AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

優しい人、戦う人

仮面ライダークウガ

EPISODE42、43「戦場/現実」

感想レビュー

 

 

  • 戦場駆ける

冒頭から、バベルの大規模ゲゲルに対処するべく一条さんをはじめとした多くの警察官が武器を手に大勢で都内を駆け回り、彼らの無線へと現状を伝える望美の通信が駆け巡る描写でスタート。その後もバベルへの応戦、追跡といった壮絶な交戦が慌ただしく描かれ、グロンギの出現を受けたクウガ世界の警察達の動きをさながらリアルタイムで演出しているのかのようなスピード感と緊迫感溢れる構図が実に迫真で、とても惹きつけられました。

警察達の動きの見せ方についても、民衆の間を縫うように駆け巡る彼らを追うようにして撮ったFPS視点や、彼らの戦いを上階から見下ろし人間の変化を感じ取るバルバとガドルの俯瞰視点など色々な視点を交えることで迫力の出し方に変化を付けているのも面白かったところでした

 

  • バベル

ジャーザに続きゲゲルに乗り出した最強格お1人、ゴ・バベル・ダ。地下に追い込んだ大勢の人間を出口を塞いだ上で仕留めていくというシンプルながらえげつない方法でゲゲルを進めており、何より目を引くのはその仕留めた人数で、その数、カウント役のドルド曰く682人。劇中でそのことには言及した実際のグロンギ語の台詞も「バギングバギングゲギドドバギンググシギドゲヅンビン(9×9×8+9×3+4人)」とパッと意味は分からずとも今までも彼らが仕留めた獲物の数のカウントに用いていたバギングバギング...が凄い長さで読み上げられてるというだけでなんかとてつもないことをやったと伝わってくるのが恐ろしい。

バベル自体は本編の流れ自体を見るとこの42、43話のうち42話のAパートで登場しBパートにならないうちに倒されてしまうという出番としては少々不遇な感もあるのですが、

4度に渡る大胆不敵なゲゲルにより多くの人間を狩ったという言及

直接的なゲゲル実行シーンや犠牲になった人間の姿全体を見せることこそなかったものの、壁に返り血の散った地下街を足元に転がる人間の亡骸を足蹴にしながら進む冷徹な姿

クウガの肉体から血飛沫が飛び散らせるほどの破壊力を持った鉄拳、ゴ集団相手にダメージこそ受けるようになったものの傷付くことのなかったタイタンフォームの装甲に遂に破損を起こした剛力体のハンマー攻撃などの規格外のパワーの描写

などなど、最強格に数えられるに足るだけの格を見せつける演出が短い中にこれでもかと詰め込まれており、存在感はジャーザや次回のガドルにも引けを取らないもので終盤の怪人として非常に良き。

ハンマーの攻撃でタイタンフォームの装甲に穴ボコを作っていくシーンは初見当時も凄まじい衝撃を受け、追い討ちをかけるように倒れたクウガに何度もハンマーを振り下ろす様といい非常に怖かったものです。

またクウガを前にしてはっきりと人間の言葉を発し、クウガの強力な力をより多くの獲物を殺せると命を軽んじるように言ってのけるシーンも印象的。この言葉を受け危うく怒りを爆発させかけるも、ジャラジの際の出来事や凄まじき戦士のこともあって踏み留まるというこの直後のクウガ/五代さんの感情の動きの表現が、これまでのストーリーを踏まえた五代さんらしさが濃く出てて素晴らしいんですよねぇ。加えて、実際のバベルは五代さんを挑発したわけではなくシンプルに賞賛したに過ぎない(バベルは五代さんの葛藤について知る由などないはずなので)と思われるという双方の感覚の決定的な乖離が感じられるのもまたグロンギと人間の相容れなさを改めて強調してて良い具合にヤラしいですし

そんなバベルのゲゲルの進行を見てガドル閣下がザギバスゲゲルの開始も近い、と彼のゲゲルクリアを確信する台詞を言ったりもしてましたが、ジャーザの時もガドル閣下とバベルが同じようなことを言ってたりと、最強格の3人はお互いの力を認め合ってる感じがあるのがなんか良いですよねぇ。

 

  • クソ強銃弾、金のバイク

バベルの猛攻に窮地のクウガを救ったのは、一条さんが狙撃により撃ち込んだ、榎田さん謹製の筋肉弛緩弾。またさらっとけっこうな距離から一発で狙撃してのけてる一条さんなんなの(

窮地を脱したクウガは安全圏へバベルを運び、ライジングの力を込めたビートゴウラムこと、ライジングビートゴウラムの突撃により見事バベルを撃破するのだった。

前回のジャーザは二刀流ライジングタイタンで下し、今回のバベルは初お披露目のライジングビートゴウラムで倒し、そして次回以降は遂に前線へと現れるガドル閣下に対抗するべくあの形態が現れ、と最強格相手にクウガが次々と戦術のアップデートをしていたり、警察達も装備を次々と強力にしているのが見て取れたりと、この終盤にきて警察やクウガがパワーアップしてるのはヒーロー番組的には非常に熱く、しかしクウガという作品のテーマ性などを踏まえた上で見てみるとグロンギの強力な力に対してより強力な力を重ねていってるいたちごっこ的な雰囲気もほのかに漂わせていて、所謂血を吐きながら続けるマラソン的な皮肉を含んでいるのが実に象徴的。この辺、グロンギ達が強くなってることを登場人物達も感じ取っていると示す台詞が入ってきたりと、ほのかにではあるけど意図的に描写として仕込んでる感じがあるのがクウガの巧いところだなと。

 

  • 同じ存在

ダグバに粛正された無数のグロンギ達を椿さんが解剖し調べた結果、グロンギ達は生物学的には人間と同じであり。それが霊石の力で怪人となっているということ、更にダグバの力で強化されていたゴオマの神経組織の構造が現在のクウガ/五代さんのものと同一に近付いていることなどが判明。ダグバ(グロンギ)とクウガの同一性というのは最近頻繁に強調されていたけど、ここでより説得力のある形でそれを示してきたのが物語の緊張感を高めてきましたね。

EPISODE36、37の感想レビュー記事でも言及したけど、怪人と仮面ライダーの起源が同一という部分を最初の時点で示しそこからヒーロー性へと広げていった昭和シリーズの多くの作品に対し、クウガはこの終盤にきて怪人と仮面ライダーの同一性という部分を浮き彫りにさせていくことでヒーローの力が抱える危うさについて投げかけてくる作劇を取っているのが面白いところで、ここでそれを改めて強調したのは作品としてのテーマ性への誠実さがひしひしと感じられてとても良いなと。

下克上だぜ 潰せ - AnDrew’s小生意気レビュー記

しかし一方で、前回のEPISODE40、41を経て覚悟を決めた五代さんが「大丈夫」としっかり強調する展開も踏まえており、そこに不穏さを投げかけるだけでなく、光明を示す形でも前進させていってるのが実に安心できる作り。こういうところがやはり信頼できますね、クウガ

しかし椿さんが解剖したグロンギの1体として、ゴオマが久々の登場を果たしてたとは。初見時はあまり気に留めてなかったのでちょっと驚いた。死体でだったけどな!!!(

 

  • 頑張ろう

前回の出来事を乗り越え、再び明るい表情を見せるようになった奈々、既に新しいオーディションに応募したりと元気になった姿が嬉しいですね。

そんな奈々、グロンギによって大事な人を失いながらも前を向いて頑張っている者同士ということで実加のことを気にかけてる様子も描かれ、そこを繋げてきたか!と感心したところ。末っ子的な雰囲気の奈々がここではちょっとお姉さん的な感じに見えるの良いですよね こういうサブキャラの要素も細かく広ってキャラの掘り下げに活かしてるの、抜かりないよなぁほんと。そして奈々の再起や成長を嬉しげに見守るおやっさんも微笑ましい 清涼剤だなぁ

 

  • 将来魔導騎士やる予定ないです?

一条さんの顔見知りの刑事として登場した桂木刑事。今回の視聴で初めて知ったけど、演じられてたのが磯部勉さんだったんだなぁ...!
激渋ボイスが特徴的なダンディズム溢れる声優・俳優さんで、特撮ファン的には後年の魔法戦隊マジレンジャーの強敵・魔導騎士ウルザードでお馴染みの方ですね。ポジション的にはほぼほぼ脇役キャラ扱いで、声優さんとかに明るくなかった初見当時はなおのこと殆ど気にしてなかったけど、今見ると凄く印象に残る人だな...!

 

  • ダグバ、圧倒的

突如異様な気配を察知して飛び出し、ペガサスフォームでその気配を探ろうとした結果、その正体であるダグバの凄まじい気迫に押されあっという間にペガサスからグローイングフォームに戻されてしまったクウガ...と未だ不気味に本編中にハッキリ姿を現すことのないダグバの底知れなさを、直接的な対峙を経ずして強調する描写が再び登場。終盤も終盤でそのベールを脱ぐラスボスの印象付けの仕方として非常にインパクトがありますよねぇ、これ

...ちなみにEPISODE43におけるクウガの登場シーンはなんとここだけ!敵の気配を察知しようとしてしっぺ返しくらうだけ、って流石にどうなのよ...!!ヒーロー番組だぞ!今だったら色んな意味で絶対できない演出だよなぁ

 

EPISODE42の時点でちらほらとほのめかしがあった上で、リストラの煽りを受け社長に恨みを持ち凶行に及ばんとしている男が登場、彼の犯行を止めようとする警察官達の緊迫感ある活躍がメインで描かれるという、完全に刑事ドラマなストーリーが展開されたEPISODE43。

...いや前代未聞すぎるぞ!!

前述したクウガの活躍の少なさはこの描写の皺寄せを食らったものと見られ、ヒーロー番組としては良くも悪くも思い切りが良すぎる展開だなぁと改めて感じましたねぇこの辺。

しかしながら、警察官達が犯人の男と睨み合う構図や攻め込み追い詰めようとする下りなど、一連のシーンのまさに刑事ドラマと遜色ない迫力の描き出し方は演出として純粋に素晴らしいですし、警察というものに強く焦点を当てた今作において、グロンギの介在しない普段の活躍というものを描いたことには一定の意義があったとも感じるところで。ヒーロー作品としてはともかく、クウガという作品を徹底的に突き詰めてるなと感じる点は面白いなと。

 

  • 一条さんと実加

EPISODE7、8から始まった一条さんと実加の関係性に今一度スポットが当たった今回。

自分にできることを精一杯やっていく、を貫く強い想いを覗かせる成長を見せる実加と、そんな彼女のためにもグロンギとの決着に全力を尽くす一条さんが普通の知り合い同士として向き合い、他愛無い話題に華を咲かせたり、ふと笑顔を見せる一条さんの姿に実加も頬を緩ませたりと、この2人がぐっと距離を縮める様が描かれ良い感じに締める...かと思いきや、前述した事件の場に鉢合わせ、その犯人に相対する一条さんの警察としての苛烈な一面を目にすることとなった実加が、先程の笑顔を見せていた一条さんとのギャップに怯えてしまう...という重苦しくシリアスな流れへ。

一条さん本人としては紛れもない正義感の下で警察として全力で戦ったのであり、その後も実加を気遣ったりと優しい部分は変わらずそこにあったものの、実加にとっては優しい部分の印象が強くなってきていた一条さんの違った姿を見てしまったみたいな印象になってしまったというのがなんとも辛い...

優しさを湛えた普段の姿と、戦う時の力を振るう苛烈な姿、その差異に分かっていてもショックと恐れを抱いてしまう者、というのは異形の姿へ変貌し悪と戦う仮面ライダーと、その戦いに秘める想いとは裏腹に仮面ライダーを戦う異形として見て恐れる人々、という仮面ライダーの戦いが含むある種の構図とそこに生じる感情をより一般人的な状況や心境で掘り下げたものにも感じられ、なかなか象徴的なシーンではないかなとも思ったり。

そんな実加の気持ちを推し測った五代さんの「...でも、本当の一条さんだよ。そういう一条さんもいるんだ。怖くてヤだけど...どうしようもなくいちゃうんだ」という言葉は、自身が異形の姿となり、自分が自分でなくなるような感覚を直に抱きつつ人々のためにひたすらに戦う故の葛藤を抱えているからこその深みのあるものであり、これら一連の流れに一つの区切りを与えて締めてくれたけれど、全体として見ると一条さんは実加の気持ちを察するような素振りは見せつつも多くを語ることはせず、実加も分かってはいてもすぐには受け入れきれないという感じで表情が晴れぬまま物語が終わるなど、締めとしてはビターな雰囲気となりました。即爽快に心変わりさせられる部分でもないし、ここをあえて消化し切らず残したのもまた特徴的な部分だなぁ...

 

以上クウガ42、43話、クウガグロンギの戦いやその関係性を取り巻く物語を描きつつも、バベルの事件に対応すべく奔走する様や、EPISODE43におけるグロンギと関わりのない事件での活動など、全体通して警察官の描写に凄く力が入った回という、特撮ヒーロー番組としては前代未聞すぎる構成となった回。EPISODE43ではその影響かクウガはほぼ登場しただけ、などヒーローものとしては率直に悪くないと言い切れない部分も多々あったものの、警察官という要素が大きく関わる本作におおいては非常に重要となる回だったとも言えて、緊張感のある事件への対処の演出・構図は純粋に面白かったので終盤における1度きりというとこで見ると作品の雰囲気を引き締める意味でもこういうのもアリだなと思う部分もあり。総じて賛否両論、良くも悪くもクウガらしいエピソードだったなと思います。しかしそういうとこも込みでテーマ性を徹底して描き上げる姿勢は個人的には好感。一条さんと実加のドラマの一捻り加えた描き方も作品のテーマ性を上手く昇華させた部分で良かったなと。

クライマックスに向け物語が盛り上がる中で、印象深く残る話でしたね。

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた