AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

誰が為に彼は駆ける

仮面ライダークウガ

EPISODE4「疾走」

感想レビュー

 

メビオに対峙するクウガを取り囲む警察官達。無情にも放たれる弾丸の嵐に混乱しながら、メビオと共にクウガは暗闇へと消えていった...

後の回でもたびたび描写されるけど、追い詰められたりした状況でのクウガ/五代さんが発する分かりやすい絶叫とは違う、絶え絶えの息遣いという表現も凄いよね 五代さんの焦燥、不安などの感情や苦しみが直で伝わってくるようで、本作のリアリティ・緊迫感を更に押し上げているポイントの一つだと思います 五代さんを演じるオダギリジョーさんはクウガにおいても「リアルな演技を」という部分に拘っておられたけど、この息遣いからもその拘りを強く感じるところ

 

クウガ、メビオ、警察官達の一戦から一夜、未確認生命体関連の事件が広域指定されることが決定し、その合同捜査本部の対策会議の代表の1人に一条さんが選ばれることに。早速一条さんはその準備へと取り掛かるが、彼の部下の警官から傷(ゴオマ戦で負った負傷)が未だ癒えていないであろうことを指摘される。それを平然とした態度で流す一条さんは「それ一条さんの悪い癖ですよ!自分のこと全然考えないで突っ走っちゃうんですから!と反論されるが、一条さんは自分の身体のことは自分が一番知ってる、と笑顔で返しエレベーターへ乗り込んで行ってしまう。そのエレベーター内で一条さんは1人、負傷した脇腹を抱え苦悶の表情を浮かべていた...皆の前では一切表情に出さず、気丈すぎるよ一条さん...

一方、城南大学の桜子さんの研究室に当たり前のように入り込んでいた五代さんは、研究室へ訪れた桜子さんに昨夜東京に未確認が現れたことを伝えると共に、メビオと戦おうとした際警察官達に取り囲まれ攻撃されたことをなんの気無しの話題のように笑いも交えて平然と語る。当然ながら桜子さんからは「それ一歩間違えたら死んじゃうとこじゃない!」と反論、しかし五代さんは死ぬようなことはしないから大丈夫、と笑顔で返し、未確認の手がかりを得るためにも古代文字の解読をして欲しいと桜子さんを急かすのだった。

五代さんが戦いの中へ巻き込まれて危険な事に直面してることを心配し古代文字の解読も快諾できないという態度を見せ、そもそも五代さんが人ならざる存在に姿を変えることも心配してたり(EPISODE2)と、普通の人間だからこそ一般的な感覚で五代さんを心配してる桜子さん良いよね。こういう視点の人がいると作中における主人公が戦う理由・原動力のより濃いクローズアップにも繋がるからとても重要 桜子さんと五代さんの気の知れた仲という距離感があるからこそ描写も安定したテンポで見やすいし良い

 

そんな時、五代さんは一条さんからこれから会いたいというデートのお誘い...もとい連絡を受け、そこへと向かう。が、同じ頃都内では、昨夜の警察官の攻撃で右目に手痛い傷を負い、その怒りから警察官に対し無慈悲な凶行を働くメビオ、そしてバラのタトゥの女の言葉に不気味に蠢き始める未確認達の姿があった...
「“ゲゲル”ゾ、ザジレズゾ」

メビオの足取りが捉えられ、一条さん達警察はメビオの捜索を開始、そのことを電話で伝えてきた一条さんに対し桜子さんは五代さんが変身しようとしたら止めて欲しいと頼まれる。勿論、と引き受けた一条さんだったが、桜子さんが続けて言った「無茶するから、五代くんって 自分のことはどうでもいいからって、突っ走っちゃうんですよね...という言葉に、一条さんは何かに気付いたような表情を浮かべていた

それから程なくして都内を疾走するメビオを警察官が発見、追跡が開始され一条さん達も無線通信を受け現場へ急行する。駆けるメビオ、それを追跡する白バイ警官の1人がその凄まじい速度に翻弄され転倒してしまう場面を目撃した五代さんは警察官の無事を確認すると、白バイを借りてメビオの追跡を開始してしまう

街を疾走するメビオのシーンは当時の合成技術の進み具合の関係もあってそれ自体はあまりリアルさは無いんだけど、入り乱れる無線通信、公道を駆ける白バイ警官など、警察周りの描写が細かく描かれてることによって、それを補って余りあるハラハラ感が全体で生み出されてるのは良いバランス。この事細かさが素晴らしいよなぁクウガ

 

メビオの追跡にあえなく失敗してしまった五代さんは、その姿を目撃し追ってきた一条さんに連れられる形でパトカーへと乗せられていってしまう(逮捕、というテイだけ取って他の警官をメビオの追跡に赴かせつつ五代さんからの注意を逸らしてあげる一条さんの采配、良い手際)。

パトカーの中、警察が自分を狙う中で尚も戦いへ赴こうとする五代さんに一条さんは警告するも五代さんは「だからって止められます?」と軽く返す。

「自分をもっと大事にするんだ」と一条さん。

しかし五代さんはそれでも引かず、笑顔で答える。

「(大事に)してますよ!だからこそ、自分が大事だと思うものを守りたいんです

一条さんだってそうでしょ?」

その言葉に、一条さんは思わず言い淀む。

五代さんを連れて警視庁へ辿り着いたところで、無線からメビオと警察官達の対峙の一報が入る。

その時、一条さんはコートのポケットから一枚の紙を見つける。それは五代さんが病室に残した書き置きの紙。

俺、『中途半端』はしません!

きちんと関わりますから!!

様々な想いを巡らせた葛藤の末、一条さんは五代さんに同行を促す。

そこにあったのは警察の新装備のバイク「トライチェイサー2000」。

一条さんは五代さんにそれを託すと、クウガに変身しバイクを駆り戦いへ赴く彼の姿を見送るのだった。

 

傷付いた身体を引き摺ってでも市民を守る為の戦いに身を投じ、自分の苦しむ姿を見せまいと気丈に振る舞う一条さん

攻撃の矛先を向けられるという思いもよらなかった事態に、辛く大きな混乱をも感じ少なからず心を乱されたであろう中で尚も、皆の前では笑顔を絶やさず他の人々の笑顔の為にも戦おうとする五代さん

自分が傷付いてなお周囲の人々の前ではそれを感じさせないように振る舞い、人々の生活や笑顔の為に戦う2人の姿勢が彼らの身を案ずる他の人物の視点も交えつつ類比され、戦う力を得て尚もあくまで守るべき市民の1人と思っていた五代さんが自分と同じ信念・決意、そして覚悟を持ってしっかりと戦いに向き合おうとしてることを一条さんが理解し、自分自身もそれに真っ向から向き合い、それを支える選択をする

初見でも4話かけてここまでしっかり描いたことにはとても感動したけど、改めて観てもこきへ至るまでの細かな展開運びやキャラの台詞の配置が凄く絶妙だなぁと感じましたね 心情描写が丁寧だよなぁほんと

 

トライチェイサーを手に入れたクウガは、街中を駆け現場へと急行する。街中をトライチェイサーで走るクウガの画はかなり尺を使って描かれてるけど、公道をバイクで駆る仮面ライダー、というこの絵面はやっぱ無条件で心躍るわぁ 疾走感があって一気にヒーローとしてのカッコ良さが引き立つ 規制とか少なかったであろう当時だからこそできたこの画は最高ね

そして警察官達が次々メビオに敗れていく中(ここもメビオの一撃を受けた警察が身体を痙攣させたりとなかなか描写がエグい)、クウガは間一髪駆け付け警察の1人「杉田」を救うことに成功。杉田に安否を確かめる言葉を投げかけると、目の前の異形にかけられた思わぬ言葉に困惑する杉田さんをその場に残しクウガはメビオを追跡、廃墟へ逃げ込み軽やかに動き回るメビオを相手にクウガトライチェイサーの巧みなドライビングテクニックにより追い詰めてゆく。

廃墟内でメビオをトライチェイサーで追跡するシーンは個人的に今回の話の中でも特にお気に入り。クウガ全体で言っても指折りの印象深いアクションですね 障害物を巧みに乗り越え、ウィリーによる前輪の一撃を叩き込み、と仮面ライダーのトレードマークであるバイクを自分の体のように扱うアクションは10年以上前に初めて視聴した時は「こんなこともできるのか!」と本当に衝撃で胸が高鳴ったし、それから時を経て観た今でも、以降のシリーズに無い絵面のインパクトも相まった「新しい」アクションとして釘付けになってしまう 魅力たっぷりの名シーンだなと こちらのバイクアクションには元トライアル全日本チャンピオンの成田匠さんが携わってたとのことで、この辺りも作り込みにひたすら感心するばかり

 

途中駆け付けた警察官の攻撃を受けそうになるも、自身を救ったクウガを信じてくれた杉田さんのおかげで事なきを得て、メビオに対し渾身のキックをお見舞い、見事に討ち果たす事に成功した。

戦いが終わり、メビオが吹き飛ばされた事で壁に空いた風穴から差す光を挟み、駆け付けた一条さんとクウガは向かい合う。一条さんへ向けてサムズアップを決めるクウガ(ここまでにサムズアップを五代さんの象徴的なポーズとしてしっかり描いてきただけに、仮面越しでも五代さんの笑顔が見えてくるような爽やかさがあるのが良い画)。そして一条さんも背を向けつつもサムズアップを返し、密かに笑顔を浮かべるのだった。

 

というとこで本編終了

五代さんと一条さん、2人の同じくする覚悟が通じ合い、強い信頼が築かれる流れが2人の類比等の描写を経てしっかり見せてきたのがとても印象深い熱い会でした

「No Fear No Pain 愛の前に立つ限り

No Fear No Pain 恐れるものは何も無い」

とはOPの歌詞だけれど、この2人を指すズバリな言葉だったなぁと改めて

そしてトライチェイサーのアクション、今見てもやっぱりカッコいいなぁ 新しいものを作る、という気概が伝わってくることも込みで本当にクウガとは凄い作品だなぁと感じるところ 序盤でこれだもんなぁ 久々の視聴だけどやっぱ面白いわ

 

というところで今回はこの辺で ではまた 次回よろしくお願いします

 

余談:

トライチェイサーのアクションを担当されてた成田さんが少し前にTwitterで後輪回し蹴りの再現をした動画をアップしてましたが、衰えのないカッコよさでしたな 良い...
ちなみに調べてようやく知ったけど成田さん、平成ジェネレーションズforeverにもクウガのバイクアクションで参加してらしたのね