AnDrew’s小生意気レビュー記

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支配する者 支える者

ウルトラマンデッカー

第10話「人と怪獣」

感想レビュー

 

 

ウルトラマンで使われたテレスドンのモノホンスーツがめちゃくちゃ劣化して別怪獣扱いとなったデットンが本編でセットだったサドラが、20年近い年月を経て黒ずみくったくたに劣化したスーツとなってネオメガスくんにボコされた亡骸として登場してるの、なんとも言えない風情がある 「お前もいずれくったくたになるって言ってんだよぉ!!」とはデットンくんの談(言ってない)

 

謎の怪獣ネオメガスを巡りGUTS SELECTが奔走する中で、カイザキ副隊長の背景や信条に深く迫っていく内容となっていた今回のエピソード。散発的で細かなフォーカスに留まってた副隊長のガッツリメイン回となって一気にキャラ的な深みが増したドラマ面もさることながら、ネオメガス周りがめちゃくちゃ良かったんですよねぇ今回...いやぁ観たかったテイストズバリって感じでした

 

カイザキ副隊長といえば、怪獣研究のエキスパートとして怪獣への対策を担う縁の下の力持ち的な立ち回りややり取りが目を惹くさり気なくも頼もしさのあるキャラクターとなっていましたが、今回はネオメガスの行方を追うための調査指揮を行う姿で怪獣研究の人としての頼れる様をより掘り下げつつ、かつて故郷が怪獣に襲われた経験から怪獣に立ち向かうために怪獣研究に携わるうち、人間が怪獣の出現を引き起こしている側面もあるという決して怪獣が悪というだけではない実態も知るようになっていった、という怪獣のエキスパートとしての真摯な信念の根幹となる背景や想いを描いたことで彼女個人のキャラ性をグッと深めてきたのが凄く良かったところでしたね(怪獣出現にまつわる話の中で「エタニティコアの活性化」というトリガー当時における要因がさり気なく話に挙がってたのが接続として程良くて何気に好きなところ)。コスモスやXといった怪獣との共生を主題にした作品で特に取り上げられることだけど、怪獣も生物であり動物である以上侵してはならないテリトリーや生態はあるわけであり、人間が不用意にそこを侵すのではあれば怪獣が人間の下に現れ牙を剥くのはさもありなんなんですよね...そのテリトリーや生態の在り方や形も怪獣それぞれによって違う故に、一概にみんな仲良くというのは簡単にはいかないし、現実の野生動物との共存にも通ずるけど難しい問題ですわね 「怪獣として」というのと同時に「生物・動物として」というところで彼らに向き合う者として副隊長がそこをしっかり理解してるとこが描かれたのが良き

 

またカイザキ副隊長は新生GUTS SELECTのナンバー2としてルーキー達を厳しくも優しく見守ったり、隊長と砕けた距離感で支え合ったりと他のメンバーをしっかり支える関係性も見応えあるキャラですが、そんな副隊長を今度は隊長やカナタ達が支える姿がたっぷり描かれてその辺がよりいっそう掘り下げられていたのがまた良きところでありました。根を詰める副隊長を心配しみんなが助言や励ましにやって来る、という構図こそ割とシンプルなものではあるけど、主要キャラ達のこういう細かなやり取りあってこそ彼らの信頼関係というのはグッと伝わってくるところであるし、何より副隊長は今までのエピソードの中でカナタ達のことをしっかり見守り時に明るく労ったりと細かなところで彼らを支える存在であることが強調されてたからこそ、ここでそんな彼女のことを心配して支えようとしてくるみんなの想いがより引き立ってるというのが良いんですよね。デッカーはやはり一朝一夕の派手なキャラの魅せ以上に、こういう地道なところからのキャラの積み上げをしっかりさせてるのが相変わらず巧みだよなぁ 「陣中見舞いです」と副隊長に缶コーヒー手渡すカナタや少し遅れて副隊長の下にやって来て照れ隠し的に誤魔化すソウマみたいなベタだけどここぞでハマると凄く味わいある演出もグッド

あとやっぱりムラホシ隊長とカイザキ副隊長の関係性は見ていて凄く安定感があって良きだなぁと今回改めて。隊長が何か間違ってたら副隊長がズバッと言うし、隊長の方もここぞで副隊長のことをちゃんと見ていて助言を送るしと、年長者同士の強い信頼がしっかり完成されてるのは見ていてとても気持ち良いですねぇ 言いたいことしっかり言い合える砕けた雰囲気が築かれてるの凄く良いよね 序盤からとても深みがあって好きなポイントなんだけど今回も副隊長周りを固める上で良い描写になってたなぁ

 

そして今回のもう一つの見所・新創獣ネオメガス周りの展開、こちらもめちゃくちゃ面白かったところでありましたね。ダイナを代表する怪獣の一角であるネオザルスをガッツリオマージュした怪獣ということで、そのバカカッコ良いビジュアルも相まって今回の話の放送前から期待値はかなり高かったのですが、狂気の科学者と化したシゲナガ博士のクローン技術により生み出され、怪獣兵器としてコントロールされる存在という、原典ネオザルスの設定を想像以上に色濃く踏襲し良いドラマ性へと昇華させた怪獣に仕上がっていてとても満足度高しでしたね。地下でチューブに繋がれ、狂気の科学者の叫びと共に地上へ上昇していきその力を見せつける人造怪獣とかいう絵面を令和の世に見られる幸福たるや...という感じですよ  あの地下施設の薄暗く無機質な雰囲気の中怪獣が鎮座する絵面の威圧感、昔めちゃくちゃ見たやつすぎてマジ感動でしたわね...デザインも元のネオザルスの超かっぴょ良いデザインを上手くリブートしていて、令和の世に降り立った新たな王道スタイルの怪獣の1体としてめちゃイカしてて良さしかなかったすね スーツはグルジオの改造みたいで、顔とかにかなり名残はあるけどそれが気にならないレベルの素晴らしいアレンジで感服よ シゲナガ博士が偶然発見した怪獣が素体となっている」という点もネオザルスの設定を踏襲したものだったけど、素体となった怪獣のビジュアルが鮮明でないことで「もしかしたらあの怪獣は別宇宙から飛来してきたグルジオだったのかも...」的な改造元との共通が視聴者各人の想像に委ねられるレベルで示される形になってるのも良い塩梅の遊び心で好き

そんなネオメガスを語る上で欠かせない存在たる、カイザキ副隊長の元恩師でもあるシゲナガ博士の存在感も今回のエピソードにおいて実に強烈でありました。ダイナのオオトモ博士に負けず劣らずの狂気を醸した野村さんの演技のインパクト(涼しげに自論を説く姿とネオメガスを煽る時の異様な高揚の緩急がこえーのよな)もさることながら、怪獣を完全に制御し支配することこそが正しいと説く狂気に囚われた姿が、理想論ながらも怪獣を正しく理解し少しでも良い形を探し続けていくことが必要と説くカイザキ副隊長の信念との対立構図を強力に打ち出していたのがドラマ面を凄く良く引き締めていたのがとても面白かったですね。怪獣のことを知っていくうちその圧倒的な力に恐怖し怪獣を制御し支配することを是とするようになった、というシゲナガ博士のあのキャラ性は、怪獣の恐怖を一度味わいながらも、怪獣を知っていくうち人間と怪獣がどのように付き合っていくべきかのより良い形をもっと探していくようになったカイザキ副隊長の哀れなネガそのものであり、そんな2人がそれぞれネオメガスとデッカーの手の上で睨み合い対峙する構図は、そんな2人の鏡写しな対比を投影したドラマ的な文脈がバシバシ乗っていて、「共に信頼し合い支え合う存在であるウルトラマンと副隊長」「制御し支配する者とされる者の関係である怪獣とシゲナガ博士」的な更なる対比も相まって凄くグッときたところでした。ほんとここ最近でも一番と言って良いくらいに強力な演出の巧みさを感じられたところであり、改めてデッカーという作品の文芸面のパワーに痺れましたねぇ

 

からのデッカーvsネオメガスの戦闘パート。原典のネオザルスからして強力な怪獣という印象が色濃くあったので、そこのインパクトをネオメガスはきちんと踏襲できるだろうかという声も放送前は少し見かけてましたが、そんな心配など杞憂と言わんばかりの、デッカーを凄まじく圧倒するネオメガスのパワフルなバトルが見応え満点な素晴らしいバトルになっていてここは大満足でしたね。シゲナガ博士の制御が無くなると共にタガが外れたかのようにアクションがよりスピード感と迫力のあるものになっていく演出も獰猛さを強く印象づけていてめちゃくちゃ恐ろしく、1匹の強豪クラス怪獣としても偉大な原典の名を背負う怪獣としても全く恥じない名バウトを見せてくれてとても良きでした デッカーの攻撃を的確に捌くさり気ないテクニカルさ、倒れた状態からデュアルソードで防御したデッカーを後方へ押し出していくパワフルな熱線の演出、押さえ込まれた状態からセルジェンド光線発射に移ったデッカーのモーションに即対応し熱線で応戦する機敏さと、ネオザルスに全く負けてない破格すぎる強さを見せつけてくれて怪獣クラスタの男としては超アガりましたね...トドメの一撃をかまされ崩壊状態になってなおデッカーの肩に食らいつき持っていこうとするタフネスと執念で倒される直前にさえ格を見せつけてくるのヤバすぎたよね その分デュアルソードの活躍がちょっとしょっぱくなったのは惜しいところであったが(前回がサポートメインだったのもあってデッカーの使用時の活躍がまだちょっとパッとしないだけに余計にね)。個人的には武器戦闘よりステゴロが多いのが全然良いのだけどやっぱあるなら使った方が良いし販促もじゃんじゃんやった方が良いと思うじゃんよ!?

 

しかしデッカーの方もそんなネオメガスのインパクトには負けてなかったのが今回また良かったところ。デッカーとガッツホークの合体形態とかいう予想外すぎる特大の魅せをかましてきたのにはたまげましたねぇ 火の鳥じみた登場がかっちょ良すぎるのよ 玩具でもバッチリ再現可能というのがニクい こんなん子供はじゃんじゃん真似しちゃうよ

このホークデッカー(仮)、ウルトラマンと戦闘機の合身というありそうでなかった新規軸の魅せのインパクトもさることながら、シゲナガ博士とネオメガスの支配する/される関係へのカウンターとなる支え合う戦う姿という文脈があるのも熱いし、何よりカナタ/デッカーとのバディとしての深みある熱い関係性をHANE2が見せつけてくる流れがあったのが最高に痺れましたね...!デッカーの危機にカナタの名を叫びながらホークで飛び込んで救い出す姿「俺が避ける!お前は真っ直ぐ前だけ見てろォ!!」と言ってネオメガスの攻撃を回避しながらデッカーのフィニッシュへ繋ぐ立ち回り、ともうこれ完全に最高のバディすぎるんだよな...ずっとべったりってわけじゃないけどこういうここぞでバディに相応しいところを最大パワーで見せてくるのもう感服せざるを得ないんすよ 他キャラの掘り下げもやりつつこういうところもバランス良く印象づけてるのほんと強い...

そしてラスト、連行されていくシゲナガ博士へ「共存なんて大それたことは考えていないし自分にはできないかもしれないが、争いを避けより多くの命を救う道をこれからも探し続ける」「今は無理でも人間はいつか必ず答えを見つける」とカイザキ副隊長が想いを説く形で締めへ。理想論かもしれないけれど確かな想いを持って人間として怪獣と向き合い続ける信念を示した姿がカッコよかったね シゲナガ博士は最後まで「完全に滅ぼすか、支配するか、どちらかを為すまで人間と怪獣の戦いは終わらない」という想いを変えないままだったのが切なかったが...(すれ違ったままに終わるビターな締めがなんとも言えなかったね)  ダイナにおけるネオザルスの回に登場したオオトモ博士が「怪獣との共存を謳い研究をしているもののその実怪獣を支配することばかりが主になっており、その傲慢の末に自身が生み出したネオザルスに滅ぼされる」というキャラ性をしてたのを思うと、シゲナガ博士は「怪獣の制御にこそ成功したけど、その制御を絶対として怪獣を縛りつけ支配するという更なる傲慢と狂気を露骨に表すようになってしまった者」というオオトモ博士の闇を別のルートで更に深めた存在と言えるし、逆にカイザキ副隊長は「人間の傲慢に囚われることなく怪獣にも真剣に向き合い、人間としてのより良い在り方も追い求めようとしていく者」というオオトモ博士の鏡写し的な部分も有しているとも言えるしと、この両者がオオトモ博士の持つキャラ性の巧みな分解と再構成でできてるようにも思うのでそこもまた見事。ほんとダイナの要素のオマージュが上手すぎるよな...

と、ネオメガスの一件は終わったように見えるけど、玩具情報で知っての通りネオメガスの因縁はまだもうちょっとだけ続くんじゃ案件なんですよね...“あの怪獣”の発売タイミング的にもどうも“あの怪獣”は折り返し前の中ボスみたいだしなぁ  今回の描写からしてネオメガスの強さが折り紙付きなのは見ての通りだからボスキャラとしても申し分無いし、シゲナガ博士のパトロンや回収したネオメガス細胞という布石も残しててお膳立てはバッチリだから登場も盛り上がること間違いなしだしね デッカーをマジに追い詰めたりとあれだけ強力だったネオメガスがまた来るの恐ろしすぎる... 
シゲナガ博士に関してももしかしたら今後また出てくる可能性はなきにしもあらずだし(凄く存在感あるキャラだからまた出て欲しいのもあるけど、ダイナベースの本作的に、終盤にもしかしたらあるやもしれないF計画的な何かに関わってこないとは言い切れないのよね)、まだまだ因縁は終わらないかもしれない...コワイ

 

 

以上、デッカー第10話でした。カイザキ副隊長メイン回というところを軸に彼女のキャラを多角的により深掘りしつつも、ダイナのネオザルス回の要素の換骨奪胎が見事なドラマも非常に面白いとても素晴らしいエピでした。平成シリーズ好きにはたまらない構図や演出、ニュージェネならではの新鮮な魅せのどちらもガッツリ味わえたし、ほんと最高にアガったね...次回も新たな要素の登場でまだまだ波乱が起きそうだし、まだまだ期待できるぜデッカー

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた