AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

友達への一歩

トロピカル~ジュ!プリキュア

第44話「魔女の一番大事なこと」

感想レビュー

 

 

チョンギーレヤラネーダ、 前回けっこう衝撃的な感じで引っ張った割にはサクッと片されちゃったのでそこはちょっと残念である やりたかった展開なのかもだがあの塩梅だったらいっそやらなかった方が話はコンパクトになった気がせんでもない

 

今明かされる後回しの魔女の真実ゥ!!な今回のエピソード。当方「うしおととら」や「からくりサーカス」といった藤田和日郎作品等にてたまに描かれる「悠久の時を経て記憶が薄れてなお、その人物の人格や行動原理に強い形を与える因縁・繋がり」といった要素がアホほど好みなので、まさしくそれが感じられた今回のエピソードがかなりツボでありました。伏線回収のパワーやカタルシスが凄く気持ち良いんだわ

 

その昔「破壊の魔女」として存在していた魔女様は、世界を破壊するべく進撃する中での人間達との戦いで傷付き身を隠していた時、自分に寄り添い友人として話しかけてくれる少女・アウテーネと出会い交流を深める。

その後傷は癒え、魔女様は自分の使命である世界の破壊を再び推し進めようとするも、そこで魔女を止めるべく伝説の戦士・プリキュアになって立ちはだかったのは、かつて自分と交流を深めた正直・アウテーネだった...

というのがまず最初に明らかとなった真相。今までちらほらと描かれていた魔女様の背景や伝説のプリキュア=アウテーネとの関係性の描写を接続し紐解いていく流れとなりましたが、魔女様が元々はただ純粋に「世界の全てを破壊することそのものを生きる意味として生まれた存在」であったというのはかなり衝撃的な事実でしたねぇ。かつての魔女様の呼び名であった 「破壊の魔女」とは、それ即ちかつての魔女様の存在理由や行動原理そのものを表していたのだ、という仕込みが面白かったわね アウテーネとの交流でどこか穏やかな様子を見せるようになりながらも、結局は自分自身の生まれ持った使命のために再び世界を破壊し始めてしまい、直接アウテーネに止めるよう懇願されても「その願いは聞けない」と切って捨ててしまうという、生き方を簡単に変えられない(変わらない)ままならなさになんとも言えない物悲しさが感じられたりと、ここで魔女様のキャラ性が一つ深まったのは目を惹いたところでした。

そうして世界の破壊という生き方を変えられない魔女様と、そんな魔女様と戦わなければならない宿命に涙しながらも決意を固めるアウテーネ/キュアオアシスの避けられぬ一戦もまた見てて辛かった...ずっと泣いてるオアシスの姿があまりに痛ましかったし、そうして繰り広げる戦闘の描写も凄く力入っててかなり壮絶だったので込み上げるものがあったなぁ おそらく使うのは今回切りだろうに一応きちんと変身バンクがあったり、象やジンベエの召喚を単身でやってたりと、オアシスを伝説のプリキュアとしての格高めに濃く描いてたのが良きでした

 

そんな激しい決戦の末、「決着は明日にしよう」と仕切り直すことにした魔女様でしたが、なんと次の日になっても「明日にする」と言い、そのまた次の日も「明日にする」と言い...と果てしなく決着を先延ばしにし続けるようになってしまい、いつしか長い時を経てそれを繰り返したことで、自分が何を後回しにしようとしてたのかということ、果てはその背景にあったアウテーネの存在や彼女との交流さえ忘れ、結果「後回しの魔女」が生まれてしまった...という流れも語られ、ここで遂に「後回しの魔女」の全容が明らかとなりました。「記憶を失った魔女様」と「人間と触れ合った人魚の記憶を消すグランオーシャンの掟」という繋がりそうでなかなか繋がらない両要素はいわばミスリードだったわけですな(それでいてグランオーシャンの掟という要素も単なるミスリード要因というだけでなくちゃんとメインの軸に絡む要素になってるのが巧い)。  長らく謎に包まれていた強大な後回しの化身の正体が「『世界を破壊するという自分自身の宿命』と『自分を友と慕う人間の少女に対しいつしか抱いていた仄かな友情』との間で無意識に葛藤した結果、『破壊』を取ることも『友情』を取ることもできず、決断を後回しにし続けることしかできなかった1人の魔女」だった、というのはなんか思わずじーんとなっちゃいましたね...変えられないはずの自分の生き方の中に生じた「友達への想い」という綻びに知らず知らずのうち強く魅せられ、けれどそれに素直になる勇気も出ず、自分の中で抱え込んでしまった、ってのが絶妙に人間味あってどこか共感できるんですよねぇここの魔女様...「後回し」という概念を、怠惰とか停滞とかそういうのとは違う、小さな一歩を踏み出せない不安の象徴として捉えてきた作劇は白眉だったなと

また魔女様のそんな背景が明らかになったことで、一時期は魔女様の記憶をどうこうして操ってる黒幕だとか巨悪だとか色々考察されてたバトラーさんに関しても、実際のところは「人間の少女との交流で後回しに囚われ変わっていってしまった魔女様に、かつて自分が焦がれ忠誠を誓った『破壊の魔女』へと戻って欲しい一心で色々手を尽くしていた一途な忠臣」であったと明らかになり、今までのイメージとは180度変わった新たな魅力が浮かび上がったのが凄く良かったなと。魔女様への忠義という部分はここ最近でも強調されてはいたけど、そこにあったのが混じりっけ無しの純粋な思い入れだったというのは意表突かれたわよ 記憶が戻って乱れる魔女様を説得する姿や、結果的に再び破壊を推し進めようとするようになった魔女様に感激して嬉しそうにしてた姿を見てると絶妙に憎めなさが感じられるようになったし、ほんと凄く良いキャライメージの逆転作劇だったね「苛烈に破壊に勤しむ様が美しいと思ってた上司が急にそれに乗り気じゃなくなったことはショックだったろうな...」とか色々想像されちゃうのよね

 

ここから魔女様は、記憶が戻ってアウテーネとの繋がりを思い出したり、アウテーネがもうこの世にはいないと気付いてしまったりしたことで乱れ、世界を破壊することを再び決意し暴れ出してしまうも、「アウテーネと友達になりたいと思っていた気持ち」「勇気が出せずそのことを伝えるための一歩をずっと後回しにしてしまった気持ち」といった自分自身の本当の想いにまなつ達の説得を通じて向き合うことができ、その想いを自覚したと共にまなつ/サマーを通じて現れ出たアウテーネ/オアシスの魂と今一度触れ合うことに。そして涙ながらに自分の想いをアウテーネに打ち明けたことで、長い時を経て今度こそ彼女と友達になることが叶い、 笑顔を湛えながら共にアウテーネと旅立っていくのだった...という感じで魔女様を取り巻く因縁は決着。いや今回ここの一連の流れが本当に良くて、自分の気持ちに改めて気付きアウテーネにずっと言えなかった想いを感情を溢れさせながら伝える魔女様の姿に、リアルタイム時には泣きそうになり、配信での振り返り時には見事に泣いちゃったんすよね...長い時間は経てしまったけど、サブタイ通りに自分が本当にやりたかった一番大事なことをやっと一歩踏み出して成し遂げることができ、ちゃんと友達になれたんだなって思うとね...溢れちゃうよねこっちも。 作品のテーマ性の味わいもタイトルの深みもフルに昇華させたの本当に見事でした

またそうして旅立っていった魔女様のことを「最後は幸せそうだったし良かったんじゃねぇか?」と表現し綺麗にまとめてくれたチョンギーレさんがサイコーに粋な大人って感じで素敵であった。懐のデカさといいやっぱ悪役ではないよなこの人...と最終盤にしてまた強く実感させられたね(

 

しかし一方で、魔女様が行ってしまったことに対しバトラーさんは深く慟哭。そして「破壊の魔女の意志は自分が受け継ぐ」と強大な怪物へと変貌し、暴れ出してしまうのだった、というところで今回は締め。今回の話の中でバトラーさんの魔女様への純粋な想いの強さのほどはしっかりと印象付けられただけに、ここで彼が破壊への苛烈な感情を持って最大の脅威として躍り出る展開は凄く納得度が高かったし、ラスボスとしての格も申し分無しで自分的にかなり盛り上がったなと。

最後に立ちはだかった脅威、プリキュア達はどう立ち向かうのか、そして世界の命運は...

 

以上、トロプリ第44話でした。魔女様周りの謎や背景の全てが明らかとなった回。「一番大事なこと」という本作のメインテーマを、壮大且つ深い人間味溢れるドラマで叙情的に描いた実に沁み入る話でありました。個人的にも凄く好みな作劇で思わず涙腺も緩みましたねぇ

さてトロプリも残り2話 あとは盛り上がる一方であろうクライマックスを大いに楽しもうと思います

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた