AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

きっと同じ

仮面ライダークウガ

EPISODE10「熾烈」

感想レビュー

 

-あらすじ-

ギイガの軟体により攻撃を無効化されるクウガは窮地へと追い込まれるも、突如腹部から蒸気を噴き出しながらギイガが撤退したことでことなきを得る。墨の爆弾と柔らかい肉体を同時に破るべく、雄介は桜子から聞かされていた剣を持つ新たなクウガの形態に活路を見出そうとする。一方、雄介がクウガになることへの不安を拭いきれないみのりは...

 

  • 人間なめんな

警察犬・ミカド号の活躍でグロンギのアジトを発見し、鎮圧用の特殊ガス弾でグロンギ達を追い詰めた一条さん達警察の面々。いざ一網打尽にすべく突入した際には逃げられていたので対峙とは相ならなかったけど、散々辛酸を舐めさせられてきた人間達がグロンギに遂に一矢報いたという感じで気持ちの良い展開だね グロンギ達が去ったアジトには血のようなものの付いた無数のドールやマネキンが縄を結ばれたり吊るされたりしてて不気味 グロンギってゲゲルしてない時でも常に人間を狩ることに飢えててそれがこういう不気味な形で表れてるのかもしれない

 

  • 英傑・ミカド号

アジト突入から程なくして、グロンギ達の匂いを追い走って行ったミカド号だったが、その先でグロンギの1人「ズ・ザイン・ダ」に遭遇。ミカド号は果敢に吠え立てるも、自身の匂いを追ってアジトへの人間の突入を許したという屈辱を味わされたことに激怒するザインに迫られ...
...そして遅れて駆け付けた一条さん達が見つけたのは血痕とミカド号の首輪。それを見つけて涙を流し、慟哭するミカド号のブリーダーの柴崎さんの表情と叫びは観てるこっちも悲しくなるわ...グロンギを追えるようになったミカド号の実力を誰よりも誇り信じてることが台詞の節々から感じられてその愛着が伺えてただけに余計に辛いんだよなぁ ゲスト的なキャラの短い出番においても細かな信頼感などをしっかり描いて心を揺さぶる展開、巧いわ

「ミカド...ミカドぉーっ!!

お前はよくやったよミカド...

 

  • みのりの激情

都内の保育園、読みたい本が他の子の手に渡って困っていた女の子のために「だって僕4号だもん!」と4号/クウガを良い人と信じる男の子が本を持ってこようとする姿を見て微笑むみのり。しかし、本を渡してくれない他の男の子との喧嘩に発展、やがてお互いに手を出すまでになりみのりは仲裁に入るも、その時男の子が本を振り上げてもう一方を叩こうとする。それを受け止めたみのりは普段見せないほどに声を荒げるのだった

というこの一連の流れ、クウガに対するみのりの心情の描写として構図が凄く巧みだなぁと感じるところ。4号を名乗って誰かのために笑顔で施そうとする男の子の姿はクウガのことで不安になってたみのりにとってある種心が救われるような一幕であり思わず微笑みも漏れたんだろうけど、そこから転じた相手とのやり取りがやがてはクウガグロンギの戦いのような手を出し相手を痛めつけ合うやり取りになり、遂には4号を名乗った男の子の方が相手を本気で痛めつけるような「暴力」に走らんとして...となってしまったことでまた不信がぶり返して声を荒げその子を止める、というクウガがやがてはただ相手を傷付けてしまう存在になってしまうかもしれないという拭い切れないみのりの不安を、子供達のある意味他愛無いやり取りから表出させ描く演出が緻密...細かなとこだけど、これもある意味終盤の最強のクウガへの覚醒にまつわる戦うこと・暴力の意味づけの描写の重要な積み上げの一つでもあったのかなと思ったり

 

  • 攻撃は最大のなんとやら

ギイガ攻略のために剣を持つクウガに活路を見出し、一条さんとの剣道の打ち合いに赴く五代さん。ここの一条さんの息もつかぬ剣捌きは見事なもの。ほんと何してもカッコいいな一条さん...携帯マナーモードにできないけど(小声) 漫画版クウガでは剣道が一条さんにまつわる要素の一つとなってたけど多分ここが着想元よね

そして一条さんの激しい攻撃に攻めあぐねる五代さんに一条さんが発した「防御に気を取られすぎだ!だから攻撃が疎かになる!」の言葉に五代さんは何かを思いつくと、何度も面を叩き込んでくる一条さんを諸共せずにじりじりと歩み寄り、その気迫に後ずさり壁際へ追い込まれた一条さんへ全力の面を放った...

 

  • 一条さん狙い

五代さんに会うためにおやっさんから居場所を聞き警視庁を訪れたみのりが望見の案内で剣道場へ向かう最中、みのりに一条さんとの関係をそれとな〜く聞き、特にどうということはないと知って安心しつつ、一条さんの周りに他の女性が接近することに頬を膨らませる望見の一幕があり、あんま関係ないけどここの望見、かわいい

 

  • 笑顔のために

五代さんと2人になり、自身の不安をみのりが吐露し、五代さんがそれに返す公園のシーン。ここは今回の最大の見所といっても過言ではなかろう、と思う

 

「あたしね...お兄ちゃんがクウガになるのは、仕方ないと思ってた...けど、けどなんか、なんとなく怖いの!お兄ちゃんが、お兄ちゃんでなくなっちゃうような気がして...」背を向け、胸を押さえ、涙しながら想いを告げるみのり。

「...俺だって怖いよ。」みのりの不安を感じ沈痛な表情を浮かべながらも、顔を上げ語る五代さん。

そしてそれでもやる、と語る五代さんにみのりは理由を問い、五代さんはそれに笑顔と共に語りかける。

「お前はどうして先生やってんだよ?誰かの笑顔のためだろ?俺は俺の場所で、お前はお前の場所でやってるってだけさ。」

そしていつもの笑顔と共にサムズアップを返す五代さん。その姿にいつもの兄を感じたみのりも、笑顔を取り戻しサムズアップを返すのだった。

 

五代さんがクウガとして戦うことに対し不安を感じているという本心を、クウガとなって戦う自分を心配するみのりに打ち明けつつ、その後にそれでも戦うのはみんなの笑顔のためであり、それはみんなの笑顔のために何かを頑張るみのり達他の誰かと同じなんだ、と自身の強い想いを告げることで変わらぬ自分自身を示す五代さんの姿からは、彼の不安を覚えようとも折れない心の芯の強さと誰かのために寄り添い頑張ろうとする優しさが同時に伺えて凄く良い。みのりが再び兄を信じ、笑顔を取り戻す流れにしっかり気持ち良さがある、台詞回しが温かい素晴らしいシーンよね...

 

例え姿が異形となっても。

何かを傷付ける戦場が赴く場であったとしても。

他者を想い、慈しみ、そのために在ろうとする心が、変わらずそこに有るならば、きっとその人も変わらずそこにいる。

大事なのは心。

 

保育園のみんなからの冒険家五代雄介への手作りの御守りを五代さんに託し、グロンギとの戦いに赴く彼をしっかり見送るとこも2人のドラマの締めとして気持ち良くて良かったなぁ。

 

  • それぞれの場所で

ギイガと警察の戦いの場へ駆け付けた五代さんは、ギイガの墨爆弾を物ともしない超装甲の戦士・クウガ「タイタンフォーム」へと変身。タイタンソードを手に、次々繰り出される墨爆弾をその身で受けつつ、臆することなく歩み寄っていく。前述の剣道場での一条さんとの打ち合いのシーンの印象も相まって、爆炎の中をじりじりと進んでいくタイタンフォームの頑強さ・気迫が強烈に描かれる演出が秀逸。こういう見せ方によってしっかり新たな形態の強さを描き出すのが本当に上手いよねクウガ

迫力に押され、焦りながら次々攻撃を繰り出すギイガとの距離を詰めると、クウガは必殺「カラミティタイタン」で、一条さんが教えてくれた弱点の腹へと強烈な一撃を叩き込む。ギイガを粉砕し勝利を納めたのだった。

 

ギイガ戦の最中には保育園で子供達と遊ぶみのりの姿がたびたび挟まれる演出があり、殺伐とした戦いと子供達との交流という真逆の雰囲気の場面が交互する様が、先に語った「五代さんとみのり、それぞれ違う場所でそれぞれ同じく誰かの笑顔のために頑張っている」という表現にしっかり繋がっていて実に味わいがある。決着後の佇むクウガと、子供達と遊ぶみのりのシーンを取り巻くように柔らかなBGMが流れる中EDへ、という演出も素敵

 

 

以上、クウガ第10話。拭えない不安に苦しむみのりの心に寄り添い、自身が変わらずそこに在ることを伝える五代さんがカッコよく、みのりが立ち直る流れも気持ちの良い、ドラマパートの温かさが物語を彩った非常に味わい深い回でした。クウガの存在を通じ、「戦い」「暴力」という事象への意味づけと、そこへ赴く五代さんの心を在り方を見せる作劇は見事の一言

タイタンフォームは今までのフォームみたく初戦で苦戦する様が無かった(実際は剣道を通じ戦法を探ったりと試行錯誤はあるんだけどね)のもあるだろうけど、今までのフォーム以上に強力さが伝わる演出がイカしてたわね 迫力ある歩み寄りで圧倒し、一撃で仕留める演出、これもまた最高だわ

一方五代さんが(たしか)初めてクウガとして戦う不安を吐露したり、ギイガにトドメを刺す際に身を震わせ顔を背ける仕草をしたりと、気丈に振る舞う五代さんの中の痛みとも言えるものが伺える一幕もあり、これもまた最終盤のあるシーンの布石とも言える要素なので胸にくるものがあり 見返すと色々発見できてより面白いわクウガ

 

 

というわけで今回はこの辺で 次回もまたよろしくお願いします 気に入っていただけたら拡散もして頂けると嬉しいです

ではまた