AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

ブレーザー怪獣(?)語り

 

明日は遂に人類初のワームホール発生実験である。

これによって1999年にやってきた地球外生命体、すなわち“V99”の目的が判明することを 祈っている。

彼らが遺した装置の復元に携わった我々研究チームは、その科学力が地球人と比べ物にならないことは知り尽くしている。

もし再び 彼らがやって来たら、

私は彼らと対話をしてみたい。

彼らの文化、彼ら自身の事を 私は知りたい。

明日の実験が、人類にとって大きな一歩になることを信じている

 

─アオベタツキの手記 9/8の項より

 

 

 

V99

 

身長:不明

体重:不明

登場話:ウルトラマンブレーザー第25話「地球を抱くものたち」

 

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↑V99が搭乗する宇宙船とされる未確認飛行物体。

 

1999年地球飛来してきたとされる未知の存在。その科学力は地球のそれを遥かに凌駕しているとされており、地球と銀河の果てを繋ぐワームホールを発生させる装置をも有している。更にその存在は地球防衛隊トップシークレットとして扱われており、バザンガゲバルガヴァラロンといった宇宙怪獣達カテゴライズする存在─それらを地球に送り込んできている存在として上層部の一部の面々から極秘裏警戒されている他、とある経緯から地球にもたらされた先述のワームホール発生装置復元が行われていた、地球防衛隊元長官・ドバシユウ管理する宇宙装備研究所・第66実験施設厳重な警備により立ち入りを禁じられているなど、その秘匿ぶりは異様な様相を呈している。

その正体は、未知のテクノロジーを搭載した無数の宇宙船に乗り、ワームホールによる移動で宇宙を流離う地球外生命体。断片的に受信された情報によると新天地を求めてをしていたらしく、その過程で青い星─地球へと到来してきた模様(受信された情報の中には「光の星」なる言葉も確認されたが、その詳細は不明)。この時地球にやって来た宇宙船こそが件の1999年に回収された装置の残骸の元であり、調査記録によると宇宙船は兵器の類は一切搭載していなかったらしく、調査船のようなものであった可能性が考えられていた。だが...

 

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↑バザンガ、ゲバルガ、ヴァラロンといった恐るべき宇宙怪獣達を次々と地球へ送り込んでいた張本人、それこそがV99であった模様。非武装の宇宙船で地球へ到来するなど侵略の意図などが窺えなかった彼らは、何故このような行動をとっていたのか...

 

地球時間の1999年7月2日地球付近接近していたV99の宇宙船地球監視衛星により捕捉地球防衛隊により警戒の対象とされたこの宇宙船は、当時一宇宙高射軍司令であったドバシユウ指揮の下で迎撃ミサイルにより撃墜残骸となって日本海へと落下・回収されることとなった。これは非武装の宇宙船に対し、先行する恐怖・敵意から一方的に行われた攻撃であった。その後、回収された残骸の技術を基にワームホール発生装置SKaRD主戦力たる23式特殊戦術機甲獣・アースガロン開発された他、レヴィーラの基となった宇宙生物にもV99との関連が疑われるなど、地球防衛隊上層部はV99への警戒を強めていく。その過程でワームホール発生装置暴走による2020年(本編開始の3年前)宇宙装備研究所・第66実験施設の爆発事故、および装置の復元に携わった当該研究所の研究員達多数の消息不明、そしてその爆発事故にて生じたワームホールからのウルトラマンブレーザーの地球への到来といった様々な事態を巻き起こしながら...

一方、V99も同胞を何の前触れもなく攻撃し撃墜した青い星─地球、およびその星の生命体に対し深い恐怖を抱くこととなり、そこから生じた防衛本能に従い、様々な宇宙怪獣達を地球へと送り込む行動を開始。ファースト・ウェイブ─バザンガセカンド・ウェイブ─ゲバルガゲバルガから派生した存在─イルーゴ・ブルードゲバルガといった様々な脅威の連続に幾度となく地球を脅かし、そして遂にサード・ウェイブ─ヴァラロンを地球へと投入、SKaRDやブレーザーを跳ね除けながら地球に破滅の危機をもたらさんとする。更に痺れを切らしたのか彼ら自身もワームホールを潜り宇宙船団によって地球へと接近世界各地の地球防衛隊の総攻撃を迎え撃たんとばかりに徐々に迫り、地球へ降り立ったヴァラロンの脅威も相まって、人類とV99との戦争さながらの一触即発の状況へともつれ込んでいく...

 

しかしそんな中、SKaRD隊員にしてアオベタツキの娘であるアオベエミと、アオベタツキの親友であった地球防衛隊参謀長ハルノレツ奮闘により先の地球防衛隊とV99の因縁、およびドバシがそれらの事実の隠蔽を行っていたことが明らかにされ、更にV99の技術を組み込まれた存在であるアースガロン─そのAI対話システムであるEGOISSによるV99との交信が行われたことによって、先に述べた事実の通りV99の人類への攻撃が「悪意」ではなく「恐怖」によるものであったことも判明、V99との闘いが避け得るものであると示される。そしてハルノとエミの説得を受けて考えを改め事の行く末を彼らに託したドバシの決断、ヴァラロンの脅威の中でなお武装を解除してまで人類が示した不闘の意思、アースガロン/EGOISSを通じて示された人類の“未来”というをメッセージを受け、遂にV99も人類への認識を改め、最後は人類のメッセージに折り返すように“未来”という言葉を残し、ワームホールの中へと姿を消す形で再び銀河の果てへと旅立っていった。かくして両者の過去の因縁の象徴として残されたヴァラロンが、純然たる脅威としてブレーザーによって完全に打ち果たされたことを最後に、長く続いた悲しきすれ違いと争いの歴史終止符が打たれたのであった。

 

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↑人類との長いすれ違いに対話を経て終止符を打ったV99。彼らの宇宙船団は再び果てしない宇宙の旅へと赴く。新天地を求め、遠い銀河のブレーザー、眩い光の向こう側へと... 

 

 

お久しぶりです。ヴァラロンで一先ず終わり、とはならなかった怪獣語り記事です。今回はブレーザーの物語の根幹を成す存在、V99についての語りをば。厳密にはこの括りで語る存在ではないとは思うけど、まぁ便宜的にということでひとつ


V99といえば、前半クールでは第4話曽根崎が管理してたレヴィーラの基になった宇宙生物に関する資料の中にちらっと名前が出たくらいで全くと言って良いほど言及はなく(この時点で資料の名前に目を付けて「はてこれは...?」ってなってた勘の良い視聴者もちらほらいましたが)バザンガやゲバルガといった宇宙怪獣がなんらかの理由でカテゴライズされていることが示唆された第12、13話をきっかけとして、後半クールに入った第14話にて初めて明確に台詞としてその名称が登場、以降は「宇宙怪獣達を地球に送り込んできている黒幕」という視聴者の大方の予想にも通ずるエミの推察を基本認識として、その存在を知ろうとする者の前に不敵に立ちはだかるドバシユウ何かしらの関連が示唆される3年前の爆発事故、といった諸要素との関連をうっすらとした縦軸として配置しながら、何か明かされそうで明かされないなんとも言えない雰囲気でもってブレーザーの物語を牽引していた大きな要素の一つであり、様々な考察を受けながらストーリー終盤に至っても全容の一端すらなかなか明かされないその謎っぷりが良くも悪くも注目されていた存在。かく言う自分もその謎について色々と考えを巡らせながらストーリーを追っていましたが、最終盤にて明かされたその実態はこの記事の前半にて解説として書いた通り、すなわち「コミュニケーション」がメインテーマである本作における致命的とも言える欠落─ディスコミュニケーションが招いたすれ違い・悲劇の象徴というのが肝たる存在だったわけですね。V99とドバシの間の因縁・確執に関しては最終盤辺りに自分含め多くの方達が実際のところに近い予想を挙げるようになったりはしていましたが、先に手を出した人類(ドバシ)の方も、それを受けたV99の方も、「未知の存在から繰り出される得体の知れない敵意への本能的な恐怖」「それ故の相互理解のための行動を飛ばした本能的な防御行動から生じてしまった攻撃性」に囚われ、すれ違い争い続けてたというところが同様に軸となっていた、というのは本作のテーマに準じた面白い仕込みで驚かされました。ここにエミを中心としたメインキャラ達がメスを入れ、なるようになった(なってしまった)/その時為すべきことが為されたにすぎないのだ」とドバシの本能的な恐怖故の先制攻撃やこれを受けてのV99の地球人類への攻撃それそのものはあくまで“おかしいことではなかった”としつつも、そのまま恐怖や敵意に呑まれたままで相手を恐れるばかりになり、相手を理解しようともしないまま争い続けることは間違い」だとして、当事者であるドバシやV99達と「対話」「相互に理解し合う」ことでその間の誤解やすれ違い、そこから生じた因縁を取り払っていく過程も含めて非常にテーマに真摯なストーリー・キャラクター回しであったなぁ...と今一度感心 V99の全容やそこに纏わりつくドバシの真意が全然明かされないこと・それ故のやきもきさせられる感じが、劇中のドバシやV99の抱いていた「得体の知れない相手への不安」に重なり、最終盤にて一気に彼らのキャラ性に没入・理解できるようになっていたという構造も見事(単純に縦の進行の遅さが気になった、と言われるのはまぁしゃあなしだが、巧い構成であったと思う)

またこの辺の設定・構成の上でも、V99そのものの姿や故郷の星・文化といった詳細の全てを明かさず視聴者の想像を掻き立てる形としたのは良い塩梅の行間の持たせ方で良かったなぁと思うところ。敢えて多くを明かさないからこその神秘性・文学性といったSFならではの味わいがしっかり押さえられてるというのもそうだけど、こうして全てが分かってはいない上でもV99の心や目的を理解し通じ合うことができたという、「全て分からない」は必ずしも「何も分からない」と同じというわけではない、的なドラマ面の粋がグッと出たのも本作のテーマの上で良かったというかなんというか 言葉や考えが全て分からずともちゃんと通じ合えたゲント隊長/SKaRDとブレーザーにも言えることなので、凄く大事なことなんですよ

 

そんなV99、本編中に出てきたエミパパの手記の内容から「ブレーザーの世界のバルタン星人(それに類する存在)なのでは?」なんて考察されたりもしていてそれがファン間の一つの関心になったりもしてますが、個人的にはその辺には正直あまり関心はなくて(実際バルタン星人的なサムシングかどうかは重要ではないと思うし、それこそそこは明かさないからこそ良いと思うので)、それよりむしろ「V99ははたしてどうやってバザンガ等の宇宙怪獣達を送り込んできてたのか?」の方が気になってたり。最終盤までは第13話のヤスノブの「バザンガやゲバルガは同じ星からやってきたんじゃないかって(一部ではそう噂されてる)」っていう推測込みの言及の印象が言葉の上で強く残ってたので、バザンガ、ゲバルガ、ヴァラロンはV99の星に棲息する生命体で、そこからV99が直接送り込んでいたのではと思っていたのですが、実際のところV99は新天地を求めての宇宙の旅を続けていた流浪の民であるらしいというわけで、その言及を素直に取るなら彼らが自分達の星からわざわざ生命体を送り込んでたとは考えにくいわけなんですよね。もっと言うとバザンガゲバルガはともかく、星の軌道を変えて他の星にぶつけながら移動するという「渡り」を習性としていることが推測されていたヴァラロンみたいな凶悪すぎる生命体が同じ星で生態系を共にしていたとはちょっと思えないわけで...そう思うと本当のところV99は、「宇宙各地の強力な宇宙怪獣を無差別に選定して地球へとけしかけていた」というところなんじゃないかなと思ったりするんですよね 手持ちのポケモン送り込んでたんじゃなく、野生の強いポケモンを誘導しけしかけてたみたいな  他の星の生命体など色んな脅威を次々に地球へと送り込んでいた根源的破滅招来体に手法的に彷彿とさせられるものがあるというところで、ブレーザーが直接そうと言わずともそこはかとなく色んなところに配置してたガイアのオマージュに通ずるものもあると思うし、意外と合ってるんじゃないかと思ったり思わなかったり...まぁこの辺はファン故の解釈・妄想も込みだが 全容の見えない最終盤までの不気味さとかはある程度意識されてそうではあるが

 

ちなみにもうお分かりかとは思いますが、本記事に載せてるV99の宇宙船の造形物は案の定自作アイテムです。改造元ではないかと噂されてるグリーザ第3形態のソフビの背中の突起を切り取り、パテを盛って劇中の写真と睨めっこしながら造形し作りました 別に写真無しでも良かったんだけどせっかくV99に直接まつわるものなのだしと作ってしまった セミ人間といいデマーガといい、無いものわざわざ作るのは要らぬ手間ではあるんだが、まぁ楽しいから良いのだ

 

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↑製作過程。

 

長々と語りましたが、総じてブレーザーの物語のSF性やテーマ性をグッと深める要素として、良い存在感を発揮していてとても良かったですねV99 あの着地のさせ方的に今後はよっぽどなことでもない限りまぁ出ないだろうとは思う(出ない方が綺麗だと思うし)けど、ともあれ彼らのこれからの旅が幸あるものであることを願っている

 

 

というわけで今回はこの辺で。次回は...

地獄より出ずる、最悪の魔獣

 

では次は2月末か3月くらいに...