AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

ここにもいたね影丸さん

ウルトラマンコスモス

第25話「異星の少女(ひと)」

感想レビュー

 

 

平成ウルトラシリーズの名物アクター・影丸茂樹さんがカワヤ医師役でウルトラマンコスモスにもご出演。平成ウルトラシリーズにはだいたいいるよね影丸さん!もしやこれが並行同位体というやつですかね(違う

カワヤ医師、SRCの女性職員全員にフラれた伝説を持つどこか適当で軟派な男ながら、ここぞでは人を守るために勇ましく凄んだり身を挺して動いたりと本質的には“漢”なのが感じられるというコミカルさとカッコ良さが良い感じに織り混ざったキャラクターバランスが絶妙で、現段階ではゲストキャラ的な感じながらもストーリー中で良き存在感を発揮していましたね。専門的な知識を要する話でスラスラと言葉が出てくるところとか、宇宙人だろうと自分に敵意を向けた相手だろうと医師らしく傷付いた相手・自分の担当する患者にしっかりと向き合い救おうとするところとかに1人の人間としてのカッコ良さが濃く滲み出てて、普段のだらしなさとのギャップもあってとても好きなキャラです。女性に総当たりで軟派して砕け散ってるとことかだらしないムサシに理不尽に突っかかるところはダメな男感全開で笑うけど。w プロポーズ撃沈したのを聞いた部下達がこっそり笑ってるとことか、部下にも周知されて面白がられるくらい派手に散ってきたんだろうなぁ...と察せられて好きなとこw 目上目下はありつつ部下達がこういう態度を遠慮なく取ってる辺り、良い意味で割と緩い付き合いしてるんだろうなとかいうのも感じられて、この1話の中で他の人物達との関係性まで含めて細かくキャラが描かれてるので巧いのよなカワヤ医師

平成ウルトラシリーズにおける影丸さんのキャラは基本カッコいい一面の際立つキャラであることが多いので軽薄さの方が際立つカワヤ医師のキャラはけっこう珍しいんだけど、ちょっとボサボサ感のある髪や無精髭、着崩した白衣に絶妙に野暮ったさを感じる眼鏡といった上手い具合にだらしなさを醸したコーディネートと影丸さんの時々ちょっとへらへらした感じが入れ込まれる演技が合わさってシンジョウ隊員とかとは全然違う趣になってるのが巧いよなぁと 芸達者よな影丸さん

 

突如飛来した謎の宇宙船とそこから脱出してきた宇宙人・スレイユ星人ラミアの存在を発端として巻き起こる戦いを描く今回のストーリー。自分達の脅威となり得る文明の殲滅を目的とするスレイユ星人の存在や、その標的となった地球の人間達が垣間見せる様々な姿を軸とし、「知的生命体と闘争」「他者に歩み寄り分かり合おうとする心・愛」という要素をテーマに据えて描いていた話だったなというのが個人的な印象かなと

 

前半パートは宇宙船の飛来、そして自分達の領域を侵されたとはいえ敵意があるとも知れない宇宙船に初手で攻撃を加える防衛軍の戦闘機という穏やかではない下りから始まり、宇宙船とラミアの行方を追って防衛軍の部隊が雑踏の中を練り歩く様や道路のど真ん中を戦車部隊が闊歩する様など、都心の何の気ない日常の中に殺気が漂う光景を描き出す緊張感ある画からスタート。高層ビルや歩道橋が立ち並ぶ東京都心のリアルな風景が部隊となっているだけに殺る気満々で行進する戦車とかの異質感が際立ち、後半パートにて取り沙汰される「人間の野蛮な本能」といった部分を直接言及することなく視聴者にじんわりと印象付けてくる絵作りが巧かったところでした。優しさ際立つコスモスの世界観の中にいる故に、凶暴で怖めな印象がウルトラシリーズタカ派ポジションの存在の中でも一際際立つ防衛軍ですが、今回はその印象を話のテーマに絡め上手く引き立ててきた感がありますね

そんな今回の防衛軍の描写の中でも特に戦車部隊ベンガルズの戦車の行進シーンは戦車の合成がとても丁寧で真に迫るリアリティがより濃く出ていたなと感じられ、恐らくミニチュアのラジコン戦車か何かを使って演出している(違ってたらゴメン)であろう高架下から無数の戦車がぞろぞろ出てくるとこなんかは合成や戦車の造形が特にハイレベルで、道路を跨いだ横の道を歩く通行人や防衛軍部隊の人々が自然に馴染んでいるのもあって、知らない人が見れば本当に街中を無数の戦車が行進してる映像と見間違いそうだなと唸りましたね。前にベンガルズが登場した第14話の時と同じく、戦車の行進の振動で近くの自転車が倒れるところが描かれるのも細かい。この自転車の描写は恐らく「チームハーキュリーズが戦車マシン・スティンガーで降り立つたび自転車が倒れる」という前作ガイアでの演出のオマージュ(スティンガー出る回はだいたい原田監督が担当されてたし)。ガイアでは自転車をスティンガーに倒されることに不満を持つ人々が決起して「スティンガー被害者の会」なるものが結成されてるという小ネタがあったけど、コスモス世界でもベンガルズに物申す会」とかあったりするんだろうか()

前話のグラガスとの戦闘時の街のミニチュアも見事なクオリティだったし、こういう魅せに凝っておられていた原田監督流石だなぁと

てか今回、戦車部隊ベンガルズ石井さん率いる部隊レニの引き渡しの際ムサシと一悶着あった医療基地の人達(だったはず 違ってたら教えてね)第13、14話のワロガの回に登場した色んなキャラや要素が再登場・再活用されていたのが面白かったね(ワロガの回も原田監督だったしその繋がりだろうか)。医療基地の人達がムサシを半分出禁人間扱いしてるの、まぁあの時のムサシ致し方ないとこもあったとはいえけっこうなことしたしそらそういう認識されるよな...という感じで以前のエピソードとの細かな接続が感じられる地味に好きな描写。

 

そんな中でラミアに覚醒に続き姿を隠していた宇宙船も破壊ロボット・グインジェとして降臨。グインジェはある程度人型のフォルムはしているながらも防衛軍の攻撃を物ともせず機械的な動きで自走し破壊を行う人間味が感じられない移動砲台的な趣がまさに破壊ロボットといった感じでカッコ良く、近年のキングジョーよろしく高速で分離しEYESとコスモスを同時に圧倒する様など強敵としても抜群の存在感でした。宇宙船からの変形プロセスを描くCGもガシガシ動いて見応えがありましたな

そんなグインジェを起動するのがラミアではなく、意図しない形だったとはいえ人間自身だったというのも今回の話のテーマに沿ったなかなかに皮肉の効いた展開で良き。引き金を引くのは、人間の隠された闘争を本質とする本能...


と、人間の愚かしさを見せつけるかのようなスレイユ星人/グインジェ周りの描写だけど、そもそものグインジェも元を辿れば「元々武力を持たなかったスレイユ星人が異星からの侵略を受けたのをきっかけに、自分達の脅威になり得る文明を先んじて発見し潰すために生み出したロボット」であることを踏まえると、劇中で直接言及されてこそいないけどスレイユ星人も(相応の事情こそあったとはいえ)闘争へと向かわんとする眠れる本能を目覚めさせてしまった種族と言えるわけで、人間のこと偉そうに言えたクチではないよなぁ...と。体組織や代謝などに機構を指して「人間と同じ進化の歴史を辿ってきた種族」と言われていたスレイユ星人だったけど、そういう愚かしさを秘めていたところも同じだったというのはまた痛烈な皮肉が効いてるよなぁ

 

しかしそんなグインジェの侵攻を、身を挺して何かを守ろうとするカワヤ医師やコスモス/ムサシの姿に心を動かされ、人間が必ずしも好戦的ではないと信じたラミアが止めるという「慈愛の心が闘争を断つ」構図となったのがとてもグッときましたね。ラミアを庇おうとしたカワヤ医師を痛めつけ、意図せずとはいえグインジェを起動してしまった愚かしい若者達にも、仲間を気遣って助けようとしたり自分を助けてくれたカワヤ医師に素直に感謝しラミアに対する自分達の非礼を顧みて恥じたりできる良心があったように、闘争や愚かしさこそが人間の本質かもしれないけれどそれを見つめ直し悔い改めることで誰かに歩み寄れる心を持ってるのもまた人間なわけで、痛い目に合わせる他ないどうしようも無い悪人も山ほどいるけど、そんな中でも優しさを失わず裏切られることを恐れず他者を信じ歩み寄ろうとする「心や愛」こそが大事なのだと訴えかけるような温かさのある展開だったなぁ...と

前述したようにスレイユ星人も闘争へ向かう本能に導かれるように他種族を殲滅し始めた存在であるけれど、争いは好まないと語り、人間の愚かしい部分を目にしつつもどこかグインジェの起動を躊躇うかのような様を見せていたラミアがカワヤ医師達に動かされ、グインジェを停止させ自分達の種族の想いを変えるために帰っていったことからも、スレイユ星人にも心や愛で持ってまた変われる余地があると示したのもまた良い締め括りだったなぁと思います。自分達の愚かしさを恥じることのできた若者達がラミアから奪ったグインジェのコントローラーをカワヤ医師を通じて返したことがラミアを変える流れに繋がった、というのは象徴的で良い構図よね

 

ラストはカワヤ医師がムサシと語らい綺麗に締める...と思いきや、SRC女性職員一同から詰め寄られるところで締め。決めきらねぇなぁこの人() ちゃんと女性キャストの方の数を揃えることで「SRC全女性職員からフラれた男」というカワヤ医師の肩書きをグッと印象付けてきてるのが地味に良い仕事で好きであるw

ここでシノブリーダーとの関係性がちょろっと描かれましたが、ここが深まっていくのはまた次の機会...

 

以上、コスモス25話でした。闘争を本質とする知的生命体の本能、そしてそれを乗り越える心と愛、という部分を軸にして象徴的な描写を細かく挟んでストーリーを展開していき、人間とスレイユ星人の両種族の間に一筋光明が刺す様を劇的に引き立てたドラマ面が目を惹く名エピソードでした。影丸さん演じるカワヤ医師という濃いキャラの立ち回り、ベンガルズの描写を筆頭とした特撮部分のクオリティ、過去のエピソードに登場した要素も絡めた世界観に奥行きを出す演出など細かな部分も面白く、満遍なく色んなところが楽しめたなと 原田監督の絵作りがフルに活かされてて非常に良かったです

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた