AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

「命」を“懸”ける

ウルトラマンコスモス

第12話「生命(いのち)の輝き」

感想レビュー

 

 

フェキオン山のスフィンクスが通りかかる人間に問いかけたという「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。この生き物は何か?」というなぞなぞは世界的に有名である。答えられなかった者はスフィンクスに食い殺されたそうだが、ある旅人(オイディプス)が正解を答えるとスフィンクスは崖から身を投げたという。このなぞなぞの答えは「人間」赤ん坊の頃は四つん這い、やがて二本足で立つようになるが、老人になると杖を突くので三本足になる、というわけである。

Wikipedia-なぞなぞ-スフィンクスのなぞなぞ(ギリシャ神話より)より抜粋

 

怪獣イフェメラの生き様を通じ、一生の儚さとその中で精一杯生きる生命の尊さを描く、コスモス屈指の名エピソードの一つに数えられる今回。自分としても当時から今に至るまでコスモスを視聴するたび胸を打たれる非常に思い入れの強い回ですが、やはり素晴らしいエピソードだなぁ...と改めて。

 

本エピソードの白眉はやはりなんといっても怪獣イフェメラのキャラ造形なわけで、誕生と成長、そして往生をたった1日で為す短い命ながら、卵を生み自身の命を繋ぐためにその刹那の一生を精一杯に全うしようとするその様はまさに今回の話のテーマにこれ以上なく相応しく、誕生したての無邪気な生命がやがて自らの脚で立ち上がり、自らが生み出す新たな生命を慈しみ後世に残すことに自身の命の残る灯火を必死に燃え上がらせる姿は見ていて凄く胸打たれますね。上述のスフィンクスのなぞなぞをそのまま生態...というか生き様として設定し、それを短い一生を駆け抜ける儚さにして強さとして描くアイデア凄いよなぁ...その昔リアルタイムでもこの回を視聴した記憶が薄ぼんやりと残っていますが、幼心にもイフェメラの姿には見届け応援してあげたくなる力強さを感じてましたね とても印象深く残ってます

この回の予告には

「あなたは1日を懸命に生きていますか?」

というナレーションからの問いかけが入っているけど、これも今回のテーマ性を端的に表現したものとして、本編の内容と合わせて凄くメッセージ性高いよなぁ。予告の時点でも凄く響いてくるものがあるけど、一日という一生を全力で生きるイフェメラを見た後だと更に自分自身に当てはめて色々考えさせられるからとても秀逸なフレーズだなと

 

そんなイフェメラを取り巻く面々の動向も、イフェメラに寄り添い応援したりするEYESや、イフェメラのことを理解し手を出すことなく包み込むように見守るコスモスなど、一切の戦闘を挟むことなく静かで緩やかに描かれるので、そこも非常に特徴的でしたね。戦闘...っぽいことをしたのは防衛軍がイフェメラを狙って放ったミサイルを止めようとしたのくらいだし 特撮ヒーロー作品という特質上毎回毎回できる構成ではないけれど、コスモスの作風に凄くマッチしてる描き方だし今回も含め今後も何度かこういう構成を本作でやれたのは大きかったと思う。

しかし守らなければならない施設があるとはいえ、無抵抗で動こうとはしていない生命体を自分達より巨大な存在だからという理由で一方的に攻撃することのなんと愚かしいことか 第1話の時といい防衛軍のいらんことしいな気質は本作においてちょいちょい描かれるポイントだけれど、今回はイフェメラへの感情移入が深いだけに余計ムッとくるよなぁ ただ巨大な生命体が動くだけでも人間のインフラに影響が出得る以上、それを守らなければならないのも事実でありそこも難しいところ(実際このエピソードの次の前後編にてその点はガッツリ触れられることになるし)

 

そして今回の話の中心になったフブキ隊員。かつて幼くしてその生涯を終えた妹がいたという過去が語られ、そんな妹の面影をイフェメラに重ねて様々な感情を覗かせる姿には今までにあまり見られなかった彼の一面が感じられて良かった。彼自身のそういった思い入れも強く掛かってるとはいえ、フブキ隊員が自ら怪獣を守るために身体を張ったり、その命が脅かされて慟哭したり、コスモスにイフェメラの卵を自分達が守ると誓い且つイフェメラの亡骸を託したりする様は凄く心揺さぶられました

しかし幼い頃・現在とフブキ隊員の前に姿を現した亡くなった筈のフブキ隊員の妹の描写、フブキ隊員の内面に大きく関わる要素だし非常に重要ではあるのだけど、かなりスピリチュアルさの際立つものなので今回の話の中だと良くも悪くもちょっと浮くよなとは感じる(物語的なところでのメッセージ性の関連付けはしっかりされてるのでそこは良かったけど、彼女の存在とイフェメラ自体はそれぞれあくまで切り離された要素でストーリー上での視点をちょっと一定させにくかったかなと)第5話で登場した蛍々村の存在を軽く絡めてくる細かい要素の回収もあってなかなか面白いポイントではあったし、これはこれで単体で取り上げくれたらもっと深みは出たかもなというのは個人的にちと惜しいポイントかも。とはいえ神社の絵馬や風車がカラカラと音を立てる心が安らぐような風情たっぷりの演出や、七日の短い命とよく言われるセミ(自然下では1ヶ月近く生きるそうだが)の自分の生を全うするかのような鳴き声が森に鳴り響く画を引きとする今回の話を象徴するかのような構図など、フブキ隊員の妹周りの描写はどれも味があってお気に入りです

 

 

以上、コスモス12話でした。限りある一生を懸命に生きることの美しさを象徴的に描き上げる描写の数々が心を打つ名エピソードでしたね。全体を取り巻く優しい空気感も味わい深い。この回を評価する声が多い理由を改めて実感できた気がします。

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた