AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

“本物のプリンセス”

Princess Principal/プリンセス・プリンシパル

case20「Ripper Dipper」(第8話)

感想レビュー

 

 

長らくプリンセスプリンシパルの物語の軸となっていた、アンジェとプリンセスの関係性について踏み込みその謎が明かされると共に、2人がお互いへ抱く想いがグッと掘り下げられた今回のエピソード。出会い、別れ、そして再会を経てきた真逆の2人の間に築かれた尊く強い絆と誓いに心打たれる名エピソードとなっております ここがアンプリの聖地だ...!

 

  • 2人の少女

本エピソードにおいてまず先に触れておくべきなのが、アンジェの正体がアルビオン王国の王女(プリンセス)・シャーロットプリンセスの正体が貧困層の孤児・アンジェであったという2人の衝撃の関係性。

偶然の出会いから同じ姿の真逆の2人として交友を深めていく様が描かれ、やがてそれぞれが入れ替わり今の立場へと至るまでの出来事が語られるというのが今回の物語の一つの軸となっていましたが、本編の回想中では2人の少女のどちらがアンジェ・プリンセスなのかが絶妙に分かるようで分からない感じでボカされており、革命による暴動の中でそれぞれが入れ替わる形で今のアンジェとプリンセスが在るという種明かしがされた際は、初見時とても強い衝撃を受けたものでした。

とはいえ今までのエピソード中でもプリンセスがアンジェと2人の時に彼女のことを「シャーロット」と呼んでいるなどの仄めかしがあり、今回の本編中でも2人が姿を真似て遊ぶ・入れ替わるという行動を取ったり、プリンセスが

「最近ずっと公務続きで窮屈だったの...プリンセスなんかやってるとね、たまに無性に外に出たくなる

アンジェなら分かってくれるでしょ?

ご飯を食べられないのって、とても辛くて暗い気持ちになるものね...

と暗に互いの元々の立場を示す台詞回しをしてたりと、2人の関係性について明確に示す描写は細かく仕込まれていたのが分かります。こういう部分の伏線の仕込みを改めて視聴しながら読み解いてみるのもプリプリの楽しいところですね

そんな2人の幸せな時間でのやり取りの中でも特に目を惹くのはやはり、

「ねぇ王女様、私達、友達になろうよ!」

「...私はつまらない子よ お友達になっても、楽しくないと思うわ」

「...ううん、楽しい!」

「! ...どうして?」

「私達、正反対だから!」

のやり取りだなぁと。このやり取りはcase1のパーティ会場で再会した2人のやり取りと同じ台詞回しのもので、昔プリンセスの方から友達になろうと呼びかける形で為されたやり取りが、今度はアンジェの方から語りかける形で始まり、お互いが再会を噛み締め昔の思い出を思い返すように一言一句言葉をなぞって読み上げる形で再演する、という演出になってるのがセットでグッとくるところなんですよね。またcase1のこのシーン観たくなってきたなぁ。

 

  • プリンセス-アンジェ

貧困層の孤児として過ごす中でアンジェ(シャーロット)と出会いかけがえのない時間を過ごすも、2人が入れ替わって過ごしていたまさにその日に革命が起き、離れ離れになった上に自分の方が王女と思われたまま連れられていくことになる...という数奇な運命を辿ることとなったかつてのプリンセス(アンジェ)。

そのまま自分が王女ではないことがバレれば命が危ういという極限の綱渡りと言えるような状況の中で、稽古も読み書きも文字通り血の滲むような努力の下で死ぬ気でこなし、プリンセスを完璧に演じ上げてきた、というあまりにも過酷な数年間について語られ、笑顔で乗馬してる最中の手がガクガク震えてる描写とか、引き攣りそうになる笑顔のままパーティ会場で他人と話し、人の見てないところで込み上げてきた胃の中身をぶち撒けてる描写とか、少しでもボロ出せば死ぬという状況の中で精神的に追い詰められながら必死に食らいついてるプリンセスの心情が見ていて痛いくらいに伝わってくるのでエグい... case9で語った「細くて脆い橋の上に立っている」という言葉は、自分が今までそうだったことも含めて言ってたのかなぁとも思ったり

元々読み書きも満足にできなかった子が5ヶ国語を話せるまでになった、とどれほど凄いことかを説明だけでグッと実感させてくるのも巧いところ。case16で、読み書きもできず働いて日銭を稼ぐことが生きる術である子供の存在が明かされたけど、それと同じ身分だった子が孤独に戦い1人で国民達の憧れである気品溢れる存在へと必死に食らいついた、ってのがもう...ちせ殿の修行僧のようという例えは言い得て妙だなと

そんな過去を思えば、今スパイとして過ごす中で任務に無邪気に向かおうとするのも、王女として窮屈に振る舞う中では味わえなかった刺激的な体験を求めていたからこそだというのが見えてくるのも、プリンセスのキャラを更に一段階掘り下げてて良きところでした

 

  • アンジェ-プリンセス・シャーロット

稽古・勉強漬けの生活に嫌気が差していた中でプリンセス(アンジェ)に出会い楽しい時間を過ごす中で、プリンセスと入れ替わって飛び出した外の世界の現実を直視し、自分達を阻む壁を取り除くために女王になって国を変える決意をするも、革命によってプリンセスと生き別れスパイの道を進むこととなったアンジェ。

世界を変えるために女王になる決意を固めプリンセスにそれを語った正にその瞬間にプリンセスと生き別れてしまった上に彼女の方が王女として連れていかれてしまい、結果的に彼女に王女という立場とそれに伴う重責を押し付ける形で生き別れることになってしまったという、こっちもこっちでえげつないくらいに辛い生い立ち...

今までプリンセスに対し甘かったり、時に過保護になったりするのも、彼女へ全てを押し付けてしまったことへの後悔と責任があるが故の、自分がなんとしても守りたいという気持ちや、今まで必死に戦い続けてきた彼女の立場を尊ぶ気持ちがあるからと思うと、彼女の心境の程が伺えますね。今までの人生もプリンセスの過酷な人生や、プリンセスともう一度出会い、共に生きる未来を絶えず想ってきてたんだろうなとか色々なことを考えちゃうますね。そりゃあ2人で一緒にいて歯止めが効かなくなりますわ

今までのエピソードでも今回のエピソードでも共通して、プリンセスの前で和らぐアンジェの声色というのが細かく描かれてきていたけど、その部分にも強い説得力が生まれましたね。心を許せる存在なんだよな...

  • ジュリ

今回のゲストキャラクターであるジュリ、立ち回りとしてはアンジェとの出会いと交流が描かれるという割と普通な感じながらも、アンジェが彼女のことを気にかけ接していくうちに自身とプリンセスの過去を(ぼかしながらだけど)語っていく、という今回のエピソードを回す重要な役割を果たしたキャラでもありました。アンジェが彼女に手を差し伸べたのは、孤児という立場や、自身を取り巻く環境になんとかして戦う姿を、自分が外の世界で目にした現実に重ねたからこそなんだろうなぁ。

ジュリも何気に可愛くて印象深いキャラだし、劇場版で再登場したりしないだろうかと思ったり。また出て欲しいキャラが多いなぁ

 

  • “プリンセス”

物語のクライマックス、プリンセスが知性と気品溢れる王女となり、更にかつて自分が誓った「この国を変える」という約束を胸に秘め戦っていたことを称え、アンジェは彼女に

「あなたはもう、本物のプリンセスよ」

と告げる。

この下りがもう本ッッッ当に最高。

かつての王女であり、数年ぶりに再会できたプリンセスの無二の友人であるアンジェが、プリンセスのことをこうして賞賛するという行為は、今まで誰にも分からないように苦しみ孤独に努力してきた彼女の人生にこれ以上ないくらいにとてもとても強い意味を与えてあげられることであり、これを受けてプリンセスが死に物狂いで王女を演じてきた自身の人生に色を得て感極まるところまでが込みとなって感情を揺さぶってくる、この2人の関係性の一つの極致と言っても過言ではない、プリンセスプリンシパル屈指の名シーンだと思います。

ラストは2人が肩を並べてピアノを演奏し、その姿が昔の2人の姿に重なる、というこの2人がかけがえのない友人としてまた共に在ることを示すとてもグッとくる演出で締め括るのがまた感嘆。最高ですね...


ほんと、プリンセスプリンシパルの物語を追ってきてこそ心に沁みる素晴らしいエピソードだと改めて実感しました。

 

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた

 

 

 

 

 

 

...なんでちせ殿はコウモリみたいになって見張ってんの?(突っ込みたかったけどアンプリ語りが激しすぎて全然触れる隙がなかった話題)