AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

もう一度、家族に

Princess Principal/プリンセス・プリンシパル

case18「Rouge Morgue」(第6話)

感想レビュー

 

 

あぁ、来ました、プリンセスプリンシパル中最大に激重で辛い回...

アバンの指導ド下手アンジェと脳筋ちせ殿が本エピソード最初で最後の貴重すぎるギャグシーンです

 

王国外務省の暗号の奪取任務のために、暗号の情報を知るノルマンディー公の協力者であるという男に接触するべくベアトリスと共にモルグへと潜入するドロシー、そんな彼女が接触する男とは幼い頃に離別し生き別れた自身の父・ダニーであった、という導入から始まる今回のエピソード。

再会した親子2人が互いの間の大きな隔たり故にすれ違う中で、ドロシーがかつての幸せだった頃の家族の思い出や、最低と思っていた父が娘の自分に抱く愛情に触れ、少しずつ家族の情を取り戻していく家族の再生を描きながらも、その先に待つあまりに哀しい結末が胸を締め付けるストーリー、こればかりは何度観ても慣れませんね...今回も不覚にもラストシーン泣いてしまいました 泣くよ...

 

  • ダニー

元は優秀な技師であったものの、事故による怪我で職を追われて落ちぶれ、酒に溺れ周囲に対し暴力的に振る舞うようになってしまったドロシーの父親。

幼いドロシーに対して手を上げては我に返って謝罪しながら泣きつくという昔の光景や、数年ぶりの再会を果たすも昔の経験や変わることのない性格からドロシーに本気で拒絶され人目もはばからず声を上げて泣く姿など、感情的な部分と理性的な部分とが混然とした振る舞いが痛々しく、彼のシーンは見ていて色んな想いが渦巻きました。

しかも彼に関して余計に辛いのは、橘正紀監督がインタビューで語っていた以下の記述で語られていた裏設定的な部分についてなんですよね(以下該当インタビューより抜粋)。

それから、第6話でダニーが感情をコントロールできなくなっている場面がありますが、アレは自分の中で理屈は考えているんです。当時、ワインの中に酢酸鉛という鉛を使った甘味料がありまして、ワインが古くなって酸っぱくなってしまった時に、鉛の鍋で煮ると鉛と反応して甘くなるんです。

 ヴェートーベンが典型的な例なのですが、鉛中毒を起こすと感情的になったり、耳が聞こえなくなったりといった症状がひどく出ることがあり、ダニーは酒で身持ちを崩しておかしくなったのではなく、酒の中の病的にさせる成分によって情緒不安定になっていたんですよ。コンテのト書きにも書いていたのですが、本来の気質ではなくて病気だったんですね。ダニーは、中毒症状であんな感じになっていたんです。

『プリンセス・プリンシパル』橘正紀監督インタビュー。6話の悲劇に隠された意外な事実も明らかに - 電撃オンライン

と、暴力などの行いそのものについては擁護しかねるものの、ダニー自身はあくまでもああしたくてしてるわけではない、ということなんですね。やるせない...
ドロシーに及ぼうとしてる危険に対しては身体を張って向かって行ったりと娘ドロシーに父親として抱いている愛情が紛れもなく本物であることを感じさせる言動も多々あり、見ていて感情移入する部分もある、複雑なキャラクター性を有したキャラだなと。

 

  • ドロシー

幼い頃父の行いに耐えきれなくなった母が逃げ出し、その後は自身も父の振る舞いに愛想を尽かして家を出て、そのまま革命に巻き込まれて生き別れた結果スパイの道を辿った、という壮絶すぎる人生が明かされました。次のエピソードで明かされるプリンセスの過去に並んで壮絶だよなぁ 実は本名はデイジーで、ドロシーは出て行った母親の名前、というのがさらっと明かされるのしんど(しんど)
元よりダニーとの接触に難色を示していて、再会した後も本気で拒絶する姿はダニーの描写と合わせてダブルパンチで辛かったけれど、かつて家族で過ごしていた頃の家に残る幸せな家族の風景の面影に触れたことやダニーと一緒に過ごしたことなどの影響もあって、少しずつ父に対する情を見せていくようになっていく様は彼女の中の捨てきれない家族の繋がりみたいなものが伺えてなんだか沁み入るものがありました。幸せだった頃の家族の思い出が今も幸せとして心に残っていて、それを今でも求め続けていたのかもしれない、とも思ったり。歌も自然と口ずさんだりしてたからなぁ

そして、自分の知らないところで体を張って自分を庇ってくれていたダニーの紛れもない娘への愛情を知って自ずと心を開いていき、彼のことを思い出しながら笑顔を見せるようにもなるという序盤からの心情の変化の描写もあり、2人の家族としての再生を感じさせた...のだけど、その裏ではある悲劇が繰り広げられていて...あぁもう辛い 本当に(後述)

 

  • ベアトリス

ドロシーと一緒に任務を行う中で、親子2人の関係に触れることとなった今回のベアト。

ダニーがドロシーの父親と分かった際、直前にドロシーの近くでダニーの言動を最低と評してしまったことをちょっと後悔したり、粗暴に振る舞うダニーに「あなた、お父さんなんでしょ?だったら、ちゃんとお父さんしてくださいよ!」とハッキリ物申したりと、要所要所でドロシー親子のことを気にかけるような描写が細やかに入れ込まれるのが良いアクセントになっており、ある種今回の清涼剤的存在となっていましたね。ラストのシーンでドロシーへ向けた歌は、彼女の優しさが良く出た粋な計らいでとても素敵でした。

また父親に良い思い出のない者同士のシンパシーからドロシーが自然とベアトに自分のことを語り、ベアトもそんなドロシーの気持ちに寄り添いその心を解きほぐしていくという感じで2人の関係性が深まっていく描写もあり、キャラクターの細かな関係性の描写が好きな身としてはとても良きところでした。可愛い妹みたいな存在であろうベアトにドロシーが自分の心を許していき、ベアトも頼れる存在として見ていたであろうドロシーがふと見せた弱さみたいな一面に寄り添ってあげる、みたいな感じで、良いですね...ドロベア...良い親友だよ

 

  • 結末

父の愛情を知り、ドロシーの中にも少しずつ家族の繋がりが思い出されてゆく。

 

その頃ダニーは、手に入れた暗号をガゼルの下へ届けるも、手渡すその瞬間になってある取引を持ちかけ始める...

 

「けっこう苦労したんだぜ?

来る日も来る日も娘と一緒に死体漁ってよォ」

「だから報酬は2人分出してもらおうか?」

「 アイツ綺麗だからよォ、服でも買ってやってさ、一緒に街を歩くんだ...『どうだ!?オレの娘は美人だろ」って言ってよ

...奇跡なんだよォ すっかり諦めてた娘とあんなところで会えた!だからオレ達にはやり直すための金がいるんだ!これまでのクソみたいな人生とはおさらばして、今度こそオレは生まれ変わるんだ!!」

 

が、ダニーの交渉を一蹴し、ガゼルは無情にも凶刃をダニーへ向けて投げつけー

 

一方、ダニーと待ち合わせるドロシーは、ベアトリスと共に父の話に華を咲かせていた。

幸せだった頃の父との思い出を思い返し笑みを浮かべるドロシー。やがてベアトリスが父との思い出の歌を口ずさみ始め、周囲の客達も一緒になって歌い始め、その光景をドロシーも微笑ましく見つめる。

「遅いなぁ、父さん」

嬉しげに、待ち遠しげにドロシーはぽつりとこぼす

 

同じ頃、モルグに物言わぬ身となった父が運び込まれていったとも知らず...

 

つらすぎる

文章書くために内容思い返したり本編見返したりしててまた込み上げてくるものがあって堪らんかったんすよ...


2度と会えないかと思ってた娘との再会に心を躍らせ、今度こそ絶対やり直すと決めて一歩踏み出そうとしていたのに、娘のためにと少しばかり張った欲が原因となって、おさらばしようと思っていた暗く冷たいモルグへと亡骸として片道で戻って行ってしまうことになったダニーと、

父への愛・家族の思い出を温かなものとして思い浮かべられるようになってきていた最中であったのに、決して来ることのない父を思い出の歌が楽しげに響く酒場で楽しそうに待ち続けることになってしまったドロシー、

...紆余曲折ありながらも家族としてまた一つになりつつあった矢先にこの結末って、言葉に表しようのないほどに胸がいっぱいになってしまいます

今回のエピソード中でドロシーやダニーを通じ印象的に歌い上げられてきた劇中歌「moonlight melody」がしっとりとした、且つ明るいメロディラインで良い空気感を出しつつ、その実エピソード全体の悲壮で切ない雰囲気を引き締めているのがまた演出として効果的すぎて...書いててまた辛くなってきた...

救いはないんですか 救いは

 

描写はされなかったけど多分間も無くしてドロシーは知ることになるんですよね、これ それを思うとまた余計に...もうこれ以上考えたくねぇよ

結末はこれ以上ない悲劇に終わってしまったけど、父の愛情・家族の繋がり、それらに再び触れ思い出すことができたのはドロシーにとって間違いなく幸せだったはず そう信じたい そんなエピソードでした。

この先も何回観ても泣いちゃうんだろうなぁ...

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた

 

 

月が綺麗で

僕らは恋に落ちて...