AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

伝説は塗り替えるもの

仮面ライダークウガ

作品総括

 

「変身。」

遥か昔、人類を殺戮する謎の集団「グロンギ」と戦士「クウガ」の戦いがあった。

そして時は流れ、西暦2000年。復活したグロンギから人々を守るため、古代のベルトをその身に宿した冒険家・五代雄介は仮面ライダークウガとして戦い始める。

次々に出現する怪人たち。激化する戦いの中で、より強力な形態を獲得していくクウガ

「みんなの笑顔を守るため」。

五代は刑事・一条薫をはじめとする多くの人々に支えられながら、グロンギとの死闘を繰り広げていく。

 

仮面ライダー公式ポータルサイト「Kamen Rider WEB」シリーズ紹介-仮面ライダークウガより抜粋

仮面ライダークウガ | 仮面ライダーWEB【公式】|東映

 

仮面ライダーJ以来6年ぶりの完全新作の仮面ライダーシリーズにして、今で言う「平成仮面ライダー」の第1作目として歴史の新たな1ページを刻んだ本作「仮面ライダークウガ」。

子供達へ向けた特撮ヒーロー作品という枠組みの中に新たな風を吹き込まんとした本作の革新的なドラマや進化したバトルの演出は今見ても新鮮さを存分に感じられる唯一無二と言っても良い存在感があり、当時も賛否分かれながらかなり盛り上がったとのこと。

自分もおよそ12、3年ほど前だったでしょうか、当時放送していた「仮面ライダーディケイド」の影響で過去の仮面ライダーシリーズへの関心が高まっていた最中、レンタルビデオで本作のVHSを借り視聴したものですが、より進化した現代のシリーズにも負けない魅力に溢れており非常にハマったものです。

そしてこの度の2020年9月12日から、クウガ20周年を記念した配信がYouTubeにて開始され、自分も初見以来久方ぶりの本編ぶっ通し視聴を行いました。いや、やはりいつ観ても素晴らしかったですねクウガ...むしろこの歳になって色々感じ入るものも増えたり、これまでにもファンとの交流などで色々な気付きを得ていたりした分余計に魅力を深掘りできた感じです。良い配信でした。

 

というわけで、そんなクウガ配信が最終回を迎えてから既に2ヶ月近く経とうとしており続くアギトの配信が1クール目を過ぎたところですが、そろそろクウガの総括を行っておこうかなと。長くなるかと思いますがどうぞお付き合いを。

 

 

  • “お約束”の新たな表現

仮面ライダーといえば、「改造により変身し強力な身体能力を手にする主人公」「ヒーローの活躍が主体であまり描かれない警察組織の活躍」「ほぼ1体ずつでの登場となる怪人達」「怪人が倒されると発生する爆発」など、子供向けのヒーロー作品ということもあって(多少の差こそあれ)見た目的な分かりやすさを重視したり敢えて細かい理屈を抜きにしたりして描く「お約束」的な部分があり、特撮ヒーロー作品に詳しくない方々からは純粋な疑問として、また時に少々不粋にネタにするような形としてツッコまれるというのが一種の通例なわけですが、本作はそこにフォーカスし、人間社会に出現し猛威を振るう怪人に対抗せんとする警察組織の動きが一つの軸としてしっかり描かれたり、怪人サイドの独特な動向を形作る組織体系や文化の仕組みが設定として組まれていたりと、それらのお約束を現実的な説得力を持って描く作劇がなされており、それが本作をグッと引き立てる独自の魅力となっていました。あるフォロワーさんの仰ってた「現実世界にフィクションをどれだけ落とし込めるかに取り組んだ」作品というのが言い得て妙だなと

度を越えたAGITΩ好き on Twitter: "クウガは現実世界にフィクションをどれだけ少なく落とし込めるかどうか取り組んだ作品だと思う"

そして本作が魅力的たり得ているのは、それらの作劇がドラマ部分に厚みを加えている点だろうと自分は感じます。

怪人グロンギの出現で慢性的な不安を感じる人々、それを一刻も早く取り去ろうとグロンギに怒りを燃やし立ち向かう警察官達の姿などはキャラクターや世界観の描写をより多層的で見応えあるものにしていましたし、グロンギ達と同じように異形へと変貌し強大な力を振るうことへの不安や恐怖を秘めながら戦う主人公・五代雄介の姿には、昭和期の仮面ライダーシリーズでもお馴染みとなっていた「仮面ライダーと怪人の同一性」や「人間離れした力への不安」といった要素への新たなアプローチを行いつつ、本作のテーマ性をグッと深める効果があり、非常に良かったなと感じています。

総じて本作は、仮面ライダーという作品をより真に迫るものを感じさせるパワーがあったな、と思います。

 

  • 進化したバトル・アクション

個性豊かな怪人達との決戦をアクション盛り沢山に描いたり、颯爽とバイクを駆るライダーの姿をカッコよく描いたりと、観る者を惹きつける仮面ライダーシリーズのバトルやアクションですが、本作は新時代の新生シリーズということもありそこに更なる進化が多く見られましたね。

まず第一に目を引いたのは、フォームチェンジ・強化により多様に描かれる戦闘演出でしょう。強化という概念自体は昭和期にも多く見られ、多様なフォームチェンジもRXから引き継がれたものですが、クウガでは各形態の特性をより細かく設定したことで、力強い格闘、軽やかなアクションと棒術、遠距離からの一撃必殺の射撃、重量感高めに攻撃を物ともせず突き進み敵を斬り裂く剣術、などなどクウガという1人の仮面ライダーのアクションに彩り豊かなバリエーションを加え、且つそれをスーツアクターさんのパワフルで華麗なアクションや演出陣の巧みな魅せと組み合わせることで、視聴者を飽きさせない戦闘の絵作りが生まれていたなと感じます。特にペガサスフォームの射撃スタイルに関しては新たな風を吹き込んだなと、その演出のスタイリッシュさへの爽快感も相まって個人的に非常に感心させられたところ。激しい戦闘の中での弱体化、警察組織との連携も必須となる強力な強化形態、ラスボスとの同一性で不安を煽ってくる未知の究極形態、などなどドラマ面にも大きく影響するフォームチェンジを多く盛り込んできたのも良きところでしたね。グローイングの弱体化形態という印象を強くした上でのEPISODE19でのフィニッシュも良い演出で最高なんすよ

またトライチェイサー/ビートチェイサーを颯爽と駆るバイクアクションも、公道をパワフルに駆る痛快さ・市民達のすぐ近くをクウガ/4号が走っているリアルとフィクションの良い感じの融和が感じられる絵作りが、おおっとなるカッコよさ楽しさを感じさせるもので良かったなと。ファンの間で語り草なEPISODE4を筆頭に、トライアルライダーの成田匠さんを起用したバリバリのモトクロスアクションも、今見ても新鮮さ溢れる素晴らしい画で実に惹きつけられました。弟の成田亮さんも参加してのバダーとのバイクチェイス・バイク戦闘も最高でした

戦闘演出面でも数多くの革新的な演出を盛り込んだのも、本作の持ち味と言えるでしょう。

 

  • 善性の尊さと力の意味を問うドラマ

そして本作の何よりの魅力であると感じるのが、この人間描写の濃さ・テーマ性の掘り下げの緻密さから生じる、ドラマ部分の重厚さでしょう

本作は「暴力の恐ろしさ・虚しさ」というものを一つのテーマとしていた面があり、クウガおよび警察とグロンギの熾烈な戦いという構図を中心として、人間の命を理不尽に奪っていくグロンギの残虐性は勿論のこと、怒りからジャラジへ圧倒的な暴力を振るい虐殺してしまったクウガや、戦力強化に伴いグロンギを蹂躙する存在へとシフトしていく雰囲気をほのかに纏っていた警察サイドなど、相対的に「正義」と言えるクウガ/五代さんや警察に対してもこのテーマ性を徹底して意識し描いた展開や演出が、ヒーロー番組として非常に強烈だったなと感じます。前述のジャラジ回であるEPISODE35をターニングポイントとして、アマダムとの融合でグロンギと同じ生物兵器と化していく可能性が示唆され、加えて究極の闇・ダグバとの同一性を疑われるアルティメットフォームの存在が怪しく揺らめくなど、前述したような仮面ライダーと怪人の同一性」という仮面ライダーシリーズお馴染みの要素のオマージュも織り交ぜながらクウガ/五代さんの行く末も含め不穏さを感じさせる展開運びもまたそれを強く強調していたとも思いますし、伝説の最終決戦の壮絶な描写・そこで描かれた“五代雄介”という人間の苦しみの様もこれらのテーマ性を描く上で非常に強烈だったなと感じるしで、本作はこの辺の暴力性というものへの迫り方で後半を特に大きく盛り上げていたなと。五代さん/クウガの描写の数々は、彼を単純な「ヒーロー」として描かせない、暴力性に対するある種の皮肉も交えた強烈さがありました

ただ一方で、それに相対するようにして「暴力性を乗り越える人間の善性の尊さ」というテーマ性がクウガの物語全体を取り巻いていたと自分は思っています。

五代さんや警察について見ても、五代さんはみんなの笑顔を守るために戦おうとするその気高い心で闇を乗り越えてみせ、警察の人達も焦点が当てられていたのはどんどんと力を付けていくことへの危険性という部分以上に、市民の平穏を守り、一刻も早く戦いのない世界を取り戻そうとする勇敢な姿であり、と物語の中で全体的に・最終的にしっかりと強調されていたのは、みんなの笑顔や戦いのない世界のために多くのものを守ろうと決死の覚悟で戦う精神性の方でしたし、彼らを取り巻くそれ以外の人々の描写に関しても、グロンギの脅威が蔓延る世界で傷ついて欲しくない大切な人に寄り添い自分に出来ることを頑張る姿や、暴力がもたらす虚しさに対する憤りや願い、信念をもって誰かと向き合う姿だったりと、善性を強く胸に抱いて生き、誰かに優しさを伝える温かくも強い様がしっかりと描かれたりしていたんですよね。これはクウガの物語を通じ描かれようとしていた真のテーマが「拳を握って誰かにぶつけるよりも、誰かの手を取り握りあって生きる世界を信じる優しさ」だったからだと自分は思っていて、その描写の数々は本当に心に沁み入るものばかりだったなと思います。

またそんな描写の数々を支えた要素として、五代さん達メインキャラをはじめ、ゲスト的扱いの端のサブキャラに至るまで、その人間性や人生にしっかりフォーカスされた物語が描かれていたこと、またそんなキャラクター達を演者さん達が人間味豊かに演じあげてくれたことは非常に大きかったなと感じています。ある回に登場したサブキャラが後の回で再び登場し、成長を見せてくれたりまた別のキャラと絡み新たなドラマを生み出したりと、多くの演者さんと製作陣の手により数多くのキャラが物語を形作り本作のテーマを掘り下げる人々として、活躍してくれたこのストーリー構成は本当に見事。脇役含め一人一人がしっかり物語の中で無駄なく昇華され作品を盛り上げる作劇が好きな身としては、ここは非常に良かったですし嬉しかったです。

個人的には椿さんや蝶野さんはキャラクターとして特に好みでした。それぞれの立場故の死生観や人生観、そこを通じた絡みが好きなんです

本作はこの人間ドラマの濃さ故に、特撮パートが非常に少なくなることが多々あり、この辺は個人的にも難点ではあるものの、その分こうしてテーマ性やキャラクター描写を深め、重厚な物語を築いたことは非常に大きかったなと思います。

クウガという作品の評価において、「登場人物達が皆高潔すぎる」「善性が強すぎる」といった感じの声も少なからず見られ、この点に関しては逆にリアリティが無いかも?というところで少し納得できるところもあるものの、本作中に「綺麗事だからこそ、現実にしたい」という言葉があるように、この作品がこの作劇を通じ伝えたかったことというのは、1人1人がこの作品を観て何か沁み入るものを感じ、現実でもほんの少しだけでも差し伸べる優しさ・手を取り合う優しさを持って生きて欲しい、そしてそれを繋がりいつかこの作中の世界のような優しさが多く溢れる世界になって欲しい、ということだったと自分は思っています。

ほんの少しだけ誰かを想う心を表して、それを繋いで綺麗事を現実にしよう、と。そういうことだと信じています。

なんかちょっとカッコつけちゃったな?(

 

と、色々善性・優しさに触れた後で最後に言及する要素がこれかよ!!という感じは若干しますが、クウガという作品を語るに欠かせない一つが、やはりこのグロンギでしょう。

前述したような暴力性の意味というクウガのテーマ性を一つ引き立てる存在として重要なファクターであったと同時に、容易く人間の命を刈り取る冷酷さ、ゲゲルに向かい戦う様に敵ながらどこか惹かれる誇り高い戦士の一面、人間の命を最早なんとも思っていないかのような残虐で悪辣極まりない下衆さ、自身のプライドに欠けて何かに逆らって生きようとするどこか人間臭い様、人間や同種のはずのグロンギさえをも超越してるかのような不気味さ・荘厳さを混在させたような存在感など、昭和期のライダーシリーズの怪人群を思わせる個性豊かなキャラクター性がより劇的に描き出された様子が、敵キャラとして本当に魅力的だったんですよねグロンギ達。加えて物語が進んでなお、クウガや警察を幾度となく苦戦させる強敵っぷりの演出も見事で、個人的にも非常に好み。

ちなみに個人的にはギイガ、バダー、ジャーザ、ガドル、ダグバ辺りが強敵さやキャラクター性合わせて好きなところ。特に好きなのはジャーザやガドル閣下です

残忍な手口で人間を狩るゲゲルの描写の強烈さなど相互理解の不可能さをひしひしと感じさせる不気味さ、その一方で言動の節々や何人かのゲゲルの手法に伺える現実の悪人・狂人にも通ずるような時折妙にリアルな恐ろしさを感じさせる性格、後半につれゲゲルの規模のパワーアップによって増していく一種の災害のような絶望感・威圧感、そしてグロンギの長のような立場で不敵に存在し人間やクウガにも「グロンギと等しくなる」と言及したバルバや、本作のラスボスとして最終盤まで怪しげな雰囲気を漂わせつつ圧倒的すぎる力と五代さんとの強烈な対比となる性格で視聴者の印象に深く刻まれたダグバといった強烈な幹部・ラスボス陣のストーリー中での存在感・キャラクター性も相まって、クウガという作品にこれ以上なく相応しい敵怪人だったなぁと思います。

 

 

 

以上、仮面ライダークウガの総括となりました。

仮面ライダー」という作品の枠組みに新たな色を加えつつも、バトルの見応えや作品性をしっかり踏襲した作品でありつつ、そこに独自のテーマ性や魅力を加え今なお唯一無二と言える存在感を生み出した、濃い作品だったと感じますね。

こうしてまとめてみて、クウガが多くの人々を魅了する理由や、自分がクウガという作品を本当に好きだということを改めて確認することができました。我ながら意義のある良い総括だったと思います。ここまで長々と付き合ってくださった皆様、ありがとうございます。一緒に共感したり、感じ入ったりするものがあれば幸いです。

そして役者陣、製作陣の皆様、このような素晴らしい作品を世に送り出してくださって、改めて本当にありがとうございました。

 

我々も、優しい世界を願って、暴力に訴えるだけでなく、ほんの少しだけ、手を差し伸べていけたらなと

 

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた