AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

嘘か真か、スパイの心

Princess Principal/プリンセス・プリンシパル

Crown Handler 第1章

感想レビュー

 

※本レビューはネタバレを多分に含んでおります。ご注意ください

 

 

待ちわびたぜ...!

2018年4月29日、多くのアニメファンの心を惹きつけたスパイアクションアニメ「Princess Principal/プリンセス・プリンシパル」の大型イベント「STAGE OF MISSION」にて発表された最終章全6章の劇場公開の報に、会場に来ていた多くのスパイ(ファン)達が歓声に沸きました。かく言う私もその1人、大いに心躍ったものです。
その後も徐々に劇場作品の情報は明らかになっていき、2020年4月29日公開の情報に皆来たる日を楽しみに待ったものでした。

しかし、当時は昨今の世界を取り巻くコロナウイルス情勢が流行を見せ始めたまさにその時期、それ故に多くの映画作品が公開延期の煽りを受け、本作も他の様々な映画作品と同じく延期という状況へと追い込まれることとなり、私を含む、公開を待っていた多くのファンが嘆きに包まれ、いつ公開されるのかとやきもきさせられることになりました...
しかし!2021年2月11日、数々の壁を打ち壊し、本作は遂に無事劇場公開と相なりました。本当に、本当に嬉しい限りです。良かったぁ...

と、前置きはこのくらいにして、ファンも制作陣も長い苦境を耐え忍んだ末に満を辞して劇場のスクリーンで遂に描かれたプリンセス・プリンシパルの最終章、じっくりと噛み締めるように鑑賞させていただいたその序章の感想レビューへ早速移らせて頂こうと思います。

 

 

というわけで待ちに待った本作、緻密な世界観設定の下で描かれるスパイの少女達の切なくも感情揺さぶるストーリーというプリンセス・プリンシパルの魅力たる要素がしっかりと押さえられた手堅い構成になっていたと同時に、キャラクター同士のやり取りが劇場版のボリュームの下でいっそう深みのあるものになっていたりと映画で描かれるからこその面白さもしっかり表現されていて、まさに「劇場版プリンセス・プリンシパルと呼ぶに相応しい安心感がある、と同時にTVシリーズ以上に没入できる部分も入れ込まれたとても見応えある一作となっており、非常に満足度が高かったです。全6章のうちのスタートとして実に上々な滑り出しだなと

 

まず第一に挙げられるのはやはりチーム白鳩の5人。小気味良い台詞回しなどを交えたいつものやり取りに加え、最終回の展開を踏まえた「仲間達を頼る形でピンチに立ち向かうアンジェとプリンセス」などTVシリーズの蓄積を感じさせるような関係性の微妙な変化なんかを感じる部分もあって、この5人が会話する場面は総じて安心感がありましたね。シンプルな点ながらこういう部分をブレさせてないだけでかなり作品としての面白さは変わってくるのでそういう意味でとても良い。

作品の顔たるアンジェとプリンセスの関係性も今作でしっかり表現されていて実に良き。にこやか笑顔でアンジェに睨みをきかすプリンセスこわい() そしてそれに対し分かりやすく縮こまるアンジェ、やはり子犬...w またこの2人に関しては、双方の入れ替わり変装という要素がTVシリーズ以上に作戦行動中で効果的に用いられていたのも面白かったところで、観てる側もすぐには気付けずどっちがどっちだろうかと一瞬悩まされるような演出が取られていたのは新鮮な楽しみがありましたね

あとアンジェといえば、今作から演じられる声優さんが古賀葵さんへと本格的にシフトする形となったわけですが、前々から公開されていた予告映像の時点で既にTVシリーズのアンジェのイメージに近い演技をされていたので期待感は高かったものの、いざガッツリと本編で喋っているのを聞いてみれば、予想していた以上に自分の知るクール且つその裏に繊細な感情を隠し持つアンジェ像がしっかりと声の演技の中で表現されていて、話を追っていく中でいつしか自ずと「アンジェ」の声として聞き馴染んでいってたのは自分としても気付いた時驚きでした。二代目の声優ということで感じるプレッシャーも大きかったとは思われますが、古賀葵さん、控えめに言ってパーフェクトでした。良かった 今後とも是非是非アンジェをよろしくお願い致します

また個人的に白鳩関連で一番満足だったのは、個人的お気に入りキャラのちせ殿が本作でもしっかり強く可愛く、魅力的に描かれてたのは非常に嬉しかったところ。アバンの戦闘シーンから毎度お馴染みのとてつもない強さを発揮しその強さを存分に見せつけたかと思えば、山のような細かい業務をする羽目になり文字通りうげぇっ!!って悲鳴がとてつもなく似合いそうな凄い嫌そうな表情で顔芸してたり、壮絶なカーチェイス(体格的に自分より大きいハンドルを持って運転してんのがかわいい)を征するも調子こいたせいで川に車ごと水没したりとコミカルなシーンが沢山あってのが良かったです某ダイナの「見たかぁ!俺の超ファインプレー!」→撃墜の文脈を思い出して超面白かったので水没のシーンめちゃくちゃ好きなんだよなぁw

 

次にストーリー面・キャラ面を語る上で欠かせないとても大きな存在感を放っていたキャラクター、ビショップ。彼がねぇ、全体通して良い味を出してて凄く良かったんですよね。

長年王室内で侍従長として働く物腰柔らかな老爺、してその実態はコントロールのスパイ、というポジションでそれ故にアンジェの正体が本物の王女・シャーロットであると知っているという、プリンセス・プリンシパルの物語を大きく揺るがしかねない要素を持っているキャラで、予告の時点でそれを仄めかす彼の台詞があったことから最終章の物語がどう動いていくのかと大いに気になっていたものでしたが、

実際の本編においては、序盤はアンジェ達を翻弄する人生経験の豊富さ・スパイとしての実力の高さを感じさせる老獪さと落ち着きを兼ね備えた底知れぬイメージで魅了しつつ、物語が進んでその内に抱える焦りがアンジェ達によって明かされ、閉ざされていた心が徐々に暴かれていくうち、

自身の人生に刺激と意味を与えてくれたものとしてスパイという生き方を自身の中で大事に思う気持ち

その生き方の中で嘘を纏っていったことでやがて本当の自分と嘘の境界が曖昧になっていく感覚を覚えていたことへの心境

など人間的な側面も覗かせていくようになり、同時に劇中において多く接したアンジェとの絡みにおいては、本当と嘘の境界が曖昧になるという旨の言葉通り、

時にはアンジェとスパイ同士として向き合い、

時にはかつて仕えた王女シャーロットとして物腰柔らかに向き合い、

時にプリンセスに扮したアンジェに対し、プリンセスに接するような言動を示しながらもスパイ・アンジェに向けた言葉を織り交ぜながら向き合い、

といった感じでスパイとしてのアンジェに接触する彼と長年王女に仕えた侍従長として王女に接する彼とが様々に入り乱れる様が細かな台詞回しなどで表現されるなど、複雑ながらも非常に奥深いキャラクターに仕上がっていて、ほんと本作の白眉と言っても過言ではないなと。

そんな彼が最後に、かつて仕えた本当の王女であるアンジェ、偽物ながらも本物の王女として立つまでになったプリンセス、それぞれへ違う形ながらも向けた心からの敬意の言葉もまた、深みがあって心打たれました。

ビショップを演じられたのはベテラン声優・飛田展男さん。飛田さんといえば自分的にパッと浮かぶ某救星主をはじめとした狡猾さやクレイジーさを感じさせる悪役っぽいイメージが強かっただけに、一筋縄でいかぬダンディズム溢れる様と人間的でしっとりとした雰囲気とを兼ね備えた老紳士というビショップのキャラは今まであまり馴染みがなかった役柄なだけに驚きで、しかし同時にそのビショップをここまで魅力的に表現した演技力に脱帽でした。

そんなビショップ、なんとなく察してはいたけど...生きてて欲しかったなぁ...辛いわ...そうだわ、この辛さがプリンセス・プリンシパル...
本当と嘘が曖昧になっていく、嘘をついていけば最後にはいずれ自分のようになる、などアンジェへ向けて彼が伝えた言葉は、アンジェ(およびプリンセス)の今後を暗示するかのようだったけど、これが今後どう活きてくるのか

 

と、キャラクターやストーリー面をメインで話してきましたが、本作は映画クオリティの下グレードアップした作画・背景面も見所でした。

アバン部分より緻密で奥行きのある街並みをより美麗な作画で表現しつつ、キビキビとキャラクターが動きまくるアクションシーンをノンストップで見せてくるなど、プリンセス・プリンシパルならではな部分を大スクリーンで見せてくる流れにはスタートから一気にグッと惹きつけられるましたし、その後も細かな部分まで表現された映像に思わず見入りましたね。よりコントラストが引き締まって感じられた光と影の付け方とか、そういう部分も抜かりないのが流石。学校の庭で5人がテーブルを囲むいつものシーンも、花の周りを飛ぶ蝶が細かく描かれたりしてた細かさに驚きました(これTVシリーズでも描かれてたっけ)

※追記:花の周りを飛ぶ蝶ですが、他の方曰くどうやらTV本編だとあそこまでは描かれてなかった模様。流石のクオリティアップですね

鈴森はる香 on Twitter: "劇場版、庭園のお茶会の後ろでやったら蝶が飛んでいたけど、やはりこれが劇場版の豪華さなのだろうか。TV版ではあそこまで飛んでなかった(確認した #pripri"

個人的な名シーンはケイバーライト採掘場の川を渡りながらもアンジェとビショップの会話シーン。めちゃ綺麗でしたわ...

そしてこの最終章シリーズの大きな見所と言っても良い、OPとEDの映像、こちらも最高でした。Void_Chords feat. Yui Muginoさんによる力強くもお洒落な歌声と音楽で表現された「LIES & TIES」を美しい背景やスピーディなキャラのアクションで彩ったOP映像は導入としてパーフェクトで、白鳩の5人の優しい歌声で歌い上げられる「Nowhere Land」とTVシリーズとはまた違ったかわいさのある5人のデフォルメキャラが描かれた絵に心癒されるED、共に良かったです。ただOP映像のクライマックスに、折れる刀、ピンチのドロシー、銃弾をくらい飛び散る鮮血を花弁で表現されながら倒れるアンジェなど、この最終章シリーズの展開を暗示するような不穏なカットが入っているのが心配で...個人的に折れる刀のカットはマジで心臓がビクンと飛び上がったんですよ...ちせ殿好きだから...
死なないでみんな...EDみたいに幸せになってくれ...(ED映像は誰かのこうなったら良いなのイメージですとか、全部終わった後の生き残った誰かの思い出のイメージとか、そんなんじゃねぇよなぁ...?そうなったら泣くよ色んな意味で)


またTVシリーズを彩った梶浦由紀さんの壮大な劇伴は本作でも大活躍で、お馴染みのBGMに加えそれらに新たなアレンジを加えたものも流れたりと全体通してドラマ部分などをより引き締めてくれていて素晴らしかったですし、

総じて「劇場版プリンセス・プリンシパル」と呼ぶに相応しい安心感と興奮に溢れた最高の第1章だったなと改めて。

ビショップを雇って動かしていた存在たるこの最終章シリーズの黒幕と思しき存在についても示唆され、その手のものであろう強者オーラ溢れる謎の屈強な男も登場したりと今後を期待させる要素の提示も面白く、プリプリ最終章がこれからも楽しみですね。

続く第2章は2021年秋公開!王位継承候補の集結に加え何やら大きな事件も起きそうなど、波乱の予感。果たしてどうなるか 楽しみです

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた