AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

傲慢の果て

ウルトラマンコスモス

第43話「操り怪獣」

感想レビュー

 

 

フブキ隊員とカスミの関係まだちゃんと続いてるっぽいのが示唆されるの良いよね 勿論シンプルに一緒にいて楽しいから続いてるのはあるだろうけど、「恋人なら俺がなってやる」って言ってあげたのを反故にせずちゃんと全うしようとしてるフブキ隊員の義理堅さみたいなのも窺えて好き

 

半機械化による強化と遠隔操縦化を施された怪獣・メカレーター怪獣の突如としての出現を巡りその裏に隠れた陰謀にムサシ達が挑んでいく今回のストーリー。奇怪な機械を装着した異容を不気味に振り撒き進む中、突然動きを止め泡を吹いて息絶える冒頭のテールダス・メカレーターの姿は非常に痛々しく、導入として衝撃的でした 苦しみ悶えるような動きから突然糸がぷつんと切れたように事切れるの怖すぎる...

メカレーター怪獣の検死・分析担当としてカワヤ医師が今回もしれっと登場していたけど、彼ここ最近の登場頻度の高さもあってマジでレギュラークラスの存在感あるよね...w アヤノ共々オペレーターとして駆り出されたりと、医師の職務の範囲越えた活躍させられすぎてる気がする()

 

今回の敵、メカレーター怪獣騒動の首謀者は、自星の怪獣を資源としてメカレーター化し酷使した結果絶滅させてしまい、新たな怪獣資源を求めて地球へとやって来たというノワール星人。このキャラクター造形は「怪獣達他の生命も等しく地球の一部」と主張するムサシとの対比となる存在であるけれど、その本質を突き詰めると、かつて食用としての乱獲などの過度な資源利用や無計画な開発計画等による環境の破壊によって地球上の生物を数多く絶滅させた一昔前の人間のメタファーという意味合いを持ってもいるのが非常に痛烈だなと。ステラーカイギュウやドードーニホンカワウソはまさに食用や毛皮目的での人間の乱獲が理由で絶滅してしまったわけだしな...「地球人は何故怪獣を資源として活用しない?」というノワール星人の発言はかつての人間の感覚を皮肉るものであり、その過ちを経て他の生命と共にこの地球で正しく在ろうと努力している今の人間達(この場合はムサシがそのメタファーになるわけですな)が反面教師としてしっかり向き合わねばならない恥ずべき意識だと思います(実際脚本を担当された川上さん的にも「対話可能だが反面教師的な存在とすることで怪獣保護のあり方を描こうとしてた」らしい)

 

そんなノワール星人ですが、かつて出現したインキュラスやラグストーンを操っていた存在であり、 それによって人間の記憶や欲望についても探っていたことが明らかとなりました。人間の感情を司る要素に干渉する能力を持ち、その正体や裏に存在する黒幕の実態が明らかにならず終いだった怪獣、という繋がりのあった両者だったけど、ここで繋がってくるとは思わなかったなぁ もっと言うと各登場回の脚本担当がいずれも川上英幸さんであり、インキュラスのスーツが後々ラグストーンに改造されたというメタ的な繋がりもあり。スーツ流用の関係性まで繋げてくるのはなかなか面白いところですね(ていうかインキュラス→ラグストーンの改造の変遷は見た目のイメージ全然違うから驚きますよねぇ)

でもSFミステリー的なところで言うと、彼らの明確な正体については描かず、背後の黒幕についてもノワール星人とは関連付けずに謎とした方がミステリアスな面白さが出てまた違った楽しさがあったかもなぁ、とは個人的にちょっと思うところ。敢えて明示しない、視聴者の想像に委ねる設定描写というものもやはり乙なものですのでね 勿論、色々な部分が関連付けられ詳細が明示された実際の本編での設定描写も伏線回収的な面白さがあって好きですけどもね!川上さんとしては、インキュラスを描いた時点で黒幕の存在を明かす想定はしていたものの、ノワール星人とは別のものと考えていたとのことなので、色々監督陣とかとの擦り合わせで決まっていった設定なのかもね

 

てかノワール星人、割とファンタジー臭ある描写を入れてくる場面が多く見られたのが特徴で、ムサシの脳内を通じ秘密裏に接触してくるというとこに関してはインキュラスの夢への干渉能力の応用というところが暗示されたのでまぁ分かるんだけども、固有結果的な感じで昭和の街を再現してきたことに関してはマジで謎なんだよな...w 昭和の遊びに興じる実態とも虚像とも知れない子供達とか、そこに紙芝居のおじさんに扮して現れムサシを欺いたこととか、そもそも昭和要素への造詣が濃いこととか、一体なんなの() 地球人の記憶を見て知ったことなんだろうけど、一体何故にそこ、というのは考えるほど疑問として湧いてくるw

 

後半は最後の抵抗でノワール星人が目覚めさせたネルドラント・メカレーターとの対峙が描かれ、夕焼けに染まる工業地帯でのコスモスとネルドラント・メカレーターの対決の構図が美しく映えておりました。

ウルトラシリーズにおける、夕焼けの昭和情緒を残した工業地帯での対決というと、構図的にはやはり言わずと知れたウルトラセブンvsメトロン星人の画をシンプルに想起するところですが、それに負けず劣らずな夕映えの光の綺麗さなどがとても目を惹く絵作りとなっていて非常に良かったなと。夕日の光がマジで綺麗なのよ

その美しい夕日の真っ赤な光を纏い、コスモスがルナモードからコロナモードへ、更にエクリプスモードへと変身する一連のプロセスを川の水面に映し出しながら描く演出はとてもオサレで今回の話の中でも特にお気に入りのカット。戦闘時のおけるコスモスと夕焼けという組み合わせは今までなかったので、モードチェンジ時に生じる光の軌跡が夕焼けの赤い背景の中で鮮やかに輝くという新鮮な演出が見られたのが実に良かった。

 

最後はエクリプスモードの活躍によりネルドラントに埋め込まれた機械は除去され、ネルドラントも救われた...かに見えたものの、間もなくしてメカレーター化の影響による負荷に耐え切れなかったネルドラントが息絶えてしまうという、衝撃的な結末になることに。助かったと思ったところから落としてくるこの容赦ない展開は後味悪くてショック受けたなぁ...司令室で泣き崩れるアヤノが痛々しい 当時の児童誌でもこれはたしか描かれていた覚えがあるけど、子供の頃の自分はここで出てくるテールダスやネルドラントが前に出てきたやつだと思っていて、あの時助けた怪獣達が死んでしまったと思い込んだことによるショックも重ねて受けてしまったんですよね 勘違いではあったけど本編見て気付くまで浅からぬダメージだった気がする

ヒウラキャップがこれに関して「コスモスも神ではない」と言っていたけど、これに関してはまさにその通りよなぁ 今まで色んな奇跡を起こしてきたエクリプスモードを持ってしても無理だったことがその事実を余計に突きつけてくるし...どんなに頑張っても詰まるところは救える命もあれば取りこぼしてしまう命もどうしても出てしまうという、怪獣(生物)保護の現実をぶつけてくる展開だった

 

ラストは辛すぎる結末に歯噛みし、怪獣も地球の一部なんだと強く叫ぶムサシの姿で締め。心が折れたりしている様子でなかったのはムサシの心の成長が窺えるところだけど、見ているこっちもやるせなくなる苦いオチとなりました

 

 

以上、コスモス43話でした。かつての人間の負の側面を体現したとも言える敵・ノワール星人との対峙と通して、怪獣保護のあり方、引いては地球に生きる生命との人間の向き合い方を問う回でした。自分達さえ良ければ良いという思考を押し通した先に待つのは、どう足掻いても他の生命が息絶え破滅する未来だということを暗示するかのような後味の悪いエンドも目を惹く問題作だったなと。

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた