AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

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仮面ライダークウガ

EPISODE15・16「装甲/信条」

感想レビュー

 

 

  • 中途半端はしない

新たなグロンギ・ギャリドや未知の存在ゴウラムを巡る警察サイドの忙しない動向の中で一条さんの生い立ち・家族関係が掘り下げられた今回。警察官の父の「中途半端はするな」という教えと、それを全力で体現した生き様を幼き日に胸に刻んだことが今の一条さんの警察官としてのルーツであることが明らかになったけど、「中途半端はするな」はEPISODE2で一条さんがクウガとして戦いに飛び込んでくる五代に対し言い放ち、五代さんのクウガとしての決意を確固たるものとした「中途半端に関わるな」に通ずるものであるのは見て取れるところであり、一条さんにとってこの言葉、そこからくる信念がどれほど大きな意味のあるものであったかが約10話を経てグッと深まりましたね。EPISODE4で一条さんはクウガとして全力で戦いに関わると決めた五代さんを引き止めるのではなく全力で支えると決断し、EPISODE6にてその心が「自分と似た信念を秘めていると感じ、止めることはできないと理解したから」であったと語られたけど、それらの言動の奥底にもかつての父の教えを自身の信条として強く刻んでいるからこその、その信条を全うしようとする覚悟、想いを同じくする五代さんとのシンパシーがあったのだと感じられ、これまでのエピソードにもいっそう深みが出る丁寧な描写が素晴らしかったです

 

  • 家族と同僚と

今回の物語において一条さんは、年に一度故郷の母の下へ戻る父の命日にギャリドやゴウラムへの対応に追われて戻ることなく事件への対応に向かい、途中病院勤めのお母さんが倒れたことを聞かされるも逡巡することはせず事態の対処へ当たっており、未確認という脅威に人々が晒されている中で「中途半端」をすることなく戦うという彼の信念が強く押し出されたけど、やはりこの描写だけだと一条さんが冷たく見えてしまいそうになるところであり。

だからこそ、一同僚であり一条さんに想いを寄せる1人の人間として等身大の目線からその想いを代弁する役目を望見が物語の中で発揮してくれてるのが良いところだなと。そしてそんな彼女の一条さんに対する複雑な想いの描写と並行する形で、一条さんが自分の下へ帰ってくるよりも人々のために未確認と戦う選択をすることを家族という彼の一番身近な存在としてちゃんと理解している一条さんのお母さんの姿が描かれ、後述するそんなお母さんと一条さんの家族としての繋がりの強さと温もりをそっと確かめたことで望見が一条さんへの想いを再び取り戻す、という複数の登場人物の視点を交えた描写を順々に入れることで、一条さんの確固たる決意を多くを語らない彼の言葉を交えずとも、人間味のある温かいものとしてしっかり位置付けられているのが上手い塩梅だなぁと感心しました。

望見に関しても、今までは一条さんにぞっこんでちょっと軽薄気味な雰囲気のあったキャラから、一条さんの人となりについて理解し深めるという今回のポジションを通じ少しキャラ的な深みが出たのが良かったですね

またそんな一条さん周りの描写の「家族」という部分について、娘の葉月との関係を仄めかす杉田さんの台詞や、仕事一筋で家族との距離ができている境遇にあるからこそ一条さんの家族の繋がりをどこか肌で感じているような言動を見せ望見を諭す榎田さんの立ち回りなど、他の色んなキャラクターを通じて印象的に強調する細やかな作劇も良い味でした。

 

  • 『バ ッ ク し ま す』

前回ちょっと可愛げのあるっぽい一面を見せたギャリドだったけど、やっぱりグロンギなんだよなぁ...いやぁエグい
間接的な描写で示される最初の被害現場の様子は子供向け特撮番組というのもあってややデフォルメがかってはいたけど、何が起こったのかを如実に物語った赤いタイヤ痕という演出があまりにも強烈。

そして何よりインパクトあるのが最早語り草なその次の直接のゲゲル実行シーン。本来運転手および周囲の人間に警告するための「バックします」の音声を、追い詰めている標的にこれ見よがしに「今から潰す」と言わんばかりの死刑宣告的なワードとして連呼させるという演出に用いてるの、マトモな人間のセンスじゃないですよ...こんなもんを思いついたのは誰だぁっ!!(荒川ァ

悲鳴をあげ逃げ惑う人々にじわじわ迫る下手なホラーも真っ青な演出からの、どん詰まりに追い詰められ後方の車と壁の間に立たされた標的を確認してから一気にアクセルを踏むギャリドという演出の残忍ぶりも合わさり、やっぱりグロンギ周りの描写の中でも特別印象的でトラウマなシーンの一つだなぁここ...トラックという身近なアイテムを使った凶行ゆえに真に迫るものも多い分余計にね

今までのグロンギはゲゲルを嬉々として進めてるのは共通としつつ、作業的な冷徹さや命を奪うことそのものに特になんの感慨もないような淡白さが描かれてたから、そう思うと明らかに凶行を楽しんでる猟奇的な姿が描かれてるギャリドは下衆度なかなか高いよね...後々それをも上回りうるよりヤバいのが現れるんだが

 

そんなギャリドを追跡しトライチェイサーを駆り街を走るクウガの姿と共に、その姿を目撃した人々の反応というものも描かれる演出がありこれもなかなかに新鮮でしたね。今までも描かれなかっただけで一般の目撃は沢山あったんだろうなという想像もでき楽しいわね

てか渋滞の中をくぐり抜けバイクで走るクウガ、という構図、恐らく直に撮影したんだろうけど今だったら絶対できない画だよなぁ ここはひたすらにすげぇ!となりました

 

  • 馬の鎧

そんなクウガの下へ飛来したのは、長野から発掘された破片の集合体「ゴウラム」。前回前々回のエピソードに引き続き謎めいた動きを見せ物語にミステリアスなハラハラ感を与えていた存在がクウガの愛機と合体・強化させるという展開は初見時もなかなか驚きだった記憶

ゴウラムが合体したトライチェイサーこと「トライゴウラム」はビジュアルから分かりやすく強化感が伝わる無骨さが好きで、これが公道を突っ走る画もインパクト大でお気に入りなシーン。そしてギャリドをトラック諸共にぶち砕いた必殺のトライゴウラムアタックのトラックに横合いから突っ込み横倒しにぶっ倒すパワフルな演出もまた最高にカッコよくて良いですよね!トラックというドデカいものを駆る相手なだけにどうやって倒すのかと気になってたところでこれだったので凄く燃えた初見時の興奮をまた感じました

ちなみに余談だけど、高寺P曰くゴウラムの電子音風の発声はなんと五代さん役のオダギリジョーさんが声を当ててたんだとか。自分も初めて知ったのだけど、今回の配信に伴い同じく初めて知った方も多かった模様。驚くわな!

高寺成紀☺10月31日(土)13〜14時「怪獣ラジオ(昼)」@調布FM on Twitter: "#クウガ20周年配信 ゴウラムが喋るリント語、声はオダジョーが担当しています。 #クウガ #超配信 #kuuga #nitiasa #クウガ20周年"

 

  • 人情

あとゴウラムに連なる描写として、実加に託された破片を伴うゴウラムが飛び去っていったことに「お父さんの形見の欠片を守ってあげられなかった」「実加ちゃんに合わせる顔がない」と気落ちし、ゴウラムが無事保護されたと分かると共に明るい表情を取り戻すジャンや、危険かもしれないゴウラムを4号/クウガに託すことを提言する一条さんに対し承諾しかねるという意見は最初示しつつも、一条さんへの信頼やクウガが多くの人々を救ってきた実績から信じて一条さんに託す松倉警備部長など、人情味溢れる人物描写が多く描かれたのが実に好きなポイント。ジャンが実加との約束をきっちり大事にしてることや、松倉警備部長が4号/クウガの処遇に関し一条さんを信頼してることが以前にも描かれたことなど、脇のキャラ達のこれまでの描写もしっかり拾ってキャラクターの印象を深めてる細やかさが相変わらず良いですよねぇ

 

  • そんならな

ラスト、ギャリドの一件が片付き後の処理をこなす中で倒れた母に電話を入れる一条さん(この直前に、一条さんのお母さんのことを聞かされ心配していた五代さんが、一条さんにお母さんの病院の電話できる時間を教えてあげるのとても粋よね)。

 

一条さん「あぁ、俺」

お母さん「あぁ...」

一条さん「看護婦長が病気しとっていかんがや?

お母さん「あんたこそ、警察官がこんなことしとる暇あるのかね?」

一条さん「...そうだな」

お母さん「そうでしょお?」

一条さん「......そんならな

お母さん「うん」

 

柔らかな雰囲気の会話を僅かに交え、一条さんとお母さんは共に優しい微笑みをもって電話を終えたのだった。

互いに家族として通じ合い、理解し合ってるからこその多くを語らない、けれど言葉を交わすことのできた喜びを静かに噛み締めるような間の取り方や言葉の紡ぎ方が良い演出で好きなんですよねこのシーン。締めとして素敵だよなぁ

因みにこのシーンの一条さんの自然な感じの名古屋弁当時の多くのお嬢様方を賑わせたとかなんとか...こちら真偽のほどに関しては又聞きした程度で不明瞭なので、その辺詳しい方いたら情報キボンヌです

 

 

以上クウガ15、16話、ギャリドの凶行やゴウラムの参戦など特撮ドラマ的に目を見張る部分も多い中で、一条さんの警察官としてのルーツにまつわるストーリーが展開され、全体通して色んな登場人物の優しさ・人情といった魅力が出ていた非常に味わい深い回でした 一条さんというキャラの言動の深みがより増したという意味でも大きな意味があり、とてもグッとくるストーリーが良かったです

またここ数話、話の合間に挟まれるグロンギ達の会話がリント語を交えたものになっていっているという変化もあり、グロンギ達の動向がストーリー的にも少しずつ紐解かれていってる盛り上がりもあってこの先がどんどん楽しみになるところですね

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた