AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

岸辺露伴は“動かない”

ドラマ 岸辺露伴は動かない

第6話「六壁坂」

感想レビュー

 

 

 

特番で「露伴先生と結婚したい!!」と熱弁してた内田理央さん、ヘブンズ・ドアーをかけられた時どれほど内心で歓喜してたのだろうか かなりの強火オタ感あって圧倒されたんだよな内田さんの露伴論(

内田さんといえば特オタ的にはやはり霧子の印象が強いし、普段もけっこう明るい感じの人なので、楠宝子(現代)の未亡人的などこか陰を纏った雰囲気を佇まいや声色で表現したシックな演技は新鮮でしたね。昔の楠宝子の演じ方が普段のそれに近い分余計にその演じ分けのコントラストが際立ったなと

 

妖怪伝説の伝わる村「六壁坂村」での取材の中で出会った良家の女性・大郷楠宝子の記憶に刻まれた奇妙な出来事を紐解き、六壁坂の秘密に迫っていく流れを追った今回のエピソード。動かないシリーズの話の一つに過ぎなかった「六壁坂」が2021年度放送のエピソード群の中心にして締め括りとなるの改めてすげぇ構成だよなぁと

 

今回の話は、互いに関係を持っていた男・釜房郡平を痴情のもつれによる事故で死なせてしまい、その死体を家族や許嫁に見つかる前に隠そうとするも何故か絶え間なく血の溢れる群平の死体に苦しめられる楠宝子の行動がメインとして描かれており、流れ自体はほぼほぼ原作に忠実なものとなっていましたが、群平が絶命した後の映像がモノクロ調のものになっていて血の赤が分かりにくくなっていたり楠宝子が手を加えたことで群平の死体から血が飛び散るシーンがSEのみで演出されたりと、民放での放送ということもあってか極力血を直接的に描くことを避けるような演出が沢山為されていたのが特徴的でしたね。死体をなんとかしようとすればするほどとてつもない量の血が溢れ飛び散ってパニックになっていくというスリリングな展開が原作の本エピソードの見所であったので、(放送コード上致し方なかったであろうとはいえ)そのスリルやスプラッタ感が少なからずナーフされた感があったのはちょっと残念だったな〜と感じたところでありました(モノクロフィルターを通してるとはいえ、滴る血が水飴みたいな粘着質の透明な液体っぽい感じに見えてあんまし血に見えなかったのは個人的に特に惜しかったかな もうちょいリアルな質感で見たかった...!)

ただ、群平の絶命が明示され、楠宝子が驚愕すると同時に上記の「画面が徐々にモノクロになっていく」という演出が取られていたことで、画面のモノクロ化が「群平の生命活動が停止し彼が見ている世界から色が消えていっている」ことや「不測の事態に楠宝子の心が絶望に落ち暗くなっていく」ことを象徴的に表現するような感じの演出になっており、血の表現に規制がかかった分を補強するような別ベクトルでゾクっとくるテイストの映像に昇華されていたところは良かったなと感じましたね。実際に演出として意図されていたかどうかは分かりませんが、そこはこれまでにも秀逸なアレンジを加えドラマ版ならではの魅力へと仕立てていた本作。恐らくやってくれてるんだろうな〜、と勝手に思ってますが構いませんねッ

 

にしてもドラマ版の群平、なんか異様にキャラの再現度が高かったの面白かったな...とw 「まっさかのまさかだよねーッ」とか「やあぁーだよッとっ!」の言い方が漫画に実際に書いてある台詞の表記のニュアンスとピッタリ合いすぎててなんか感動すら覚えたw 原作以上にヒモ男的なだらしなさや軽薄さが増強されててその分強烈に印象に残ったキャラであった

 

その後群平の死体を家の中に隠し管理し続けるようになった楠宝子の様子も描かれ、群平の死体の「世話」をし続けることにいつしか幸福を覚えていくようになり、許嫁と結婚してなお群平に心を奪われているという楠宝子の静かな狂気が良い具合に演出されていたのがとても良かった。この辺の内田さんによる楠宝子のモノローグもじんわり怖くて良き 更にドラマ版で追加された「群平の死体に口づけする楠宝子」のシーンも狂気性をいっそう引き立てており、相変わらず雰囲気を絶妙に引き立てるのが上手いよな、と

 

その後は露伴先生が六壁坂の場所を探り当てて赴く流れ(陽馬や乙が憑かれた因縁の地を駆け上がっていく姿や、今までのエピソードにも何度も出てきていた不気味な雰囲気を纏う六壁坂の石段の所にやってきたところを後ろから映したカットなど、画になるシーンが多くてたまらんかったね)や、六壁坂の妖怪に楠宝子同様取り憑かれそうになったところを打開する流れを経て、原作同様露伴先生が危機を乗り越え終わり...かと思いきや、妖怪の化身である群平と楠宝子の息子に泉くんが一緒にいる!!という更なる一波乱が描かれました。ここは原作にもなかった展開だったので、当時リアルタイム視聴してたTLもかなりザワっときてたのが印象深かったね...
まぁ泉くんは怪異のお眼鏡に適わずスルーされたけど() なんだよ!!!怪異にも好き嫌いや相性はあった。

ここの展開に関して、六壁坂の怪異達は「彼女を殺して捨てた陽馬、土産のメロンを腹が立って捨てた乙、許婚との結婚のためにと群平を捨てた楠宝子」という感じで、何かを捨てた者達を『捧げた者達』と見て取り憑いており(陽馬はランニングのために訪れた時は「魅入られた」程度だったけど、彼女の死体を捨てたことで本格的に「憑かれた」のかも)、露伴先生も何かを捨てる人間として目をつけられたけど、泉くんはそういう性格の人間ではないのでスルーされた、みたいに考察されててなるほどな、と。まぁ泉くんはその辺の「捨てる」イメージとは程遠そうだもんな...(

 

そして六壁坂から帰還した露伴先生の、六壁坂には人間が「妖怪」と呼ぶ「何か」が住み続けているが、それは漫画家である自分がどうにかするべきことではない、というモノローグにより、六壁坂の取材は締めとなりました。露伴先生自身はあくまでも何かを打ち倒すヒーローみたいな存在ではなく、あくまで漫画家であり物語の語り部/体験者であるのだ、という「岸辺露伴は動かない」という作品のタイトルを表すテーマ性をこの締めの場面にバッチリ打ち出してきたのは実に爽快だったね

ラストはいつも通り、泉くんを家から摘み出す露伴先生(からの泉くんの「モ-ッ!!」)でオチでした。ケーキの箱珍しく返してあげたと思ったら「空だよ。」と淡白に告げてドア閉める辺りが最後まで安定の露伴先生であった。w

 

 

以上、ドラマ岸辺露伴は動かない第6話でした。今までの4、5話との接続を示しながら大トリとして繰り出された本エピソードでしたが、締め括りに相応しい怪奇性高めの話になっていて面白かったですね。放送コード上の規制で多少表現のインパクトが弱まった部分こそあれど、そこを補強する演出もプラスされていてやはり本作の絵作り・演出は見事だったなと改めて実感しましたね。

という感じでドラマ版「岸辺露伴は動かない」、2020年度と2021年度の放送エピソード計6話を一気にレビューさせていただきました。総じて原作のテイストの再現および実写ドラマで描くからこその秀逸なアレンジがどれも秀逸で、非常に見応えある素晴らしい実写作品だったなと改めて感じました。6話のラストには「六壁坂だからまだ怪異が3つ残ってるんじゃない?」的な今後の伏線的な台詞もあったりしたので、好評ならばこの先も続く限り年末の定番シリーズとしてやって欲しいですねぇ 個人的にはドラマ版露伴先生の生い立ちを追う感じの構成なんかも見てみたいかも...なんて

ともあれ楽しかったです!もし2022年の年末にも放送があればまたお会いしましょう

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた