AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

愛と希望と灼熱の夢

ウルトラマンコスモス

第16話「飛ぶクジラ」

感想レビュー

 

 

ジラークのCG、20年前のやつだから技術的にもそりゃしゃあないよとは思うんだけど、やっぱり何度見てもちょっと浮いてる(物理的な意味ではない)よな〜とは思う。w そこが独特な味になっているのだが 瞳のつぶらな感じや肌の青の質感が若干「お前を消す方法」のイルカを彷彿とさせるんだよなぁ()

 

クジラと共に泳ぐという夢を否定された悲しみをカオスヘッダーにつけ込まれ利用されてしまった少女・茜が生み出した空飛ぶクジラ・ジラークの巻き起こす騒動と、彼女の夢をふと否定してしまったことに苦悩する少年・浩太の奔走を描く今回の話。思春期の子供達が自身の思い描く「夢」に一喜一憂し成長してゆく様が軸となったある種のジュブナイル的テイストを含んだストーリーを、コスモス二度目の登板となる長谷川さんがキャラクターの細かな内面の動きと共に描き出す作劇が目を惹く回となりましたね。

子供が主役の回は第4話第7話など以前にもあったけれど、今回のストーリーは自身に夢がないことへのコンプレックスから感情的になり茜を八つ当たり気味に傷付けてしまう浩太や、それに心を痛め他人をシャットアウトしてしまう茜など、精神的に成長途上な少年少女の未熟さ・脆さ、そこからくる軋轢といった子供のちょっとリアルでデリケートな心情の描写が特徴的で、この辺は人間のマイナスな部分の表現を得意とする長谷川さんならでは、という感じ。

とはいえそこで終わらせず、浩太が自身の軽率な言動を悔いて茜を説得し引き戻すという浩太の精神的な成長を描く展開を物語の山場にしっかり組み込んでおり、上記の浩太と茜の軋轢が土台となった気持ちの良いオチがしっかり付いているのが良きところでした。具体的な方法や未来への展望を示し茜を説得する浩太の姿も、塞ぎ込む茜のことを想い自分なりに色々調べたんだろうな的な彼の心の奥底の優しさが感じられてグッとくるんですよねぇ。しっかりと未来を信じ進む意志と、夢を理解し支えてくれる者がいれば、夢はきっと叶うはずよね しかし、お前の夢を叶えるのが僕の夢だ!(意訳)って、実質告白なのでは...!?ヒュウ〜(最低

陰鬱な展開の後でキャラクターの成長・覚醒を劇的に描きカタルシスを生み出す、というこのスタイルも長谷川さんも得意とするところであり、これが1話の中で上手くハマったのがとても良かった。 長谷川さんの作風は、メイン構成として作品全体のバランスを意識して徹底されるか、単発のエピソードで作品のテーマや特定のキャラの掘り下げを軸としてビシッと端的に描き切るかすれば凄く効果的に決まるというのが個人的な印象なので、今回はまさにそれが綺麗に決まったなと

 

今回のカオスヘッダーは明確に人間の心・感情というものをターゲットとして狙う、という新たな動きを見せており、取り込んだ人間を人質に使って相手の攻撃を抑え込んだりとなかなかに悪辣(この辺は長谷川さんがカオスヘッダーをヤプール的な存在と解釈したことが表れてるとのこと)。序盤から順を追って進化していく様が描かれているのがカオスヘッダーの敵としての魅力的な部分だと改めて感じる。人間に目をつけた今回の行動は、何気にこの後に待ち構えるカオスヘッダーの新たな力の伏線的な感じで繋がっているのがまた面白いところよね

そんなカオスヘッダーが茜の心から生み出したジラークを怪獣として実体化させたカオスジラーク、いかにも悪魔という感じの邪悪なツラもさることながら、クジラの髭をカイゼル髭的なデザインとして解釈したであろう角・触覚の形状や、大きく盛り上がった青色の背面やクジラの腹のひだを意識した感じの前面のモールドなど、クジラモチーフを存分に活かしたデザインが見事でとても好きなんですよね。けっこうなマイナー怪獣なんだけど、後年の長谷川さん執筆のあるウルトラシリーズの小説に思わぬ再登場を果たしており、カオス怪獣の中だと何気に優遇されてる...のかも

 

そして今回の戦闘シーン。カオスジラークの放った攻撃に浩太が危険に晒されたところでコスモスが颯爽と現れるところから戦闘は始まるのですが、ここのコスモスの

半透明の姿で現れカオスジラークの攻撃から浩太を守る

顔を上げてコスモスの存在に気付いた浩太のウルトラマン...コスモス?」の言葉に、半透明の状態から徐々に実態を得ていきながらゆっくりと頷き応える

怒り襲いかかってくるカオスジラークに向き直って立ち向かい、その攻撃を華麗な動きで捌いていく

という一連の構図のバックに、今回初登場の挿入歌「Touch  the  fire」がBGMとして流れる演出があまりにカッコよくて、ここはコスモスの戦闘シーンの中でも個人的に五本の指に入るくらいのベストバウトなんですよねぇ。コスモスが浩太を守って現れた瞬間に合わせて

君の 果てない力に

愛と 希望と 灼熱の夢 賭けよう

その手に...

という静かな強さがこもった神々しい曲調の出だしの歌詞が流れ、カオスジラークが襲いかかってきてコスモスがそれに向き直って立ち向かい始めると同時にイントロの徐々に熱量が増していくメロディがガッチリとハマって戦闘のボルテージを上げていく、というここの挿入歌の入れ方が神がかり的に絶妙で、それでいて映像的にも、半透明のコスモスがカオスジラークの攻撃を防いで光を迸らせながら登場する演出、眼下の人間に対し優しく頷くウルトラマンの神秘性を存分に現したコスモスの動き、カオスジラークとの戦闘を足元の水面に映し出す構図、などじんわりと沁み入ってくる芸術的な美しさに満ちた絵作りが満載で、マジにここは全部ひっくるめて白眉なんですよ...今回の話は個人的にここのシーンだけで100億点あげていいくらいです カオスジラークの放つ攻撃を瞬間移動と高速の手捌きで砕いていく動き(THE FIRST CONTACTでも見せていたモーション)も印象的で、改めて見てもマジでカッコよかった

 

 

以上、コスモス16話でした。「夢」を少年少女の清濁併せた繊細な内面描写により描き出す浩太や茜のジュブナイルテイストのストーリーが印象深い面白い話でしたね。長谷川さんの作劇が上手くハマったなと

戦闘シーンの神がかり的な演出・絵作りも非常に好みで、総じて個人的にコスモスの中でも特にお気に入りのエピソードですね

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた