AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

生命(いのち)の声

ウルトラマンブレーザー

第8話「虹が出た(後編)」

感想レビュー

 

 

カッコいいだろぉ!?レインボー光輪って名前!!!(デカ声)

自分はカッコいいと思いますよ!ねぇ隊長!!ねーーー!!!

 

人類のリセットを目論む横峯、彼により復活した強敵・ニジカガチの猛進により刻一刻と近付く破滅に立ち向かうSKaRDの戦いを描く前後編エピソードの後編。ニジカガチの圧倒的なパワーを見せつけられ終わった前回から続く形で、前編の要素やそこからの流れで引っ張ってきた緊張感をしっかり引き継ぎ盛り上げてきた実に面白い後編エピでしたね。いやぁ面白かった

 

まず面白かったところといえばやはり、SKaRDの面々の活躍、その中に光る各キャラの味や関係性の魅力の描写でしょう。人類の敵となってしまった恩師・横峯先生に毅然と立ち向かうべく「最悪の場合は命を奪い倒すことも辞さない」とドライに徹し、防衛チームの隊長として人類の命運を左右する責任を背負おうとするゲント隊長そんな彼の「本当はやれない/やりたくない」という恩師を今も慕う人心をしっかりと見抜いて、彼の想いを汲みつつ横峯先生との対峙の役を買って出る、副隊長という間のポジションだからこその洞察と適度な切り込みが冴えていたテルアキ副隊長の大人/上司組の深みある覚悟や関係性の描写といい、情報収集整備前線への出撃とそれぞれの役割の上で戦い事態の解決へと奮闘したエミ・ヤスノブ・アンリの隊員組といい、今回これぞSKaRDだという感じでみんなの魅力をしっかり描けてて凄く面白かったですよ 特にヤスノブとエミはそれぞれ第2話・第5話と見えてないとこでしっかり活躍してたことが今までにも印象深く描かれてただけに、今回も別行動での奮闘・活躍がしっかり活きてて良いキャラの描き方だったなと。SKaRD全員集合!ってなってない画が却って別のとこでの活躍への信頼になるの巧いよ  やはりデカいメイン回だけでなくこういう端々での活躍や人間性の積み重ねでもキャラがより活き活きとしていく描き方がウルトラの防衛チームの真骨頂だなと思うわけですよ 本作はそこを常にしっかり意識しててくれてるので超好き

 

からのストーリー中盤の核となったテルアキ副隊長と横峯先生の対峙、こちらも今回のストーリーの白眉でありました。正直横峯先生周りの展開は、恩師と教え子ということでゲント隊長との関係性に振る方が大きい形になると思ってたので、この後編にてテルアキ副隊長との絡みにシフトするのは流れが不自然にならないかと少し心配ではあった(前編の時点でも副隊長が横峯先生を尊敬している旨の発言がありちゃんと導線はあったけど)のですが、「人間と怪獣」という命題を突き詰めすぎて人間への失望に陥り「怪獣の理解者」「人類への裁定者」として振る舞う横峯先生に対し、テルアキ副隊長が彼を尊敬する立場から「人間と怪獣」の関係に切り込んだ彼の持論の本質に理解を示しつつも、「『人間のリセット』に傾倒しそれを実現できるほどの力の下に、地球に生きる他の生命までをも巻き込んでいる」と、この星で等しく生きる意思と権利を持っている生命全てを俯瞰し想っているからこその視点で彼が犯している過ちをハッキリと断じ動かしてみせる、という凄く濃い論戦を見せてくれてそこを見事杞憂にしてくれたのが非常に感動したんですよね...「人間もこの地球の自然の一部」「絶滅を繰り返すことも自然の摂理」というやり取りまではこの手のテーマで割とよくある流れだったし、ここでテルアキ副隊長が横峯先生に圧されるかのように銃を下ろしかける下りもあって堅実に軟着陸させるかなと思ったところで、テルアキ副隊長が上記の想いを力強くぶつけ横峯先生の心を揺さぶり打ち勝つ流れになるの、これが痺れた...!「怪獣生態学に通ずる」「怪獣の生命も可能な限り重んじる」的なテルアキ副隊長のキャラ設定がここでグッと絡むとは思っていたけど、そこを「怪獣・人間含めて地球の生命全体をしっかり俯瞰し考えている」というところにまで押し広げ、その立場から「人間と怪獣」という二要素に焦点を置く命題の上での「人間や怪獣以外の生命」のことにも踏み込んでいく形にしたのは、テルアキ副隊長の視野や見識の広さを(目を曇らせ無意識の「傲慢」に陥っていた横峯先生との対比と合わせて)キャラの深みとしてグッと押し出す形になってて見事という他無かったですね。「人間と怪獣」を描く上での他の生命のこと、というのはともすれば神の視点からこの手のテーマを扱う話を観てきた我々の多くもけっこう失念していたこととも言える(実際今回のこのアプローチにハッとなってた人は多かった)ので、そこを「怪獣という『生命』を『傲慢』の下に冒涜する人類を地球ごと洗い流しリセットする」という行為は、「地球に生きとし生ける無関係の多くの『生命』をも一緒くたに洗い流す」という『人間の傲慢』なのではないか?という横峯先生へのカウンターとしたの芸術点が高すぎる

いやほんと今回でテルアキ副隊長のキャラ性にグッと深みと奥行きが増したよなぁと。自分も生物好きが高じる形でよく環境や生態系のことについて考えることが多いだけに、彼の考えや視点にはなるほどとなるものが多かったし恐れ多くも共感できるところも多かったので凄く好きになったわね 第5話や第6話で出てた副隊長の実家が農家だって話も、副隊長の生命や環境に対する考えへの説得力になってる」って言ってる方がいたのもなるほどなと  必然的に作物やそれを取り巻く生態系といった生命や環境に対する見識や考えが深まる立場だもんね農業

なまふ on X: "今回のブレーザー、実家が農家で作物の心配を前回やってた副隊長に「他の生き物はどうなるんです。動物や植物は…」って言わせるの誰よりも説得力のあるセリフになってて好きだな…" / X

結騎 了 on X: "「副隊長の実家の作物の話」、この最近は毎回のようにさらっと挟まれていたトークだったが、まさかこれが「人間と怪獣以外の草木や動物の命をも尊ぶ副隊長」に繋がるなんて、お話の縦筋ではなくキャラクター造形としてのシリーズ構成が良すぎるんよ........." / X

 

という濃密な人間ドラマが繰り広げられる上で展開された、ニジカガチの脅威に相対するぶっつけデビューのアースガロンMod.2のバトル&ブレーザーのリベンジマッチ、こちらも凄く熱かった。肩に二門のキャノン砲を背負ったアースガロンMod.2、バチバチにカッコよくてグッときたね...訓練無しのぶっつけ戦闘による不慣れさ故に、スマートに優勢に大活躍!とまではいかなかったものの、最後まで諦めず戦い勝利への道筋を作ってて良かったぞ

加えてリベンジマッチにて新技・レインボー光輪を習得し見事勝利をもぎ取ったブレーザーの活躍も凄く良かった。所々でほんのりと描かれるゲント隊長との絆・繋がりとも取れるカットがじんときたし(「腕輪を通じて繋がっている」が横峯先生とニジカガチのそれとの類比であり対比、ってのはなるほどなと)、その上で前回圧倒されたニジカガチにも怯まず攻勢を演じ続け逆転を成したあの勇猛な立ち回りは痺れた。ブレーザーブレスの装飾部分が七色に連なったステンドグラス作品のような芸術的な輝きを放つレインボー光輪のエフェクトも凄いド派手に綺麗で魅入ったよ フィギュアーツでPETシートとかで再現した時映えそうなデザインしてたし収録に期待だ 

でもってそれに対峙したニジカガチも、前回に引き続き驚異的な格を最後まで見せてくれる素晴らしい活躍っぷりで大満足であった。前回も猛威を振るった強力な虹光線をほぼ連発可能なだけでもだいぶチートじみとるのに、それに頼るだけでなく相手が自分の泣きどころを狙ってると気付いて鎧を閉じフィジカルで叩く戦法に切り替えられる機転まで見せたの良かったよね 良い強敵だった でもなんでデバフかかりそうなシチュエーションから更にバフかかって凶悪性能になるんですかね(半ギレ) 横峯先生の腕輪の破壊からの光が飛んでく演出、どう見てもニジカガチストーンが生まれる流れでしょって思ったよ()

 

かくして事件は収束し、訪れた平和を謳歌するSKaRDの仲間達と、青空の下で釣りを楽しみながらどこかからうっすらと聞こえたニジカガチの声に穏やかな笑顔を見せる横峯先生の画で締めとなりました。横峯先生、何はともあれ死ななくて良かったけどまさか本人も半ば予想外であろう形でなし崩し的に放免となるとは思わなんだ リアルSF志向の世界観設定の下だからか、ニジカガチ周りのオカルトじみた諸要素が劇中では眉唾扱いなの妙なリアリティで地味に好き  横峯先生周りの着地ははたしてこれで良かったのか、とはなるかもしれないけど、テルアキ副隊長の言葉に目が泳ぐほどに心が揺れ(ここの横峯先生役の佐藤貢三さんの目で描く感情の演技がまた良い)、それを「正しい」と受け止められた辺りにちゃんと心は感じられたし、そこを信じたいよね、とは。「自然そのもの」「神」のような存在として『還った』ニジカガチのどこからか響く声に穏やかな笑顔で返せたのも、ニジカガチ(怪獣)の在り方を一方的に定義し無意識の「邪」でニジカガチを荒神としてしまった今までとは違う、もっと純粋な心での向き合い方ができていることの表現だろうしね

にしても前述の話題に通ずる話だけど、まさか「恩師と教え子」という強いラインから始まったゲント隊長との関係性を飛び越してしまうくらいに、横峯先生とテルアキ副隊長の関係がここまで魅力的になるとは良い意味で予想外であった。人間・怪獣を含めた生命への向き合い方を改めてさせてくれたことといい、全てが終わったその時、様々な咎を背負った自分を前に「サインをください!!」と純粋な憧れを向けてきたことといい、横峯先生がメンタル的なところでテルアキ副隊長に救われたところは少なからずあっただろうし、先生、確実にあの事件の後副隊長のこと気に入ってるよなぁと。副隊長のマイペースな天然っぷりという「抜け」を一息入れられるギャグとして描いたのが面白かった「サインをください!!」だけど、そのちょっと場違いな感じだからこその救われる感じが良い味になってたのも良くて好きだわね  いやほんとここのキャラ描写ほんと全部引っ括めて良かった

 

 

以上、ブレーザー第8話でした。前編からの溜めをしっかり引き継ぎ、今回のエピソードならではのメッセージ性を強力なドラマ性へと昇華させつつ、その中で本作の色んな要素を更にグッと深めたり、新たな魅力の発見を為してみせたりと、濃い面白さが目白押しな素晴らしい後編エピソードでしたね。何度も言っちゃうけどテルアキ副隊長と横峯先生のドラマが特に良かったのなんの。ウルトラシリーズ定番の人間と怪獣というテーマに対する新たなアプローチも見られたし、山崎さんと中川監督がほんとに凄く良い仕事をしてくださいました。山崎さん自体はこの前後編のみの参戦みたいだけど、これは是非今後のシリーズにも参加して欲しいなぁ。面白かった

山崎太基@ 9.2『ウルトラマンブレーザー』第8話「虹が出た 後編」 on X: "#ウルトラマンブレーザー ニジカガチ編完結🌈 このたび脚本で参加させて頂き本当に嬉しかったです。 素晴らしい画を撮って下さった中川監督、キャスト・スタッフの皆様、そしてご覧頂いたウルトラファンの皆様、ありがとうございました! 来週からはイチ視聴者に戻って応援します!" / X

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた