AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

見ないでのタブー

ドラマ 岸辺露伴は動かない

第5話「背中の正面」

感想レビュー

 

 

黄泉比良坂(よもつひらさか)とは日本神話において、生者の住む現世と死者の住む他界(黄泉)との境目にあるとされる坂、または境界場所。

Wikipedia-黄泉比良坂 より引用

 

岸辺露伴というキャラが初めて登場したジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けないにて露伴先生が深く関わった「チープ・トリック」のエピソードがまさかの動かないシリーズの一エピソードとして抜擢され、情報発表当時大きな驚きが上がった今回のエピソード。元々特殊な形ながらスタンドという概念が大きく関わる話なので、スタンドが概念としても登場しないドラマ版で取り上げるにあたりどんな感じになるのだろうかと自分としてもかなり気になっていましたが、前回「ザ・ラン」のエピソードを「六壁坂の怪異」に起因するものとして描くアレンジを入れてきたのに続いて、原作のチープ・トリックに該当する存在も同じく「六壁坂の怪異」として登場させることでドラマ版独自の設定・構成にナチュラルに落とし込みつつ、六壁坂を中心にした第4〜6話のエピソード接続を鮮やかに成す形を取ってきたのは感嘆しましたねぇ。元々動かないシリーズの話の一つに過ぎなかった「六壁坂」を複数エピソードの核に据えて大きく取り上げることで、3部構成の本ドラマに前編中編後編という感じの多段的な盛り上がりをしっかりと設け、且つ「露伴先生が破産してまで探ろうとしたネタ」というところをより強化しエピソード単体の見応えにもしてきてるの天才的すぎる

 

しかし原作でもやたらシュールで面白い場面ではあったけど、なんとしても背中を見られたくない乙雅三と、なんとしても乙の背中を見たい露伴先生のシュールすぎる空気感の攻防はドラマ版でもめちゃくちゃに面白かった。w お互い相手が何かリアクション起こすたびに訝しんだり警戒したりしてすげぇ微妙な空気が漂うのじわじわくるんよ() 乙の行動を誘導しようと(普段客人に絶対言わないだろうに)「ドウゾ-(棒)」って言いまくる露伴先生と、それに対し引きつった笑顔で対応しつつ背中を見せないようぬめっとした奇怪な動きで行動する乙の対峙(?)の絵面を実写でやってるってだけで飯10杯いけるくらい満足度が高い

この乙雅三を一才妥協の無い超絶シュールな動きと表情で演じ上げた市川猿之助さんの演技、非常に素晴らしかったです。w 海老反りで鍵拾うとこや階段を背中で這いずりながら上がるとこの身体の張り方サイコーすぎるw 乙本人を演じてる時間自体はそこまで長くないんだけどその中でも強烈に記憶に刻まれたね...

 

にしても露伴先生、一応前回のエピソードで自分の好奇心に関してちょっとだけ反省したくせして、その昨日の今日でまたいらん好奇心からレッドラインをバカスカ踏み越えていっちゃうのほんとアンタどうしようもないな!!って感じで良いよね(良くねェ) 「背中がかゆいなァ〜ッ」がドラマでもしっかり白々しくて実に良かった() 乙のどうしても背中見られたくないムーヴを見て「ちょっと待て、なんだあれは...面白すぎるッwww」って好奇心の昂りを抑えられなくなってるところ、「ヤバい、◯◯くん可愛過ぎる〜」って悶えてる恋する女子みたいな感じになってんのがちょっと腹立つんだよな() 懲りろ!!!

 

そして露伴先生の背中に移動し、遂にチープ・トリック(に相当する存在)出現。前に取り憑いていた人物の姿を借りて現れ、新たに取り憑いた人物の背中におんぶしてもらってるビジュアルは、原作のようなスタンドのビジュアルが出てこないことを気にさせないだけのインパクトがあって実に良かったですねぇ 前の人物の姿をとって現れたチープ・トリックは前の人物とは髪の色が異なってる、というビジュアルの差別化を用い異質感を演出していたのも面白かった。露伴先生の姿になったチープ・トリックのイメージ映像が、原作の露伴先生に近い緑色の髪のビジュアルになっているという遊び心もベネ

前に取り憑いた人間と同じ姿、 ということでチープ・トリックのビジュアルは乙に準じたものとなっており、当然演じられたのも乙と同猿之助さんだったんだけど、乙とはまた全然違う演技の質感でチープ・トリックのあのキャラを見事に表現してて素晴らかったね 子供みたいな喋りの中に粘りつく悪意みたいなものが混ざった感じのあの雰囲気が良い意味で気持ち悪くて最高でした 「耳栓しましょうかぁ?」って言って真後ろで舌チロチロさせるのめちゃくちゃキモくて好き

 

その後露伴先生の背中を隠しながらの決死の移動の模様も描かれましたが、必死こいて背中隠しながら動きまくる成人男性の実写の絵面ほんとシュールで面白いな...とw てか高橋一生がこれやってるってだけでもうお釣りくるレベルでイカれ面白いんだよな() 原作の方でもお馴染みの「他の通行人の背面に背中合わせになって移動する」シーンもバッチリ再現されてたけど、前にドラマ動かないシリーズの特番で語られてた「こんなのやったらバレない?」と思ったので実際に街中でやってみた(意外とバレなかった)小林靖子さんの話がフラッシュバックしてきて別の面白さが発生してしまったのは内緒だぞ() 岸辺露伴を追求しすぎて自分も岸辺露伴化してないかあの人()

 

と、散々チープ・トリックに苦しめられた露伴先生でしたが、泉くんが寄越した資料にあった「振り向くと連れて行かれる小道・平坂でチープ・トリックを振り向かせることで、相手のみを「あの世」へと連れて行かせ、華麗に勝利を収めました。まさかここを原作とほぼ同じ感じの流れで決めるとは...!とかなり驚いたポイントでありましたね 泉くんの調査やその結果報告の流れが露伴先生に平坂の存在を知らせる過程として伏線的に仕込んであったのが巧い展開運びでした

チープ・トリックのエピソードがドラマ版で描かれると聞いた時、正直作中要素の一つとして『振り向いてはいけない小道』がチープ・トリックの回よりも前に登場していた原作と異なり、『振り向いてはいけない小道』が今までのエピソード中で影も形も登場していないドラマ版はどうやって勝利展開に持っていくのだろう?」「もし小道を登場させるにしても唐突に登場させては作中要素としての説得力が減って都合の良い流れっぽく見えてしまわないだろうか?」と心配する気持ちもあって、どういう形に描くんだろうかとずっと気になってはいましたが、本編冒頭の段階でその小道に相当する「平坂」という場所の存在をあらかじめ伏線的な感じで提示した上で、その後の展開の中で「この世とあの世の境目となる『坂』の謂れ」について語り「平坂=黄泉比良坂(あの世)へと繋がる場所」であるという印象を強めたり「見るな、開けるな、振り向くな、といった『見るなのタブー』」なる概念を軸に、チープ・トリックや平坂をその「見るなのタブー」に該当する同じような系統の怪異と位置付ける流れを作ったりと、平坂を単なるオチに必要な要素として描くだけでなく、「坂(境目)」「◯◯してはいけない系統の怪異」といったドラマ版のストーリー独自の文脈がしっかり乗った要素に仕上げて、ここぞでの活用をバッチリ盛り上げたのは見事でしたね。怪奇性のアップにも繋がってたのがグッドでした 手だけが暗闇から迫ってきてた原作の演出と少し変えて、真っ白な肌の亡者達がぞろぞろ迫って手を伸ばしてくる、という「あの世(黄泉比良坂)」という設定に準えた感じの、さながら地獄の底から誘ってくるかのような絵面になってたアレンジも良き

またその平坂の活用による勝利を描くにあたって、「人の記憶に刻み込まれることが重要な『伝説』やら怪異やらの類に該当するであろうチープ・トリックのことを『忘れる』よう自分に書き込んで、その存在を消滅させる方法」を試しにやってみることも思いついてたけど、勝ち誇ったところから慌てふためくチープ・トリックが見たかったからまずこっちを試した、と、余裕ぶっこいた相手の心をバキバキにへし折るのが大好きな岸辺露伴クオリティを全開に引き出しカタルシスとしてきたのも凄く良かったなと。自分ももしかしたら危険に晒されるかもしれないけど、そんなことより調子乗った奴があたふたして折れるところが見たかったからなァーッ!!(意訳)と命が風前の灯火な状況で絶望した相手にめちゃくちゃ楽しそうに言う露伴先生マジ露伴先生で良かった() 今まで真後ろで散々煽ってきたチープ・トリックが連れて行かれそうになってるところに目も合わせず「余裕たっぷりのヤツが慌てる姿は面白いッ!!まったく...顔を見られないのが残念だよッ!!」と性悪な嬉しさを隠そうともしない邪悪な笑顔と声色でここぞとばかりに煽る絵面とても気持ち良くて大好き。w

それでいてただ相手を煽りたかっただけでなく、自分が漫画を描くのを邪魔し、漫画や読者を侮辱した相手を徹底的に叩きのめしたかった、という漫画家としての矜持もしっかり描き、カッコ良く決めてきたところも最高でありました。露伴先生の執筆を邪魔しなければワンチャン引き剥がされるだけで済んだかもしれなかったのに、いらん煽りをしまくったせいで絶望と共に「連れて行かれる」ことになったチープ・トリック、哀れ。インガオホ-!

 

 

以上、ドラマ岸辺露伴は動かない第5話でした。まさかのジョジョ本編からのエピソード抜擢ということで表現や再構成の仕方が気になっていましたが、鮮やかな文脈の構築、シュールさとホラー感が良い感じの織り混ざった演出など、実に素晴らしい絵作りとなっていて唸りましたね。実写で描かれる背中を見られたくないムーブ一覧マジでシュールで面白かった。w 前回に続き露伴先生のキャラ性がかなり濃いめに描かれてたのも良い見応えでありました。

次回は遂に、2エピソードをかけてその存在感をグッと強化された「六壁坂」の感想です。どうぞお楽しみに

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた