AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

怒りと拳と、綺麗事と

仮面ライダークウガ

EPISODE40、41「衝動/抑制」

感想レビュー

 

 

「行きたくなったら、いつでも行っていいぞ、冒険」

クウガにまつわる不穏な事柄の数々に内心迷いを抱えて続けていた五代さんの不安を感じ取っていて、彼が冒険へ戻れない理由があることをなんとなく察しつつも、また冒険へ行けるようさり気なく促してあげるおやっさんが大人の貫禄と安心感を感じさせアバンから凄く良し。上記の台詞を発する際の店のドアを開く姿が、言葉通り五代さんがいつでも出ていけるよう促していてあげているかのようで凄く象徴的でありとても良い演出でしたね。開けたドアから光が射し込むという構図も光射す明るい日常への道標のようであり、絵作りの妙だなぁと感心。

自分の不安を見透かされてたことに図星を突かれた動揺があってか背を向けたまま受け応えしてた五代さんも、おやっさんの優しい言葉に振り返り笑顔で返していて、実際おやっさんは日常の象徴みたいな存在として五代さんにとっても心の拠り所の一つなんだろうなぁとか思ったり。普段抜けてても仮面ライダーおやっさんですね

 

  • ダグバ・無双

前回ゴオマを無惨にも葬り去ったその後、0号...ダグバは山形新潟愛知と各地を転々としながら、今までのものを含め3週間で総勢162体のグロンギを粛正ししたことが明らかに。

劇中でも望美に言及されてるように、これまで9ヶ月近くに及んだ戦いでクウガや警察が40体を倒したのとは比較にならないスピードでグロンギを狩っていってる(ダグバは手ずから粛正に向かってるし始末してるのはおそらくはほとんどがズやそれ以下のものをはじめとした下位集団であろうという違いがあるとはいえ)様は、ベールに包まれた存在感も相まってダグバの強大さを不気味に演出していて緊張感が増しますね

そんなダグバも今回から少しずつそのベールを脱いでいくのですが、それを表す演出については後述。

 

  • 笑顔に

ダグバの存在に対し、杉田さん達警察の面々の緊張感がにわかに高まり張り詰める中で、警察無線を通じて底抜けに明るい挨拶を送ってくる五代さんにふっと顔がほころび平和な空気感に包まれる下り、登場人物達の優しさ・善性が濃く現れ出てるクウガらしい一幕でとても心温まる。松倉本部長も笑ってるの良いですよね。個人的に「元気ですよ〜」ってだいぶ素のトーンで返す桜井さんが大好き。

警察の人達との間に築かれていってる絆なんかを感じられるし、ムードメーカーとして皆の中心に五代さんがある感じが見られて凄く良いなこのシーン

 

  • 「大丈夫」

そんな五代さん、自分が凄まじき戦士に近づいていることやそれに対する恐れや迷いがあったことを自認し、そのきっかけとなったジャラジの事件の中で自分が抱いた激情について詳しく語ってくれました。

多くの人々がグロンギの犠牲になってきたことに対し様々な感情が積み重なり、そこでジャラジの卑劣な所業やそれに苦しめられ犠牲になった生徒達のことを目にしたことで感情が爆発し、一時は周囲を顧みずにライジングマイティを使ってまでジャラジを下そうとする危うい感情を抱いたという告白は五代雄介という人物の人間的に弱い部分を示すもので少し衝撃的でしたが、その後の五代さんが自分が大きな感情に呑まれかけたことやクウガの力についてなどに思い詰め苦悩しながらも向き合っていたことと併せて考えると彼の真っ直ぐで優しい部分も同時に伺えるところであり、五代さんの人間的な部分が色々な側面から掘り下げられた良いシーンだったなと。

ともかく、自身が凄まじき戦士へと近付いた事実にしっかりと向き合い、迷いを経ながらも一つの覚悟を決めたであろう五代さんが久しぶりの「大丈夫」を聞かせてくれたのは嬉しかったですね。今までの物語の中で積み上げた信頼感があるからこそ、彼の繰り出す「大丈夫」に文字通り大丈夫と思える安心感があるの良いよね。そんな安心感を同じく感じてか、一条さんも桜子さんも榎田さんも笑顔が溢れるぶところまで含めてとても味わい深いです。桜子さんと榎田さんが二人して五代さんの話題になってフフフ...って笑い合うとこの絶妙な空気感好きなんだ

 

  • 聞き覚えのある...

五代さん達が城南大学の話題に華を咲かせる中で登場した「本郷先生」なる人物。仮面ライダーに馴染みのある方々なら...言わずもがなですよねw 鈴村監督が言及されてる通り、1号ライダーの変身者「本郷猛」のリスペクトを込めたお遊び要素ですね。

現在は先生になっている、という感じみたいですが、こんだけ世間がグロンギの脅威に晒されていたら本郷さんも戦いに赴きそうとか思ったりするので、個人的には「ショッカーに誘拐されず改造手術を受けなかった本郷猛」の可能性の一つかも...と思ったり。

鈴村展弘@公式アカウント on Twitter: "眉の太い本郷先生。 そうこれは、言わずもがなの仮面ライダー1号の本郷猛が城南大学生科学研究所のエリート科学者という設定から、現在は先生になっている?というちょっとした昭和ライダーとの繋がり…というかリスペクトだったりします。 #クウガ20周年配信… https://t.co/npqRmTG3IL"

しかし、「凄く熱く語る」とか「オハヨウ!!」とか、どっちかというと中の人の要素が強い気がするぞ本郷先生!?

 

  • ジャーザ

最強の3人の1人として現れ、ゲゲルを開始したゴ・ジャーザ・ギ。待っていました、ガドル閣下に次ぐ私のお気に入りのゴのグロンギ怪人の1人です

ビジネススーツに身を包みPCを使いこなすという姿は、物腰柔らかで美しい声色の喋り方も相まってこれまでのグロンギの中でもトップで人間ぽいというか、人間社会に溶け込んでいて、一見するとただのキャリアウーマン

...なのだけれど、その実態は、本番のザギバスゲゲルに備え力を温存したいという理由から弱者を容赦なくターゲットに据えて無惨に追い詰めその命を狩り取り、しかもそれをネット上に楽しげに予告するという余裕も見せるという、どこまでも合理的かつ残忍な性格が見え隠れするこれまたグロンギの中でも指折りの外道。更にそれでいて、ペガサスでも捉えきれない速度でのモリの射出、クウガと同じ形態変化を用いクウガを圧倒する(後述)など、いざ戦えば凄まじく強いという最強集団の上位に君臨するに足るだけの実力を隠し持つ、知性と戦闘の実力を兼ね備えたキャラクター性がとても魅力的なんですよ...その普通の人間っぽすぎる風貌や振る舞いは、グロンギの人間社会への同化の象徴のようでもあり、そういう意味でも印象深いなと思います。

あまりにエグすぎて直接の描写はないながらもその分嫌な想像を掻き立てられる狩りの手口、ネットへの予告文の胸糞極まりない内容からは、これまでのグロンギ以上に人の命をまるでなんとも思っていない酷薄さが伺え、悪役としても完璧。逆光を前に飛行機に乗り込んでいく後ろ姿はその美しさと裏腹にまるで死神のようで恐ろしかった...

どんとこい、ゼットアンドリュー on Twitter: "凄い綺麗な声色と今までのグロンギでもトップクラスに「普通にいそう」な人間という感じのキャリアウーマンな見た目に対し、内面はどこまでも合理的で残虐、そのくせしていざ戦えば最強格に数えられるほど強いというゴリゴリのインテリヤクザみたいな風格のあるジャーザめちゃ好きなの...… https://t.co/L7uMdRH0Yi"

どんとこい、ゼットアンドリュー on Twitter: "弱い奴を重点的に狙う、というのは悪役キャラでもたまに聞くタイプだけど、子供や老人が社会的・肉体的・精神的に、とあらゆる面で“弱い”者であることをどこまでも合理的に理解している上で、それを効率化の為に狙ってさらりと殺すという点がジャーザの悪辣たるところで 良いんだわこういうとこが"

 

  • 苦痛

遠方から見つめるダグバの気配に気を取られ(ここのダグバの「不鮮明な謎の少年のカットが不快なノイズと共にぶつ切りに入ってくる」という下手なホラーよりホラーした演出も、ダグバの不気味な存在感と底知れなさを上手く演出しててグー)ジャーザのモリを肩に受けて串刺しにされてしまうクウガ

ここのシーンもまたオダジョーさんの迫真すぎる苦痛の声の演技や、血が容赦なく飛び散り傷口が生々しく描かれる描写などが凄まじく痛々しく、見ているこっちもゾワっとしてしまいますよね。演出の拘りの凄さを改めて感じました。

またここのシーンのグローイングフォームの傷の造形や血が飛び散る演出の方法についてTwitter上で鈴村監督が説明されてましたが、ここもまた演出の創意工夫が多く込められてて唸ったところ。特撮ってすげぇなぁ...
鈴村展弘@公式アカウント on Twitter: "ジャーザの銛を抜くクウガ。 これは銛を抜く動きに合わせて、血糊を火薬で破裂させ血飛沫を出している。 これは、コンドームに血糊を入れて火薬で飛ばしてます。空中を飛んでいるのは破裂したコンドームです。肉片が飛んだようだと監督は御満悦でしたw #クウガ20周年配信… https://t.co/Gqnj6kHHdS"

鈴村展弘@公式アカウント on Twitter: "銛を抜いて、グローイングに戻るクウガ。 前にも話しましたが、この肩の穴は現場で私が作りました。でも穴は開けないでくれとの事で、両面テープでヒダを作り、共色でヒダを塗って穴の中に血糊を入れて汚しました。 時間をかければもっとリアルに出来たのですが、現場なのでこれが限界かと…(^^;… https://t.co/Qfo7JPpaNY"

 

  • 奈々の激情

芝居のオーディションで他の子から言われた言葉にトラウマを抉られ、哀しみと相手を◯したいほどの感情を抱いてしまう奈々。

奈々のトラウマはEPISODE22にて語られた芝居の先生の一件。こういうところまでしっかり拾ってサブキャラの掘り下げに繋げてくるところが相変わらず安定してて良いのよなクウガ

相手を◯したいほどの激情、軽いそこまで本気でないものから重くどこまでも本気なものまで含め、誰しもが抱き得る感情だからこれは理解できるなぁ...僕だって感じることはないわけではないし、それこそ五代さんも抱いてしまったのだから...
だからこそおやっさんの「あるさそりゃ...でも本当にはしなかった。当たり前だよなそんなの?」という等身大な返しが凄く沁みる。しちゃいけないことなんだよ。当たり前のことなんだよな...芝居の先生の一件からずっと奈々のこと気にかけてる姿が描かれてたから本当に優しい人だな...となる。冒頭の五代さんのシーンといい、ここの奈々にちゃんと向き合ってあげるシーンといい、終盤になっておやっさんのこういう一面が掘り下げられてるのは話に深みも出てとても嬉しいことですね。

 

  • 綺麗事だから

飛び出していった奈々の下へやって来て、公園で彼女と言葉を交わす五代さんのシーン。相手の言葉への怒りやそれに対する自分の感情を号泣しながら語る奈々の姿が辛い...
相手に仕返ししてやろうとする奈々の気持ちに寄り添いつつも、それを行った自分が嫌な気持ちになったこと、やり返せば相手もやり返しその連鎖が止まらないことを五代さんは説くも、奈々からは

「さっきから五代さんの言ってること、綺麗事ばっかりやんか!」

と返されてしまう。

しかし五代さんは続ける。

 

...そうだよ

...でも、だからこそ、現実にしたいじゃない!

本当は、綺麗事が良いんだもん。

これ(拳)でしかやり取りできないなんて、悲しすぎるから!

 

待ちかねました、個人的にも凄くお気に入りの、クウガでも屈指の名言。綺麗事だけど、だからこそ現実にしたい、という直球の返しは初見当時の子供心に物凄く沁みた台詞でした

それにこの言葉は、グロンギとの容赦ない拳での血生臭いやり取りを余儀なくされている五代さんが言うからこその重みもあるところであり。分かり合えない相手と拳を交えなくてはならず、心も体も傷付く戦いを続ける自分のようにはなって欲しくないからこそ、すぐ近くの拳を交えずともきっと話し合い、分かり合える相手と向き合って欲しいという綺麗事に乗せた五代さんの願いなんですよね...ここ。というか激情に呑まれてしまった自分と重ねているからこそ、とも言えるかな

そんな五代さん、この後のジャーザとの再戦前において、事前に聞いたジャーザの寄越した犯行予告の文の内容に湧き上がる衝動があってか拳を振るわせる一幕があり、奈々に大切なことを伝えた五代さん自身が怒るほどに許せない相手と痛めつけ合うという皮肉な構図になってるのがまた...しかし同時に、奈々に大切なことを伝えたからこそ、せめて自分も凄まじき戦士き近付かないために怒りを抑えんとする意志が感じられるような気がする。味があって好きな部分です

 

  • 激闘と...

クウガとジャーザの再戦、当たり前のようにライジングの必殺技のエネルギーを打ち消し、榎田さんが言っていた「クウガのように姿を変えるグロンギ」の力を早速示すように俊敏体からゴツい姿の剛力体へと変わり、剣を振るい襲い来るジャーザの強敵ぶりも去ることながら、それに対抗するべくクウガが繰り出した、ライジングタイタンでの二刀流、これが最高にカッコよかった!強力なジャーザに対する一押しとして説得力のある演出だし、何より二刀流なんていうカッコいいに決まってるシチュエーションが最高すぎましたねぇ 大振りのライジングタイタンソードを両手で握り繰り出す様がイカしてた

そんなジャーザ戦、戦闘中に奈々がオーディション会場で自分に心ない言葉を放った相手に向き合うシーンが時折挿入され、奈々もクウガと同じく手を出してしまうのでは...!?という緊張感を醸し出す演出になっているのが良いアクセントになってました。そして奈々は...

  • サムズアップ

ポレポレで再び顔を合わせる五代さんと奈々。

奈々がその後どうなったのか心配しているであろう五代さんと奈々に間にしばし沈黙が流れ...

奈々は笑顔でサムズアップをし、

五代さんもそれに笑顔とサムズアップで応えたのだった。

 

このあえて言葉は交わさない演出が粋で良いですよね。サムズアップと笑顔、というクウガにおける象徴的な仕草で示す、これで十分なんですよね。いやぁ、良かった

 

  • さらば、ザジオ

一方、ゴオマに盗まれていたバックルの欠片が戻り、遂にダグバのバックルを完成させたザジオ。そんな彼の下に白い服の少年、ダグバその人が姿を現し...
ちなみに自分、ザジオに関しては割と最近まで「いつの間にか物語からフェードアウトしてた」と思ってたんですけど、役目を終えてダグバに粛清された、って経緯で退場してたんですね...初見当時全然気付かなかった

にしてもザジオ、各種グロンギ語翻訳サイト等に掲載の台詞回しや言動を見るに、ダグバへの下克上を考えるゴオマのことを「馬鹿」と貶していたり、今回の話でダグバが訪れた瞬間に特に慌てた様子もなかったことから、他のグロンギ含め自分もダグバに始末されることは分かってたっぽいらしいですね...死を突き付けられながらもそれを恐れる様子もなく自分のやるべきことをやり遂げる...ある意味見習う部分はあると言えるかもしれないな
さよならザジオ...

 

 

以上クウガ40、41話、凄まじき戦士へ近付く自身の中に宿る激情や力の大きさを見つめて覚悟を決め、そして拳を交えず向き合えることが理想という綺麗事を実現させたい想いを持ちながら自身はグロンギ達と拳を交えなければならない矛盾を抱えつつも、自分と同じ激情に呑まれてしまいそうな奈々に強く自身の願いと想いを伝える、とジャラジの一件を経て自分自身に強く向き合うことを決めた、などなど五代さんの人間性溢れる姿と気持ちが深く沁み入る素晴らしい良エピソードでした。五代さんの例の名言も改めて聞いて話と繋がる部分も色々感じられたことでより深みが増したなぁ

五代さん/クウガに相対するジャーザも終盤の敵として普通な見た目に反した強烈なキャラクター性や非常に存在感ある立ち回りで魅せてくれて、戦闘面・演出面ともに良かったですね。お気に入りのゴなので改めてしっかり見れて満足

奈々も今回のエピソードをもって今までの本編中での様々な積み重ねがしっかり昇華され、良い成長を果たしたようでここも良し。モブの扱いにも見事なものがあるのもクウガの好きなところです 残りのエピソードでも沢山サブキャラは掘り下げられますよ...

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた