AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

二つの生命を見つめる眼

ウルトラマンブレーザー

第10話「親と子」

感想レビュー

 

 

BGM無しの薄暗いロッカー室の中、裏に家族の写真が貼られたロッカーの前で大事そうに指輪を嵌めるゲント隊長っていうシチュエーションがもう“そう”としか思えないのよ 奥様やお子さんがまだ直接出てきてないだけかも、ではあるんだけどそれなら今回ちらっとでも直接出せば良いし(電話やメールといった間接的だけど“いる”と分かる描写でも良い)、なんならちゃんと出す機会まで写真の描写とかは出さないようにしても良いと思うし

(第3話感想記事↓より引用)

あちあちウルトラマン - AnDrew’s小生意気レビュー記

 

当時こんなこと言うてましたけどご家族普通にご健在でしたわ!!ゴメン!!なんだかんだ言いつつちゃんと生きてて一緒な方が安心するしな!

 

ヒルマ一家の家族の風景を経て描かれる、親と子を取り巻く話を軸にした今回のエピソード。色んな視点からグッと引き締めてきたストーリーをはじめ、ゲント隊長とブレーザーの関係性の変化など、色んなものが深掘りされて面白い回であったなと。

 

まず今回注目だったのはやっぱり、ようやくしっかりと描かれたヒルマ一家の家族の風景。先にも述べた通りしばらくの間は奥さん息子さん共に既に死別してるのではなんて言われてただけに、ここでちゃんとほっこりする家族の様子を見せてもらえたのはこう、安心だったわね...会話の内容やお互いの距離感の質感が良い感じに等身大のリアルな家族の感じあって魅入った ゲント隊長が普段ニュースばっか観てるっていう言とか、暇してる間パッドで動画観てる子の姿とかね  あと奥さんのサトコさんと一緒に洗い物やってたり息子のジュンくんと隣り合って仲良く話してたりと、ゲント隊長が凄く理想的な旦那さん/お父さんやってたのとか特に良かったわいね やっぱゲント隊長の相手の立場や目線に合わせるコミュニケーションはこういう父親としてのジュンくん/息子との接し方の延長にあるものなんだなというのが窺えてゲント隊長のキャラも深まった

しかしゲント隊長、家族には特殊部隊の隊員なの秘密だったんだなぁ...「施設科(自衛隊で言う『陣地構築や施設機材の整備による戦闘部隊の支援をする部隊』みたいな感じらしい)の所属」って言ってある辺りけっこう違ったこと言ってるよな  ウルトラマンであること秘密にしてるくらいの感じだよそれこそ 家族には心配かけまい、というところでの気遣いなんだろうけど、隠し事多しで今回みたいに休暇中家族と一緒にいる時に同僚からふっと電話きたりするとなると気苦労多そうだわね...ここをストーリーにて提示したってことは、今後それが家族に伝わる云々が物語の一つの山になりそうだけど、どうなるかね サトコさんにはもしかしたら察せられてるかもしれなさそうだったしな...

 

からのデマーガ親子の出現をきっかけに描かれる「親と子」というテーマに焦点を当てたストーリー、ここが今回のストーリーの大きな軸となりました。子の苦しむ呼び声を聞いて姿を現し、怪獣掃討のために防衛隊が繰り出す攻撃の嵐に苦しみながらも子を庇う親怪獣その姿に対し「あの怪獣を倒すのは正しきことか?」と投げかけられる問いかけと葛藤、という感じで構成自体はまさにオーソドックスなウルトラの親子怪獣エピソードの趣でしたね。ベビーデマーガに被さって攻撃を受けるデマーガとそれに更に泣き叫ぶような声を上げるベビー、そこへ容赦なく攻撃を叩き込んでいく防衛隊とSKaRDというコントラストがかなり極端に効かされていた故の痛々しさは観ていて効いた...アースガロンを活躍させてやれるとあってか大はしゃぎなヤスノブやそれに応じて最大火力オールウェポンをよりにもよって今回繰り出してしまうアースガロンの大立ち回りがつれぇ(また最初は気のせいかと思ってたけどこの時のアースガロンやっぱり瞳が映されてなかったみたいで、デマーガ視点での無機質な恐るべき脅威としての側面を敢えて強調してたんだろうなと)

そんなデマーガの姿に対し、倒すべきなのか、という問いをドンと投げかけたのはゲント隊長の息子さんのジュンくん。今回テーマがテーマなだけにヒルマ一家の視点、特にジュンくんの子供だからこその純粋な視点が一つ大きな話の転換のきっかけになるとは思っていましたが、パパが防衛隊の一員という環境にいるからこそ「防衛隊の仕事は大切な人達を守ること」「そのために怪獣を倒さなきゃいけない時がある」ということをちゃんと理解していつつも、その上で親デマーガの行動の本質をちゃんと見抜き理解した上で「『大切な人達を守る』をやってるのはあの怪獣も同じなんじゃないの?」「あの怪獣を倒すのはほんとに正しいことなの?」と投げかけてくる、というめちゃくちゃ聡い物言いでここに切り込んでくれたのがめちゃ良かったですねジュンくん...ブレーザーに注目してたり怪獣の卵に興奮したり構ってくれないゲントパパの雑破な返事に「適当に返事しないで!」って怒ったりと、ちゃんとあの歳の子供らしいところもちゃんと描いた上でこういう良い聡明さも併せ持ってるの凄い良いキャラだったなぁ ゲント隊長、良い育て方してますよ...この辺の怪獣退治云々に対する反論が「可哀想だから」みたいな感覚・感情が先に立つような感じだとそんなことも言ってられないだろうみたいなところにもなり得るのでともすればストーリー自体が微妙な感じにもなってしまうのだけど、そこにおいて今回はデマーガの行動を「卵から孵化した子供が防衛隊の攻撃に晒され苦しんでいて、それを守るために親が現れた」というところで一貫させてたことにより、その本質を見抜く人がいて「それを討ち果たすことは本当に正しいことか?」という投げかけがされることにちゃんと意味が生まれるようになってたのでそれが今回のストーリーにおける通すべき筋として良かったし、そこを提起する存在として子供ならではの純粋さと聡さが上手く両立したジュンくんの存在が上手くマッチしたのがグッドであった 

それに今回のこの辺のテーマの掘り下げ、ジュンくん以外のキャラに関してもそれとない表情などから垣間見えるものによりいっそう深まるものがあったのも良かったところ。元より何か思うところはありつつジュンくんの言葉に動かされそうになるものがあったゲント隊長は勿論のこと、今回のストーリーの本筋自体には掛からなかったテルアキ副隊長も何気に良い味出してたんですよね デマーガ討伐の際のアースガロン攻撃の前後/攻撃中ずっと神妙な表情で事を見守っていた辺り、多分テルアキ副隊長もデマーガが脅威になるかもということで倒すことには終始しつつも、デマーガの行動の本質自体はちゃんと見抜いていたよなぁと思えるのが絶妙なアクセントだったんですわ 元々のキャラ設定からしてテルアキ副隊長がこういうリアクションしてくれてたのは作品全体としてのキャラの一貫性や軸の太さを感じられて良いねとなった

 

そして終盤に描かれた、デマーガの撃破・保護を巡るブレーザーとゲント隊長の意思のぶつかり合いと思しき描写、ここも今回の重要なハイライトでありましたね。前回に続き今回もゲント隊長の身体を半強制的に借りて表に現れ出て、「子供」「親」という概念に興味を持つ姿が印象深く描かれていたブレーザーでしたが、そこがクライマックスにてこういうことになるのかと 今まで曖昧だったゲント隊長とブレーザーのそれぞれの意思がニジカガチ編から今回まででかなりくっきりと同居する別個の意思って感じになってきて面白くなってきたね...

ちなみにあそこの両者の意思が衝突したかのようなブレーザーの挙動、視聴者間では「最初スパイラルバレードでデマーガを倒そうとした方」「それを食い止めデマーガを守った方」とで、はたしてどちらがブレーザーなのかゲント隊長なのかと論争を巻き起こしているけど、個人的には前者がゲント隊長、後者がブレーザーなのではないかなと思う次第。前回の描写からも分かるようにブレーザー自身は初めて見るものに興味を示す好奇心旺盛さを有した子供のような一面もあるっぽいので、そのブレーザーが今回、テレビに映されていた人間の子供(赤ちゃん)や親デマーガがベビーを必死に守る姿を食い入るように見ていた、というのはドラマ的に言えばやっぱりそういうことなんじゃないかと思うんですよね...それこそ理屈以上に感情として「守りたくなった」という、ある意味ジュンくんよりも子供っぽいムーブだよなと  その上でゲント隊長の意思の方がデマーガを倒そうとしてたのがはたして真なのかというのは浮上してくるとこではあるのだけど、これに関してもゲント隊長自身がジュンくんに「怪獣が人間達の脅威になるかもしれないから倒さなくちゃいけない」みたいなことを自ら言ってたことからも少し窺えるように、やっぱりゲント隊長は一個人として思うところとかはありつつも、「防衛隊の一員」「大人」として常に「怪獣の撃滅」を念頭に置くようにはしてたと思うので、そこにおいて「倒す」選択を取ろうとしてたんじゃないかなぁと。そこにブレーザーが「ダメ!」「ヤダ!」みたいな感じで子供のように止めに入って駄々をこねる、というのもスッとハマると思うし ここもある意味「親と子」っぽいよなと  ともあれこの辺のゲント隊長とブレーザーのそれぞれの意思のあれやこれに関しては少なくとも今回の時点だと明確な答えが示されることはなく。構図としてあの時はたしてどちらが何を思いどう動いてたのかに関して今回のストーリーにおいては我々視聴者それぞれの考えに委ねられる形になり、ここはなかなか粋なポイントであったなと思いますね  デマーガを倒すことなく鎮めたことが正しかったのかどうかという潜在的な疑問も含めここをそっと委ねる形にする曖昧さも一つの文芸性だよなと、良い味わいが感じられたね

 

 

以上、ブレーザー第10話でした。ウルトラシリーズとしては定番な親子怪獣要素をオーソドックスに調理しつつも、そこに本作ならではの要素を巧みに散りばめたり和えたりして深みあるストーリーに仕上げた面白いエピソードでありました。ヒルマ一家の家族の雰囲気や絆、ゲント隊長とブレーザーの関係といったところが本作全体をグッと引き締めるところにもなったと思うし凄く良かった 特に後者はこの先のストーリーにグイグイ影響してきそうだし、より注目していきたいところですね

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた