AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

悠久の孤独と親愛

ウルトラマンティガ

第9話「怪獣を待つ少女」

感想レビュー

 

 

白衣の医療関係者の準レギュラーキャラという役回りの妹がいたシンジョウ隊員を演じてた影丸さんが、後にコスモスで自分が白衣の医療関係者の準レギュラーキャラを演じてるの、別に意図してはないだろうけど今思うと不思議な巡り合わせですね...カワヤ医師はマユミさんと似ても似つかないだらしな男だったが() ここぞではちゃんと良い大人してたけどね!

 

建設現場からの謎のカプセルの出土を発端に現れる謎の少女サキや怪獣マキーナの存在が巻き起こす波乱を描く今回のエピソード。全体を取り巻くミステリアスなテイストとそれを取り巻く形で描かれるドラマが特徴的なストーリーとなっており、ここまでにも色々な趣の話が続いたティガのエピソード群のバラエティ豊かさをいっそうグッと深めた話でありました。後のエピソードにも度々登場しティガの物語に彩りを添える準レギュラーキャラの1人であるマユミさんもするっと初登場していてそういうとこでも印象深いですね。「シンジョウ隊員の妹」という設定でメインキャラの背景を一つグッと掘り下げ作品に奥行きを出す存在でありつつ、「兄のコネで入った」等の軽口やシンジョウ隊員との砕けた口喧嘩といったシンジョウ隊員との兄妹関係の深さを実際にしっかりと押し出したキャラ描写の細かな挿入により、一キャラクターとしても初回から良い存在感を出してストーリー全体を楽しく彩っているのが良いよねマユミさん こういう僅かなシーンの中などに光るきめ細やかなキャラ描写はティガのとても好きなところの一つである  ほんとに割と随所随所に登場してるからそういうとこでも印象に残るキャラよね 改めて後のエピソードでの登場が楽しみ

 

今回ストーリーとしては謎めいた少女サキの正体を軸にSFミステリ調の作劇で話が展開していく内容となっており、謎のカプセルや謎の笛との関係性人間にはあり得ない体質ダイゴの幼少期の話や過去のライブラリから明らかにされていく「サキが何百年も変わらない姿で存在している」という事実などが順々に紐解かれ、遥か昔に地球へ飛来し、迎えを待ち続けていた宇宙人の少女」というサキの正体へと至っていく流れが面白い話となっていました。劇中後半にちょっと出てきた1802年の資料の感じからしても、サキのモチーフはおそらく虚舟(※)の異国の女性といったところと思われるけど、そこから膨らませて今回の話が作られたと思うとより興味深いところですね

(※)虚舟...日本各地の民族伝承に記録された謎の舟(読み:うつろぶね)。1803年の常陸国の事例を筆頭に江戸時代頃に複数の目撃事例があり、常陸国の事例においては中に箱を持った異国の女性が乗っていたとされており、江戸時代のUFO飛来事件と見る声もある(記録にある絵の構図や雰囲気的にも常陸国の事例の年代の近さ的にも、常陸国の虚舟に乗っていたという女性がサキのモチーフになった可能性は高いかも、という話)。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%25E8%2599%259A%25E8%2588%259FWikipediaの虚舟のページ。参考までにどうぞ。

そのサキに呼び寄せられてきた怪獣マキーナもビジュアルや能力が良い感じに印象深く頭に残る存在感をしていて好きなところ。めちゃくちゃ硬い装甲という分かりやすい強みや、殻に籠った塊形態での突撃というインパクトある技といったところが戦闘でしっかり映えてるし、貝類を思わせるゴツゴツした全体のイメージや爬虫類的ないかつさと哺乳類(というか猫)っぽい愛嬌が程良く混じった顔立ち、という色んな生物のイメージがごった煮になって既存の生物とは全く違う生物のそれとして上手くまとまってる独特のデザインもユニークで面白いしと、あまり目立たないけど印象には残るところ多い怪獣よねマキーナ 小動物的な鳴き声や攻撃を痛がる仕草、サキに対する優しい振る舞いみたいな可愛げも所々に見られるのがまた好き(自分からはあまり積極的に攻撃してるげじゃなかったりと最初からうっすら悪いヤツじゃないっぽいと分かるキャラしてるの良いよね)

またこのサキやマキーナの背景や目的について重要な部分はきちんと明かしつつも、彼女がやって来たのはどんな星なのか?マキーナはどのような実態を有する生命体なのか?といったより深い部分については詳細をぼかし、程良く観る側の想像を掻き立てるような形での締め括りとしてたのもSFミステリ風味の強調として良きでしたね やっぱこの敢えて描き切らないことによる怪獣や宇宙人の底知れなさの演出、それによるストーリーの奥行きの創出はSFミステリーとしてのウルトラシリーズの魅力の一つだよなぁと  聞いてっかギャラクトロンくん(唐突な飛び火)

 

そんなミステリアスさが押し出された魅せが印象深かったサキ中心のストーリー展開ではありましたが、同時にいつ帰れるとも知れない故郷に想いを馳せて涙する心を感じさせたり、そんな中でも地球人に対して優しさや真摯さを垣間見せたりといったサキの人間味が彼女の魅力として光ったドラマ面も味わい深さになっていたのも良かったところでした。サキ、ダイブハンガーからボートで脱出する妙なアグレッシブさや自動地雷に気付かずマキーナに近付いて危ない目に遭いかける迂闊さみたいなちょっと変な行動も多いんだけど、それらも「何百年も待ち続けたマキーナにやっと会えたこと、ようやく故郷へ帰れること」への嬉しさが勝って周りが見えなくなってたと捉えると割とスッと行動と感情がハマるようになってるし、色々引っ括めて凄く純粋な人物なのが窺えて、且つそれに共感できる部分もあるようなキャラ造形してるのが良いよね(最終的に冷静になったら自分がかけた迷惑を謝れる素直さもあったし、とにかくめちゃくちゃ純な人物なんだなとなる)

総じて見ると、マキーナを地球に呼び寄せる行動やその際の笑顔などといった、見ようによっては不穏な侵略者っぽく見える言動が多く見られる前半からの、その奥底にあった悲しき背景や真っ直ぐな人間味が明らかになっていく後半、みたいな多段的な流れでサキのキャラを印象深くドラマとして昇華させた面白い構成になっててここがとても面白かったなと。家に帰れなくて心細くなっていた幼少期のダイゴに自分の立場を重ねてしばしの間心を通わせた過去回想のシーンも僅かな描写ながらもとても温かく、成長したダイゴのことをちゃんと覚えていてラストの別れ際に呼びかけるところまで含めて沁み入りましたね

 

という感じで全体的にミステリ面とドラマ面が良いバランス感で面白かった本エピでしたが、一つ強いて言うならば、サキの正体周りの解明は前半辺りに巻いて描くくらいのテンポでも良かったかな...!とは。正直前半の時点でもマキーナを呼び寄せる行動までしてて明らかに普通の人間じゃないよねという印象が強くなってはいたし、その状態で後半にサキが宇宙人であることを紐解いていく流れをじわじわと入れ込んできても(うっすら分かってはいるのを踏まえても)ちょっとインパクトには欠ける感じではあったので、そこが構成的に少し勿体なかった感じではありましたね 前半に「サキって人間じゃないのか...?」という印象を与える描写が積まれた上で、後半にマキーナ飛来&戦闘&サキやマキーナの背景解明、という流れの方が分かりやすかったかもなとは  ただここは尺を考えた上でのバランスの取り方とかが色々悩ましいとこだったかもだしなんとも難しいとこでもありますね(サキがボートで脱出する下りがナレーションの説明だけでこなされてたりとちょっと尺が詰め詰めっぽかったのは随所に窺えたし)

まぁ全体的に見ても破綻なくストーリーがまとまってはいるし不満というほどのことでもないので、先にも述べた通り強いて言えばレベルの話ですね トータルとしてはちゃんと面白くて良きでした

 

 

以上、ティガ第9話でした。サキを取り巻くSFミステリ的な展開運びと彼女の人間味あるキャラを軸にしたドラマがバランス良く描かれた実に面白い構成のエピソードでありました。善性と温かさの光るグッとくるエピでもあったなと 昔このエピが収録された巻を持ってて小さい頃けっこう擦って観てたから何気に印象深い一作だったんだけど、今回の改めての視聴でサキのキャラ性など色んな部分をより深掘りできた気もするし、そういうとこでもとても面白かったです

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた