AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

人間「五十嵐元太」の休息

バイスレガシー 仮面ライダーベイル

第5話

感想レビュー

 

 

東山、瞬殺っ...!(カイジ風)

本編全体に渡ったワルいとこ見せまくってた割にだいぶ呆気なかったけど、信念を見せるでも意地を見せるでもなく無意味に命を散らしていくこの無様さはド外道に相応しいと言えよう。村田さんの冷徹な演技がとても良かったですわね

 

隔週更新の全5話、約2ヶ月に渡り配信されてきた仮面ライダーベイルも遂に最終回。長らく見守ってきた五十嵐夫妻の始まりの物語でありましたが、しっかり有終の美も飾ってくれて非常に満足度高しでしたな 面白かった...

 

ベイルに身体を乗っ取られた元太がノアへの復讐へと赴く前回ラストから引き続いて、暴れ狂う獣と化した元太/仮面ライダーベイルの暴走(恐竜の鳴き声みたいなSEがずっと鳴っててマジで獣じみてるの好き)が描かれるところからストーリーが展開されていった今回でしたが、そんな元太の暴走を止めるのが、互いの孤独を埋め合うように出会い惹かれ合った幸実さんの愛の呼びかけだったのは、ベタながらもこれまでの流れの積み上げがしっかりと昇華されとてもグッときたところでありましたね。元太の心が徐々に解きほぐされ、幸実さんも元太との時間を尊く思うようになっていくドラマが全体の軸としてここまで貫き通されたのは本作の大きな魅力やね 元太がようやく「幸実」と名前を呼ぶという下りもこれまたベタながら2人の関係の一つ劇的な着地として綺麗にハマってて凄く良かった

 

そして今回の山場たる元太とベイルの因縁の一騎打ち。前回の予告の時点だと「ベイル無しでどうやって決着付ける気なんやろ」と思ってたので、悪魔の力抜きのデバフがかかった状態で仮面ライダーベイルに変身し直接対決、の流れにはかなりテンション上がりましたねぇ。弱体化してほぼ身一つみたいな状態ながらも「変身」して戦うというシチュはバチッとハマるとめちゃくちゃ熱いんだよな...この辺の元太の「悪魔(ベイル)を生み出してしまった自分自身もひっくるめて、悪魔を決して許さない」「自分自身の『悪』を断つ」という決意も、人を傷付ける怪人と大元を同じくする/同じ存在と言える自分自身を「悪」に通ずると認めつつも、その宿命を背負った上で誰かのために戦う『仮面ライダー』の根源的な在り方をしっかり踏襲したものになっていて熱かったですね。第1話時点では自分が誰かも分からないまま復讐のためだけに心を擦り減らしながら戦う姿が人々から異形の怪人として恐れられていた純平が、元太の名を得て愛を知ったことで自分自身が何者たるかをしっかりと見据え、幸実さんという愛すべき者を隣に置いてそれを守るために戦うようになった、というのがとても胸に沁みる。「異形の怪人/復讐鬼」が「誰かの自由と平和のために戦う戦士/ヒーロー」になっていく、という変遷も実に仮面ライダーらしくて良きであった この辺第1話の感想でも触れていて今後どう動くか楽しみなポイントだったので綺麗に着地してとても嬉しい

戦闘の方も、純平が変身する仮面ライダーベイルの泥臭いアクションが坂本監督演出に上手いことハマってて短い時間ながらも見応えがあってとても良かった。必殺技2段打ちがカッコいいぜ...仮面ライダーベイルのアーツ欲しくなっちゃう

 

にしても今回のベイル、惹かれ合う元太と幸実さんに対し「お熱いねェ」って煽りを入れたり「...冗談じゃねぇぞ」ってけっこうガチめに苛ついたりと、割と人間臭さが垣間見える台詞回しが多くて不覚にもちょっと可愛げを感じてしまったのが悔しいところ。w TV本編だとこんなに饒舌なイメージあんま無かったからちょっと意外だったな...元太に対し曲がりなりにも宿主にして自分の相棒(同一存在)的なところで愛着持ってた(だからこそ幸実に惹かれて元太が離れようとしてることに苛立った)てな感じで、彼への感情はホントだったんだろうなぁと感じられて、憎たらしさこそ変わらないけど最後の最後にちょっと理解できる部分はできたかもなと

 

かくして元太はベイルに勝利、一度はベイルの死により純平も消滅しかけるも、贖罪のために身体を張った真澄の行動によりベイルが死ぬことなく封印されたことで事なきを得た、という流れへ。今までなかなか動かなかった真澄だったけど、最終回はベイルの襲撃を自分への因果応報的に受け止めようとする姿や、ベイル封印時の息子を思う様など、良いシーンが沢山あって目を惹かれましたね。高橋さんの演技によりその感情の機微が上手いこと表現されていて良いキャラだったね...まぁまだTV本編にも出ますけども!!(高橋さんではないけど)

 

そしてラストは、ノアの追跡を逃れるために顔を変えられ、同時に今までの戦いの記憶も思い出せなくなってしまった元太に「家族」として改めて優しく寄り添う幸実さんの「この秘密を死ぬまで守り通す」という独白をバックに過去編が幕を閉じ、現代の五十嵐家の幸福な風景へと場面がシフト、物語は仮面ライダーバイスへ...というところで締め。全てを忘れてしまった元太(ここの声色や喋り方が記憶を無くす前の純平の頃のものとは全然違う、リバイス本編での元太のちょっと軽い感じにガラリと切り替わってたのが和田さん流石の演技力でおっとなったね 顔が隠れてるのもあってほんと別人のよう)にショックを受けつつも、今まで苦しみ抜いてきた元太の苦しみを知ってるからこそこれで良いのだと受け入れて、辛かった過去は思い出さずかつて望んでいた家族の幸福を彼に心の底から噛み締めてもらいたいと、そして自分もそんな彼と一生一緒に添い遂げたいと思ったであろう幸実さんの強い想いが感じられてこの辺は物凄くじーんときたなぁ...大久保さんの色んな感情が入り混じった演技も凄く味わいがあって良きであった 舞台畑の方が取り巻くキャスト陣の中で、それに勝るとも劣らぬ演技で作品をググッと引き立ててくれた大久保さんは素晴らしいよ

 

こうして2人の「家族」の物語として綺麗にまとまった本作の締めが、五十嵐夫妻と兄妹の家族団欒という、現在のTV本編では遠いものになった温かな光景なのもまた胸にくるものがあったな...必死に守ろうとしてもフェニックスやベイルといった運命が平穏な幸せを許さない、しかも子供達までもが元太と同じ仮面ライダーとして戦いに身を投じてゆく、それに対し幸実さんが何を思ったかを本作を通じて考えるとなぁ...元太パパを甘やかすのはもう一生分苦しみ抜いたのを知っているから、さくらが仮面ライダーになるのを強く反対してたのは言わずもがな、最初バイスに当たりがキツかったのも幸実さん視点だと「よりにもよってベイルに似た悪魔」だったから、と色んな部分が腑に落ちていくよね この幸福が戻るのは果たしていつか、というところで現在のTV本編にシフトさせるのが上手い構成であった これで今のTV本編にもっとハマれてたらより熱かったんだがなぁ...

 

以上、ベイル第5話でした。東映特撮シリーズのこの手のちょっとしたスピンオフ作品としては割と異例に思えるくらいの長編シリーズとなった本作でしたが、仮面ライダーバイスの物語の全ての始まりという立ち位置の作品として、五十嵐夫妻を主人公に「家族」「繋がり」というテーマをしっかりと描ききったとても面白い作品でしたね。実力派のキャスト陣が織り成す引き込まれるシリアスで重厚なドラマ、短い時間の中でも印象深く描かれる特撮やアクション、総合して1時間弱という長すぎず短すぎない尺など、所謂ネオライダー系列の作品群に近い雰囲気でとても上手くまとまっているし、リバイス本編への接続を散りばめた作品ながらも、前日譚的な性質故にストーリー的な独立性は割と高く、メインドラマのキャスト陣もTV本編に登場しない顔触れで揃えられているので純粋に単体作品としても観やすいという点が個人的にとても良かったなと。このくらいの尺と独立性の高さのあるスピンオフはもっと増えて欲しいなぁと思いましたね なかなか難しいかなぁ

ともあれ全5話、とても楽しませていただきました。ありがとうございました

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた