第9幕「記憶」
振り返り感想
「わ...私、泥棒だったのよ...肩に...」
「知ってる。かまわん。」
「私...あの子達を捨てられ...ないから...」
「私だって働く...なんとかみんなで食べていけるさ。」
「れ...錬金術のお勉強は...」
「あの学問に、未練はない。
だからフランシーヌ、
私の連れ合いに...なってくれ。」
からくりサーカス 第15巻 からくり〜白金・白銀 第9幕「HEAVEN AND HELL」
ねぇ、兄さん...ミンシアはこの後のストーリーでも鳴海達に影響を与える大切な存在として立ち回る重要なキャラじゃないか...その初登場を...モノローグで...バッサリ省略なんて...ダメだよ...兄さん...ねぇ...
兄さん!!
ダメだよスタッフゥー!!
中国到着時のミンシア達と鳴海兄ちゃんのやり取りから師父(せんせい)の下へ赴くまでの下りを鳴海兄ちゃんのモノローグで盛大に詰めてきたのはぶったまげたなぁ...初見当時もこの辺は流石に色々思うところありましたねぇ。ミンシアは上述したように鳴海兄ちゃん他色んなキャラの心境に少なからず影響を与えていく大切な純レギュラーキャラなのにアニメの流れじゃ突然ぬるりとストーリーに介入してきたキャラになってるから原作知ってなくても色々困惑しますわよこんなの
まぁアニメだと原作においてちょくちょく強調されてた鳴海兄ちゃんが中国にいた時の師父との関係性やそこから見えてくる師父の人柄が描かれてなかったし、そこから広げる形で描かれる中国到着時の一連の下りをアニメにおいてもガッツリカットするのはある意味正解ではあるんだろうか...いやでも強さでも精神性でもからくりサーカス中最強格まである師父の出番ごりっと削ってる時点でおかしいんだよ...!おかしいんだよ!!(力説)
ほぼ本章限りの脇役ながら鳴海兄ちゃんとの関係性とかで見せ場の多かった王アニキの存在カットも勿体なさすぎるし、理屈では分かっても納得はしかねるという感じですねここは...
仲町サーカス側の描写についても、回収されたギイと仲睦まじいしろがねを見て心がざわついてやきもち不機嫌モードに入る勝のコミカル描写やそれに連なる仲町サーカスの仲間達の日常を描く人間模様がカットされてんのも惜しいです。シンプルに面白いながら勝のしろがねや鳴海兄ちゃんへの想いをより深く描く描写にもなってて大事なとこなのよここ(それに今回アニメと原作改めて読み比べて気付いたけど、ここの勝の心理描写は最終盤の展開の伏線というか前振りでもあったよね) あるるかんの折れた腕とオリンピアの腕の破損という物語の進展を感じさせる重要な描写もあるしここも削らないで欲しかったなぁというのが正直な気持ちです
...と色々言ったけれど、そうして詰めた分しっかり描きたかったであろう、白兄弟とフランシーヌの過去描写は、兄弟がフランシーヌに惹かれていく過程、銀がフランシーヌの人柄に深く触れていくと同時に金との心がすれ違っていく様など、押さえておくべきポイントをちゃんと押さえたしっかりした構成になっており、錬金術の師匠との信念のすれ違いなどもっと細かく見せて欲しかったところはちょいちょいあるもののここに関しては概ね満足でしたね。からくりサーカスの物語の全ての始まりともいうべきポイントなのでここはしっかりやっておかなくちゃあね...
しかし何度見ても今回のラストの金、可哀想すぎるんだよなぁ...色々許せないことする奴ではあるんだけど、ここに関しては後のエピソードでより掘り下げられる兄やフランシーヌへの想いの描写もあって余計に...そんな金の心情が黒く変貌する瞬間を、狂気の表情を見せる金の背後に無数の悪魔じみた獣のオブジェ的なビジョンを浮かび上がらせるという形で表現してみせた藤田和日郎先生、控えめに言って天才ですよ...この後獣の如く本能のままに、そして悪魔の如く自分の欲望に忠実になり暴走していく金の内面を鬼気迫る形で読者の背筋を振るわせんばかりの筆致で描いた名描写でお気に入り。原作のここのシーンは必見ですよ...
というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます
次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!
ではまた