AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

君の待つ明日へ

ウルトラマンティガ

第15話「幻の疾走」

感想レビュー

 

 

悲しみに覆われてる この空を壊すよ

S.O.S.受けて 君の待つ明日へ

話を観終わった後のEDでのここの歌詞、改めて聴くとなかなかクるものがありましたね...なんとなく内容とダブるものがあって

 

ガゾートの再来、その中で描き出されるマユミさんとタクマの哀しくも強い愛と絆をテーマに据え展開された今回のエピソード。ティガ序盤の物語に大きな爪痕を刻み付けたクリッター/ガゾートや第10話のシンジョウ兄妹の会話でちらっと出てきたマユミさんの彼氏の話といった過去のエピソードで出てきた要素の再活用・接続によって作品通してのストーリーにグッと奥行きを出した細やかさが面白い回でしたね 「ガゾートは人を食うからな...」というさり気ない一言でかつてのガゾートとのセカンドコンタクトのトラウマを垣間見せるホリイ隊員や、「僕も実戦に行かせてください!」と隊長に直訴するヤズミ隊員(今回は「考えておく」であまり相手にされず)など、これ以前およびこれ以降のエピソードとリンクするメインキャラ達の細かな言動が随所にあったのも良き。やっぱエピソードごとの地続きを全体通してかなり強く意識してるよなティガ

まぁ本命としてはマユミさんとタクマと取り巻く辛く切ない展開を丁寧に練り練りしてお出しし視聴者の心のぶち壊してくださったとこなんですけどね!!まだルシアとザラの件での心の傷も癒えてへんのになんちゅうもん見せてくれてんねん(

 

という今回のエピソードは墜落コンビことダイゴとシンジョウ隊員の盛大な落水&負傷からスタート。本作の貴重な心の安らぎどころ(冒頭1分足らずのシーンなので一瞬の安らぎだけどな!)  ある意味墜落コンビの名を大きく知らしめた一因とも言うべきクソデカ墜落イベントなので最早言わずもがなといった感じではありますが、何度観てもほんとおもろくて笑ってまう。()

「こちらシンジョウ、クララ島(漢字不明)上空を順調に飛行中」

(アラーム音)

「なんだこれは!?(※先の台詞からここまで1秒足らず)

「装置に異常です!強い電磁波です!」

「手動で行く!全部こっちに渡せ!」

「こっちは離しました!」

「...!ダイゴ!」

「はい!」

「やっぱダメだわ(諦め)」

「ハッ???(上擦り)」

「「ウワーーーッッッ!!!」」ヤダ---ッ!!!

(落水)

爆速で機体が異常をきたすスピード感でもう草だし、その後の2人の台詞のテンポと間の抜け方が全部絶妙すぎるんだよな...w 長野さんがTAKE ME HIGHERの振り付けの一つであるバク転の練習中に手を骨折してしまったのを劇中のダイゴのコンディションにも落とし込むために入れ込まれた展開とのことでけっこう上手いアドリブ脚本だとは思うんだけど、よくよく考えたらシンジョウ隊員をセットにしとく必要までは別に無いよな(

 

そんな中描かれたタクマLOVEすぎるマユミさんの姿も、微笑ましくコミカルな部分であり、そして同時に今回の悲壮さをより高める要因でもあり...という感じで強く目を惹いたポイント。タクマにぞっこんな妹に兄目線通り越してパパ目線で心ガタガタになってるシンジョウ隊員とか、タクマに会いたすぎて運転席で思わず盛大にはしゃいだり封鎖を強引に突破するけっこうな無茶やらかすマユミさんとか、ギャグっぽいテイストの回だったらシンジョウ兄妹およびその将来の家族になるタクマとのはちゃめちゃながらも心温まる情景ってことで心の底からギャハハハハってなってたりほっこりしてたであろう愉快な描写の一つ一つが、ことごとくシンジョウ兄妹と視聴者の皆様の心を痛めつける布石になってるの、ほんとうのほんとうに惨すぎる...なんでそんなことすんの?  特にマユミさん周りのシーンはほとんどタクマの乗った飛行機がアレする流れの後にくるので、そのことを知る由もないマユミさんの幸せそうな姿がいちいち辛かったし、加えてタクマの方もアレする直前の飛行機に乗って東京着を待ちながらマユミさんの写真の入ったロケットペンダントを同じく幸せそうに見てたり異常が起きて揺れる飛行機の中でロケットペンダントを祈るように握り締めたりと、マユミさんと同じく相手のことが好きなのがしっかり感じられる姿を僅かな間に印象付けてきてたので、それらが相乗されて更に辛かったですね...

 

こうしてシンジョウ兄妹を取り巻く形で騒動が大きく渦巻いていく中、その元凶たるガゾートⅡが飛来。前回のセカンドコンタクト時ほどショッキングな画をガンガン繰り出す感じではなく割とオーソドックスに怪獣してたⅡでしたが、その分色々厄介な特性を身につけてGUTSを振り回してたのが印象的でしたね。ティガの攻撃もものともせずといった感じなので手強さにおいては確実に前回以上だよなと

ちなみにガゾートⅡ、自分はつい最近まで初代ガゾートとデザインは全く同一だと思ってたけど、実際比べてみるとけっこう形が違うんですよね。初代に比べると頭部と側面の翼みたいな部位がそれぞれより独立した感じのプロポーションになっていて、且つ目がより大きく広がった形になったことで、モチーフになっているという魔王ダンテのビジュアルのイメージにより近付き(原作漫画第1巻のビジュアルにけっこう近い)、初代以上に悪魔的な印象になってるのが面白い 翼みたいな部位の独立性が高くなって頭部から脚にかけての人間的なシルエットが際立ったのもかえって「悪魔」のイメージを高めてるのかも

 

そんなガゾートⅡにGUTSが果敢に立ち向かい、図らずも作戦エリアでガゾートⅡの襲撃に巻き込まれてしまったマユミさんの救助にダイゴとシンジョウ隊員が悪戦苦闘する中、なんとタクマが全身黒づくめでバイクを駆って登場。自らが囮になると言いガゾートⅡ相手に巧みなバイクテクを見せ翻弄する、という展開へ。愛するマユミを救うべく颯爽とやって来て...という熱い構図ではあるものの、先のタクマの乗った飛行機の異常の描写がある、というかそうでなくても現実的に考えて無事に辿り着けたとして物理的にすぐマユミさん達の下へ駆けつけられるわけはないという事実があるので、今ここにいるタクマは一体なんなのか、そもそも飛行機に乗っていたタクマはどうなったのか...というところに対する解がここでうっすらと察せられてしまい、凄く切なくなってしまうというのが巧い構成・演出なんですよね...タクマがどうなったか、というのが結局最後まで直接的に明言されないだけに余計に...本来ならば“ここにいるのはあり得ない”はずのタクマが、ガゾートすらも含むその場の全員に見えて、話せて、触れることができる状態で現れ、マユミさんを救うために戦場を駆け抜ける様、勇ましくもありどこか幻想的で儚くもあり...まさにサブタイの「幻の疾走」に相応しい好演出好カットであったなと

 

かくして繰り広げられる戦いはティガvsガゾートⅡの一騎打ちへ。一時はティガをガゾートⅡが圧倒するも、パワータイプに転じ立ち上がり飛び上がったティガがガゾートⅡの攻撃に返す刀で放ったカウンターの必殺技がガゾートⅡを見事仕留める、という白熱したフィニッシュとなりました。ガゾートⅡの攻撃で立ち込めた煙の中から俯き気味の片膝立ちで現れるパワータイプの真紅の威容、という絵面の芸術点の高さも実に良きところですが、ガゾートⅡの放った攻撃を飛び上がった中空で受け止め増幅し光流にして返す→飛び跳ねかわそうとしたガゾートⅡに対し、地面を跳ねた光流がバウンドしてガゾートⅡに命中する、という一瞬の決着の中に詰め込まれたスピード感ある巧みな攻防がまた目を見張って良いんですよねぇ 派手派手しくこそないけどやっぱ個人的にはこういう一瞬の中で力強さやテクニカルさを印象付けるバトルの方が爽快で好きですね 特に本作は小さい頃ウルトラマンワールドか何かでも何度か観ただけにクセになる気持ち良さなんです

 

そして戦いが決着したラスト。突然マユミさんとそれを抱き抱えるシンジョウ隊員を包むように立ち込めた霧と光の中でマユミさんとタクマは再会。しかしマユミさんの呼びかけに対し、タクマは彼女への想いを屈託の無い笑顔と共に伝えながら、マユミさんの悲壮な叫びと慟哭を受けながら再び光の中へと消えていってしまい...という形で物語は締めへと入りました。

「タクマなんでしょ?」

『......』

「...やっぱり!会いたかった」

『俺もだよ!マユミ

でもごめん、俺ここにいらんないんだ』

「どうして?...やっと会えたのに」

『行かなきゃなんないんだ』

「どこに?...待ってたんだよ?......タクマのことずっと待ってたんだよ?」

『愛してるよ、マユミ』

「...いや」

『これからも、ずっと、ずーっと!』

「......いや!いやッ!!」

『君に会えて、よかったよ」

「いやーッ!!」

いややっぱ凄く美しいけど凄く辛いですねここの2人のやり取り...最後の最後に会えた最愛の人にめいっぱい好きの気持ちを伝えるタクマと、そんな彼の姿にだんだんと彼がどうなったのかを頭で理解するのだけど、それを受け入れられず必死にそれを拒もうとするマユミさんの対比が切ない...タクマ役の青木拓磨さん(友情出演で役も同名)は本業がオートバイのプロレーサーなので本職と比べると流石に少し表情の作り方や発声に拙いところはあるのですが、それ込みでもここのマユミさんとの会話のシーンは凄く良い味出してて好きなんですよね 心からの言葉って感じの屈託の無さとあったかさが出てて沁みる

からの、残されたロケットペンダントを手にしたマユミさんが堰を切ったように泣きながら兄のシンジョウ隊員に駆け寄り抱きつき、それをただ受け止めることしかできないシンジョウ隊員の姿が背中越しで表情を窺い知れない構図で描かれるところも凄く胸にくる。「タクマは良いやつ」「マユミはガキの頃何かあると胸の中に飛びついてきてた」「アイツの泣き顔はもう見たくない」っていう劇中でのシンジョウ隊員の台詞が全部ここで辛い形で繋がってきてるのがなぁ...なんだかんだ言いつつも大切に思ってた妹の最愛の人をまともに再会できないままに喪い、そうしてもう泣いて欲しくなかった妹を自分の胸の中で泣かせることになってしまったシンジョウ隊員の心の内、考えるとあまりにやりきれない どんな表情をしてたんだろうなぁ...本当に最後まで背中越しの構図のままのフェードアウトなのがますますしんどい

 

そんな救いの無さすぎる締めとなった今回の話でしたが、最後にホリイ隊員が残した霊魂とプラズマの話から転じて、そういった理屈すらも越えてタクマの想いがマユミさんを救ったという事実がちゃんと印象付けられたのはそんな中でのささやかな温かさだったかな、と思います。気高く真っ直ぐな意志で光となり人を為した」とでも言うべきタクマの活躍は、まさしく本作の根幹にも通ずる精神性を強く内包していたなと感じますね

しかしここのホリイ隊員の台詞、彼の深みある人間性がよく表れ出ているのも含め今回の話の締め括りとしてほんといつ聞いても良い台詞だよなぁと。節々の活躍や台詞からも滲んでるようにホリイ隊員自身は一貫して科学に深く通じた人間ではある(今回の作中においてもマイクロ波とクリッターの関連についてさり気なく人類への警鐘的なニュアンスも込めて細かく語ってたりしていたし)のだけど、その一方で科学や理屈すらも超越した人間の意志・信念といったものもたしかにあるとしっかり胸に刻んでいて、ここぞではそれを自分自身もそれを強く信じ貫き、何よりも大切にしようとするのが素敵なんですよね。タクマの意志がああして形となったのには何か理屈があるのかもしれないけど、大事なのはそこじゃないんだと、彼の口から言ってくれたのはとても大きな意味があったと思います

「人間の霊魂は、プラズマやっちゅう説がある。ガゾートの強力なプラズマエネルギーが、タクマくんの魂に反応して...

 

... そないな理屈はどうでもええか」

 

 

以上、ティガ第15話でした。マユミさんとタクマを取り巻く、切なく哀しいながらも人間の真っ直ぐな意志や愛が美しく光ったエピソードでありました。程良いオカルティックな要素の挿入が良いアクセントとなっていて、見ていて辛いながらも胸を打つ画や展開が多くとても印象深いエピソードだなと。この一件でマユミさんが負った心の傷が完全に癒えるのは、更に更に後の話...またこれまでの話で描かれた要素の活用や、後のエピソードに通じていくキャラ描写やストーリー展開の導入により、ティガという作品全体に奥行きを出している点でも凄く重要な立ち位置の話ですね。かの「うたかたの...」に繋がる要素も色々あるし、これをしっかり踏まえての第28話の改めての視聴が今から楽しみです

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた