラマが序盤における強敵・ザインへの勝利の展開を少なからず熱くするファクターにもなっているのもまた良きところ 胸と目頭が熱くなるとても素晴らしいエピソードでした そしてクウガも1クールの区切りを迎え、今後はあんなエピソードやそんなエピソードが遂に配信されるとあって楽しみ 今後も見逃せませんな

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございました 次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら拡散もして頂けると嬉しいです!

ではまた