AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

斬り結び、語らうは

Princess Principal/プリンセス・プリンシパル

case7「Bullet & Blade's Ballad」(第5話)

感想レビュー

 

条約改正のために日本の外務特使「堀川公」とその使節団が遥々アルビオン王国へと渡来、港へ降り立った彼らをプリンセスが直々に出迎える場面から物語は始まる。そこには、たった1人で100人を討ち果たし、装甲艦に乗り込み撃沈せしめたという男「藤堂十兵衛」が堀川公の命を狙っているという情報を受けたコントロールからの指令を受け、護衛に付いたアンジェ、ドロシー、ベアトリスが同行していた
いつ暗殺者が狙うとも知れない状況で、極東の島国の特使を相手にするのは、王位継承権第4位のプリンセスで十分と思われており、且つそこにはプリンセスを警戒し、堀川公襲撃のどさくさを利用しプリンセスを始末しようとするノルマンディー公の思惑が介在しており...という軽んじられ敵だらけな王室内でのプリンセスの置かれた状況をこの一幕で分かりやすく強調してきてるのが上手い

王室専用列車で移動する前後でプリンセスの言葉に堀川公達が土下座で感謝しプリンセス達が困惑、という文化の差によるコミカルな画が入る一幕もあり 黒蜥蜴星人もびっくり(

プリンセス・プリンシパルの劇中の年代設定は19世紀末、江戸から明治へ移って程ない時代という辺りだろうけど、現実でも日本人のこういう古めかしい所作とか、それを見た外国人が不思議がったりとかいうことはあったんだろうか 自分歴史にはさっぱり詳しくねぇもんでさ...

そんな移動中の列車に橋の上から飛び降り乗り込んでくる1人の少女。その存在に気付いたアンジェとドロシーは列車の屋根で彼女と対峙、その思わぬ強さに苦戦するも、突然堀川公の同行者の1人大島が呼び止めたことで戦闘は中止(ここの大島のシーン、何度見てもSOMでの飯田さんのモノマネがよぎって笑いそうになるのよね...w)。乗り込んできたのは堀川公達と既知の間柄であり、藤堂十兵衛を手ずから下すためにやってきた少女「ちせ」であった

アンジェ&ドロシーvsちせの屋根での戦闘は尺としては短いながらも、アンジェの身に仕込んだ武器を遠目で見抜きながら背後から来るドロシーの存在に気付き一瞥、銃撃を刀で防ぎながら接近しドロシーをダウンさせ、Cボール有りのアンジェに食いついてくる、とちせ殿が尋常でなく強いことを示してくるスピード感ある動きの見せ方がとても良い 戦闘慣れもしてるプロのスパイ2人相手に初見でこれだからやっぱ別格につえぇのよちせ殿 なんで銃撃に目視で対応できんの...

十兵衛討伐のためにちせが同行することになるも、身元が不確かな相手とプリンセスを一緒にいさせることはできないとアンジェは反対、ちせもそれに反発し一触即発...となりそうになるも、プリンセスがアンジェに「ちせさんとバディを組みなさいと一声。ここで「バディ」の意味を調べようと手持ちの手帳をパラパラめくるちせ殿がかわいい マメなのが伺える

アンジェは焦って反論するもプリンセスは「その方が危険だというなら尚更、信頼出来る人に監視させたいわ」と尤もな意見で論破され、見事に閉口する羽目に...case1ではアンジェとの即興の打ち合わせでコントロールも欺き、case2では初任務と聞かされ緊張しながらも涼しい顔で陽動をやってのけ、とたびたびその片鱗は描かれていたけど、ほんと強かよなぁプリンセス 後に明かされる生い立ちを思えば、これだけの肝の座りようや巧みな話術・交渉術を身につけてるのも納得(身に付けざるを得なかった、というべきか)だけど、気品ある佇まいも相まってアンジェ達の中でも無二の強力な武器となってるよね

 

行動を共にすることになったアンジェとちせ、最初こそ尋問じみた問いをアンジェがちせに投げかけたりと距離を感じさせるやり取りをしていたものの、ちせに目を向けている中で、怪我をした子供に「痛いの痛いのとんでけ」『父が教えてくれたおまじない』を笑顔でかけてあげる姿など、ちせの純粋で実直な一面に触れ、自然と距離を詰めてゆく。いつもの調子で嘘をつき振り回すつもりが、輝夜姫やら八百万の神やらのちせの話す日本文化の奇妙な概念に混乱しペースを乱される場面は珍しくアンジェが困惑気味な表情をしているのが面白くて好きw トイレの神様の話に真剣にドン引いた表情になるアンジェに笑う この2人この時点でもう仲良しでは

途中停車した駅での襲撃はなかったもののちせは十兵衛に対し依然油断せず。その執念についてアンジェが問うと、ちせはぽつりぽつりと語り出す 2年前に、十兵衛が自分の父の命を奪ったこと、それ以来自分の時間は止まってしまったこと

「十兵衛を討ち果たさなければ、涙すら流れてくれないからな」

中合わせに十兵衛が父を奪ったことを語ったちせに、アンジェは背中越しに視線を向けていた

 

その頃、列車に同乗していた警備小隊の中に潜り込んでいた内通者が行動を開始、ドロシーが不審な行動にいち早く気付き攻撃に打って出るも、内通者の捨て身の自爆によって警備小隊の乗る車両とプリンセスや堀川公達の乗る車両が断絶、更にその隙を突いて十兵衛達暗殺者の一団が襲撃をかけて来る。

負傷したドロシーに促され向かおうとするアンジェに対し、ちせは十兵衛と決着を付けるべく自分も同行させるようにと、土下座をして願い出る。その姿を見たアンジェは微かに微笑むと「戦力は多い方が良い」と、静かにその決意を肯定するのだった

序盤では日本人の誠意の深すぎる姿勢としてコミカルな描写となってた土下座が、ここのシーンではちせの真剣な決意の強さの象徴として描かれる逆転の描写が見事で、ちせの純粋な部分に触れてきたことを含めアンジェがその姿をしっかり受け止める様も気持ち良くハマって2人の関係性の変化をこの短時間でしっかり示す描写が凄く良かったです 良いなぁ

 

ここからはアンジェとちせの十兵衛一派との戦闘シーンがメインで話が展開していく展開。十兵衛の襲撃に加え、隣り合った状態で無理矢理繋げられた2台の列車が合流地点で衝突大破しかねない極限状態、という緊迫感を煽るシチュエーションの中、アンジェとちせが敵を蹴散らし進んでいく展開の息つく暇もないスピード感が堪らなく最高で、状況のスリリングさも合わさったことで序盤のアンジェ&ドロシーvsちせのシーン以上に見応えアリに Cボールによるさながら曲技のような身のこなしで戦うアンジェと、風のような素早い太刀筋で敵を次々斬り結んでゆくちせの動きが細やかな部分の動作までしっかり描かれており、魅せの場面として作画のパワーが割かれているのが実に良い

敵を蹴散らしたアンジェはプリンセスと協力し列車を同時に停めるために、ちせは十兵衛と決着をつけるべくそれぞれの戦いの場へ赴く。

ちなみにちせが駆け付ける直前、十兵衛の襲撃を受ける堀川公とプリンセスを守るためにベアトが前に出て戦う下りが少しあり、個人的にはここが何気にお気に入り。機械になった喉のおかげで致命的なダメージは免れながらも一瞬で敗れる形にはなったけど、明らかに格上な相手に臆さず立ち向かい、ちせ殿が駆け付けるまでの僅かな数秒を稼いでみせた姿にこれまでの出来事の中で形成された勇気と成長が感じられてカッコいいの こういう他のキャラよりも戦闘とかで劣るキャラの勇気みたいな描写は個人的な好みとして凄く好きです

そしてこの後に描かれるちせvs十兵衛戦、プリプリファンのスパイ達には最早言わずもがなではありましょうが、ここはやはりプリンセス・プリンシパル全体で見ても指折りの名シーンと言っても過言ではないでしょうな 前のアンジェ達の戦闘シーンと同じく作画をしっかりと費やし表現された動きとスピード感もさることながら、

周辺の物を時に利用したアクロバティックな動きによる翻弄、身体全体を使って振りかぶったり手で押さえつけながら振り下ろしたりなどのパワーをカバーするような剣撃、振り下ろされる一撃には刀を握る手を敢えて緩め力を受け流したりなど、大の大人の十兵衛相手に力で劣るであろうちせの戦い方の工夫が見られたり、

戦闘中クローズアップされるちせや十兵衛の顔を伝う汗や鍔迫り合う刀の刀身の刃こぼれが細かく描かれたりと、

スピーディな戦闘の中で細かな部分までしっかり描きこまれた気合の入りように思わず魅入ってしまうんですよ 今回レビューするに辺り改めて何度もリピートしたり一時停止して見てみたりしたけどほんまに凄いすわ 自分が見逃してる部分もありそうだし他の人の発見とかも聞いてみたいわね

アンジェとプリンセスの活躍で列車は無事停止、その最中にちせも十兵衛を見事に討ち果たした。
「強く...なったな...ちせ......」とちせの頭に優しく手を置きながら言葉を残し、その場で事切れた十兵衛。ちせを慮るように声をかける堀川公にちせは向き直り、逆賊『藤堂十兵衛』を討ち果たしたと跪き告げた...ここで跪いたことで垂れた髪にちせの目が隠れて表情が伺えない、という演出がまた...

戦いが終わり、丘の上に埋葬された十兵衛の名も刻まれていない墓標に手を合わせるちせ。その後ろで十兵衛がちせの父親であったことを見抜きちせに語りかけるアンジェ。十兵衛が裏切り者の逆賊となった時点で自分に剣を教えてくれた優しい父はもういなくなった、しかしこの戦いで剣を交え父を越えられたことは誇らしい、と語るちせの後ろ姿を振り向きしばし見つめながら、アンジェはちせを残しプリンセス達と共にその場を後にした

 

墓標の前、胸に手を置き、消え入りそうな声でちせは呟く

「痛いの痛いの、とんでけー...痛いの痛いの、とんでけー...」
墓標を見つめる視界が霞み、目から大粒の涙が溢れる。

「おかしいな...父上のおまじない...効かないよ...

胸の痛み...全然、消えないよ...」

 

 

つらい

何回観ても辛いけど今回じっくり観て演出の一個一個や、逆賊に立ち向かう剣士から父に向き合う1人の少女になるちせ殿を表現する古木さんの演技の機微が凄く染み渡ってきて余計辛いわ はぁ...

また今回改めて観てて、ちせ殿の父親周りの描写において、アンジェが何気良いアクセントになってたなぁとも思ったり。

父は十兵衛に討たれた、と語った時点でアンジェはちせ殿を一瞥してるんだけど、アンジェは多分この時点でちせ殿の嘘(事実とは違う、という意味で)を見抜き十兵衛の正体を知ってたと思うし、

それでもそのことを最後まで直接言わなかったのはおまじないのことを語った時のちせ殿の誇らしげな表情からちせ殿の父への愛を少なからず感じたからだと思うし、

最後の墓標の場面でちせ殿の後ろ姿を振り向いて見つつも黙って立ち去ったのは、ちせ殿が皆の前で押し隠した悲しみを推し量ったからだと思うし...と、嘘をつく人間だからこそ見抜いた、ちせ殿の隠そうとしている想いを汲んだであろう行動が節々から見て取れるのが堪らなく良いんですわよ あくまで自分が見て取ったものでありアンジェの本心は本人のみぞ知るわけだけども

 

数日後、クイーンズ・メイフェア校のアンジェ達の下へ、なんとちせが転校生にして、チェンジリング作戦に協力する仲間としてやって来る。ドロシーが堀川公をコントロールへ引き入れたんだと たびたびドロシーが堀川公に近付いてるシーンはあったのでまぁつまり伏線だったという

誑かした、と慌てふためき混乱するベアトがかわいいw

 

アンジェに礼を告げ土下座しようとするちせ、そんな彼女にアンジェは「西洋式」と笑顔で握手の手を差し伸べる。ちせもその手を取り、「悪くないな」と笑顔を返すのだった

 

というところで本編終了 ちせ殿初登場回にして、ドラマ面、作画面諸々色んな面でキレキレの演出が多く、プリプリの中でもお気に入りの回なのだけど、今回改めてじっくり見返しより好きになったなぁ アンジェとちせ殿の関係性の詰め方とか前に観た時以上に感じ入るものが多くとても楽しかった プリプリって、面白いね...面白いわ...

とりあえず今回はこの辺で ではまた 次回の記事もまた見てくださいね

 

 

プリプリ劇場版いつ公開なんだよォ!!(慟哭)