AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

秩序の化身

ウルトラマンコスモス

第64話「月面の決戦」

感想レビュー

 

 

「行くなウルトラマンコスモス!!」」

フブキ隊員のムサシへ向けた必死の叫びが響くスタートとなった今回のエピソード。最終回1話前にして遂にコスモスでも正体バレ回がやって参りました。

第40話ラストで何か勘付いたような様子を見せており薄々気付いていたであろう伏線はあったので、最初にムサシがコスモスであることを口にするのがフブキ隊員というのは納得の流れでありましたが、カオスヘッダーに襲撃されたトレジャーベースへ向かおうとするムサシを引き止めようとするところで上記の台詞が突然飛び出してくるのはなかなかに意表を突かれて衝撃を受けたところで、劇中のムサシ同様思わず言葉を失いましたね...今まで言わずに黙っていたことが口をついて出た、みたいなフブキ隊員の必死な感じがとても良かった。
また、傷付いた身体にも関わらず自ら囮となってカオスヘッダーを引きつけようとするムサシを行かせまいとするフブキ隊員の姿を通じ、彼がムサシへ抱く想いの強さが感じられたのも印象深く、今までの展開の中で積み重ねられてきた春風コンビの関係値をこのクライマックスにおいて綺麗に描き上げてくれたな、と実にグッときました。特に死地へ赴こうとするムサシを止めようとする真剣勝負の最中、ムサシが苦しむフリをした自分を心配し戦闘を中断して駆け寄ってきたのを腹パンで気絶させ「どうしてそこで油断する!?いつまでも優しさに振り回されやがって...!」と責めるも、同時に「...でも、そこがお前の良いところだけどな」と気絶したムサシに語りかけたフブキ隊員の一連の言動は非常に良かったところで、性格上、ムサシの甘く優しい性分は自分には合わないとしつつも、その性分故にムサシが色々なことを成し遂げ自分達にも影響を与えてきたことを知っているからこそ心の奥底では信頼し認めている、という、衝突を重ねながらもムサシのことを端から端まで理解してきたからこその相棒らしさを感じさせてくれたのが堪らなく熱かったなと。60数話に渡り物語の一つの軸となっていたこの2人の関係性の極致をしっかり集約したことは間違いなく本話の白眉でありました

 

そんなフブキ隊員以外の他のEYESの面々がムサシの秘密を知る流れも描かれ、もう既にそのことを分かっており多くは語らず静かに噛み締めるヒウラキャップやアヤノ、秘密を知る者達の反応からすぐにその意味を理解するシノブリーダー、すぐには事実を受け入れられず困惑するドイガキ隊員など、様々な反応を見せていたのが目を惹いたところでした。主人公がウルトラマンであるという事実を受けメインキャラ達がそれぞれ見せる反応が波紋を形作るこの画もまたウルトラシリーズの見所ですな このことを知って以降のみんながコスモスのことを一様に「ムサシ」と呼ぶのがある種人間味あって良いよね

中でも、ムサシを人一倍に想ってるからこそ既に気付いていて、誰よりもその身を案じるアヤノの姿や、EYESの一員として人類のための任務を遂行しようとするも、ここぞでムサシを見捨てることはできずコスモスの加勢にやってくるキャップの行動は、ムサシとの関係性が情緒溢れる形で昇華されたキャラ性が味わい深く描き出されていてとても魅入りましたね。前回のエピソードでEYESの一員として責任を果たそうとする勇姿が濃く描かれていたキャップが、世界のための戦いだからと必死に自分に言い聞かせながら任務に向かうも、最後には世界や人々という「公」以上に、自分の大切な部下であるムサシを救う「私」を取るという決断を見せたのが凄くインパクト大きいですよねぇ大きな責任を背負って大多数のために戦ってきた人が、その責任をかなぐり捨ててまで自分にとってもっと大切なもののために戦うという構図がここぞで繰り出されるこの逆転のカタルシスはやはり良いね...勝手な決断かもしれないけれど人間として当然の決断だし、勝手を承知で我儘を通すという「個の感情も強い解放」があるからこそ熱いのだ

アヤノの言動も、コスモス/ムサシの窮地に皆が諦めず立ち上がるよう激励する中でもう立ち上がらなくても良いと1人懇願する姿がとても健気で胸を打ったところであったし、総じてここのEYESの面々の描写は、ムサシに対する個人的な思い入れを何よりも優先させ解き放つ者達の、1人の人間としての強い想いが時折強く光るところが実にグッときたなと感じましたね。フブキ隊員の描写含めとても良かった

 

そんな中で遂に始まる月面でのコスモスvsカオスウルトラマンの決戦。カオスウルトラマンの攻撃の爆炎を掻い潜りルナモードからコロナモードへ、カオスウルトラマンの頭上を弧を描きながら跳躍しエクリプスモードへ、というスタイリッシュな画と共に繰り出されるモードチェンジ演出に始まり、月面で繰り広げられる2体の巨人の怒涛の格闘戦が目を惹きましたね。なかなかお目にかかれない宇宙空間での戦闘シチュなのも良き。

一方、両者の戦いが始まるより少し前、カオスヘッダーが実は「秩序」 を作り出すことを目的としてある知的生命体が生み出した無数で一つの意志を成す人工生命であり、怪獣を変異させ生態系を変容させるこれまでの行動も、生命体の意思を一つに統一し秩序をもたらそうとするものだったと判明、コスモ(秩序)とカオス(混沌)で対比の構図が為されていることが最初の時点から示されていたコスモスとカオスヘッダーでしたが、ここに来てその対比の境目を曖昧にする展開が飛び出してきました。第40話でも全ての怪獣をカオス化させて一つの意思に統一しようとしてたりと伏線はちゃんと存在していましたね 悪性の存在と思いきや元々は平和のために生み出されたものだった...というパターンはウルトラシリーズ含む創作ではけっこう見かけるけど、作品を通して主人公サイドとの対比の構図が敷かれていたカオスヘッダーにこれを当てはめてくるというのは、作品のテーマ性の一つに一種の大きな転換を加えることにもなるわけなので改めて見てみるとなかなかに大きなことだよなぁと感じたところでした。実際、共存共栄をメインのテーマとする本作の、ムサシが戦うことに懐疑的な感情を持ち始めたこの最終盤の展開の中でこういう構図を打ち出してきたことはこの作品の結末に大きな意味を持ってくることになるので、ほんとテーマ性に凄く真摯な作劇だなと

 

決戦の末、月面のソアッグ鉱石を利用した戦法でコスモスはカオスウルトラマンを撃破するも、直後、全カオスヘッダーが結集し誕生した最強の実体カオスヘッダー・カオスダークネスが降臨。今までの実体カオスヘッダー以上に「悪魔」という趣で洗練されたデザインがラスボスらしくカッコ良いよねカオスダークネス じっくり見てみると左右非対称の歪なデザインだったイブリースからメビュートを経てカオスダークネスに、と徐々に左右対称に近いデザインになってるのが、完成形に近づいていってる感じがあって実体カオスヘッダーの変遷はなかなか面白いなと。見方によっては均衡の取れてない「混沌」の象徴である左右非対称のデザインが徐々に...とも取れるかも

出現の余波でソアッグ鉱石を残さず粉砕し、コスモスを念力で滅多撃ちにするカオスダークネスの圧倒的なパワーに苦しめられながらも、ヒウラキャップのサポートを受けてコスモスはなんとかカオスダークネスを撃退...しかしコスモスはムサシを分離し解放するとそのまま力尽き消滅、コスモスとの繋がりが切れたことに慟哭するムサシの叫びが月面へと響いた...というところで締め。ウルトラマン敗北/消滅、という展開もシリーズでは定番だけれど、生命の停止を思わせるかのようにウルトラマンの眼の光が消失するあの演出はいつもゾクっとするものがありますね...子供心には特に怖いよなぁあれ、と改めて思うわ

姿を消してしまったコスモス、嘆くムサシ、そして戦いの行方は...

 

以上、コスモス第64話でした。正体バレ、ウルトラマン敗北と、シリーズの定番を踏襲しつつも、 コスモスという作品独自のテーマ性をグッと深めてきたエピソードとなっていました。作品通しての見所だったムサシとフブキ隊員との関係性をしっかり描き切ってくれたのが良いね カオスヘッダーの本質という部分により深く抉り込んできた作劇も強く目を惹いたところであり、本作がどういうところに着地するのかの期待値を更に高めてきてるのも面白いところでした。

次回、最終回。その結末をお楽しみに。

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた