AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

兆しと不穏

面ライダークウガ

EPISODE29「岐路」

感想ビュー

 

 

  • 季節感

いつの間にやら劇中で蝉が鳴いてたりみんなが半袖の夏の装いになってたり、やたら季節感を濃く感じさせたね今回 前回プール行ってた時は特になんとも思わなかったけどこれ劇中だといつ夏になってたんだろうか 見返してみよ

 

EPISODE19において受けた電気ショックと、強くなっていくグロンギとの戦いの中で芽生えた五代さんのもっと強くなりたいと願う意志という要因が重なったことでアマダムが目覚めさせたと見られる金の力。それはクウガに更なる力を授けると同時に、五代さんの身体に大きな影響を与え続け、いずれはクウガが戦うためだけの戦闘兵器と化すかもしれないことを示唆していた...
金の力、いわばライジングの力の発現について、これまでの描写やストーリーの流れの中での五代さんの心情を踏まえたロジカルな理由付けを行いつつ、その力がもたらす危険性を強調してくるこの説明パートは観ている側にとっても実に強烈。

クウガ生物兵器と化すということについてはEPISODE5の時点で初めて五代さんの体を調べた椿さんから語られたことだけど、あれ以降五代さんがクウガの力を使いこなし変わらず五代さんとして在る様を見てきた故に「大丈夫」と劇中の人物達も我々視聴者も思っていたところで、改めてEPISODE5の時と同じ「戦うためだけの生物兵器というフレーズが椿さんの口からまたしても語られるという演出が入るのは一気に不安がぶり返すよなぁ...グロンギという凶悪な怪人を倒すためだとしても、強力な力を手にする存在となり力を振るっていくことは危うさを秘めているということをたびたび強調してきたクウガの作風の中だからこそ、ライジングの力が単なる喜ばしい強化というだけでなく不穏さを秘めたものとして描かれるのは作品に対する真摯さが伺えて唸りますね。

また五代さん自身もライジングの力、および強力な必殺キックを繰り出せるマイティフォームにそれが重ねがけされることに対し、表面上は明るく平静に振る舞いつつも誰かに見てないところでは不安を湛えた面持ちを見せており、五代さんの「力」に対する想いを伺わせているのも良い。こういう一面が示されるからこそ五代さんのキャラに深みが出るわけで

 

  • 警察・強化

そしてグロンギの強化を受けて警察の方でもより強力な新たな武器の開発が為され、という展開になっていくのだけど、この警察側の強化も前述のクウガ強化と類比し描かれる作品のテーマを象徴する部分だよなぁ。当初はしてやられるばかりだった警察がグロンギに対抗できていっていることは素直に頼もしいことだけれど、突き詰めるとそのためにどんどんと強力な「力」が生まれていっていることになるわけで...血を吐きながら続けるマラソンというやつか。その根底にあるのが人々を守るためであることや、クウガ/五代さんの負担を少しでも減らしたいという想いであることがまた複雑であり...
てか今回の視聴で初めて気付いたけど、榎田さんが松倉さんの前でさらっと「五代くんにかかる負担、ますます大きくなりそうですね」って言ってるあたり、松倉さんいつの間にか4号の正体については把握してるよねこれ?いつ誰に聞いて知ったんだろう やっぱり一条さん経由か?

 

  • ジャンと榎田さん

前回ジャンが息子の冴くんとの距離が離れていってる榎田さんのことを心配して榎田さんにプレゼントを贈るも当の榎田さんは「分かってる」と複雑な表情を見せる下りがあったけど、今回もジャンが多忙極める榎田さんを見て渋い表情をする一幕があり、この2人のドラマ、意外と前から始まってコンスタントに描かれてたんだなぁと初見時の記憶と照らし合わせてみて驚き。初見の時もなかなか濃いドラマが展開されてるなぁと注目はしてたが、こうして見るとかなり丁寧に扱われてるなぁ

 

  • 大迷惑ギャンブラー(物理)

今回のゲゲルのプレイヤーはゴ・ガメゴ・レ。

スーツと帽子を纏ったスマートな出立ちとは裏腹にその実態は頑強なパワータイプの怪人というギャップあるキャラとなっているけれど、どうもそのギャップを気に入りガメゴを推してる人がけっこういるみたいで、なるほどこういう需要もあったか...となんか感心させられました(なんの話

わりばしうぇーい@QB15th on Twitter: "毎度言ってるけどガメゴ先輩の人間態と怪人態のギャップたまらんよな。… "

 

そんなガメゴのゲゲル、上空からどでかい鉄球が雨あられの如く降り注ぐ絵面はシンプルに絶望感高くて見ていてこっちも怖いですよね...そして鉄球の餌食となった人間が倒れている様や車が攻撃を喰らい暴走し事故を引き起こしてしまっている中、次なる襲撃を恐れ悲鳴を上げながら逃げ惑う人々の絵面はまさしく阿鼻叫喚の地獄絵図。ほんと災害も良いとこだよなぁこれ...2連続で静かに獲物を仕留めて回っていたブウロやベミウとはまた違った形で格の違いを見せつけてくるのが凶悪だ

またゲゲルの場所の選定方法がルーレットというギャンブル方式なのが、こんな大災害も同然な行動もグロンギからしたらマジにゲーム感覚でしかないというとこをより強調しててマジにえげつない。

高寺成紀☺「怪ラジ(昼)末竹&みのりっち年末SP」12月26日(土)13〜15時@調布FM on Twitter: "#クウガ20周年配信 簡素でも強い独自性を感じさせる怪人を目指したグロンギですが、甲羅以外に際立った特徴の見付けにくい亀のガメゴもベミウ同様、デザインに苦戦しました。そこに文芸の村山さんから襟巻きで亀首の弛みを表現する案が出され→結果さり気に「ぽい感じ」の補強が加わり完成に至りました… https://t.co/QVdhRBSZ37"

↑さっきみっけた高寺Pのガメゴにデザインについての小話ツイート。マフラーの皺を亀の首のたわみに見立てるとは秀逸だ...劇中未登場で漫画で描かれたペリカン怪人のガベリもマフラーでペリカンのでかい嘴を表現してたけどこういうの上手いなぁグロンギのデザイン

 

  • 未来を見据えて...

そんなグロンギとの激闘の合間に描かれるのが、かつてEPISODE13、14にて登場した青年・蝶野さんの現在。以前持っていたナイフを未だに持っていながらも、CM用に募集されているイラストを描き上げて口元を僅かに綻ばせる姿を見せたりと、五代さんとの出会いや椿さんから「死とは如何なものか」を伝えられたことが多少なりと彼の人生感に影響を与えたことが伺えますね。自暴自棄になり生きることから目を逸らしていた彼が、自分なりに自分の人生に向き合い生きる道を探している様が輝いて見える。本当再三言うけれどこうして以前出たキャラを満遍なくその後も登場させてくれるのはクウガの良いところであり嬉しいところですよね

しかしそんな彼の人生には再び壁が立ちはだかり...

 

以上クウガ29話、グロンギに対抗してクウガおよび警察が強くなっていく様を懐疑的なアプローチから描き、それに不安を感じる五代さんをはじめとした人々の姿にも焦点を当てるという、強化イベントを熱く描くヒーロー作品の定石をクウガという作品のテーマ性に合わせる形で破った作劇が光った回でした。そしてこの描写は次回決定的な出来事を持って作品を取り巻く重大な要素として昇華されるわけで...じんわりとくる不穏さに思わず画面に惹きつけられましたね。そして蝶野さんの運命は...

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた