AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

ランニングキチ◯イvs好奇心キ◯ガイ

ドラマ 岸辺露伴は動かない

第4話「ザ・ラン」

感想レビュー

 

 

岸田ゴハン先生ェーッ カカロットの息子かな(

 

どうせ世間知らずの漫画家だろうからたっぷりカモれるぞォ〜ッと乗り込んだものの、有名な漫画家の名前を思いっきり間違えてしまっていたという盛大なやらかしをしてしまい、このままじゃ話し合いどころじゃないと冷や汗ダラダラになってる不動産屋の社員を相手に、

「いや...サインの練習をしておこうと思ってね

岸 田 ゴ ハ ン の ォ 〜」

と嫌味ったらしい追い討ちをかけて心をバキバキにへし折る容赦のなさ、

漫画のために山一つ買ったことに対し「今更そこまでして漫画描かなくても人生大成功じゃないですかッ!!」と言ってきた社員の1人に

「この岸辺露伴が...

金やちやほやされるためにマンガを描いてると思っていたのかァッ!?

ぼくは読者に『読んでもらうため』にマンガを描いている!
『読んでもらう』!!ただそれだけのためだ 単純なただひとつの理由だがそれ以外はどうでもいい!そして僕は、読んでもらうために毎日毎日リアリティのあるネタを探しているんだッ!!

そのためなら...たとえ全財産を使っても...惜しくないねッ」

と凄まじい圧でまくし立てる漫画家としての強烈なパワー、

と初っ端からフルパワーの岸辺露伴テイストを叩きつけてくるの強すぎる...w こんな客にぶち当たったら並の社員は心壊れちゃうで()

2020年度放送エピソードの一発目であった第1話「富豪村」の冒頭オリジナルシーンも露伴先生のキャラ性を端的に示した実に秀逸なシーンであったけど、2021年度放送エピソードの一発目となった本話冒頭の上記のシーンも露伴先生み全開の良き導入でしたね ファンは言わずもがな楽しいし、初心者も分かりやすいしでグッド 原作でお馴染みの「この岸辺露伴が〜」の台詞やページむしりをガッツリ入れ込んできたり、ジョジョでよくある「身近にいそうななんかヤなやつがとんでもなく痛い目を見る」的なスカッとする流れが踏襲されてたりと、岸辺露伴というキャラやジョジョという作品へのリスペクトもしっかり詰め込まれているのがまたディモールト良い

 

今回のエピソードはそんな露伴先生がある人物から聞いた...というテイで話す、自らが接触した橋本陽馬なる男との恐怖の対峙を描く話。走ることに取り憑かれ、魅入られていく陽馬の狂気が濃くなっていく様を描き出すヒューマンホラーテイストが特徴のエピソードですが、やはりこういう人間描写が主になる話は実写ドラマ映えするなぁ...と改めて。より雰囲気がリアルに感じられて引き込まれるんですよね

 

今回の話は、トレーニングへの異常な執着やトレーニングの邪魔となるものへの激情といった陽馬の狂気性を印象付けていく流れ自体は概ね原作に沿ったものになっていましたが、細かな部分部分で陽馬の狂気性をより色濃くする演出やシーンが入れ込まれており、安定のドラマ版アレンジが実に効果的に効いていたのが良きところでありました。原作だと最初の頃から彼女のミカにさえ冷淡な感じの振る舞いをしてた性格面の描写が、ドラマ版だとそこそこ人当たりが良い感じのなまじ人間味がある性格として描くところから始まっていて、トレーニングに取り憑かれて冷徹な感じになっていくその後の変貌がより強調される形になっていたり、「オーディションに受かったがランニングの時間と重なるので断った」という台詞を追加したことで、モデルの仕事の為のトレーニング、という目的と手段の関係が崩れ、トレーニングそのものに執着するようになっている異常さが際立たされていたりと、原作以上に陽馬が「なんかおかしくなった」ことが視聴者にじりじりと印象付けられるようになってるの非常に巧かったわね。原作の「5千円勝手に借りたけど明日返すよ」「2万円勝手に借りたけどオーディション受かったら返すよ」になってて地味にクズ度グレードアップさせてたの好き 賃貸ボルダリングのシーンで外壁にまで足場くっ付けてた下りは流石に実現困難だったからかガッツリカットされてたけど、ミカの「ここ賃貸だよ...」の台詞が残ってたのはグッド 陽馬の異常さがいっそう際立つし、身も蓋もなさすぎるツッコミになってるのがなんかシュールで好きなのよねw

 

他にも、霧がかった道や夜の工場地帯、真っ赤なライティングのされたトンネルといった不気味な雰囲気のある場所を駆け抜け、薄暗闇の石段を駆け上がっていく陽馬のさながら深淵に誘われていくかのような様相や、レーニングに邪魔な人間達を抹殺したことを記憶の本の中で「取り除いた」とまるで物扱いしてるかの如く語っている陽馬の異常な思考の演出など、陽馬周りの絵作りは総じて映像面でもかなり拘ってホラー感高めに描かれており、原作を知ってる身としてもずっとゾクゾクしていましたね...最初はノートみたいな形式のページに淡々と日々のことが書かれてるだけだった記憶の本の記述が、ある日を境にトレーニングのことが病的にびっしり書かれるようになってるあの演出もかなりゾッときた。「取り除いた」という表現は原作の「殺害済み」という表現が使えなかったから代わりに用いたとこもあるのかもしれないけど、ランニングに邪魔だった自転車についても一様に「取り除いた」と記述してるカットを入れることで、レーニングの邪魔になる存在は自転車だろうが彼女だろうが例外なく「邪魔な『物』」と捉えてる、みたいな陽馬のヤバさの印象付けに昇華させてるのが巧妙なのよな 陽馬を演じた笠松将さんの洗練された肉体美も陽馬のイメージにバチッとハマってて最高によかったし、総じて本エピソードの陽馬周りの描写は陽馬のキャラ性をかなり上手いこと再現し、且つ更にパワーアップさせる形に描き上げられていて、非常に見応えがありましたね

だからってあの変なギザギザが沢山飛び出た陽馬の髪型まで再現せんでもとはちょっと思ったけど。w 露伴先生のバンダナとか泉くんの衣裳まで実写に見事落とし込んだ実写動かないシリーズのキャラメイク力を持ってしても流石にちょっと浮いてたよ!! でも言うほどコスプレ感はなかったし、観ているといつの間にか慣れちゃってたので、この辺絶妙に羽目を外したよなぁと感心もしたり

 

そんな陽馬に目をつけられ盛大に命の危機に晒されることとなった露伴先生でしたが、最初の時点で既に「なんかヤバい」と気付いてたのに「こんなんぜってぇ面白い〜」ってなって進んで首を突っ込みその後本格的に危険を感じるフェーズに入って「越えてはいけないレッドライン越えてしまった...」とちょっとだけ反省しつつも「でもこんなヤバい状況だろうとアイツの全てを読み解きたい!!」と一歩も引かないイカれた好奇心を見せつける、と、陽馬のクレイジーランニングモンスターっぷりに負けず劣らずの好奇心バリバリキチ◯イ漫画家っぷりを発揮していたのが最高に露伴先生で超良かったですね() 原作の方は「今回のことはレッドラインを見誤った自分に全て非があったんだ...」っていつになくしおらしくしてたのがめちゃくちゃ印象的だっただけに、ここでいつもの露伴先生らしい常軌を逸した好奇心/知的探究心の爆発という方向にキャラ性を振り切ってきたのは妙に興奮しちゃいましたね...w 逃げたところでどっちみち危ないという状況だったから挑むこと自体は致し方なかったし、ドラマの方も一応「レッドライン越えたことをほんのちょっぴりとだけ反省してる」的なことを言ってるので原作と同じ流れやテイストを踏んではいるんだけど、そこで全くしおらしくならないし退かない怖いもの知らずさ、これこそ岸辺露伴よ(力説) 陽馬が勝負の続きを迫ってきてる時の、ヤバい領域に踏み込んだことへの自省や今まさに命の危機が間近に迫ってることへの恐怖をわずかに滲ませつつも、「陽馬をもっと知りたい」という好奇心に心が躍ってることを表すかのような笑みが全面に溢れ出ている、という絶妙な表情がサイコーに良くて、高橋一生さんの演技がグッドでありました

 

かくして色々ありつつ陽馬を退けた露伴先生でしたが(ジムでの決着の時、ビルから落ちた筈の陽馬の「露伴先生...」という声が血の底から響いてくるように聴こえてくるとこマジで怖い)、その関心は既に、自分が全財産はたいて山一つ買ってまで取材しようとしている「妖怪伝説の残る村『六壁坂村』」が陽馬の変貌に関わっているらしい、ということにあった...というところで締め。冒頭の不動産屋との会話のシーンで「山を一つ買った」という話が入ってきたところで「お、ここで六壁坂の伏線張っておくのね」と感心してはいましたが、まさかザ・ランのエピソードそのものが六壁坂を起点にしたものになるとは思ってもみなかったので、リアルタイムでの視聴の時は急に六壁坂の名前が出た瞬間かなり興奮したなぁ...陽馬を変貌させた要因を「筋肉の神に魅入られた」というとこから「ランニングコースに入ってた六壁坂で、そこに潜んでいた怪異に取り憑かれてしまった」とアレンジしたところは、そこを繋げてくるのか!!とビビり唸ったね...ランニングすることに魅入られ取り憑かれてしまったと陽馬のことを表現したけど、文字通り「魅入られ、取り憑かれてしまってた」わけですね...(上述の陽馬が石段を上がっていくシーンそのものが伏線だったとは全く予想してなかったわよ)

 

「間違いなく...
破産した価値はあった...!!」

岸辺露伴が追う、六壁坂の妖怪伝説の全容とは...

 

以上、ドラマ岸辺露伴は動かない第4話でした。走ることに取り憑かれていく男の狂気を象徴的な演出や鮮烈な絵作りで描き出すホラーテイスト濃いめの作劇からの、他エピソードとの接続を最後に繰り出すサプライズで大いに盛り上げた見応えアリなエピソードでした。露伴先生の強靭すぎる好奇心を全開で見せつける展開も最高にテンション上がって楽しかった...第4〜6話、改めて観るのがまた楽しみであります

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた