AnDrew’s小生意気レビュー記

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滅亡纏いて進む神

ウルトラマンブレーザー

第7話「虹が出た(前編)」

感想レビュー

 

 

天に数多の虹が輝く時 それは現れる

     ニジカガチ

虹蛇神

 

逆さ虹の出現、ゲント隊長と恩師・横峯の再会をきっかけに巻き起こる、怪獣ニジカガチの大いなる災いとの戦いを描くエピソードの前編。ブレーザーでは初の前後編エピということで、それに相応しいスケール感を感じる話になっていました。ウルトラシリーズだとかなり久々の「前編/後編」表記があるサブタイトルなのでちょっと懐かしい気持ちになりましたね 前編/後編表記はシリーズ的にはマックスの「ようこそ!地球へ」以来とのこと 怪獣の多彩さもそうだけど、ブレーザーウルトラシリーズで最近めっきり見なくなった色んなものを見せてくれるので実に良いすね...

 

今回のエピソードは本作のテーマにも深く絡むと言える「人間の怪獣に対する見方」といったところをテーマにした展開が見所。怪獣やその強大な力を「神」「自然そのもの」として崇め奉り“共存”してきたかつての関係性から転じ、怪獣を脅威そのものとして恐れ“排除”するようになったことを「その排斥が世界の調和を壊した」と称してくる、という、本作のテーマ的に後半入ってからやっても良いくらいの大きな切り込み方をしてきたのが面白いところでありましたね。今までのエピソードで実際にゲードスやドルゴといったかつて猛威を振るったりその力で人間へ恵みを与えたりして伝承となった怪獣の存在、並びにそれらとの対峙を描いてきたからこそ一つ深みのある切り込み方になっていたのも良き 怪獣を虐げ利用していた曽根崎の存在も別アプローチからの補強と言えるか

そんな怪獣に対する現代の人間の姿を愚か・傲慢と断じるポジションとなったのが先にも述べた横峯先生。てっきりSKaRDと一緒になってニジカガチについて探るキャラかと思ってたので、怪獣研究の第一人者にして幼い頃怪獣/ニジカガチの信仰による恵みを目にした人間という立場から、怪獣を恐れ排除しようとする人間への明確な敵意の下ニジカガチを呼び出した張本人として、人類総リセットという形で牙を剥いてくる敵であったというのは割と驚きでしたね...予告でも出てたちょっとくたびれた雰囲気からして普通の科学者ポジみたくなるとも別に思ってなかったが、こうきたかと  だけど横峯先生、人間を傲慢と切り捨てて怪獣のあるがままの姿を取り戻さんとしてる的なスタンスではあるのだけど、その姿勢もある種怪獣を一方的に定義する「傲慢」とも言えるので、ストーリー的には多分「怪獣の理解者」「裁定者」にはなり得ない、彼自身も彼が言うところの「傲慢な人間」の一人に過ぎないのだろうなぁと感じられるのがなんとも皮肉。結局怪獣にとっての人間って崇めるかどうかとか関係なく十把一絡げで、それこそ怪獣自身の気持ち一つでしかないから先生もニジカガチからしたら多分どうということはないだろうし、劇中で語られてたようにニジカガチが人間の邪な心によって災厄と化すのだとしても、今のニジカガチがそうなっているのは怪獣の在り方を自分の基準でこうと一方的に定義してる先生の無意識の「傲慢」がそれを引き起こしているんじゃないかと思えるわけで...なんとも 人類総リセットを目論んでいる時点で先生自身ももう心中のつもりだろうからこれらの事実があったとしてももう関係ないかもしれないのだが

 

そんな横峯先生と彼に教え子として師事していたゲント隊長のやり取りは今回のドラマ面にて特に強く目を惹いたポイントとしてとても良かったところでありましたね。肩を並べて釣りをしながらジョークを交えて笑い合い語らう前半パートで二人が共に通じ合った者同士であることをしっかり印象付けてからの、横峯先生の真意が明かされた後の二人の真っ正面からの対峙と相容れずすれ違う様をしっとりと描く流れは、二人の決別を激しい言い争いは交えずともこれでもかと刻みつけてくる力強いドラマシーンとなっていてとても惹き込まれた。横峯先生の演説に「初めてです、先生の講義が面白くなかったのは」というこれまでの関係に区切りをトンと置くようなそっけない物言いをしつつ、悲しみを隠しきれていないゲント隊長の姿は辛かった...横峯先生の外した眼鏡が割れて地面に転がるカットで「横峯先生の世界や人間を見る目が変わった」ことを象徴的に示したり地面に目を瞑り横たわるゲント隊長を雨が打つ演出で言葉や表情の変化をほとんど交えることなく「ゲント隊長の哀しみ」を「涙雨」として表現したりと、文芸的で象徴的な演出の数々もドラマをグッと引き締めていて良かったし、ウルトラ初登板という今回の脚本の山崎太基さんの描く人間描写が中川和博監督の演出と合わさって良い味を出していたね 後半ではテルアキ副隊長が中心になって話が回るみたいなので、そっちも楽しみである

 

そして横峯先生により目覚めさせられた今回の怪獣ニジカガチ。その強大なビジュアルに加え伝承にて神と崇められる存在という設定や前後編に渡り登場する怪獣という大役っぷりもあって格のある怪獣として大いに期待されておりましたが、その期待を裏切らない素晴らしい存在感でしたね。不動同然の佇まいでノーガードのまま誘導弾やアースガンの直撃にもまるで身じろがず、進行開始後も激しいアクションをほぼ用いることなくSKaRDやブレーザーを圧倒し進み続けるという、「動」よりも「静」で荘厳さや格の違いを見せつける演出が登場時から一貫されていて実に素晴らしかった...周囲の気体を吸い込み、人間を悶絶させながら天候を意のままに操る様はまさに神(気候操作における人間達の悶絶には「気圧の変化による頭痛」というリアリティある理屈があるのだけど、パッとじゃ分からないので一見すると超能力の類で苦しめてるように見えるのが実に秀逸な設定・演出であった)  鎧の展開前後で顔の趣が全く違うという一粒で二度美味しいギミック、ブレーザーの切り札・スパイラルバレードの真っ向からの撃破という明確な強さの演出など、今回だけでも凄く目を見張るところ多しで最高であった

 

そんなニジカガチ相手にブレーザーも一敗を喫することにこそなったものの、トドメの直前の変身解除により直接撃破を避ける形で敗走、と引き際を見極めるある種の直感・生存本能の高さを見せつけたのが良かった。この辺もやっぱり野生的だよなぁと しかしこの状況からいかにして次回勝利を掴むのか、というところで目は離せないところ。注目ですね それにブレーザーがこうして戦略的撤退を打つという形での敗北が描かれたからこそ、そうできず直接敗北してしまった時ゲント隊長やブレーザーはどうなるのか...という緊張感が今後のエピソードに対し生まれたのも一つの注目ポイントだよなと。かなりこの辺シビアになりそうでハラハラしてきたね...

 

 

以上、ブレーザー第7話でした。前後編エピの前編ということでスリリングな引きになった回でしたが、その中でドラマも特撮も独自の味を出しながらしっかり盛り上げてきたので凄く良かったですね。これは次回も楽しみ。さて、SKaRDやブレーザーの命運、世界・人類の行く末は...

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた