AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

きっといいヤツ

ドラマ 岸辺露伴は動かない

第3話「D.N.A」

感想レビュー

 

 

起きるはずが無いから「奇跡」と言うんだろう...
じゃあ起きた瞬間にそれはもう「奇跡」じゃあない

 

3話目ともなると露伴先生と泉くんの漫才じみたやり取りも洗練されてきていてより微笑ましくなりますね(何目線) 「催眠術にちょっととかあるか」「じゃあ全部でッ」「それも無いッ なんだ全部って」 

泉くんをつまみ出す露伴先生→めっちゃ睨みつけて思いっきりドア閉める露伴先生→泉くん「もォーッ!!」のテンプレじみた流れの安心感好き

 

6年前の交通事故で夫を亡くした女性・片平真依と、不思議な性格を持つ真依の娘・真央を取り巻く物語を描く、そして6年前事故に遭い記憶喪失となった京香の彼氏・平井太郎のある秘密に迫るストーリーとなった今回のエエピソード。1、2話と登場していた本ドラマシリーズオリジナルキャラの太郎くんでしたが、まさかこのエピソードに絡んでくるとは...という感じでしたね 原作だと由花子さん経由で話が進んでたけど、本ドラマでは第1話から登場してた太郎くんを絡めることで代替しつつ、よりストーリーの流れに奥行きを出してたのがグッド

 

オッドアイや逆さ言葉など他の子と違った部分を持つ真央を「治す」ように真依が露伴先生に頼み、それを受け真央と接触した露伴先生が「真央の性格は『個性』なので治せない」と言い切る流れは原作通りでありましたが、ドラマ版は真央の性格を受け入れられないといった感じでなんとしても治そうとする神経質さが目立つ真依真央の性格は一個性だとして受け入れるように諭す露伴先生との対比が濃く強調される構図となっており、他の人間とは違う「個性」への向き合い方を問うようなテイストが付与されている感じになっていたのが目を惹いたところでありました。所謂「多様性」というものをあらゆる場面で尊重していくことが大事になっていってる近年であるからこそ、「『普通』の基準とはなんだ?(どこからどこまでが『普通』だ?)」「他の人間とは違おうがこの個性こそがその人間そのものだ」といった原作でも軽く触れられていた要素をより深く切り込む形で膨らませてきたのは面白かったですね その「個性」故に孤立し虐められるかもしれないこともまた現実であるとハッキリ言っていたのもまた大きなインパクトがあったところでした。でも実際大事なのって、その現実をちゃんと理解した上でその人間にしっかり向き合うことだったり、その個性を他とは違う形で大きく伸ばせるよう活かしていくことだったりすると思うし、さもありなんという感じだよな、とも。無理解による大多数からの迫害があろうとも、少数の心からの理解や歩み寄りがあればそれは大きな支えになるはずだでね

またそこにおいて、真央の性格を異質なものとして極端なまでに恐れ抑圧しようとする気質が濃く現れ出た真依を「他者と違う個性を『普通』に舗装してしまおうとする一種の障壁の象徴」として描く流れは生々しくて強烈であったなと(娘に対しずっとカリカリしていて、何かあればヒステリックに押さえにかかる真依のあの感じを表現した瀧内公美さんの演技が凄くリアルで、それが生々しさをいっそう引き立ててたしね)。真依自身は自分の一族にまつわる呪いじみたジンクスが不安になっていてそれ故に真央の個性の尖り方に過敏になってるという面もあるので多少同情できる面もあるけど、そうして真央の個性を恐れ、均そうとしたり隠そうとしたりした結果真央を無意識のベールのようなもので包み込んでしまい、真央に「透明化」という自己の消失・無個性化を為すかのような能力/ギフトを与える形になっていたのはなんとも皮肉というか...真央の本に描かれていた「包み込む手」の象徴的な描写も印象的でした 透明化の能力は原作にも保護色的な特性としてあったけど、そこを露伴先生のヘブンズ・ドアーと同じ特殊な能力として位置付けた上で、真央の精神性の発現的なニュアンスを含ませドラマに絡めたのは巧いところだなぁと。精神の発現はそれこそジョジョ本編のスタンドの概念そのままだし、良い原作要素へのリスペクトの効かせ方

 

後半ではそんな真央が太郎くんには何故か強く惹かれることについて深く迫り、太郎くんが6年前の交通事故の際、同時期に事故死した真依の夫の臓器を移植されていたという事実に至っていくという展開へ。「臓器ドナー」が重要な要素となっている点や今までに度々登場していたキャラである太郎くんが絡んでくる点などドラマならではの少々細かな変更を入れつつも、それによって、「6年前の事故」というところでリアルタイムでリンクしていく真依の夫と太郎くんの事実に露伴先生達が迫っていく、といった感じで、諸々の要素の接続を分かりやすく示しながら話をだんだんと盛り上げていく様を描く作劇が実に巧く、当時観ていた時もかなり引き込まれたところでありました。臓器移植による記憶転移、という実際に存在する事象を上手いこと落とし込んできてて良き

原作の方は全体的なまとまりとしてはなんとなく分かるけど、細かなところの接続が微妙に分かりにくい部分もあったので、そこをより分かりやすく示しつつ3話構成のドラマの大トリらしい盛り上がりに昇華してきた今回のここは良アレンジであったなと。ドラマ動かないシリーズはけっこう原作からの変更も多いことが見て取れるけど、それが更なるメッセージ性の付与などにかかっているのが良いよな、と改めて

 

またこの展開の中で、真依、真央、太郎くんの記憶の本の中身がそれぞれ飛び出す絵本で同じになっていることや、そのページを開いて並べると仕掛けの絵の手が家族同士で繋がるようになっていることなど、3人の遺伝子や運命といったものを越えた家族の繋がりを象徴的に描き出す演出に、ヘブンズ・ドアーの記憶の本という要素を発展させ活かしてきてたのも非常に秀逸で唸ったところでした。第1話の時点で示されていた「ヘブンズ・ドアーで本にされた人間の記憶の本の中身は、その人間の性格等によって異なるページの形式になってたりする」というドラマ版ならではの要素を、家族同士の魂/精神の同一性という実にジョジョらしいテイストも示すものとして劇的に昇華させてくるこの構成あまりにも秀逸でありましたね...その上で「飛び出す絵本」の仕掛けの接続、 という画になる演出まで編み出してくるの白眉ですよ

またこの演出を描き出すというところで、今回のエピソードに限りヘブンズ・ドアーの能力演出を「人間の顔が本のページとなって開く」というものから「人間が本そのものになる」というものにしていたのもかなり目を見張りました。泉くんの本がペラッペラの自分が表紙に映った自己主張強すぎる本だったのめちゃくちゃ面白かった。w 3人の本を並べる過程でしれっと泉くんの本を下敷きにする露伴先生酷い()  実際のところは、真央を本にする流れを描くにあたり、成人男性が女児を気絶させて寝かせ顔を近付ける絵面をNHKではお出しできん...みたいな事情もあってそこと兼ね合わせた形になったってとこもあるのかもしれないけど、これによって上記の飛び出す絵本の演出/それを並べる演出がいっそう映えてもいたので、枷を枷と思わせない良い活かし方だったなと 最初は驚きつつも、能力の進化みたいな解釈で納得していく人も多かったし、そういうジョジョ的な解釈が入るのも込みで上手いことやったと思う

それ以外にも、太郎くんの本が途中に真っ黒なページを挟んで以降、最初とページの色や形式が全然異なったものになっている、という演出によって、平井太郎という人間の人格が一度死に、移植された臓器の元である真依の夫の人格へと切り替わったことを象徴的に描いたりと、総じて今回のヘブンズ・ドアーの演出は秀逸なものが多くて良かったですね

 

最終的には、真依も太郎くんに亡き夫と重なる部分を感じ取り、真央も含めた3人で改めて通じ合う、という運命の繋がりを感じさせるようなオチとなりました。真央が何はなくとも太郎くんを「自分の父」と繋がる人物であると気付いたところも含め、本エピソードの一つのキーワードになってた「奇跡」をちらと感じさせるものがある見せ方が実にドラマチックであった

またこの一件により、結果として彼氏が自分の下を去っていく形となった泉くんでしたが、「太郎くんが幸せそうなので良かった」と明るく受け入れるポジティブさを見せており、実に彼女らしくて良かった。一方で彼の撮る写真が前と違う感じになったことに寂しそうにもしたりとほんのり切なさを窺わせており、この辺は実に人間味あってグッとキャラ的な愛着が深まる描写でした

 

そしてラストは、泉くんの

「世の中、『奇妙なこと』は絶対ある

特に、岸辺露伴の周りにはー」

という台詞で締め括り。「奇妙」のワードを入れ込んでくる遊び心が綺麗にハマり、凄く気持ち良い締めになりました 最後の最後まで「動かないシリーズ」に対しても「ジョジョシリーズ」に対してもしっかりリスペクトを効かせてたのがニクいね

 

 

以上、ドラマ岸辺露伴は動かない第3話でした。ちょっと難解めな作劇であった原作のストーリーをドラマ独自の要素や改変を加えて巧く咀嚼し、3部構成のエピソードのラストに相応しい盛り上がりに繋げた脚本が絶妙な実に見応えあるエピソードでした。メッセージ性の増強やヘブンズ・ドアーの演出のアレンジなど、新たな面白さの構築も見事だったところで、やはり素晴らしいドラマだなぁと何度も感心しちゃいますね

という感じで、これにて2020年度に放送された第1〜3話の感想が纏まりました。次はこの間放送した第4〜6話の感想です お楽しみにッ

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた