究極へ -To be ultimate-
EPISODE47「決意」
感想レビュー
開始冒頭からいきなりにダグバの猛威が描かれる形で始まった今回のエピソード。
聞いてて不安を掻き立てられる単調なBGMとノイズがかかり不安定に揺れ動く画面の中、ダグバが一歩も動くことなくその場で手をかざすだけで炎が燃え盛り、それを受け車内や電話ボックス内で炎に包まれ悶え苦しむ人々やそこかしこで炎を吹き出しながら燃え上がる無数の車、よろめき息も絶え絶えとなったクウガとひび割れたアマダムなどが次々に描写されるモンスターパニックともホラーともつかない圧倒的な恐怖感を煽る演出がなされるここのシーン、やはり凄まじすぎる...炎の中で苦しむ人々の動きがハッキリ見て取れて、しかも表情も時折見えるシーンがあるのがなかなかにエグさを上げてて怖い...モンスターパニックやホラーをない混ぜにしたような圧倒的な恐怖感ですね
その裏で苦しむ人々の姿を楽しむダグバの乾いた笑いが鳴り響き続けるのも良い感じに嫌悪感を煽ってきて非常に良く、なすすべもなく倒れたクウガに発した
「どうしたの?もっと強くなって、もっと僕を笑顔にしてよ」
という純朴な声色での台詞と併せダグバの酷薄で異常な精神性が画面からストレートに伝わってきますね。人の命を奪うことを楽しみ、向かってくる敵さえもあくまで自分のゲームの刺激と捉え弄ぶという性質はこれまでのグロンギ達にも概ね共通していたものだったけど、それが絶対的な力の下で振るわれたもの、いわば究極形とも言えるのがまさしくダグバって感じですよねぇ
そんなダグバの凶行の規模については劇中の新聞で「被害者3万人を越す」という記述がなされており、これまでのグロンギと桁違いなのをこういう形でも端的に示してくるのがまた強烈。モンスターパニックとホラーをない混ぜにした、と前述しましたが、最早ここまで来ると災害って感じですね 悪意を有した、だけど...
総じてマトモな戦闘シーンを一切交えず、ラスボスに相応しいその圧倒的な力とそれを引き立たせる純粋で異常な邪悪さを1話の中で鮮烈に印象付けてくるこれらの点から、ダグバは自分としても平成ライダーシリーズのラスボスの中でも無二と言っても過言ではない存在感があるなと改めて実感しました。
- 黒の金、敗れる
そんなダグバの圧倒的な力の前に、前回ガドル閣下に見事勝利したアメイジングマイティがボロボロにさせられる、という非常に絶望感溢れる流れが展開されました。
せっかく登場した強力な形態が次の回で敗れる、という展開に関しては通常であれば少々難色を示すところなのですが、このアメイジングマイティに関してはダグバの凄まじさの方に焦点が当てられた描写の仕方であったが故に、あのアメイジングマイティをあっさり倒すほどとは...とラスボスたるダグバの格の表現に一役買ったというところで良いアクセントになりましたし、加えて後述する五代さんの「凄まじき戦士」に対する決意を強調する上で、アメイジングマイティをも圧倒したダグバと戦うために必要な力というところで凄まじき戦士の存在に強い説得力を与えたので、決して悪い扱いには思わなかったなと。ポジションとしては良い使われ方もされてておいしい形態だったと思います。
- 混沌の世で
ダグバ/第0号による理不尽極まりない圧倒的な蹂躙により今回は本編全体において陰鬱な雰囲気が漂っており、この辺は非常事態の発生により不安の中思うように動けないという昨今の情勢を踏まえると凄くリアルだなぁと感じたところ。後述の献花の描写なんかも大災害の後に見られる光景そのものであり、つい最近に多くの犠牲を生んだ大きな災害があったこの日本に住む身としてこの辺の描写も真に迫るものがありましたし、クウガという作品はこういう部分の描き方の突き詰め方やディテールの掘り下げ方がずっと凄いんですよね...
中盤辺りから後半にかけても未確認活発化を受けた外出や都市部への移動の自粛といった描写が時折入れ込まれていてそのリアリティに唸ったものでしたが、それを最後の最後まで貫き通した点は率直に作品に拘りとして強いなと思います。このご時世だからこそより注目できた新しい発見だなと
- 凄まじき力を
ダグバの凄まじい強さを受け、かつて自身もビジョンとして見た凄まじき戦士になることを決意する五代さん。
これまで幾度もクウガとグロンギの同一性や、凄まじき戦士に近づくことによる五代さんの肉体や精神への変化が強調されてきて、その不安感が視聴者へ突きつけられてきたところでとうとう五代さん自身が凄まじき戦士になることを決意する、せざるを得ない状況になったというのは非常にハラハラさせられるところ。
彼の決断がどのような結末に至るのか、これがこの最終章の肝というわけですね
- 親愛なる皆へ
決意を固めた五代さんが神崎先生、榎田さん、椿さん、と親しい人々や交友のある人々の下を訪れる様が今回の話の軸となりました。
彼らとの温かな交流に浸りつつ、凄まじき戦士となって戦う決意を五代さんが語り、皆がそれを信じて笑顔で送り出す、という日常の穏やかさと最後の戦いへの緊張感が交互して描き出される構図が連続するのが、あぁもうクライマックスだな...と感じさせられこちらも気が引き締まります。
凄まじき戦士となって戦うことへの想いをいつもの明るい雰囲気で語る五代さんは今までの経験からきっと大丈夫であろうと感じさせられるけど、今までのエピソードの描写も踏まえるとただでさえ自分が異なるものに変貌する恐怖を抱いてきた彼が奥底ではどういう想いだったのだろうかと想像させられる部分もあり...気丈に振る舞う五代さんの姿とその裏の想い、というのが今までの物語でも象徴的に描かれてきてた分、このクライマックスで彼を知る色んな人達との交流で改めて強調するのが巧いですね
- 先生
そんな五代さんとの時間を過ごした人々の言動をピックアップすると、これまでのエピソードも踏まえた上での深みが増す部分もあり。
まず神崎先生との会話。EPISODE12ではあえて仄めかす程度に留め、その後のエピソードでも電話越しだったりといったものが多かった2人の対話が、最後の最後でようやく面と向かって多くの言葉と共に交わされているということもあってここは実に感慨深いものがありましたね。この2人の関係性は序盤のエピソードの中でも特に沁みたものです...
またEPISODE25、26に登場した神崎先生の教え子、拓くんが少しずつだけど元気になっていってるという話も語られ、神崎先生がしっかり生徒と向き合って先生してることや、拓くんが自分の人生に前向きになっていってることが伝わり彼らに関連するエピソードからの前進が見えるのが感激だなぁ...となりますね。印象深いサブキャラクターの再起・成長について細かく描いてくれるの良いですよね
というかほんと、一エピソードのゲストキャラクター扱いで終わっても全然文句ないくらいの存在感があった神崎先生が、その後のエピソードでも幾度か登場したの、キャラクターの活かし方として抜かりなくてほんと好きなポイントなんですよ。EPISODE39あたりでも出た時は「この時もまた出てたんだ!」と驚いたものです 良いキャラだったよ神崎先生ほんと
戦いが全て終わればまた冒険へ出る、と語る五代さんを嬉しそうに見て、サムズアップを交わす、という下りには彼の大切な教え子への愛情が溢れてましたし、EPISODE12ラストの構図の再演にもなってたしでもう色んな想いが込み上げてきましたね 良かった
- 悲しいマラソンの後で
続いて榎田さん。冴くんとの関係性について、向き合うことも増えてやれることも沢山できたことで上手くいっていることが語られ、前回のエピソードから連続してる内容な分地続きな感じがあって聞いてて嬉しくなりますね
そんな会話の中でふと、グロンギを倒すために強力な兵器を作り、続けて現れるそれよりも強力なグロンギに対しもっと強力な兵器を作り...という今まで自分がしてきたことが本当に良かったのかと榎田さんがこぼす一幕が。前回のエピソードのレビューで、警察が強力な力を手にしたことで人間がグロンギと等しい力を手にしたことへの暗喩的な描写について触れましたが、他でもない開発に関わってた榎田さんの口からこれがしっかり問題として提起されたのは手堅い作劇で安心しましたね。
そしてそれに対し五代さんが返した言葉も切り返しとして実に味わい深く良かったです。
いたちごっこで強力な力を生み出し続ければ、残るのは恐るべき兵器かもしれない。けどその先には、兵器じゃなく大切な人との思い出を作っていく未来もある
より強い暴力を振るい合う悲しい戦いでもあるけれど、掛け替えのない人々を守るための戦いでもあり、そこに想いを失わないならば、悲しいだけの戦いじゃない
そんな想いが込められてるような気がしました。
- たった1人のかかりつけ医
そして椿さん。
EPISODE14で語られた、司法解剖医として多くの人の死を目にすることへの想いやそれに対するグロンギへの怒りに関連する、未来を奪われた人々を見てきたことへのやり切れなさなどが語られ、改めて椿さんのキャラがグッと強調され良かったです。
そして五代さんへ伝えた「お前のその身体に関しては、俺が世界でただ1人のかかりつけの医者だぞ」という言葉や、EPISODE38で聞いた一条さんの五代さんに対する想いを代弁する言葉には、彼の長く付き合ってきた友人に対する優しさが垣間見え、ここも凄く胸に染み渡りましたね...ただ1人のかかりつけの医者、という言葉、人間離れしていくことへの不安が大きい五代さんにとっては凄く救いになった言葉だろう
司法解剖医という独自の立場故の死生観や信念がしっかり筋として通ってて、その中に友人への思いやりや信頼の厚さも見えてくる、というほんと魅力的なキャラだよ椿さん クウガのキャラの中でもかなり好きな部類です
- こんな世の中だから
そんな五代さんと色んな人々の交流の裏では、ダグバ/第0号が暴れ今も闊歩する世界に、子供達も出産を間近に控えた恵子先生も不安になる中で、彼らを勇気づけるみのりの明るさが光っていました。
EPISODE28で描かれた恵子先生の赤ちゃんという要素が再び拾われ、こんな時だからこそ皆を元気にできる赤ちゃんを産んであげて欲しい、とみのりが励ますシーンはとっても温かかったなぁ...EPISODE28で恵子先生に語りかけたことと併せて、こんな世界でも/こんな世界だからこそ、新たに生まれてくる命に与えてあげられるものも、与えてくれるものも沢山ある、という想いが描き出されてきて凄く良いんですよねぇ いつも明るく強くあって、多くの人を支え続けてきたみのりの姿は本編で希望だったなぁと改めて実感しますね。
- 決意
バイクを駆り知人達の下を回る五代さんは、ダグバの凶行の現場に残された献花を目にする...
この献花のカットは、ダグバの凶行の規模やそれを為した本人の残虐性、それにより多くの命が奪われた無情さを表す演出として、胸にくるものもあったものの非常に印象深く良い演出でしたね。
それを険しくも悲しげな表情で見据え(ここのカットの、ヘルメットから覗くオダギリジョーさんの表情の演技が凄く良かった)、全てを蹂躙するダグバの姿を静かに思い浮かべた五代さんは、再びバイクに跨り、先をゆく。
辿り着いたその先は、
彼の日常の象徴 ポレポレ。
To be continued...
以上クウガ47話、ダグバの圧倒的な力を描き出す容赦ない描写の強烈さを冒頭でグッと印象付け、その後決意を胸にした五代さんが多くの知人と交流する姿を優しくもどこか切なげに描き出す流れに魅入った回でした。
サブキャラの物語や人となりをしっかり大事にして、このクライマックスでも次々に印象深く昇華させどれも綺麗にまとめ上げていく作劇には本当に唸り感動させられるばかりで、クウガという作品の丁寧さ・物語やキャラへの真摯さを強く感じましたね。
さぁ、次回はいよいよ最終決戦。一条さんがバルバを追って動く姿も印象的に描かれ、盛り上がって参りました。
それぞれの戦いが如何な結末を迎えるのか、最後まで見届けましょう。
というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます
次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!
ではまた