第31、32幕「黒の流星/暇乞い」
振り返り感想
「我々は貴方様が為に存在するのですから...」
「こう仰ってくださればよろしいのです。」
「戦え、そして、」「勝て、と。」
「...じゃあ、戦って、勝ちなさい。
そして...かならず戻って来なさい!」
前回のギイに続き、自らの舞台を命を賭して全うしたヴィルマ
そして迫る戦いに覚悟を決め、自分達の人生を賭けた演目へ挑んでいく仲町サーカスの面々とアルレッキーノ・パンタローネ
物語を取り巻いていた数多くのメインキャラ達にスポットが当てられ、各々が自身の越えるべき壁や為すべき使命に向き合い人生の大舞台へ飛び込み命を燃やしていくという、この群像劇の集大成とも言える重厚な怒涛の展開こそ「からくりサーカス」という作品の真骨頂と言えますが、アニメにおいてもその魅力は存分に描き上げられていたと感じますね。ヴィルマの因縁への決着及び最期の瞬間、そしてアルレッキーノとパンタローネがしろがねの「願い」をその身に受けて舞い上がるような幸福と共に舞台へと身を投じてゆく一連のシーンは、原作漫画・アニメ共に久々に見るはずなんだけど観ていて思わず涙ぐんでしまいましたなぁ...声優さん達の情感豊かな演技と、物語の盛り上がりを彩る劇伴や台詞の間の取り方などの演出が、各シーンの良さを存分に表現してくれていて実に満足でした 終盤は尺にゆとりが出てきてることもあってこの辺の表現に力が入ってるのが伺える
そして何より、しろがねのことをギイに問われる場面などで細かく描かれていた鳴海兄ちゃんのしろがねへの現在の想いが明かされるシーン、ここがたまらんのですわ...原作漫画でも「!!」っとなったロールキャベツへ言及する鳴海兄ちゃんの一言で読者もしろがねも一瞬ぱぁっと心に光が差すも、その後鳴海兄ちゃんの口から語られる、様々な地獄を経験し色んなものを背追い込んできてしまったからこその悲壮すぎる決意に胸が締め付けられてしまう...という。どうしてこんなエゲツないことしてくるんだカヅヒロフヂタッッッ からサー最終盤の濃密度やっぱヤバいね...
まぁこの辺のアニメの展開には放送当時「ヴィルマや仲町サーカスの面々をはじめ十分な掘り下げの為されてなかったサブキャラへ急激にスポットが当てられ、さも超重要キャラのように大活躍し始めた」的な感じの評を下す声も出ていた覚えがあり(記憶してる限りだと、初見さんからも仲町サーカスの面々への突然のフォーカスには戸惑う声が出てた...と思う)、僕自身正直原作と比べた物足りなさというものは否めなかった感があるので、ここは惜しかったなぁ...
この終盤における、仲町サーカスの面々をはじめとした人々-世界の命運を賭けたような戦いからは因縁的にも程遠かった人々 が死闘に身を投じ、圧倒的とも言える強敵と戦いを繰り広げる様が原作漫画において非常に熱かったのは、彼らの背景や信念、他のキャラとの交流や日常が序盤から描かれ続けており、彼らのキャラクターとしての深み、読者の愛着が非常に濃厚なものになっていたからこそ、彼らが共に過ごしたかけがえのない仲間の為、自身が越えるべき壁を越える為に戦う姿に心打たれたから、というのが非常に大きいと思っているのですが、その点アニメはやっぱり仲町サーカスサイドの描写が圧倒的に少なかったんだよなぁ、とおもってしまうんですよね。率直な印象として原作ファンから見ても初見さんから見ても、アニメにおける終盤までの仲町サーカスは勝としろがねが単に身を置く場所、そこの仲間達はあくまでサブキャラの数々、という印象に留まってしまう程度の割合でしか描かれなかったのが作劇として致命的だったと言わざるを得ないなと。
勿論アニメはアニメで単に漫然と展開をなぞっただけというわけではなく、当時の感想ツイートにもあるようにアニメの描写の中でストーリーを劇的にするような演出・展開運びが取られていたし、アニメという映像の中で彩りや動きを持って描かれる原作漫画の印象的なシーンの数々は素晴らしい魅力を持っていたと感じるので、アニメ・からくりサーカスという括りの中での表現に関して見ると満足度は高いのですが、やっぱり観る側が求めるのは偉大な原作漫画が持つ魅力の最大限の表現、なんですよねぇ この辺りのアニメと原作の違いを見比べるのもまた一興とはいえ、尺などの諸々の都合によりアニメ・からくりサーカスで見たいものというところの齟齬が若干生まれてたのは悔やまれるところ...
とまぁ色々言うんですけど、先も述べたようにここぞの名シーンは原作の思い入れもあって泣けるし鑑賞後感は凄く良いので嫌いってことはないんですわ 寧ろ制約多い中で頑張って魅力を創出しようとしてくれてるのは見えるし...(初見さんが感じる印象までは測り切れないけど)良い作品だなとは思う。
そんなからくりサーカス第31、32幕でありました。
というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます
次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!
ではまた