AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

カイザキ30代

ウルトラマンデッカー

第20話「らごんさま」

感想レビュー

 

 

「カイザキサワ副隊長30代」をやたら擦るのはやめてあげてくれ() そして階段登りがキツい30代の話は後々自分にも効いてきそうだからもっとやめてくれ(

 

「ラゴン様」なる存在の伝承が伝わる村で繰り広げられるミステリアスで少し切ない物語を描いた今回のエピソード。イチカとカイザキ副隊長の女性コンビを軸にしつつ、実質的にはイチカメイン回という感じで展開した話になりました。イチカはキャラクター的に他と比べるとちょっと弱いと感じる面もありもう一つパンチが欲しいなと思っていたところではあったので、ここでイチカの趣味等の掘り下げやスフィアの影響で人々が辛い想いをしたり自由に夢を追えなくなったりした世界で抱く感情へのサイドのフォーカスを行い、彼女のキャラのディテールをよりグッと深めてきたのは良きでありましたね。第1、2話辺りを筆頭に序盤に強く強調されてたけどやっぱりイチカの原動力はそこによるところが大きいというのは今も一貫してるんだなと

そんな今回のエピを担当したのは中野貴雄さんと田口清隆監督のオーブコンビ。古き良きウルトラシリーズに造詣の深いお2人が担当されたこともあってか、BGM抑えめの物静かな雰囲気のミステリアスな演出やけっこう分かりやすめの実相寺アングルの挿入など普段のライトな感じとはまた違った一昔前のシリーズっぽいSFホラー風味な質感の演出が多くあり、イチカと副隊長視点で進行しカナタ達の描写が殆ど入らない変化球のストーリー構成となっていたこともあって「ウルトラマンデッカー」としてはやや異質な視聴感で不思議な感じでした。ダゴンとかインスマス地方とかクトゥルフ関連のワードもかなりダイレクトに入ってきてて、そっちのテイストを意識してたにも窺える。とはいえ、こういう感じで主人公にも殆ど描写を割かず特定のキャラをピックアップしてストーリーを展開させるスタイルや普段と趣をがらりと変えてくる演出、およびそこから生まれるバラエティ豊かさこそが本来ウルトラシリーズの魅力であったわけなので、このガラリと雰囲気変えてきた感じはある意味懐かしくもありましたね やっぱりこういう感じに各エピごとに色んなスタイルで描くやつは今のシリーズでも積極的にやって欲しいな 最近のシリーズだと普段メインキャラ同士がよく一緒に動いてて描写がひととこに収まりやすいから特定のキャラをガッツリ主役にするのはもっとやったってくれ(密な関係の描き方においてはアドバンテージなんだけどね)

 

話は戻って本編。ラゴンを祀る風習の存在する村で幼き頃ラゴンと友人として交流を深めるも望まぬ別れを経てしまった老人・浦澤さんとイチカの対話を軸としたストーリーが展開され、70年以上の人生の中で色んな人達との別れを経験したことでラゴンとの別れの悔恨を強く心に抱き続け、ラゴンのことを守ると共にいずれ一緒に遙か遠くへと行ってしまいたいと望んでいた浦澤さんと、スフィア襲来によってかつての仲間と引き裂かれたり自由に色々なことをできなくなった世界の理不尽に苦しみながらも未来を向き進み続けることを止めなかったイチカという擦れて過去に囚われ続ける者と苦難に立ち向かい未来へ進む者の対比を描き上げると共に、未来を信じるイチカが浦澤さんに手を差し伸べ今のこの世へ留める流れが強く目を惹きました。ガイアのルクーとおっちゃん然り、SEVEN Xのタカオと宇宙人然り、自分がこの世に在ることへの疑問やここでない遠い地への想いを抱く人々が未知なる存在と共に旅立っていくどこか切なくも不思議な視聴後感のある話というのは過去にウルトラシリーズでも幾つかあったので、今回の浦澤さんもかつて離れ離れになったラゴンと一緒に旅立っていく少しビターなオチになる感じと思っていたのでこの二人の物語のオチは最初少々意外に感じた面もあったのですが、イチカの信念にも表れている通り本作のテーマは「辛いことにぶち当たりながらも未来に向け進んでいく」みたいなところにあるので、そこにおいて言うと過去の心残りの中で足踏みを続け、心の拠り所をかつての友人が待つ誰の手も届かない世界に求め行ってしまおうとする浦澤さんを行かせてしまうことは決して正しいこととは言えなかったんだろうなと。だからこそイチカは全力で浦澤さんの手を取り引き戻したんだろうなぁ ラゴンを前に語らってる時どこか子供のような雰囲気になったり、ラゴンと共に彼方へと旅立とうとする中で子供の姿に戻ってたりする浦澤さんの画はノスタルジックでしんみりもするけど、あれも見ようによっては心残りのある過去への逆行/浦澤さんの心の上で止まり続けていた過去の時間の中での更なる停滞とも言えるわけだしな...(ラゴンに対し子供のような雰囲気で語りかける浦澤さんなんかは特に色々沁み入るものがあり考えさせられた。演じる竜のり子さんの名演が光っていたわね)

それでいてこの展開をただ浦澤さんを引き戻して終わり、で済ませず、イチカがその後も浦澤さんと共に語らう友人として交流してる様を気持ちよく描いて締めとすることできっちり希望ある後味の良さを持たせてたのが凄く良かったですね。ラゴンをはじめ去っていった者達との別れがあるだけでなく、今の時代にも大切な友人になれる者はいるのだという希望あってこそ浦澤さんを戻す意味はあったからね ただ優しいだけでなくその上でちゃんと責任も持てていたし、イチカは立派だったよ  ラゴンの方も浦澤さんとの別れを惜しんでたわけでなく、別れは来るものと分かってるように手を振ってさよならしていたし、それを受けて浦澤さんもきちんとお別れして心残りを無くすことができたのが良かった

 

特撮面も安定の田口監督という感じで、高クオリティなミニチュアやカーブミラーを活かした変わり種の戦闘シーンアングルなど面白さや見応え多しでとても良き。掃射や肉弾戦をぬめりでいなし、セルジェンド光線をしれっと耐え切ったラゴン、過去最強個体では???(戦い切りはしなかったので一概には言えないけど何気に映像上だとデッカーほぼ完封だったしな) 過去怪獣が現代シリーズ映えするようにしれっとクソ強になってるの好きじゃ

あと今回何気にダイナミックタイプが出てこなかったのも面白かったところ。ラゴンとの決着に必ずしも必要でなかったとはいえまだ販促の息は少なからずかかってるタイミングだろうに、ここで登場無しというカードを切ったのは凄かったわね でもその分話の雰囲気が引き締まるものもあったし好きなところ デュアルソードの前半の出番といい本作スタッフがあまり頓着ないとこあるのもそうなのかもだが 今後も必ず必要!ってわけでない時とかはこのくらい思い切って話の空気感を引き締めるスタイルとかとるパターンも増えたり増えなかったりするのかしら

 

 

以上、デッカー第20話でした。クトゥルフ的な要素が押し出されたSFホラー味がありつつ、ストーリー的にはデッカーのテーマ性も上手く落とし込まれた少し切なくも希望ある人間ドラマが良い味わいとなった良エピでしたね。近年で言うとかなり自由度高めにやれたエピって感じで改めて見ると一昔前の単発エピ的雰囲気があって懐かしさもあったなと(次回から本筋ゴリゴリ進みそうだしその前に、って感じでもあったのかな) 今後もこういう系統のエピはちょいちょいやって欲しいね 面白かった

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた