AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

伝説のパパイヤを探して

トロピカル~ジュ!プリキュア

第40話「紡げ! みのりの新たな物語(ストーリー)!」

感想レビュー

 

 

さ「キュアパパイヤなのにパパイヤ食べてないからって気にすることないですみのりん先輩!私だってキュアコーラルだけどサンゴ食べたことないですし!」

あ「オニヒトデかよ」

ちなみにフラミンゴは「世界一不味い鳥」と言われてるそうですよあすか先輩(そもそもワシントン条約で守られてるので食おうものなら法の裁きを受けることになるみたいですがね!)

 

トロピカる部の出し物となる演劇の脚本を頼まれるも、過去の経験から物語を描くことにまだまだ迷いを見せるみのりん先輩の内面にフォーカスした今回のエピソード。物語を空想し描くのが大好きなみのりん先輩がトロピカる部の仲間達との交流で紡いだものを描き出す話となりました。あすか先輩、さんご、みのりん先輩とメイン回が続き、以前のグランオーシャンの回でまなつとローラにも大きくフォーカスしたのを含めるとこれで一先ず全員分のメイン回をこなした形になったっぽいですね。最終盤に先駆けてキャラクター全員をそれぞれ個別に掘り下げるフェーズは完了した感じだし、ここからはトロピカる部全体を中心に回す話とか本筋をグングン進めてく話とかに注力していきそうだね

 

トロピカる部のみんなとの出会いや活動を経て前向きになった部分もありつつまだまだ物語を描くことには逡巡するみのりん先輩、というところから始まった本エピソードでしたが、トロピカる部のみんながみのりん先輩が嫌なら無理強いはできないし」とまずは本人の意思を尊重する姿勢は取りつつ、「本当は書きたいと思ってるからこそ迷ってる」という本心が次第の明らかになっていけばそれを優しく支える立ち回りにシフトしていく、という感じで凄く良いバランス感での仲間の見守り方、寄り添い方をしてたのが良かったなと。過度に干渉はせず、且つ押すところはしっかり後押しするという距離感がちゃんと相手を想ってる感あって好きだ 他の視聴者さんが言ってたけど、みのりん先輩の細かな言動を基に彼女の本心を真っ先に理解してたのがローラだったのがまた粋なところでしたね。最初にみのりん先輩の気持ちを後押ししたこととか、入れ替わりを経てみのりん先輩の創作への意欲を間近で感じたりとか、その辺の関係値が活きてる感じあったね

 

一方のみのりん先輩も様々な逡巡を経つつ、ずっと引きずってばかりはいられない、と前向きな姿勢を見せ始める一幕があり、こういう風に自分から一歩踏み出せるようになったところはやっぱり成長したところだなぁと改めて実感。昔文芸部の先輩に批評を受けた時に落として芯が折れたままになってた鉛筆を削り直して元に戻していくシーンは、みのりん先輩がかつて折れた心を立ち直らせていく様子の比喩的な表現になっていてとても印象深かったです(第4話でもこの鉛筆はみのりん先輩の心を象徴する物として目を惹いたので、ここでしっかり回収されたのは嬉しいね)

 

後半はみのりん先輩のみんなとのパパイヤ探しの中で、知識は凄く堪能だけどそこに依りすぎるきらいがあって、何かを形にする時実感や体験が伴わない、というみのりん先輩の長所と短所が浮き彫りになる流れに。話の中でパパイヤのこと扱ってるのにどんな味か知らないの!?」って言われて赤面するみのりん先輩可愛すぎた。w 物語自体が空想であったとしても、そこに出てくる物や要素(ないしはそれに近しいもの)に対する自身の理解が深ければ深いほどそれらの作中での解像度/リアリティは増して深みが出るし、加えてその物や要素にまつわるちょっとした情報であっても、自身の体験・実感という土台の下しっかりと自分の中で理解した状態で補いながら書いたならばいっそう描写に厚みが出ると思うので、みのりん先輩に足りなかったのはそこだったんだろうなぁ、と思いますね。杜王町の漫画家がリアリティが大事と説くのもそういうところからだろうしね 作品はあくまで空想であっても、それを取り巻く要素の数々には何かしら現実のものと通ずる部分がある以上、それを理解していればいるほど物語には真に迫るリアリティが生まれ作品を重厚にする、とそういうことだわね

またこれを踏まえると、文芸部の先輩がみのりん先輩の小説に付けた「自分で体験したことが落とし込まれてない」的な評価は凄く的を射ていたんだなぁと腑に落ちるものも多かったですね。頭の中に取り込んだ「知識」のみで組んだ話だと感情や細かな説得力をどうしても欠き、何かに書いてあった通りの情報をなぞる形になるような文字通りに「空想」止まりの頭でっかちなものになってしまう、とこういうことだったんだと思う(みのりん先輩の先輩がちゃんと作品を読んで批評してくれてたんだなというのがここで改めて感じられたの良かった)

思えばみのりん先輩、前に第8話で料理下手でメシマズな一面を見せてたことがあったけど、あれも食材の栄養とか調理の技術にまつわる知識こそ本などを通じて沢山知ってたけど、それを美味しく調理する方法やコツに関しては自分で上手く実践できない、というところで物書きとはまた違うところでその短所が出てたんだろうな...と改めて。出来上がるものが美味いか不味いかとか、見た通りの調理がちゃんとできるかとかは実際にやって上手くなっていくしかないものだし、その経験や実践・体感が圧倒的に足りなかったということやね。マグロの目玉を栄養あるってだけでぶち込んだり、卵をヒビ入れずに割ろうとしたりと、あの辺の奇行にようやく納得がいった(

 

にしても、そんなみのりん先輩の短所が明らかになるきっかけになったのが、みのりん先輩の書いた話の色んな部分だったり、そこに関わる様々なものにあれこれと関心を示して知ろうとするまなつの好奇心だったのは個人的にちょっと好きなポイント。あまり頭が良い方ではないけど、何事にも強い興味関心を示しすぐに知ろうと突っ込んでいくという、みのりん先輩とは真逆という感じの性格をしてるまなつが積極的に彼女の物語に向き合ったからこそ気付けなかったことにも気付けたと思うと良い関係性だなぁと感じるんですよね 繊細な表現とかは無いかもだけど、一見奇想天外な描写にも活き活きいした情景とかがあったりして楽しそうにはあんりそうよなまなつの書く話 絵本向きかもしれん

恥ずかしがってるみのりん先輩が「穴があったら入りたい...」ってボキャ高めな表現を用いていじけてるのを見て「穴...?無い!掘ろうか?」ってまなつがまんまの意味で捉えて心配するちょっとズレたやり取りも面白く、この辺の対比が総じて良い味出してたのは今回の話のお気に入りポイントですね

 

と、自分の短所に気付いて気落ちするみのりん先輩でしたが、知らないことも一緒に知ろうとしてくれるトロピカる部の仲間達と一緒に初めて食べたパパイヤの味を通じて、自分で体験し知ることの感動を知り、更にその感動をより素晴らしいものにしてくれる仲間達の存在の大きさに改めて気付く形となり、みのりん先輩が新たな気付きを得ていく様子がとても気持ち良かったですね。落ち込んだみのりん先輩の下にみんなが集まってきて寄り添い始めるところで雲が晴れて陰っていた空から太陽が射して明るくなっていくシーンや、自分と一緒に色んなことに取り組んでくれる仲間達がいてくれたことでパパイヤがより美味しく感じられたことにみのりん先輩が気付くシーンなど、トロピカる部のみんなを「太陽」に例え、みんなが一緒にあることでより成長していけるみのりん先輩を、太陽の光を浴びて大きく美味しくなっていくパパイヤに重ねて描く絵作りが象徴的で凄く良かったなぁ パパイヤをしっかり話の中心に置いた正しく「キュア『パパイヤ』」の物語だし、象徴的な構図を多分に入れ込んだ文学的な表現の仕方はみのりん先輩らしいしと、みのりん先輩メインのエピソードとしてとてつもなく綺麗にハマった流れがとてもグッときました。パパイヤの花言葉「同胞」を挙げて、パパイヤ要素や仲間と共に成長するみのりん先輩のキャラ性をまた一つ深めるとこまで含め白眉だったなと

 

最後は仲間達と一緒に色々なことをして得たかけがえのない思い出や気持ちこそが自分にとっての大切な宝物であり、自分が物語の中で大きな力をくれるものとして描いた「伝説のパパイヤ」であったとみのりん先輩が気付き、また新しい物語を描く意志を見せるところで締めとなりました。自身の空想した物語の主人公のような力を自分にくれたのは、自分の背中を押し、色んな思い出や経験を一緒に経て共に成長する仲間達だった、と自分自身の感じ取ったものをピースとしてみのりん先輩が自分自身の物語を完成させ、今度は仲間達と一緒の新しい物語を築き上げていくべく前を向く、とみのりん先輩のストーリーの決着とこれからを鮮やかに描いた良い着地となって非常に良かったですね 長きに渡る話であったけど、爽やかに締め括ってくれて本当に良かった

 

 

以上、トロプリ第40話でした。止まっていた自分の背中を押し、色んな出来事を通じて一緒に色んなことを感じさせてくれた仲間達の存在の大きさをみのりん先輩が改めて感じ、それを支えにして再び大好きな「物語」に向き合っていく流れを劇的に描いた素晴らしいみのりん先輩メイン回でした。パパイヤや物語といったみのりん先輩関連の要素の昇華のさせ方の巧さもさることながら、象徴的な構図を多分に織り込んだ情緒ある演出の数々もとても沁み入りました

全員のメインエピソードも一先ず終わり、ここから一気に佳境に入っていきそうなトロプリの物語、最後まで見守りたいものです

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた