AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

剣と想いが紡ぐ銀河

仮面ライダーセイバー

第38章「聖剣を束ねる、銀河の剣。」

感想レビュー

 

 

「崩壊する世界に合う音楽は...命乞いをし、泣き叫ぶ声が相応しい!」

こういう悪趣味な言い回しをさらっと言う感じで狂気を醸し出してた今回のイザクは相応の巨悪感が出ていて割と良き感じでした。内田さん登板回のイザクはこういったアプローチでヤバさが押し出されているのが好みなんですよね(映像上の見せ方においても、よく小物感出てるよと言われがちな時のヒャッハ-!!してるイザクと少し違った感じの比較的静めな演技が意識されているように思うので、この辺色んな演出の噛み合わせも上手く効いてるんだろうなーと)

 

イザク/ソロモンがもたらす滅びに立ち向かうべく剣士達が集結する時、新たな聖剣が誕生する!という流れで魅せたセイバー最強フォーム登場回。テーマ性や作中要素の本編中での強調の仕方が上手な内田さんの展開運びによりなかなかに見所多めな回になってたなと感じます。

 

前回より生存(?)が仄めかされていた隼人が賢人の前に登場、父として息子の想いを後押しした彼の言葉もあり、遂に賢人が飛羽真と並び立つこととなりました。父・隼人にまつわる因縁や責任を背負って世界を救おうと戦っていた賢人の心を動かすにあたり隼人本人が最後の一押しになり彼を枷から解き放つというのは納得度の高い展開であり、またそこを描くにあたって、富加宮父子の親子としてのやり取りをきちんと劇的にしっとりと描いてたのは実に良かったですね。喜ぶより先に父に文句の一つも言いたくなる賢人や、そんな彼を抱き寄せて深く詫びる隼人という、剣士としての使命から生じた隔絶への自責を込めたやり取りを経て、大きくなった息子の姿を目にして喜ぶ隼人、その仕草に幼い頃の父との思い出に心を温める賢人という正真正銘親子としての絡みに繋がる一連のシーンを優しく描いていて沁み入るものがありました 良かった

しかし隼人パッパはタッセル(ビクトール)のおかげで現世へ残れて復活を待ってたそうだけど、タッセルさんその情報こないだ飛羽真とちらと会った時に少しでも教えてあげといても良かったんじゃないですかね...飛羽真を介してそれが賢人に伝わってりゃまた色々違ったと思うよ(

 

また今回はここ数話に渡って展開されたバハトとの因縁も遂に決着。何度絶望しようとも立ち上がることのできる人間の強さ、その強さを信じられず絶望し諦めてしまったバハトの心の弱さを説いた飛羽真が自らの強さで示した強さを目にし、その可能性をどこか認めるような態度を示したバハトが虚無を残し消滅する、という形である意味セイバーお馴染みの剣を交えての信念の理解がバハトの間でも為されたという感じですね。

このバハトの変化に繋がった一手が飛羽真の烈火による一撃が不死のバハトの傷付かないはずの体に傷を付けたというものなのですが、これがバハトの不死の肉体をも破る力への飛羽真の覚醒がやや唐突という点これまで一応強敵として出張り続けてきたバハトが飛羽真の一太刀のみで簡単に消滅寸前になる点などから話の流れ的にちょっとあっさりめの展開だったこと、加えてここから割とすぐにバハトの消滅に行ってしまうことなどから肝心の部分でさっくりしすぎてて盛り上がりに欠けた感はややあるのは少し惜しいところ。ただ演出的には飛羽真がバハトを彼が自ら語った「不死の肉体による苦しみと絶望」から救ったとも見えてそういう意味では象徴的で意味があったと言えるし、バハトの最期も、飛羽真が見せた可能性を感じ取りながら視界の端に前回曲がりなりにも自分を受け入れようとしてくれた芽依を見て「もう少し早く気付いていれば自分も『あっち』に行けただろうか」とでも言いたそうな自嘲を浮かべつつ、飛羽真の作る未来を見届けてやるとこぼして虚無を託すように地面に突き立てる、という彼の言葉にしない内面の変化が表れたような情緒溢れるものだったのは凄くグッときたので、彼の持つ要素自体はしっかり昇華して描き切れたと思いますね

また飛羽真の言葉を印象付けるためにかつて飛羽真を通じ学んだ「人こそが世界」「人が変わり、世界も変わる」ということを訴えるユーリ(人があってこそ世界、という飛羽真とユーリの和睦を描いた第18章の内容を踏まえたものって感じもあって良い)の言葉を軸に、現代の人や物に触れ、現代における人と世界の在り方やそれを守ることを学んだユーリ人に絶望し人や世界の本質は変わらないという考えを変えられず停滞してしまったバハトという同じ時代を生きた2人の対比を強調してバハトの心の弱さを描き出しつつも、それに終わらせずバハト自身の1000年も抱き続けてきた信念の強さ、それを飛羽真に今更否定されてたまるかという意地も印象的に描いたことで、バハトを単なる悪ではなく、何かを為そうとする剣士としての強さを持ちつつも、頑なになったために変わることのできなかった悲しき戦士というところへ着地させたのも良き。本編での再登場からわずか2話の怒涛の展開で消滅し、再度復活しという忙しない展開運びからはキャラを活かし切ってくれるかという不安感が正直強かったのですが、結果的に魅力的な色付けが為されたのは良かったなぁ。その最期の描き方も少々の忙しなさはあり、もっと時間かけて描くこともできたのかなという若干の勿体無さもあるにはあるものの、総じて言えば満足です

度近亭心恋 on Twitter: "「俺の千年を……お前如きの『想い』に覆されてたまるかあああああああ!!」 バハトも自分なりの境遇で選んだ破滅だから、それ否定されるのはなあと考えると好きな台詞 #nitiasa"

フラギイ on Twitter: "1000年前の人の命が軽い価値観に普通に親和してたユーリが現代の価値観に順応したのに対し、(親類が死んだとはいえ)当時の価値観の中で囚われ続けたバハト結構真逆だよな"

 

こうしてバハトの想いも虚無と共に受け取り、剣士達がソロモンを前にそれぞれ示した信念が聖剣に込められて空へと向かった時、セイバーの最強フォーム、クロスセイバーが誕生しました。クロスセイバーのデザイン自体は発表時点でTwitterなどでも語ったようにブレイブドラゴンの色変えというとこで個人的に凄く良いと手放しには言えないものの、CG等をふんだんに盛り込んだ映像の美麗さ、夜のロケーションの中でクロスセイバーの全身の星が散りばめられた銀河をイメージしたデザインを強調した構図など、モチーフやデザイン性を最大限活かした柴崎監督の力の入った変身演出は非常にカッコ良かったなと思います。

戦闘においては、聖剣組み合わせギミックも活用したバリエーション豊かな技が、無数の剣の雨あられや広範囲の斬撃などといった外連味ありまくりの豪勢な映像演出を用いて迫力満点に描かれており、デビュー戦としては文句なしのインパクトでしたね。挿入歌「Rewrite the story」もカッコよく戦闘を彩ってくれていて非常に良かったりと、非常に満足いく爽快感でした。(ただ戦闘時にソロモンが繰り出してきたキングオブアーサーのカラドボルグ版みたいな巨人兵士達はクロスセイバーの強さを演出する上で良い敵役だったものの、ブレイズ達を相手取る時に既に召喚しておいた方が強さも強調されて登場の唐突感も減ったんでねぇかなとも思ったり。フォロワー様が仰ってたように全世界の破滅の演出として召喚し暴れさせておいても緊迫感が増したろうと思うし...緊急事態宣言下なのもあって逃げ惑う人々を表現するためのエキストラ等が呼べなかったやむを得ぬ事情があったろうとはいえ、世界を襲う破滅の演出の危機感がすくなかったのは惜しい。)

でるた on Twitter: "メビウス最終章のインペライザーみたいに、各都市にアーサーロボ派遣して恫喝するとかあったよねもっと見栄えする世界の危機……"

 

ストーリー的な流れとしても、剣士達の信念を嘲笑い剣と本を集め手にした力を振るうソロモンに対しそれぞれ違う信念を持ちながらも一つに集った剣士達の正義・信念の結晶として完成したクロスセイバー、という感じで同じプロセスを経て生まれた力の違いが強調されたのに加え、飛羽真がソロモンの剣を「なんの想いもこもっていない軽い剣」と切り捨て「それぞれの想いを乗せて剣を振るう剣士達」というセイバーという作品で幾度も描かれていたポイントとの対比とするという展開も相まって、ソロモンへの逆転が強い説得力とカタルシスを持って描かれるのも熱かった。特に剣の重みという点に関しては、今回の話の中でもセイバーvsファルシオン戦でセイバーがファルシオンの剣戟を「重い」と称す=間違った道を進んだバハトにさえも、信じて突き進む剣士としての強い想いがあったと示す下りがあった分、イザクの外道ぶり・空虚さを強調するものとして機能すると共にバハトのキャラクター性を相対的にグッと引き上げる形になっており凄く良かったなと。剣士達が剣の乗せる想いとその重み、というポイントを再度拾い、ここで劇的に活かしてきた内田さんの手腕には改めて感心するばかりである

 

かくしてソロモンに一矢報いた剣士達は、一時掴み取った勝利を噛み締めるのだった。

しかし神代兄妹をはじめ彼らの輪に加わらない者達もまだおり、更に残された虚無を掴み取る手が...というところで締め。

神代兄妹は描写的にまだしっかり和解のきっかけが描かれてはなかったのでともかくとしても、蓮は前回ああいう流れを経たのだし一応戻ってくると思ってたんだがなぁ。素直にそういう方向に持ってく流れを少しでも見たかったのは正直なところ。流石にもうここは引っ張っても旨味はなくなると思うし、そろそろさくりと片をつけてもらわないと困るところだと思うが
結騎 了 on Twitter: "先週、飛羽真が蓮をボコって強さの考え方について説いたのに、今週の蓮が戦線に駆けつける展開でそれを全く踏まえてなくて本当にがっかりした。「飛羽真の求める強さを俺も追ってみる!」にも、「お前の強さはやっぱり違う!力で証明するのが俺の生き方!」にも、どっちにも振り切らないとは......。"

結騎 了 on Twitter: "何のために先週蓮と飛羽真のくだりがあったの.........?????"

結騎 了 on Twitter: "「なんのために、誰のために戦うか、それが大事なこと」じゃなかったのか...... それを受けての蓮のアンサーや、スタンスの着地は、何もないのかよ...... 共闘を呼びかける展開だったじゃん..."

結騎 了 on Twitter: "神代兄妹はまあ描写がちょっと薄いとは思うが行動原理は分かるし、いつものメンバーはそれぞれ飛羽真との合流が一応描かれてきたから分かるんだけど、蓮、君は本当にさぁ......... 物語の結末じゃなくてもうちょっと蓮くんをフォローしてあげてくれ、物語がよ......"

結騎 了 on Twitter: "先週、賢人の決死の覚悟を止めに行く、それを中断してまで飛羽真は蓮と戦ったんだけどなあ...... うーん......"

あと賢人に関して、テレ朝の公式ページの次回予告には「賢人も飛羽真らと戦うことを宣言し」ってあるのに東映の公式ページには「飛羽真達の輪に加わることはなかった」ってあるんだが、どっちだよ!!??()流石にパッパとの絡みを経て飛羽真とも並び立ったのにまだ距離置いたら流石にキレるんで前者であって欲しい

そして最後に虚無を手にした者、あの手はどう見てもデザストなわけだけど、ほんとトリックスターだなぁコイツ...なんとオイシイ活躍 最後の最後までどう動くのか読めんストリウスとの接触が描かれたけど唆されてその通り動くキャラとも思えないし、果たして何を思うか...

 

以上、セイバー38話でした。賢人の心が解き解される流れやバハトの最後の掘り下げなどが劇的に描かれた上でのクロスセイバー誕生とその活躍、とても熱かったですね。剣士が剣に乗せる想い、などをはじめとした内田さんによる作中要素の活用も凄く劇的に働き、イザク/ソロモンとの対比も効いたカタルシスある展開がたまりませんでした。演出面等の細かい部分で気になるところはあったものの、総じて熱い最終フォーム回となってたなと

最終フォーム誕生によりクライマックスもいっそう実感されてきたので、残りの話も実に楽しみです

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた