AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

空より来たるは何ぞ

ウルトラマンコスモス

第47話「空の魔女」

感想レビュー

 

 

「あれ?フブキ隊員、首に赤い痕が...ドウシタンデスカ?(小声)...これって、もしかして...もしかして〜!?」

子供向け特撮ヒーロー作品でやるにはだいぶ際どいネタな気がするんだけど良いんだろうかこれw 今回の話自体がちょっとアダルティな雰囲気あったけどもさ

 

謎の侵略者ギリバネスの侵攻、そして訓練生時代に自分を救って行方知れずになってしまった同僚ミサキ・アイが再び姿を現したことで心乱れ始めるフブキ隊員に姿を中心に展開される今回のストーリー。某所で少し言われていたけど、妹が幼少期に亡くなってしまうし、防衛軍入ってから一緒に切磋琢磨してて微かな恋慕とかも感じてたっぽい同僚も自分を庇って生死不明になってしまうって、フブキ隊員けっこう身内知人周りでの不幸が多いよなぁ...もう1人の主人公と言って良いポジションのキャラだしキャラに深みを出す上で沢山ドラマが組まれている証でもあるが、脚本家陣がみんなしてそんなボコさんでも(言い方) そう思うとカスミと良い感じになったのは良かったよなぁ...てかそういう悲しい離別を多く経験してる故にカスミの命の危機に対し物凄く必死になってたのかもな、と物語全体を俯瞰して関連付けられたりもするね

 

今回の物語は、アイの姿を取って接近してくるギリバネスの片割れ・バネスの策謀により心を乱され、空に消えいってしまったアイの面影を追ってしまいながらも、最後にはアイが安らぎを求めて飛んだ空を守るべく、未練を振り切りバネスを討つフブキ隊員の姿を描くアダルティな雰囲気濃いめの人間ドラマが展開されるといった感じのあらすじになっており、心のどこかではアイのことについて分かっている雰囲気を窺わせながらも、アイが生死不明になったことに対する自責の念や彼女に抱いていた恋慕故か、バネスの擬態したアイを最後の最後まで切り捨てきれなかったフブキ隊員の葛藤の様子はドラマ面を強く引き立てていて実に味わい深かったです。物悲しいピアノバラードのBGMや、風情ある美しい海の風景を臨む湾岸のロケーションなど、ロケーション等の一つ一つを取っても絵作りが絶妙で、これがストーリー全体の雰囲気の良い統一感を出していたなと。

 

ただ、このフブキ隊員とアイの関係を主軸にしたストーリーライン自体はしっかり構成されていて面白かった一方で、今回の敵となるギリバネスの要素との絡め方に関しては少々不満が残ったのが正直なところ。侵略の尖兵として送り込まれてきたギリバネス(バネス)がSRCのデータを盗み出すためにフブキ隊員のアイにまつわる心の傷を狙ってきた、というところ自体は特におかしくはないんだけど、リバネスの仲間である2000の宇宙船団がクライマックスになって急に攻めてきて、かと思えばギリバネスの敗北を受けて急に姿を消す、というこの一連の下りがフブキ隊員関連のドラマと直結しない唐突感の濃い演出になっていたところは否めず、もう少しここの流れはどうにかならんかったかなと。宇宙船団消失のほんとにすぐ後にEDに入ってしまうので余計巻いた感が出てしまってたし

この辺のギリバネスについての諸々は(後述のギリとバネスの関係も含め)今回の話の中では結局詳しく語られることはなく、後のギリバネス関連の単発エピソードで答え合わせ的に語られる構成となっているので、その辺の構成を前提にして描いた作劇とも言えるけど、それを踏まえても単発のエピソード中における描写としては中途半端にぼかす感じになってスッキリはしなかった(インキュラスやラグストーンの話みたく謎を謎として残し想像を掻き立てる面白さとする的な意図の描写だったと捉えても、フブキ隊員のドラマとの関連性が低かった故にストーリー的な面白さには直結しなかったように感じたし)ので、宇宙船団の要素等を廃してギリバネスを今回の話における単発の敵キャラとして位置付けて描いた方がまとまりも良くなったんじゃないかなぁと思ったり。ギギの話みたいに、前の話の要素を改めて取り上げ繋げることで話に幅を出し横軸を大きく広げられたのはコスモスの長編故の大きなメリットだったけど、今回はその長所を活かしきれなかった印象

 

とはいえ、ギリバネスのキャラとしての造形自体は凝ってる部分も多く、その点はけっこう好きですね。人型の生物ギリと羽根型の生物バネスが互いの利を与え合うことで共生関係を築いているという設定は、ウルトラ怪獣の生態・設定・デザインの奥深さに凝る身としてはとても面白くてなかなかにたまらんのですよねぇ。バネスが撃破され1人取り残されてしまったギリが、悶えるような動きを見せたかと思うと、バネスの後を追うかのように自爆する、という描写も、共生関係以上の情愛など色々な想像を掻き立てるものがあって良き この自爆の描写もどういう意図だったか本編中で明言はされないので、なんとなく察することはできるとはいえちょっと分かりづらい塩梅になってたのは惜しいところ。「共生相手がいなくなってしまい帰る場所もなくなったギリにコスモスが追い討ちをかけ倒すのは違う」ということで自爆という演出を取った原田監督の采配はなかなか味わい深いし、ドラマ的にもギリの姿はアイの死に心乱れるフブキ隊員とある種類比できる部分があるように思えてそういう意味でも割と描いた意義は大きかったと思うので、ドラマ的な描写としてもう一工夫欲しかったかも

またシャープさやスマートさが光るギリの洗練された人型スタイルや、ステルス機を彷彿とさせる特異なビジュアルが目を惹くバネスのフォルムなど、ギリバネスのデザインの芸術点の高さは非常にお気に入り。無駄を極力削ぎ落とした人型のフォルム、黒主体にカッパーの差し色というカラーリング、口元にやや笑みを讃えてるように見える顔、といったギリのデザインなんかは改めてじっくり見てみると、ウルトラマンのデザインとの類比・対比を良い感じに混ぜた趣があるなぁと感じられてまた面白いし(ちょっとアブソリューティアンぽさあるように感じるなとも)

 

それ以外にも、今回のロケーションが「横浜」という明確な土地を舞台にしたものだったのも雰囲気作りとして良かったなと感じました。4つ切りにした球みたいな造形が特徴的なインターコンチネンタルホテルをはじめとした見覚えある景観を空撮により映し合成で風景に織り込んできた前半のギリバネスの飛行シーンやコスモスとの戦闘シーンなんかは、実在の場所が舞台になってる分臨場感が増していたし、この手法は実に効果的だったなと。

後半ラストでも夕焼けの湾岸で黄昏れるフブキ隊員を中心にした画が実に味わい深かったし、やはり今回は絵作りの拘りはとても良かったですね

 

 

以上、コスモス第47話でした。フブキ隊員をメインに据えその心情をじっくり描き出すアダルティなテイストが特徴的な面白い回となっていました。ギリバネスの要素とドラマとの噛み合わせが少々悪かった点は惜しいものの、劇伴やロケーションなどの雰囲気作りがけっこう凝っていてそこは実に良かったです

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた