AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

罪と愛

仮面ライダーセイバー

「深罪の三重奏」

感想レビュー

 

 

久々のセイバー記事DA☆ZO!!

セイバーのタグ付けて書く記事は今年の2022年1月に書いたビヨジェネ記事以来なので実に半年以上ぶりなんですね ご無沙汰〜〜〜 もっと早くに深罪観て書いてりゃご無沙汰でもなかったろってのは禁句な!

 

というわけで今回は仮面ライダーセイバーのVシネ作品「深罪の三重奏」をようやくもって視聴したのでその感想をつらつらと書いていく記事であります。上映後よりセイバーファンの方々を中心にウチのTLでも度々話題に上がっていた本作、私は個人的にセイバーという作品にそこまでグッと入れ込めたわけではなかったというところでシンプルにあまり食指が伸びなかったのと、本作と同じ座組がかつて手がけた「ゴースト RE:BIRTH 仮面ライダースペクター」に似た雰囲気を勝手にほんのりと感じていたことにより発生していた「またああいう感じのテイストなのがウケた感じなのかなぁ...言うたかて同じような感じでやってどないなもんやねん」という逆張り精神がそこそこ強かったのとで正直言ってなかなか観ようという気になれず、それでもいつかちゃんと観なきゃなと思いつつ引っ張りに引っ張って半年以上寝かせる形になっていたのですが、この度諸事情により観るきっかけが生まれたことでようやく視聴と相成りました。半年以上というが具体的には約7ヶ月である 長すぎぃ(

ま何はともあれ評判自体は上々なので期待半分、一方でまだ斜に構えていて不安半分、みたいな心持ちで挑んだ今回の視聴でありましたが、いやはや評判通り凄い一作でしたね...ここ最近はライダー絡みのVシネ・番外作品はちょっと微妙なのの割合多しという感じだっただけに、なおのことガッと心掴まれる作品に久々に出会えた興奮が大きかったし、これはビビッときましたねぇ

 

まず何が一番に目を惹いたかって、やはり今までのライダーシリーズには無かった全く新しい質感の映像・絵作りの妙だったなと。

元より先発組の感想をちらほらと目にしていた限りでも「一般ドラマを意識したような感じを入れ込んで作ってる感じが良かった」的な声はかなり多くて気になっていたところではあったのですが、特撮ドラマならではなけっこう活き活きと動く感じではなく割と固定のアングルとかを多用してる感じのあるカメラワークだったり、全体的にシックな雰囲気を醸す少し落ち着いた感じのライティング等の演出だったりと、たしかにどちらかと言うと明らかに普段観てる仮面ライダーシリーズ(に限らずとも特撮ヒーロー作品全般)とは違う一般ドラマ的な絵作りが主に日常パートを中心として全体通して目を惹く構成になっており、これはかなり新鮮で面白いポイントでした。映像面以外でも、近しい者同士でけっこう遠慮なく軽口叩いたりといったキャラクター同士の会話劇の中における距離感・関係性の絶妙な描き方が良い感じに日常における人間味・温かみを含んでいてとてもナチュラルに没入できて良かったり、ここぞの見せ場以外ではBGMを流さない無音のシチュエーションを多く入れ込む演出が前述のキャラクターに会話劇や言動に良い具合に集中して聞き入ることのできる下地になっていたりと、しっとりとした質感の人間ドラマを良い感じに引き立ててくる演出が随所で良い働きをしており、キャッチーで派手さのあるキャラ付けが多いTV本編(子供向け作品ではあるのでそっちに振るのは媒体として間違いでないけどね)とのギャップも相まって凄く引き込まれるところでありましたね。飛羽真をはじめとした登場人物達が凄く身近に感じられるような日常感濃いめのリアルな雰囲気が凄くスッと馴染む感じがあって、それがTV本編とはまた違った形でキャラクターの言動を活き活きとしたものに感じさせてたかもなぁと こういう演出のテイスト、よくよく考えれば平成1期の日常パートとかではけっこう多かった印象あるし、映像の質感とかこそまた少し違うけどある意味回帰したとも言えるかもね(その安心感がまた世代的なところでハマったのもあるかも)

そんな日常パートと並行して描かれる事件パート的な部分も、今までのライダーシリーズの映像演出とは大きく異なったサスペンス調の質感となっており強く惹きつけられたところでありました。冒頭の(あれ、これ飛羽真か...?いやでもなんか...)みたいな違和感が良い意味で気持ち悪いPOV視点の描写や、剣士達の存在が次々に消滅し飛羽真達の記憶が周囲の人々から無くなっていくことで登場人物達の繋がりが静かに緩やかに断絶されていく展開運びなどのあの背筋をつうとなぞられてるかのような恐怖感がじんわりまとわりついてくるホラー味ある演出が、日常パートのシックな感じからのナチュラルなシフトでよりゾッとするんですよね...ブレイブvsファルシオンのとこの亡者のシーンみたいな一気にエッジ効かせたホラー映画顔負けの演出も入ってくるしな

総じて、今まで見たことのない、やったことのないようなものを意欲的に取り込んだ映像面・演出面のユニークさが無二の存在感を発揮していて、この点だけでも相当に評価は高いなと。ライダーVシネの歴史に残るインパクトでしたねぇ

 

一方、そんなライダー作品らしからぬ演出の際立ち方のみが評価を支えているかというと決してそうではなかったのも本作の良きポイント。

飛羽真、倫太郎、賢人のセイバーのメイン3ライダーの8年後の生活や人間関係等にフォーカスし、そこに「かつての剣士達の戦いで生じた犠牲」という要素が絡むことで巻き起こっていく波乱を描く、というのが本作のストーリーの大筋となっているのですが、様々な困難に立ち塞がられつつも陸の父親として彼の心に真っ直ぐに向き合ってゆく飛羽真自身の父・真二郎との邂逅により戦いの中で犠牲になっていった者達のことを自覚し苦悩しながらも剣士として生きる強い決意を示す倫太郎愛すると誓った女性・結菜との間に横たわっていた壮絶な因縁を知り1人の男として逃げずにそれに相対する賢人、という感じでこの3人が人間としてかつての犠牲が生んだ因縁に向き合っていく物語それぞれに満遍なく、且つ強力にフォーカスした見応えある群像劇が非常に味わい深く仕上がっていているのが本作はとても面白く、愚直ながらも信念を持って生きる者達の人間ドラマそれを様々な登場人物ごとに重厚に描く群像劇、といった「仮面ライダーセイバー」という作品のドラマ面ならではの魅力がきっちりと押さえてあったのがほんとに素晴らしかったんですよね。「剣士」という独自のファクター登場人物達のどんな時でも根っこまではブレない強い「信念」といったセイバーを構成する骨子や核が随所でめちゃくちゃ魅力的に光り本作をがっちりと構成しているし、傷つきながらも何度も立ち上がり大切な人のために戦う飛羽真人一倍に強い剣士の誇りを貫く生真面目さと芯の強さを見せる倫太郎戦うべきところでしっかり戦う意志を突き通しつつもここぞでは自分自身を犠牲にして誰かを救いたい・守りたいと愚直に願う賢人、と人間味溢れる姿で熱く物語を彩るメイン3人の立ち回りおよびそこから滲む人となりがどれもTV本編で描かれたものと同じで、これは「仮面ライダーセイバー」だなとグッと染み渡る味わいが凄く良かった。なんだかんだでセイバーという作品の魅力はやはり「人間」にこそあるなとは思うところなので、8年を経た変化はありつつも根幹は変わってないぞというキャラクターの強さ、そこから生まれる安心感と熱さをストーリーの肝として押し出してたのはグッドだったなと  年月を重ねて落ち着いた雰囲気はありつつも相変わらず気の置けない緩いやりとりを見せてくれる飛羽真と芽衣だったり、本作の事件を経てお互いのことを忘れてしまった中でもお互いを励まし支え合う関係になっていく倫太郎と賢人だったりと、変わらない関係性や絆の深みの表現が良きであった

 

勿論メイン3ライダー達に限らず、他のキャラの描写も実に魅力的で良かったところ。真二郎や結菜、そして本作のもう1人/2人?の主役といっても過言ではない間宮・陸といったゲストキャラ達も、妄執・激情を内にて燃やし目的を果たそうとしながらも、大切な者へ抱く愛故の非情なばかりでない一面を最期の間際に垣間見せるという「愛」が共通するテーマとして通されており、それぞれの動向・描写は別々ながらもそのテーマの一貫性共通性がそれぞれにリンクする形で互いの深みを引き立てているという描き方が実に鮮やかで、一ゲストキャラとしては破格なかなり良い存在感を発揮していてこれがまた素晴らしいかな、という感じでしたね。ラストにおける「深罪」が「親愛」へと転じる演出は、ある意味このゲストキャラ達の内面に沿ったものだったのかもな、と  セイバーという作品はやはり敵も味方も多かれ少なかれある種の人間味みたいなものが魅力として設定されていると思うので、本作のゲストキャラ達もそこにバチっとハマったって感じで良かった

TV本編を彩ったレギュラー陣に関しても、笑顔や立ち居振る舞いがどことなく柔らしくなって丸くなったのがほんのり感じられた凌牙や、たくましさと荒々しさがグッと増して渋くなった蓮など、かつてと変わらぬ良さをほんのり感じさせつつも8年の年月を経たグッとくる変化を味わい深く見せてくれる人が多かったりしてなんだか沁み入ったし(その分体質・性質的な理由で老いない(老いるのが遅い)から全然見た目が変わってないソフィアとユーリは「変わらなすぎだろ!?」的な感じでかえって目立って面白かった。w)、キャラクター面は総じて良い組み方されてましたね

 

加えて、全体通しての伏線の配置とその回収がバランス良く為されたサスペンスミステリー風味強めな作劇も実に見応えがあって面白かったところ。そもそも何故本作は“8年後”というやけに長い間隔を空けた話なのか?幼馴染としてあんなに飛羽真と仲の良いのに間宮は何故今になって出てくるようになったのか?同じゲストキャラの真二郎や結菜はちゃんとフルネームがあてがわれているのに間宮は「間宮」としか表記されず陸も「陸」としか表記されないのか?といった色んな引っ掛かりがしっかりストーリーの根幹に関わる要素となっててそれらがリンクして腑に落ちてゆくカタルシスある展開をはじめとして、1時間弱の一本の作品の中での段階的な魅せが凄く気持ち良かったのがたまらんかったですね。冒頭のPOV視点のシーンの一瞬不自然に動きが止まる倫太郎と何かに気付いて忽然と消える蓮の描写の真実が終盤に明らかになった瞬間や、間宮と陸の真実が徐々に明らかになっていく過程は特に痺れた  この辺は緻密な世界観設定等をかなりかっちり組んでそれをキャラクター同士の絡みなどを経て段階的に開示し全体のストーリーを積み上げてゆくスタイルが特徴の高橋P作品ならではの作劇の強みが上手い具合に凝縮・抽出されていたなという感じで、ここもまたセイバーという作品の妙味が活きたポイントだったなと感じますね(むしろ一本の作品の中にグッと圧縮してコンパクトに伏線の配置と回収をバランス良くまとめられたからこそ、とも言えるかもですね やっぱり高橋P作品はリアルタイムで追う長期スパン作品よりも、単発でかっちり固めるタイプの方がハマるのかもなぁ)

ドン・フィナーレアンドリュー on Twitter: "セイバー深罪の○○○○、解釈としては○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○、みたいな感じで捉えて良いのよね 多分 https://t.co/zi01rxQ06x" / Twitter

 

戦闘シーンの演出に関しても、前述した今までのライダーシリーズには無かった一般ドラマ寄り(リアル寄り?)の映像の上で繰り広げられる分凄く新鮮で面白かったですね。美しいエフェクトや外連味ある構図をここぞでバチンと決めて魅せてきたら氷獣戦記やアラビアーナナイトのいつもとまた一味違った映え方の美しさもさることながら、1人強化フォーム等を披露することがなかったものの基本フォームでの炎纏うキレキレな剣戟アクションで上記2体に全く負けてない、むしろそのカッコよさで一番に存在感を発揮し見せつけたまであるセイバー・ブレイブドラゴンのクライマックスでの大立ち回りも最高でした この辺は上堀内監督のエモーショナルな戦闘演出が綺麗にハマったなって感じでしたね(TV本編だと今までのストーリーへの没入度とかも相まって若干ズレを感じて乗り切れないこととかもある上堀内監督演出だけど、一本のVシネや映画のまとまったストーリーの中だと流れでしっかりお膳立てとかもしやすい分高い打率でハマる、って印象ですな)  ファルシオンアメイジングセイレーンに関しても、ビジュアルが公開された当初は無銘剣やブレードライバーのオレンジのカラーに対してモノクロのカラーが浮いててなんか微妙、ということであまり好いてはいなかったものの、実際の本編においては本作のシックな雰囲気に凄くマッチした落ち着きあるデザインという印象に纏まって、なんだかんだで敵役として良い存在感が発揮されてたので良きでした。どことなく毒々しい印象のあるボディパターンもサスペンス・ホラー風味の空気感と合ってて良い馴染み具合だった

それにちょっとしたことではあるけれど、変身時のBGM等をフルでデカデカと鳴らしたりはせず、最低限必要なところで必要な分の音声読み上げを入れるのみにしてたのはかなり好感。上述の通り本作はシックな感じの絵作りが特徴なので、そこにおいてガンガン派手な玩具音声とか殊更に入れてたら雰囲気が崩れてた可能性もあったし、思い切って抑えめにしてたのはとても良い采配であったなと 全体の空気感にかなり気を遣って演出してたんだなぁというのが感じられましたね

 

そしてラストは、全てが収束して再び平穏が戻った世界の中、飛羽真達や本作のゲスト達がまたそれぞれの人生を歩んでゆく情景からEDへと移って締め、という形に。犠牲になったものは戻らないけれど、それでも色んな出会いや交流を経て更なる愛を知り、人は前を向いて自分の足で進んでいける、的なビターさがありつつも希望の滲む仄かで優しいメッセージを込めた穏やかな雰囲気が凄く沁みるラストでしたね。タイトルと曲調でその辺のメッセージ性を最後の最後までしっかり貫かせたEDの「Bittersweet」も名曲であった。沁みたね...

 

以上、深罪の三重奏でした。ライダーVシネ作品、どころか仮面ライダー作品の歴史に新たな風を吹き込んだと言っても過言ではない挑戦的な作品でありつつも、きっちり「仮面ライダーセイバー」の魅力にも満ちていてそれが味わい深さを引き立てている作品でもある、というとても絶妙な一作であり、セイバーにあまりハマってなかった自分としてもこれは文句なしに名作であると太鼓判を押したいですね。ビターなテイストやシリアスな要素はありつつ、「信念」を貫徹させ、「愛」を根幹に置いて熱く優しく気持ち良く締め括ったストーリーが実に素晴らしかった。ちょっと難解な部分もあったりはするけど、その辺に関しても最低限読み解ける材料は本編中で描いてるし、敢えて多く語りすぎないようにしてるのがしっかり文学的な行間というか想像の余地になっているのでこのバランスも良かったですね(むしろその文学的なテイストが「小説/物語」をテーマにするセイバーらしいとも言えるかも)  セイバーという作品の魅力(および高橋P作品の持ち味)がぎゅっと凝縮された作品とも言えるし、むしろこれを通じてセイバーの良さに実感や感動を伴う形でグッと迫れたかもなので、そこもまた良きでしたね  「作品の締め括りにもなる後日談エピなのに主人公があまりピックアップされない」問題を、飛羽真もメインに据える(しかもきっちり大トリを務める配置にする)形でしっかり解消してたり、などといった近年のライダーVシネでたまにありがちな難点が噴出しない作りだったのも凄く良かったですね。「TV本編で説明しきれなかった/処理しきれなかった部分の補完等に執心してTV本編最終回の余韻に切り込みすぎてしまう」的な問題に関しても、「剣士達の戦いによる犠牲」には切り込みつつも、あくまで本作の題材というところに留め、そこに向き合う飛羽真達の描写に注力して一本のエピソードで完成させる、といった感じでまとめててかなり良いバランスだったし、そういう意味でも近年のライダーVシネの中では異色且つ理想形かなという感じね

強いて言えば飛羽真・倫太郎・賢人のストーリーが一本の話に詰め込まれた分やや物足りなく感じたところがあった感は否めなかった(前述の通りどれも良い濃さを醸す形で描かれてはいるんだけど、真二郎の背景をはじめ、もっと尺あれば深められたろうなぁ...!ともったいなく感じたところもあったしね)ので、エグゼイドトリロジーみたいな3部作構成でメイン3ライダーそれぞれに各エピソードでフォーカスしたやつを観たくもあったなぁとは思うところ。セイバーにあんまハマってない身で言うのもなんだけれどそのくらい面白かったのよね あのシリアスなテイストの話を、真実を最後までぼかす形で3段階にも分けて描いたらいよいよ視聴者の胃がヤバいかもだが() でもまぁ一本の話に詰め込んだからこそ群像劇的なスタイルが引き立ったとも言えるし、ここは良し悪しかな

ともあれ素晴らしい一作でありました。セイバーの締め括りに実に相応しかったなぁと思います ありがとうございました!

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた

 

 

 

ありがとう

お前はもう大丈夫

 

 

 

仮面ライダーセイバー

深愛の四重奏」