AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

覚悟と希望

ウルトラマンコスモス

第61話「禁断の兵器」

感想レビュー

 

 

西条くん、とんでもない兵器のとんでもない威力を目にしてハイになる姿がどう見ても戦力保有する組織にいちゃいけない人のそれだと思うんだけど、なんで防衛軍の上の役職にいられてるんだろう...(素朴) 他作品のタカ派の人達と比べても1、2本くらい正気のネジ飛んどるやであのテンションの上がり方() 戦力アップという面ではめちゃくちゃアグレッシブで成果出してそうではあるしそういうとこでなのかな...

激化するカオスヘッダーの脅威、思うように進まないカオスキメラ開発、その切迫した状況の中防衛軍が地球防衛の要となる対カオスヘッダー兵器として繰り出したのは、かつてコスモスやEYESを苦しめたベリル星人の侵略ロボット・ヘルズキングだった...というところから始まる今回の話。

防衛軍が破壊されたヘルズキングを密かに回収・修理して誕生したヘルズキング改が今回の肝となっており、かつてコスモスも真っ向勝負では苦戦を強いられたその頑強さと戦闘能力の高さを改めて見せつけてくる様はなかなかに存在感が大きくて良かったなと。青みの紫から赤みの紫へとカラーリングが変わり、頭部のデザインも目立つトサカが付く形になった(コスモスのコロナモードっぽいのは“人類の希望”というところで若干デザイン性を意識した面もあったんだろうか)という感じで大まかにはあまり変化してはいないんだけど、それでも比べてみると意外と印象は変わるもんだなと感じますね

なんで色々ある中からヘルズキング?というのを当時からちょっと思ったりはしてたのですが、コスモスに登場したロボ怪獣の中だと戦力的に申し分なくて粉砕されたロボってのはヘルズキングくらいなんだと後々コスモス怪獣の一覧見て気付きました(イゴマスは少年達の預かりになったし、グインジェは倒されずに帰ってったし) サイドバクターは?サイドバクターじゃだめか?変形カッコいいし無骨で迫力もあるぞ!?

 

そんなヘルズキング改を繰り出すことにEYESの面々、特にムサシが強く反発する中、佐原司令官が言い放った

「我々には責任がある。我々の肩には何十億の地球人の未来がかかっているんだ。例えこの手を汚しても背負い続けなければならんのだ。それが我々防衛軍の責務であり覚悟だ...

これまで我々人類はコスモスに頼りすぎてきた。彼の負担を少しでも軽くする事が出来るのなら私は……喜んで悪魔と手を組もう。想いは君達EYESと同じではないかね?」

という言葉は、コスモス終盤の展開の魅力を象徴する言葉の一つに挙げられると言って良いでしょう。

EYESと度々半目し合っている防衛軍も地球とそこに生きる人々の平和を守るために戦う強い意志を持った勇士であるということを改めて印象付けると共に、その上に立つ者としての責任を人一倍に背負い、また前回のエピソードでヒウラキャップが見せた「コスモス1人にばかり戦わせることのないよう自分達の力で地球を守る」という想いを確かに秘めている佐原司令官の信念を濃く描き出してるのが良いんですよね。ヘルズキング改の使用を西条に促された時に思い悩むような表情と間を一度挟んでいたり、ヒウラキャップにヘルズキング改の計画推進について問われた時何も言い返せなかったりと、恐るべき悪魔の力を手にすることに思うところはありつつも、本当に守るべきもののために覚悟を決めその責任を背負おうとしている様がまた渋いのよね(ヒウラキャップが自分の身体を深く傷付けさせながらも必死に前線で戦う一方、佐原司令官は心を痛め苦しみながらも力を手にする決断をしてるという構図もまた印象深いポイントと言えよう)

防衛軍の中でも比較的話が分かるし思慮深い方の人だという印象は今までの描写からしても感じられていたけど、ここで守る者としての重責を自覚している精神性や、コスモスのことを共に戦う仲間として受け入れ気遣っていたことが見て取れたことで、いっそう佐原司令官のキャラ性は深まったよなと

 

その佐原司令官の覚悟に一度はたじろぎつつも、「汚した手で、自分の首を絞めることになりませんか...?」と進言し、カオスヘッダーの脅威に更に大きな力を手にし相対しようとすることへ「力以外の方法でなんとかできないのか」と疑問を持ち始めるムサシもまた印象的でした。この辺のテーマは次の話以降からググッと奥行きを増していくので現段階では軽く触れる形に留めますが、カオスヘッダーとの激化する戦いに対し各々が決意を固め戦いへの覚悟を決めていくこの最終盤の展開の中で、主人公が1人それらとは違った観点へ至っていく流れはとても思い切っているよなと(前回ムサシもコスモスに対し戦う決意を改めて示していただけに)。

これまでムサシが怪獣保護の活動を中心として貫いてきていた「争うこと/倒すこと以外の方法の模索」という信念が大いなる敵との最終決戦間近という状況でも発揮される形にもなったこの展開、最終盤の流れにおいて重要になってくることはコスモスを観た方々は承知のことだと思われますが、 こうして改めて見てみるとムサシがそこに至るまでのきっかけや想いを深めていく動機といった過程をしっかり積み上げていこうとしているのが窺え、自分としても今一度注目して観ていきたいポイントですね。やはりコスモスはこの辺のテーマ性の描き方の丁寧さがミソだなと

 

後半ではベリル星人が取り入れていたセキュリティシステムが起動したことでヘルズキング改が防衛軍の制御を外れ暴走を開始。本人達の出てないところで知らない間に上がるベリル星人の格 やはりウルトラシリーズでは「異星人のテクノロジーを使った結果手に余る」という展開はほぼほぼ定番なんやなぁ...後年のキングジョーSCが特例すぎる

そんなヘルズキング改をコスモスとEYESが止める流れとなり、人類の希望になり得るからこそ破壊することなく止めて欲しいという防衛軍側の声を受けながらも、「破壊兵器と化し暴れるヘルズキング改はもう人類の希望ではない」と腹を括ったヒウラキャップの一声に背中を押され、コスモスとEYESの連携でヘルズキング改は打ち砕かれることとなりました。前回に引き続き、ヒウラキャップの勇姿が光っていてカッコよかったわね 変身する直前のムサシが佐原司令官の覚悟の言葉を思い出しヘルズキング改と戦うことを一瞬躊躇う姿が描かれたところも含め、この辺は登場人物達の「人類の希望になり得る存在に立ち向かい、打ち倒す決意」が問われる緊迫した展開として今回のエピソードの見所の一つになっており、大き過ぎる力を抱えるよりも、自分達が強くなって今守るべきものを守ることを選ぶ勇気を見せ戦うムサシ達の姿がグッときたなと

 

かくしてヘルズキング改は破壊されたものの、内蔵されていたソアッグ反応炉の波長がカオスキメラの増殖を促すことが判明、カオスキメラの研究が進み新たな光明が見えたところで締めとなりました。ヘルズキング改の存在が結果的に良い方向に繋がったことで、防衛軍の意志も無駄にならなかったのは良かった...
けれど皆が喜びを見せる中、更にカオスヘッダーに対抗するべく更に強化されていく人類の戦力に、1人浮かない表情を見せるムサシの表情が寄りで描かれたのが印象深かったところ。単純に希望ある明るいオチにせず、「強力な敵に対し更に強力な力を得ていく」という構図への問題提起を、劇中でヘルズキング改の存在に疑問を抱いていたムサシを通じさり気なく投げかける演出が良いアクセントでした。「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」に通ずる話よな カオスヘッダーと人類の戦いの行方や如何に...

 

以上、コスモス第61話でした。防衛軍の決意と、人類の希望になり得る大きな力と戦う覚悟など、最終盤のカオスヘッダーとの戦いに激化に絡めた「強大な力を手にしていくこと」への問題提起を印象深く描いた良エピでした。ウルトラシリーズの一つの定番である「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」を掘り下げたエピソードだったけど、ムサシの想いなどを通じてコスモスという作品ならではの味が出ていたのが実に良きでした

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた