AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

本来もっと触れるべきなんだぞ?<一輝の記憶問題

仮面ライダーバイス

第39話「希望と絶望、三兄妹の葛藤」

感想レビュー

 

 

白熱化していくギフとの闘争、暴走していく大二の正義、といったところを中心に様々な人物達の人間模様を描いた今回のエピソード。前回の登板エピが瞬殺ホーリーライブ回とイマイチ上がらないオーバーデモンズデビュー回とどうにも振るわなかった毛利さんがややしばらくぶりの登板となりましたが、五十嵐兄妹、牛島家、元デッドマンズ組、狩崎とヒロミさん、という感じで複数の軸でのキャラクター達のドラマをしっかり1話の中に整理して入れ込み見せており、最終盤に向けてのリバイスの物語の取りまとめとしてはなかなかに悪くないストーリーになっていたなと。作品単位での情報整理やテーマの拾い方が巧い毛利さんの良さが出てたように思いましたね

が、それらがなまじ単発としてはかなり上手いことまとまっていた分、どれもこれも今描いて盛り上げるには今までのストーリー展開上での蓄積や印象付けが遅過ぎたなというところが余計際立ってしまったのもまた事実であり...

 

特に今回のメイントピックであった大二の暴走と対立に関しては、希望を語るばかりでいたずらに犠牲を増やしてしまう一輝達への不信が更に募った結果力づくでも正義を為さねばとなった大二が一線を越え始めたりそんな大二を拒絶する人々の姿が一輝達視点でも困惑を抱くようなある種の苛烈さを伴って描かれたりと、正しさの線引きがどこか曖昧になり混沌としていく様がリバイスらしいダークさを醸していて面白かったし(「正義を為そうとすればするほど『俺達には仮面ライダーがいる!』という言葉で人々から拒絶され孤立していく大二」という構図が、「異形故に人々から蔑まれ孤独になろうとも人類の自由と平和のために戦う仮面ライダーの構図に対になるような形になっており、人々から拒絶される孤独なる戦士というところは似通っているながらもその本質はどこか異なっていてむしろ仮面ライダーであることを遠回しに否定されている画になっているのが皮肉)、キャスト陣の迫真の演技力がそれをしっかり後押ししてもいて良きだったのだけど、その発端たる暴走していく大二のキャラ立てに今までスッと納得できるものをほとんど感じられていないまま、ひたすらに落ち続けていく大二をモヤモヤしながら見ていたのがずっと響いてしまい、キレる大二とそれに振り回され荒れる周囲という構図にずっとげんなり気味してばかりだったというのが正直な視聴感だったな...と。キレる大二だけでもけっこうこってりしてるのに、それに対し更に激昂して食ってかかるさくらが加わるから胃もたれしちゃうんですよね...荒れる大二に堪忍袋の尾が切れたさくらが大二をぶっ叩いて一時的にしろ止めるみたいな流れならまだしも、キレる大二とキレるさくらが叫び散らしながら泥沼の戦いに発展してくのがえぇ...って感じだったし、なんというかあの場面ほぼ誰も冷静じゃない状況なせいでただただ見ていてストレスなんだよなぁ(それを緊張感あるシチュエーションみたいな感じで見ていて面白いとさせるだけの各キャラの性格に対する好感の積み上げや描写の説得力も無いし)  大二の暴走というエッセンス自体にはリバイスという作品を牽引するだけのパワーがあると思うし実際流れそのものにはそういう部分を改めて感じられたと思うんだけど、そこに至るまでの話の組み方がちぐはぐだったよなぁ...と思ってしまう

 

また今回急激に強いドラマ性を伴って浮上してきた「牛島家の疑似家族としての絆」みたいな部分も描写の濃さの割にはほとんど入り込めなかったというのが本音であり。あくまで同じ組織の構成員同士で組んでたという形だけの家族に過ぎなかった牛島家の間にいつしか芽生えていた一つの家族としての繋がり的な部分にフォーカスし、公子さんの犠牲を受けてそれを強く自覚する光やパパンの姿(荒れて暴れたのを示すように司令室に物が散乱しているカットをそっと見せてパパンの中のそういう感情をスマートに示していたのは良き)を描きつつ、「たとえ疑似家族であろうと家族は家族」とその絆を肯定する、という一連の流れ自体は「家族」というテーマのピックアップとして上手いこと要素の回収もしてたし悪いものではなかったんだけど、やっぱりそこを劇的に感じ入らせるだけの牛島家の描写を圧倒的に欠いていたという問題点がどうしても首をもたげるんですよねぇ。組織のメンバー同士で共に困難に立ち向かっていく様、およびその中に滲み出る組織のメンバー同士という他人以上の何かを感じさせるやり取りといった描写が少しずつでも積まれていれば効果的に作用しよりグッとくる描写になり得ていたはずなんだけど、そういうところを怠り過ぎていたと言わざるを得ない...後々こういう描写に繋げる意図があるにせよないにせよ、目的を同じくして共に戦う者同士、というところを何の気なしにでも描いていればそれが少なからず意味を持って今回の描写は引き立ってたと思うんだけど、そもそも牛島家の面々が絡むシーン自体少なく、あまつさえつい最近までろくすっぽ何かするでもなく一緒に司令室にいるシーンが描かれるばかりだったんじゃあどうしようもないし

 

そしてある意味一番問題だったなと思うのが、ここにきてやっとかよ、って感じで取り上げられた「一輝の記憶消失」の問題のピックアップ。ぶっちゃけた話もうロクに触れられもしないまま最後の方まで行くことすら覚悟してた節もあったのでここで触れたこと自体は一先ず安心、というところではあったものの、やはり他の問題と並行している中でどうしても「んなことよりも」レベルでしか扱われていない感が強すぎるのはどうにも...といったところなんですよね  「記憶が消えるスピードが早くなってる」とか言われたって「そらその事実が明らかになってからずっとろくすっぽ気にもせずバンバカ変身してたからやろがい」ってなっちゃうんすよ  一輝本人がそういう心持ちで覚悟してやってる節があるのは窺えるし、バイスが積極的に気にして気を遣ってもいる(色んな質問して症状のほどをそれとなく確かめようとしてたり、ギフ様との和解を見出し戦わない方向を見出そうとしてたりしてる(この辺最近示されたギフ様の境遇と繋がりそうな予感も)の可愛げあって好きなんだよな)ので全く問題視してないわけではないんだけど...やっぱりそれが明らかになったきむすばさん回前後で、そこについての覚悟をしっかり1話使って固めるくらいのことをしなかったせいでずーっとネックになり続けてんだよなぁ...うーん

 

という感じで今までの話の組み方とのバランスの悪さが響いてるのが感じられてしまった今回の色々の描写でありましたが、その中でも唯一、ようやっと再会とあいなった狩崎とヒロミさんの関係性の描写は今までの関係値の蓄積とのバランスが絶妙で実に良かったなと素直に思えたポイントでした。戦友であるヒロミさんを救うほぼ唯一の策だったとはいえ消極策で結果的に彼を苦しめてしまった罪を背負い、許されないのを是としてあくまで露悪的に振る舞いつつ、ケジメとして謝罪する筋を通す狩崎その気持ちを汲み、個人的な感情も込みでか言葉をロクに交わしこそしなかったものの、別れ際のように殴りかかって止める動きをしたり彼から託された役目をしっかり引き受けたりと熱いパッションを静かに感じさせたヒロミさん、もう真っ当に肩は並べられないかもしれないけど同じくする想いの下で互いの覚悟を受け止め合う姿は今までの関係性ともしっかり噛み合って気持ち良く見られました。ヒロミさんがいることによるドラマ的なバランスの持ち直しはやっぱり大きいように思うので、大二周り等を中心にせめてしっかり見せていって欲しいなぁ...

 

以上、リバイス第39話でした。毛利さんならではの強みがしっかり出てリバイスという作品の見所の整理などが為されたものの、今まで積んできた負債のデカさを逆により痛感したというなんとも複雑な気持ちになる回でした。このタイミングでその処理を任されたような形になった毛利さんには正直同情するところである

率直に言って期待値はもうどん底なのだけど、まだ一応光るものはあるというか、膨らませようはあるかなという感じでここから伸ばせる部分は見出せるところではあるので、その辺でどうにか跳ねないものか...

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた