AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

迫真ジャンケン

ドラマ岸辺露伴は動かない

第8話「ジャンケン小僧」

感想レビュー

 

 

※2023/01/02追記:本記事の中において小林靖子女史の名前を今回の脚本担当として何度か出していたのですが、記事を呼んでくださった有志の方が「このエピソードの脚本担当は渡辺一貴さん」であるとご指摘くださいました。誠にありがとうございました...!(今回も完全に女史担当と思って見逃してた...)一応女史も「脚本協力」で参加されているとのことであり記述のニュアンス自体は大きく崩れないと思うので、記事の内容は一部に追記・変更をしたくらいであまり変えずにおきましたが、迂闊故の間違いをしてしまい申し訳ありませんでしたスミマセン 読者の皆様および渡辺一貴氏には大変失礼を致しました 重ねて申し訳ない

いせくら ひろこ on Twitter: "RT とても素晴らしい感想だけど、一点加えさせていただくと、ジャンケン小僧の脚本は渡辺一貴さんなんですね。 https://t.co/8wzihZICLE" / Twitter

 

 

 

SASUKE?知るかこっちはJANKENだ

(※2022年12/27はSASUKE年末スペシャルと本エピソードが同日放送してました)

 

昨年の「背中の正面」よろしく、『ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない』からピックアップされた同タイトルのエピソード「ジャンケン小僧」の実写ドラマ化と相成った今回のエピソード。4部内からのエピソード採用も割と主流みたいになってきたけど今後ももしドラマ動かないシリーズが続けば何かしら採用されるのかなぁと思ったり。といっても単発エピとしてアレンジできる露伴先生メインのエピなんてもうあとはだいぶ限られてきそうだが  振り向いてはいけない小道なんかはアレンジすればサクッといけそうだけど性質上露伴先生の背景に切り込む話にもなるから却ってやりにくいかもだしなぁ(そこに切り込むテーマで統一すれば行けるかもだけど)  露伴先生がファンの高校生を自宅の連れ込んでページを千切った末にサザエさんみてーな頭のヤンキーにボコされるエピは...ダメか(

まぁ何はともあれ原作でめちゃくちゃ大好きな、子供相手にジャンケンで勝って大人気なく追っ払って勝ち誇った上「大人気ないって?いいや最高の気分だね ガキ負かすのはね...カッハッハッハ-ッwww」と悦に浸る最高の岸辺露伴を演:高橋一生の完璧な実写化で見られただけで今回のピックアップは大満足でしたがね!!(わざとらしくケツで突き飛ばしたり「行けッ?行けェェェ〜ッ!!」ってしつこく連呼して追っ払ったりと原作より最低っぷりがパワーアップしてたのマジで最高)  富豪村の時に一究を見下してヤラシー笑いと共に勝ち誇ってた時の高橋露伴の絵面からしてもう岸辺露伴の実写化として完璧すぎて拍手しまくってたので、その原点とも言えるこのシーンが映像化されたのはこのドラマ追ってきた人間からしたら本望でしょ

 

さて、ドラマ動かないシリーズといえば原作だとそれぞれ独立していて関連のない複数のエピが何らかの要素を軸に接続され地続きの話にもなっているところが特徴でありますが、本エピもジャンケン小僧こと大柳賢を作者の露伴先生と同じ作品観や美的センスを持つほどの岸辺露伴作品のファンというキャラ付けにすることで、ブチギレてへそを曲げるくらいに露伴先生としても不服であった「丸が4つ」のデザインに不満を抱き露伴先生に凸してくる、という形で前話「ホットサマー・マーサ」のストーリーを絡めて、露伴先生と賢が接点を持つ自然な流れとしてきたのが上手いところでありました。デザイン変更のことで虫の居所が悪かったせいで露伴先生がつい賢を邪険に扱い追い返してしまう→そのことで賢が露伴先生および彼の作品への感情を拗らせ怒りを燃やし、執拗に絡むようになっていく、という感じで前話の展開を踏まえた上での露伴先生および賢の言動や感情の動きがストーリーの流れとしてちゃんと組まれていたし(特に露伴先生は、初っ端からストーカー気味だった前半のイブにさえも一ファンへの対応として割と穏やかに接してた前話の言動があった分、熱烈ファンの賢を邪険にして追い返してしまった本エピでの言動が「ファンの応対する余裕もないほどの相当な不機嫌さ」としてきちんと感情面で違和感なく収まるようにもなってるのが巧み)、前話で神主親子がさらりと語ってた「道の交差する場所─『四ツ辻』」が今回の話の肝たる“ジャンケン”の能力を賢が手にする流れの伏線として機能していたしと、キャラクターの描写においてもオカルトチックな要素の分かりやすい挿入というところにおいても前話と本エピの流れがしっかりと意識された構成になってた辺りは小林靖子の妙味光るという感じでありました(記事冒頭でも語った通り本エピでは女史はあくまで「脚本協力」でしたが、そこにおいていつもの安定感が出ていたなという意味で)  ここはジョジョという作品を「設定に矛盾はあっても感情に矛盾はない」と評した靖子女史らしい重きの置き方が窺えるね  「ホットサマー・マーサの丸は4つじゃなく3つじゃなきゃダメ」という露伴先生(および賢)の拘り「3こそが最も完璧で安定した数である」という神主親子の話、といった「3」の完璧性をやたら強調していた前話の節々の描写も、3つの手で勝敗が決まる最もシンプルで美しい勝負、というところから賢がジャンケンを勝負の手段として用いるようになることの動機付けとして綺麗にハマっているしと、「ジャンケン」である意味さえもしっかり補強してるのがあまりに強すぎるんだよな...前年のチープ・トリックもそうだけど、原作においてスタンドとして登場していた存在や能力をスタンドという概念が無いドラマ動かないシリーズに落とし込むにあたって、他エピソードとの接続を活かす形で奇々怪界ながらも理屈あるものとしてアレンジし初見の視聴者にも咀嚼しやすくしてるのは本シリーズの強みだと思うわ

 

そんな流れから「ジャンケン」で露伴先生に幾度も勝負を挑み負かそうとしてくる賢の子供らしからぬ威圧感と気迫は今回とても印象深かったところでありましたね。原作からしてオメーほんとに小学生かよォ〜...!って感じの自信と覚悟の決まり方をしてはいたけど、本エピにおいては最初露伴先生相手にどもったような喋り方しかできてなかったり、不満なことがあっても1人で静かに下を向いて拳を握りしめるばかりだったりとどこかコミュニケーションが苦手な暗い子供って感じの印象が濃く押し出されていただけに、そこから露伴先生への怒りの増大や能力の獲得を経て少しずつ堂々とした態度と喋りになっていき、やがて露伴先生を圧倒するまでになっていく様がギャップとしてよろ効果的に働いていて更に強烈な存在感を刻みつけていたなぁと感じたんですよね。ジョジョという作品においても時折描かれる「精神的成長」をズバリ体現するかのようなカタルシスもあってこれは実にグッドでした

しかし一究役の柴崎楓雅くんもそうだけど、ジョジョキャラらしい奇妙で大仰ながらも堂々としたキャラをしっかりと演技で表現できる子役をバッチリ見つけてくるの凄すぎるよなドラマ動かないシリーズ...本エピの賢も“絶妙に現実にいそうなジョジョキャラの出立ち”を見事に表現した衣装も相まって、演じる柊木陽太くんの演技が最高に光っておった 最高

 

そしてここから展開される露伴先生と賢の精神的な駆け引きも込みでの一歩も退かないジャンケンの攻防、これがまた良いのなんの  原作よろしく空を飛んでいるようにしか見えないカットとかは流石になかったものの(あたりまえ)、高橋露伴の疲弊しながらも衰えない気迫とそれに全く押されない迫力を醸した賢の立ち居振る舞いのぶつかり合いが絶妙なカット割りや緊迫感を増大させる絶妙なBGM使いによっていっそう引き立つ形で強力なパワーを伴って映像として昇華されており、思わず息を呑むような決闘として画面にグッと惹きつけてきていたのが実に素晴らしいところでありましたね...ただのジャンケン勝負なのにやたら壮大で手に汗握らされることになってんのある種のシリアスな笑いにもなっておるけども、そこ含め完璧な原作の実写映像化でありましたわよ

 

そんな両者のジャンケン勝負は最終的に、漫画家としての「観察」によって見切っていた賢の心理を巧みに突く形で露伴先生が勝利、と透明な赤ちゃんを使った搦手で勝利した原作の流れをよりロジカルにアレンジする形の流れで決着と相成りました。ここの何が良いって、前述の「作品に対する自分の意見を邪険に扱われたことによる、賢の岸辺露伴および露伴の描く作品に対する怒り」という部分を導線とする形で賢の中に芽生えていた理性をも上回る感情を先んじて描き、なおかつそれを漫画家としての観察力によって既に把握しここぞで勝利に繋げた露伴先生の実力、という露伴先生ならではのキャラ性・強みをしっかり活かしカタルシスと説得力のある勝利としてみせたところなんすよね  とどのつまり前話「ホットサマー・マーサ」から地続きで描かれた賢や露伴先生周りの感情の描写が最初から最後までしっかり活かされ切ってたわけで、渡辺一貴氏と小林靖子女史の構成力の合わせ技が素晴らしかったなと 改めて記事冒頭でも語った通り、本エピは最初渡辺氏の登板を知らないまま観ていたのでてっきりいつもの靖子女史の脚本だと思い込んでいたのですが、そこにおいて(女史の協力もあったとはいえ)いつもの小林靖子脚本と見劣りしない見応えを発揮してたのは渡辺氏が流石であったなと感じますね

この後の流れは概ね原作通りという感じだったけど、露伴先生は勝負を通じて“グッときた”賢に応える形で「丸が3つ」のホットサマー・マーサのサインをプレゼントし、賢もその粋さ含め露伴先生に改めて惚れ直しまた熱烈なファンと相成る、という形で原作に一つ爽やかなアクセントを加えていてここもまた良きでした。このドラマ化において加わった「作者とファン」という2人の独自の関係性を話の導入というだけに終わらせなかった良いオチでした

 

かくして全てが収束しエピローグ的なパートへと入って物語は締めとなるわけですが...このエピローグ部分がまぁ衝撃だったわけですよ

あれこれと話を経て露伴先生と泉くんの間で飛び出る「海外取材」の話、そしてその中でふっと漏れた「パリ『ルーブル美術館』への取材」...これもうそういうことですよねェ!!(前のめり)  ジョジョおよび動かないシリーズに慣れ親しんだ我々なら「ルーブル」と聞けば岸辺露伴 ルーブルへ行く」を思い浮かべるわけで...こんなんめちゃくちゃ期待しちゃうわけですよ いやほんとこれ思いもよらなすぎて超サプライズでしたわ(流石に海外ロケとか厳しいだろうなと思ってたしさ)  もし本当に実現するとしたら次の放送はスゲーことになりますよきっと...視聴者の間では「GWの特番でやるのでは」とも言われてたけど、もしそれでガッツリ新たに一本作るのだとしたら楽しみすぎる  例年と違って今年のエピソード2話分しか無くて惜しかったな〜...とか思ってたけど、「この特番が3話目だよ!!『3』は完璧な数字だからな...」という形で「ルーブルへ行く」が突きつけられるかもと思うと俄然楽しみだよマジで

 

 

以上、ドラマ岸辺露伴は動かない第8話でした。色んな意味で強烈なジャンケン小僧エピの実写ドラマ化となりましたが、キャラクターの濃さ、ストーリーの緊迫感、シュールなくらいの迫力、どれをとってもしっかりと見劣りなく表現されており、なおかつドラマならではのアレンジを見事に昇華させた新たな味わいの付与もあり、と大満足な一作でありました。これが締めなのめちゃくちゃ良かった 最高

ラストには思いもよらぬサプライズもあり、ドラマ動かないシリーズはまだまだ勢い衰えなさそうで何より 来年(もしかしたらもっと早いかも?)も楽しみにしてますからねェ!!

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた