仮面ライダークウガ
EPISODE34、35「戦慄/愛憎」
感想レビュー
- 2番
今回よりOP映像中での主題歌が2番の歌詞へとシフト。ヒロイックなテイストを濃く含んでた1番とはやや変わって、「英雄はただ1人でいい-」「壊す者と護る者〜答えは全てそこに在る」といった意味深な歌詞が増えた2番。思えばこのエピソードを境にこの歌詞へとシフトしたの、ストーリーの流れ的にマッチする部分が多いなと感じますね
- 絶望の猶予
病室で恐怖に震える少年とそれを心許ない言葉で必死に励まそうとする不安げな家族、そして鼻から垂れ流される血に気付いた少年は...とショッキングすぎるアバンからスタートし、更にそれに続き、亡くなった少年の葬儀で悲しみに暮れる親族や同級生、そんな中で自分達を見つめる青年の姿を見て恐怖に悲鳴をあげる1人の少年と、今回のゲゲルに翻弄され死の恐怖に絶望を味わわされ怯える緑川学園の生徒達と、その様を見せつけられ不安をただただ突き付けられる周囲の人々の描写がサスペンス感溢れる画と彼らの恐怖を存分に表した生徒役の人達をはじめとする演者さん達の演技により、鬼気迫るインパクトでもって描き上げられる今回のストーリー。
ゴ集団の出現でゲゲルの規模やゲゲル遂行時の絵面という点で大きなインパクトを残していく展開が続いてきた中で、規模や絵面こそ地味ながらもいずれ訪れると分かっている死を突き付けられ恐怖する人々という部分に焦点が当たるという変化球の魅せで新たなアクセントを入れてきたのは巧いなと思いますね。これまでのゲゲルは被害の大きさが増していってた分災害的な雰囲気が少し感じられてた中で、今回のゲゲルは身近に迫る恐怖的な色合いを強く含んでて違った恐怖があるなと
ちなみに本エピソードに登場する生徒役の方達は皆本エピソード用にオーディションで選ばれたのだとか。皆さんストーリーに深みを与えた迫真の良い演技でした。
- 最低最悪
そんな今回のゲゲルのプレイヤー、クウガどころかライダー史における最低最悪の怪人と言っても過言ではないであろうゴ・ジャラジ・ダ。
その入念で隙の無い手際により、本編開始時には既に実質待ってるだけでゲゲル成功は固いという状況にありながら、その成功までの期間に、前述したアバンのラストにおいて苦しむ生徒の姿を見るためにわざわざ病院を訪れたり、葬式のシーンでも悲しみに暮れる生徒の1人の前に姿を現すことで死の宣告的なことをしたりと、ゲゲルで標的とした人間を苦しめるために表舞台に姿を見せ恐怖を振り撒き、それに苦しむ人々の姿を楽しむという下衆極まりない行動を繰り返す様は正に鬼畜にも劣る外道。
ゲゲル成功のために生徒を襲撃した際の生徒の母親とのやり取りにおける
「貴方は誰なの!?どうして、どうしてこんなことをぉ!?」
「君達が苦しむほど
楽 し い か ら」
の台詞にはコイツの全てが端的に詰め込まれていますね...突然に姿を現す様やその際の映像や音声が大きくブレるという不安さを醸す演出など、ホラーじみた雰囲気もあって非常に恐ろしい存在。
初見当時、自分はこの凶悪さからジャラジのことをグロンギの本性を代表する1体という位置付けで見ていたのですが、後年になって今回の再度の視聴等を通じてクウガという作品自体やグロンギの各キャラへの造詣が深まった上で見てみると、EPISODE22でガルメが語った「獲物を追い、いかに多く狩るか」という言葉の通り、グロンギはゲームそのものを楽しんだり自身の力を示すために獲物として人間を作業的に狩ったりする者達が殆どである中、ジャラジは(ゲゲルのクリアという本懐については他のグロンギ同様ブレずに見据えているながらも)獲物が追い詰められ苦しむ姿に愉悦を感じそれこそを楽しんでいるという、他のグロンギとも一線を画す凶悪さ・異常さを持ち合わせているなぁと感じるようになりましたね。
戦闘面では逃げに徹したりやられる姿が多かったりしたのでやや貧弱な印象があるながらも、前述したように本編開始時には警察達にも勘づかれずゲゲルの仕込みを完了させていてあとは待っているだけでゲゲルが完了するという手際の良さ、とあるアクシデントでゲゲルが失敗しそうになってもそれを埋め合わせる手段を抜け目なく見つけ、更にそれを実行してなおゲゲルを慌てることなく成功させるのに十分な時間を予め取ってあるという用意周到さなど、ゴらしい侮れない部分が沢山あるキャラでもあり手強い敵でした。
なんにせよ許しがたいド外道キャラとして、悪役としてはこの上なく完璧ですね。クウガの物語においても欠かせない良い存在感です
またTwitterでのフォロワー様が語るには、その機動力などから実はその気になればクウガを完封できてた実力もあったのではとも言われており...言われてみればあの初戦で隠密しながらの攻撃を繰り返されてたら全く手も足も出せなかったかもしれないところはあり...やっぱゴなだけに強いんだなぁ
- グロンギ達
ジャラジがゲゲルを進める中、最近息をひそめがちだったゴオマがゴに歯向かい出すという何やら気になる動きを...遂に来るんだな、あのエピソードが...
そして得意げになるゴオマと彼と一触即発になるザザルを制すように
「面白い...今に、どうなるというのだ?」
と姿を現したガドル閣下の怪人態!いやぁカッコ良すぎる スモッグの焚かれた暗所からゆっくりと現れる無骨なフォルム、あの軍服姿の厳つい人間態からのイメージと合いすぎてて超良いですよね...2人のピリついた雰囲気をも収めるというシチュエーションも相まって強敵加減を一気に印象付けるのも上手い
- お久しぶり
定食屋での食事中、窓から覗くジャラジ人間態に1人が驚くも他2人は気付かず、というやり取りを見せた3人の男性、実はビランの回で襲撃を受けるも難を逃れ、再生ギノガ登場回でもギノガの腕の破片を発見しかけ、とこれまで2度に渡り登場していた脇キャラの釣り人トリオとのこと。面白い小ネタだけど初見時は気付かなかったしこの再視聴においても多分言われなかったら分かんなかっただろうなぁこれw グロンギと実質的に3度も接近してるの凄い体験ですよねあーた達
- 約束と、無念と、激情と...
ジャラジの最後の標的にされ何故自分達の命が狙われるのかと恐怖に震える少年へ
「理由なんてないよね。だから...殺させない。」
と言葉を返し少しでも勇気づけようとする五代さん。けれどニュースで犠牲となった緑川学園の生徒達の顔と名前が報道される(何気に語られてるけど犠牲者数90人って、もう保護してる少年を除いてターゲットにされた全員が犠牲になってるんですよね...えぐい...)のを見て拳を震わせ、一条さんにも彼らを救うために何も出来なかったことへの無念を語るなど、色んな感情が渦巻いてる様子を見せてたのが印象的。
以前に一条さんから未確認生命体の犠牲者の数を聞かれた時も、その時点での犠牲者数を覚えていて悔しさを滲ませる一幕があったし、五代さんは犠牲になった人達のことを決して忘れない(忘れられない)くらいに色んなものを背負ってるんだろうし、クウガとしてグロンギと戦うことができる者として何もできず多くの命を奪われていることは人一倍に辛いんだろうなぁ...
少年に語りかけてる時も今までにも増して神妙ば表情だったし、今見ると色々とくる...
- いつのまにか仲良し
そんな殺伐としたストーリーの中に挟み込まれるポレポレのシーン、店を訪れたジャンとおやっさんがなんかいつの間にか仲良くなってたのがなんか笑った ノリとか好みとか意外と気が合ってたんですねこの2人...w 後半の一昔前の女優ラッシュ伝わる人いねぇだろ殆ど!!!()
ちょっとした癒しになりましたw
- クウガ暴走
警察に匿われた少年を狙いやってきたジャラジ。一条さん達に見せつけるようにしつつ、テレポートするかのような巧みな動きで挑発・翻弄するシーンは、ジャラジの性格の悪さが出まくってるし、激しく動き回るカメラのアングルが警察達の警備を掻い潜り少年へジャラジが迫る緊迫感があってとてもハラハラしました。
そしてまんまと少年の下へと辿り着いたジャラジ。少年に手をかけゲゲルに王手をかけようとするも、そこへ間一髪五代さんが参上。
そして凶行に及ぼうとするジャラジの姿を見て、五代雄介の中で何かが弾けた。
ここからのシーンは初見当時も今も変わらぬ衝撃がありましたね...
多くの罪なき命を恐怖に晒し、楽しみながら奪っていったジャラジへの怒りを爆発させ、マウントをとって何発も重い拳を叩き込んでいくクウガの姿はまさに壮絶。殴られたジャラジが吐き散らした血反吐が飛沫となってアスファルトやクウガの顔を赤く濡らしていく様は痛々しいの一言で、そうして血飛沫に染まった姿でジャラジが逃げようとするのを捕まえ更に拳を叩き込み続けるクウガには、最早恐怖を感じる。
ジャラジの凶悪さ、犠牲になっていく生徒達の姿、報道される犠牲者達...などをここまでしっかり描いてたからこそ五代さんが怒りを見せる流れにちゃんと納得できるながら、そこから凶悪なジャラジを打ち倒す爽快な展開となるのではなく、怒りを爆発させたクウガがジャラジを嬲る姿にヒーロー側に対する恐ろしさをひしひしと感じさせる形に繋げるというのが強烈。怒り・憎しみといった激情がヒーローの力をも圧倒的な暴力へと転じさせるという、力(暴力)へい懐疑性をテーマの一つとして押し出すクウガだからこその流れとはいえ、これは今見てもやっぱり衝撃的だ...初見時もここのクウガの姿は愕然としながら観ていたなぁ...
- 黒き戦士
ジャラジをビートゴウラムに乗せ、途中ジャラジの抵抗をタイタンフォームで防ぎつつなおも拳を叩き込んだりしながら安全地帯へと運んだクウガ。
湖に叩きつけられたジャラジは自身の攻撃を物ともせずライジングタイタンとなってじりじりと迫るクウガを前に完全に戦意を喪失し腰を抜かして逃げようとし始める。しかしクウガは全く容赦することなくジャラジをライジングタイタンソードで何度も斬りつけ、徹底的に苦しみ抜かせた後、完全に撃破。
そしてジャラジを粉砕した爆炎の中に、五代さんは4本の角を持つ黒いクウガの姿を見ていた...
ライジングで倒すために安全地帯へ運んだりといった理性は残しつつも、運んでる最中に抵抗してきたジャラジを更に殴りつけたり、剣を突き刺し一撃で倒すいつものパターンではなく何度も何度も斬りつけて倒したりと、激しい怒りを感じさせたクウガの戦い、最後まで怖かったなぁ...
彗星恐竜 on Twitter: "ここでジャラジに迫るクウガ、呼吸音だけで憎しみにのまれかかってるのを表現しているのがたいへん素敵。… "
ジャラジについても自分が追い詰めてきた生徒達と同じく眼前に迫る死の恐怖に怯えさせられ無様にケツを振って逃げ惑う羽目になり無惨に打ち倒されたことは納得の因果応報だとは思うけど、その立場の逆転がどこか哀れな印象を抱かせたほどなので本当に強烈だった(ジャラジは決して許さんし同情もしないけども)
そして戦いを終えた五代さん、笑顔もサムズアップもなく湖に佇む姿が悲痛。全てを終え、自身の戦いを思い起こした直後のの彼の心境は...
- 取り合う手、叩きつける拳
そんな今回の物語の裏で描かれたわかば保育園のシュウトとヒロユキの描写、これも本エピソードでとても重要な要素でした。
ふとしたすれ違いで喧嘩になりながらも、五代さんの説得もあって、想いを伝え、共にまた手を取り合い笑顔で仲直りする2人の姿を描きつつ、その裏では2人の仲直りを導いた五代さんが拳を握り怒りのままに相互理解不能の相手を叩きのめしていた...という、2人の描写があるからこそクウガの激情がより際立つんですよね。皮肉だ...
- 0号
更に物語の裏で展開されていく、多くの未確認が手にかけられる凄惨な事件の発生、そこにちらつく0号の影、そしてその調査に同行した桜子さんが発見した血で描かれた4本角のクウガのマーク...など、物語に風雲急を告げそうな要素の数々も注目どころでした。
今まで殆ど物語に浮上しなかった0号だけど、ここに来て無数のグロンギを手にかけるという謎の凶行に及び、その凄惨な現場の演出も相まって直接の登場はないながら一気に恐ろしさをアップさせてきたのが上手いところ
そして0号の凶行の現場に残された4本角のクウガのマーク、今見るとこれって激情に駆られ暴走した五代さんが見たビジョンと合わせ、クウガが恐るべき存在へと転ずるのではないか?という不穏さを視聴者へ突き付ける構図にもなってたんだなぁ...血で描かれてる、というのがよりおぞましさや不安さを掻き立ててるよね...
察しの良い人はライジング登場前の碑文の内容との関係性も考えたろうし、伏線張りが巧みだ
以上クウガ34、35話、ジャラジの最低最悪さに恐怖し狂っていく人々の姿をホラーサスペンス調に描くストーリーが印象的ながら、クライマックスにおいて一転、そんなジャラジを叩きのめすクウガの暴力性が凄まじく強烈な形で強調される展開となり、喧嘩しながらも手を取り合ったシュウトとヒロユキの仲直りとの対比、凄惨な0号事件の現場のクウガのマークなど、様々な要素が繋がって「みんなの笑顔のために戦ってきた五代さんが、いずれ怒りや憎しみに飲まれ、椿さんが言っていたような『戦うだけの生物兵器』になるのではないか?」とこのクライマックス視聴者に不穏さを突きつけてくる構成が凶悪でした...これまでにないほど殺伐とし観てて辛くなるようなシーンの多い問題作とも言える回でしたが、同時に暴力、引いては力そのものへの懐疑性を説くこの仮面ライダークウガという作品において欠かせない回だったなと感じます。ここからクライマックスへ向けクウガは、五代さんはどうなっていくのか...
というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます
次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!
ではまた