AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

君に会いたくて

ウルトラマンコスモス

第54話「人間転送機」

感想レビュー

 

 

サブタイだけだと完全にレイビーク星人的な人間誘拐目的の宇宙人と戦うエピソードに思えるよねこれ 間違ってないけどそこメインってほどではないんよ(

 

心優しき怪獣タブリスと、その昔タブリスに救われ友情を育むも悲しき決別をしてしまった女性・佳奈の切なく優しい関係を描く今回のストーリー。怪獣は倒すものという考えが当然だったかつてのコスモス世界において、怪獣を保護するという思想・選択肢を生み出した先駆け的な存在ということで、何気にコスモスという作品においてめちゃくちゃに重要なポジションよなタブリス ドラマ面ではタブリスと佳奈の関係が主軸になったからそこら辺の設定自体が話に殆ど絡んでこなかったのが正直ちょっと勿体無く感じるくらい(そこ主軸にしても一本話作れるくらいには濃いと思う)

 

タブリス、全体的にくたくたのマスコットみたいな趣があり、顔立ちも地球上のかわいめの動物の特徴合わせたみたいな感じしてるので、ビジュアル的にけっこう可愛げがあって良いよね。表情に喜怒哀楽が凄く分かりやすく出る人間っぽさもあってなんか親しみが湧くのがとても好き 後々フログロスに改造されたそうだけど、フログロスがスペースビースト比だと割と不気味さ抑えめで可愛げのあるデザインしてることを思うと、改造元の趣がなかなか濃く反映されてるなと

今回のこのタブリスの描写において、コスモス達にとってはタブリスの生み出した分身はあくまで本体が遠隔で生み出した分身でしかないので触れることはできないものの、佳奈とまた触れ合いたいという本体の強い想い思念故に分身の方からは周囲の物体に物理的に干渉できる、という設定を設けたのはなかなか凝ってて個人的に好きだったポイント。この手の「こっち側からは干渉できないけど向こうからは攻撃できるタイプ」の実体の無い敵ってそこら辺の理屈をある程度有耶無耶にすることがたまーにあるので、内と外のそれぞれの認識の差異というところを上手い感じにそれっぽい理屈として落とし込んできたのが如何にも怪獣SF感あって好きなのだ

 

最初こそ自分を助けてくれたタブリスと純粋に仲良くしていたものの、その様子を見世物として執拗に祭り上げるマスコミへの息苦しさやその様子が報道され続けたことによる弊害で同年代の友人をなかなか作れなかった寂しさからタブリスに別れを告げてしまった佳奈と、そんな佳奈の気持ちを受け止めつつも、彼女が最後方便として咄嗟に言い残した約束を健気に待ち続けたタブリス、そんな双方の心情を細かに描き出す流れは沁みるものがありましたね...当人達の想いに関心を寄せず、絵面の劇的さだけを貪ろうと節操なく擦ってくるマスコミの感動ポ◯ノの愚かしさみたいなものを感じる話でもありましたなぁ 私情を挟まずあくまで仕事としてやるという意味では理解できるけど、利益ばかりを追求して人の心に寄り添えなくなったら本末転倒の外道の行いよ

 

タブリスの想いに寄り添わず自分の寂しさばかり考えていた、と佳奈が自身を省みてタブリスに今一度向き合ったことが今回の事件の解決の糸口となったけど、佳奈も昔咄嗟に言い放った約束のことを覚えていてそれをタブリスが待っていたことを知って気まずそうにしたりタブリスに会いに行けばまた何度も会いに行かないといけなくなってしまい、そうなることが重荷になってしまう」と、タブリスが間接的な要因になってしまったかつての息苦しさや孤独感へのトラウマ故にタブリスと会うのを恐れてしまったり一先ずの対策として転送機で自分の分身をタブリスに見せることを「タブリスを騙すことになる」と拒んだり、とタブリスとの友情や思い出を大切にしているが故の葛藤や躊躇い、タブリスへの気遣いを所々で窺わせていたのがまたなんとも言えない切なさがありましたね タブリスを邪険にしていたわけではなく、寧ろずっとその繋がりを心の中で大事にしていたからこそ、会おうとしなかったりしたと思うと責められないよなぁ...それこそ周りの身勝手な大人や、精神的な未熟さ故に佳奈を遠ざけてしまった同年代の子供達など、環境が両者を半ば不服な形で引き裂いてしまったって感じだものな...

そしてそんな佳奈の想いを受け止めて、責めることもなく再会を喜ぶタブリスの優しさがまた沁みましたなぁ。涙を流すほど別れの辛かった佳奈との約束を守って10年近く寂しい想いを我慢し耐え続け、約束の時になったら分身を送ってまで必死に探し回り、EYESの作戦で佳奈の偽物が現れた時にはすぐに本物じゃないと気付いて怒り暴れ出し、と佳奈への想いから感情を強く露わにするところを多く見せながらも、佳奈が勇気を持ってまた自分が会いに来てくれたことには心の底から嬉しそうにしてひたすらにそれを喜ぶ様は純粋な子供のようで、タブリスの人間味溢れるキャラの描き出し方が本当に良かった。ただただ相手の気持ちを思って待ち侘びた健気さよ...
ともあれこの両者が最後にはしっかりまた仲の良い1人と1匹として向き合い、また何度でも会えるという形で締めたのがとても心温まったね。良かった

 

 

以上、コスモス第54話でした。怪獣タブリスと佳奈の、色んな想いを抱きながらの種族を越えた友情が胸打つドラマがとても味わい深いエピソードとなっていました。タブリスのキャラ性や佳奈の様々な葛藤を含んだ心情の描写が緻密で、コスモスらしい優しく心温まるテイストの良いドラマ性が滲み出た話でした

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた