AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

仮面の下

仮面ライダークウガ

EPISODE48「空我」

感想レビュー

 

 

  • 日常の在る場所

前回のラストからの続きで、ポレポレを訪れおやっさんや奈々と共に他愛無い会話に華を咲かせる五代さん。クウガという作品においてポレポレはほぼ常に日常の象徴とも言える穏やかな雰囲気があって、ここにいる時の五代さんも自ずと明るくなれている感じがあるのが良かったけれど、この陰鬱とした終盤の展開の中でも五代さんがここに来るとどこか穏やかな空気が生まれた感じがあって、それがなんだか凄く沁み入りましたね

そして挨拶を済ませ去りゆく五代さんの言葉から、最後に五代さんが4号/クウガであることに思い至ったおやっさん 。冒険を後回しにして何かを為す五代さんの気持ちを推し量り、終盤に五代さんが思い悩んでる時もいつでも冒険に行けるよう支えてあげていたりしていて、五代さんの身近に寄り添い続けてたおやっさんがここで彼が今まで抱えてきた想いを悟ったかのような表情を見せる様は凄く印象的でした。色んな想いが巡ったんだろうなぁ...

  • 決着

物語序盤にて印象深い邂逅を果たし、その後もたびたび相対し続けてきた一条さんとバルバ。その因縁にも遂に幕が下ろされることになりました。強力な兵器を手に自身と何度も対峙する一条さんを見て「リントはいずれグロンギと等しくなる」とよく語っていたバルバだけど、一条さんを前にしてる時の態度からして、変な意味ではないけど彼個人に対しては何か感じてたりはしてたのかな...とも思ったりはするなぁ 2人が恋愛関係になる設定も存在してたと聞くし

2人の決着は、バルバを追ってきた一条さんが背後から彼女を撃つことでつくという非常に呆気ないもので、個人的に少々物足りなさのあるものだったのですが、高寺Pがこのシーンについて言及したツイート(後述)なども踏まえた上で見てみると、前々回のEPISODE46で示されたグロンギを虐げ狩る側となった人間という構図をさり気なく仕込んでもいたりと、象徴的な演出が多く含まれてたシーンでもあったなと改めて感じたりしましたね。

話を追うごとに服装が徐々に人間に馴染み溶け込むような自然なものに変化してきたバルバだけど、そんな見た目少しずつ人間に近づいて行く彼女に一条さんが何度も銃を突き付け、最後には背後から仕留めることになる、というのはまさしくバルバの言った「リントはグロンギと等しくなる」「リントを狩るためのリントの戦士」という言葉を皮肉りながら象徴したものだったんじゃないかなとも思ったり...
高寺成紀☺2月27日(土)13時「怪獣ラジオ(昼)」@調布FM on Twitter: "#クウガ20周年配信 バラ女を背中から撃つ一条は非情という批判もありましたが「グロンギとやがて等しくなる」と言われたリントの姿を示した場面でした。「リントを狩るためのリントの戦士」。作中では空想的存在と戦っていた一条も同族の悪意から生み出された存在ではないかとバラ女は示唆していました"

 

またバルバの退場は、弾丸を撃ち込まれた後倒れながら海の中へと消え、そのまま亡骸も発見されず...という如何にもな匂わせを含んだものでした。一条さんが彼女に突き付けていた羊皮紙に書かれた記述が、未公開となった劇場版へと繋がる伏線だったのと併せ、彼女もこの時点で命を堕としていないというテイで描かれていたんだろうな(事実この13年後を描く小説版では...)

高寺成紀☺2月27日(土)13時「怪獣ラジオ(昼)」@調布FM on Twitter: "#クウガ20周年配信 一条が見付けた皮紙は劇場版を想定した伏線でした。残念ながら実現は出来なかったのですが「アラスカに渡り凍土に閉じ込められていたグロンギの一団が復活し日本に上陸」的構想でした。一団の長がオオカミ種怪人であることも記されていました。 #kuuga #nitiasa #超配信 #東映特撮"

 

彼女のフェードアウトと並行して、何かを感じ取り一瞬表情が揺らいだかのようなダグバの表情のカットが入ったりと彼との関係性について広がりを持たせたような演出もあり、総じてバルバは他のグロンギとは一線を画した神秘的で謎めいた雰囲気が実に魅力的な存在でしたね。演じる七森さんの神秘的な佇まいや静かな気品ある演技も素晴らしく、バルバの魅力をより押し上げていました 良いキャラだった

 

  • お別れ

ポレポレに続きわかば保育園を訪れ、みのりや子供達と交流した五代さん。みんなの御守りを一緒に作り、現状に不安を覚える子供達を激励する五代さん、そんな五代さんとの別れを惜しみながらも、みのりに後押しされいつものサムズアップを送る子供達、と凄く優しく、ほっこりする一幕でした。

にしてもこのわかば保育園も、暴力の虚しさ・分かり合うことの尊さを子供達の視点から描き出すことでクウガの物語のテーマ性をグッと引き上げる良い舞台であり続けてたなぁと思うところ。小さな子供の些細な感情の動きは良い方向にも悪い方向にも容易く転び得るからこそ、五代さん達がそこに向き合い大切なことを伝える様や、それを受け優しさを心で覚えていく子供達の姿はどれもとても素敵でした。

 

  • 帰ってこられる場所

そして五代さんは最後に、城南大学の桜子さんの下へ。やっぱり最後はここだよなぁ...
前回のエピソードでは凄まじき戦士となる道を選んだ五代さんのことも強く信じる健気さを見せ、一方今回のエピソードではそうして五代さんを信じつつも同時に強く心配し、また無事に戻ってきてくれることを切に願う一面が描かれる、という桜子さんのヒロイン性が光ったこの一連のシーンはこちらも凄く心惹かれましたね...
クウガとなって戦いに身を投じる五代さんが心配、という気持ちから始まり、五代さんをとことん信じ自分にできることをやって支える、という答えに至りそれを貫き続けてきた桜子さんが、このクライマックスで信じているけどやはり五代さんを大切に想うからこそ心配、と思う姿を見せる様は儚くもいじらしくてとても響いたなぁ。そんな桜子さんが去りゆく五代さんの背中を雨の中色んな感情が溢れ出した表情で追いかけ呼びかけるところも村田さんの表情の演技とかが凄く良かった
「窓の鍵...開けとくから...」という最後の台詞も、EPISODE1において冒険から帰ってきた五代さんが壁を伝って窓から入ってきたあのシーンを意識した台詞回しとして、桜子さんが五代さんの無事と帰還を願う想いをこれ以上なく強く表現してて最高に胸を打ちました。クライマックスでのこういう要素の拾い方はずるい...

高寺成紀☺2月27日(土)13時「怪獣ラジオ(昼)」@調布FM on Twitter: "#クウガ20周年配信 雄介が冒険から帰ってくる時は決まって窓から。EP1やEP20での雄介と桜子のやり取りを観ている者としては「窓の鍵、開けとくから」の伏線回収は巧みな上に切なくて泣けてきます。 #kuuga #nitiasa #超配信 #仮面ライダークウガ #東映特撮"

 

  • 始まりの地で

ダグバが再び凶行に及んだ現場で五代さんはダグバと2度目の対峙を果たす。ここのシーン、ダグバの足元に転がる焼け爛れた人間の亡骸の山の画がエグすぎて怖かった...
ダグバの挑発を受け、奴が始まりの地・九郎々岳で待っていることを感じた五代さんは、修理されたトライチェイサーを駆る一条さんと共に肩を並べ、現場へと向かう...
最終決戦の場となるのが、ダグバやグロンギ達の復活の地にして悲劇の始まり、そして五代さんと一条さんが初めて出会ったクウガの物語の原点とも呼べる場所なのは熱すぎる!最後の最後に序盤の起点となった地へ戻るシチュエーションは、物語のクライマックスを感じさせると共に、今までの思い出が去来するので無条件で好きなんだよ...!!
そして雪が降りしきる現場へ辿り着いた2人。そこで一条さんと五代さんは、最後の戦いを前に、互いへの想いを語り始める...

「...こんな寄り道はさせたくなかった」

 

「え?」

 

「君には...冒険だけしていて欲しかった

ここまで君を付き合わせてしまって...」

 

「...ありがとうございました

 

俺、良かったと思ってます

だって...一条さんと会えたから」

 

「...五代」

 

(互いのサムズアップ)

 

「...じゃあ、見ててください

俺の変身」

(頷く一条さん)

 

ハァァ...(感慨)

もうこのやりとりに、この2人が積み重ねてきた理解と信頼の深みが詰まってますよね...多くを語らずともこの台詞に全てが込められてますよ

そしてその締めは、EPISODE2で五代さんが自分の決意の変身を一条さんに見せた時と同じ台詞回しで自身の最後の変身の姿を一条さんに見守っていてもらう、という...この1年近い物語の蓄積を与えた上でのオマージュも最高なんですよ 自分の決意を示す最初と最後の変身、それを見守るのは同じ時そこにいてくれた大切な親友...嗚呼、熱すぎる

 

  • 笑顔と苦痛

一条さんに見守られながら凄まじき戦士・アルティメットフォームへと変身し、ダグバと相対するクウガ純粋そのものな邪悪さと狂気を携える純白の姿のダグバと、皆の笑顔の為に究極の闇をその身に宿した漆黒の姿のクウガ、というこの2人の在り方を表した構図がもう既に強烈なまでに象徴的で好き。

 

そして始まる2人の戦闘。超能力による発火を物ともせず、2人は早々に鮮血を撒き散らすほどの重い拳を叩きつけ合う殴り合いへと突入する。

ボロボロになり、互いの急所たるベルトとバックルに亀裂を走らせながら戦う内、やがて変身が解け、生身のままでの殴り合いが始まる。

お互いの吐き散らした血反吐で雪と自身の身体を赤く染めながら戦う両者。そんな中で、
ダグバは強敵の出現を喜び心の底から笑い、

五代さんは相手を殴り続ける心と身体の痛みに悶え苦しみ涙を流していた...

 

最強の力を持つ者同士の、ただただ重い拳を互いへ叩き込んでいく戦いというこの構図は、極限までシンプルになった演出がかえって効果的に効いた故に真に迫る迫力があって実に強烈。派手なアクションはないけど一発一発の重みがしっかり演出されてるのが実に効果的でしたね。

...そしてやがて2人の変身が解け、生身の姿での殴り合いに発展すると一転、

人と人が血濡れの拳で暴力を振るい合うという凄惨な構図が展開される形になると共に、

今まで仮面に隠され伺い知ることのできなかった暴力を振るわなければならないことへの苦痛に身を引き裂かれそうになり表情を悲しみとやるせなさで痛々しく歪めながら戦う五代さんの姿が暴かれ、

加えてそれと対比するように戦いと殺戮を心から楽しむダグバの決して分かり合えない狂気が濃く浮き彫りとなることに。

 

この演出はほんと、この回、引いてはクウガという作品全体通しての戦闘演出の中でも最大の白眉だと思います。

これまでにも苦しそうな掛け声で戦うクウガというのはさり気なく描かれ続けてきており、そこから戦うことを苦しく思う五代さんの心が濃く表現されているのを感じ取ることができていたけれど、この演出によりクウガという仮面の下で、五代雄介という男が皆の笑顔のためにとどんな想いを抱き、どんな表情をして戦っていたのかが直接的に描かれることで、我々視聴者もその痛みと苦しみをリアルに肌で感じさせられる形で真に理解することとなるんですよね...

これまでもずっと同じようにして戦ってきたと思うともう本当に、胸が張り裂けそうになるんですよ...!辛すぎる

また、その泣きながら戦う五代さんに対する形で笑いながら戦うダグバの姿が描かれることでその狂気が強調されると共に、五代さんがどんなに苦しくても、コイツとは拳で殴り合って決着をつけるしかないという辛さを突き付けられるのがまた凶悪...
そして極め付けはこの2人の生身の殴り合いという構図そのもの。今までヒーローと怪人の戦いという演出の域にあったからこそカッコ良さなども感じながら観ることのできていたクウガグロンギの戦いが、人と人の暴力の振るい合いという構図になることで痛々しさがひたすら濃く滲み出ることとなり、大きな力を有するヒーローと怪人の戦いの中にも内在する暴力性、引いては人が互いに拳を交え合うことの恐ろしさというものを幾度も強調してきたクウガという作品の戦いに対する捉え方が真に浮き彫りになる、という もうね、秀逸すぎる...

当時としては鳴り物入りで登場した最強の形態の戦闘がただ殴り合うだけ、というところで否定的に見る声も多かったということで言われてもみれば成る程なぁ...と思うところですが、このクライマックスにこの演出だったからこそできた色んなメッセージ性を込めた、これ以上なくクウガという作品の最後の戦いに相応しい魅せだったと思います。

 

 

そして壮絶な殴り合いの果て、互いの血で赤く染まった雪の上に在るのは、動かなくなり倒れ伏した2人の体。

それを見た一条さんの、五代さんに必死に呼びかける絶叫が、九郎々岳に木霊した...

 

 

以上クウガ48話、クウガという物語の中で生きる人々や彼らが日常を過ごした舞台、それらが物語に与えた意味を改めて示してもらえた前半の展開や最終決戦前の五代さん一条さんのコンビの関係性の描写にグッとこさせられると共に、クウガという作品が伝えたかった戦いへの想いを痛々しいまでに濃縮してぶつけてくる演出が鮮烈すぎるダグバとの最終決戦が実に心を強く打つ、そんな印象深すぎる最終回1話前でした。

記事内で全てを語り尽くした気がするのでもうこれ以上は何も語りません。

ここから五代さんはどうなったのか、彼が救った世界と人々と、その笑顔の未来はー

次回、最終回。

お楽しみに

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた

 

 

 

 

 

4号はほんとはいちゃいけないって、先生は思ってるの

 

あいつ、青空が好きでね

 

EPISODE49「雄介」