AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

迷い、生きる

仮面ライダークウガ

EPISODE25、26「彷徨/自分」

感想レビュー

 

 

  • 人生は迷いの旅路

神崎先生の教え子にして学校では品行方正・成績優秀、しかし内心では、自分を取り巻く世界が変わっていき好きだった場所やものが失われていく中で予定調和の未来へ進むことに対して悩みを抱く少年・霧島拓の心情を中心として描き上げられるドラマ性の強さが濃く押し出されていた今回。

色々なことを考えるようになりつつもその気持ちに向き合う中での迷いも多い成長の過渡期真っ只中と言える小学6年生の少年の複雑な心情を、ピアノソナタ8番「悲愴」のしっとりとした曲調のアレンジBGMに乗せながら、父の実家の跡地、店主の変わった駄菓子屋、クリーニング店に変わり看板やプラモデルなどの面影を残すのみになった模型店などの郷愁的な風景を通じて拓の無言の表情で描き出す前半25話からの、対話の中で少しずつ言葉として紡がれていくその気持ちに五代さんが向き合う後半26話の流れは特撮シリーズとは思えぬほど心に感じ入るものに溢れていて、改めてクウガという作品のドラマ部分への気合いの入れようが伺えました。拓の心情に関してはある程度どのようなものか把握できつつもその全てを理解し切れた自信はないし、自分の拙い文章でそれを表現し切るのは難しそうというのが正直なところですが、それでもその複雑な内面の掘り下げが目を見張るものであることはひしひしと伝わってきましたし、この年頃の子供の表現をここまで緻密にやり切ってるのは本当凄いことだなと感じましたね

その気持ちに精一杯寄り添おうとする五代さんの「もっともっと悩めば良い」という励まし・後押しの言葉を受けて、悩んで悩んで悩みながらも進むことが自分にとって納得できることであり進むべき未来への道に繋がると気付けた拓が、最初は無駄なことだと言っていたサムズアップを小さく控えめながらも迎えに来た神崎先生へと返すという締めも、「満足・納得できる行動をした者にだけ与えられる」というサムズアップの意味と合わせ、拓が自分の悩む気持ちに向き合い進むことを決め一歩精神的に成長したことを示す表現となってて、とても爽やかで心地良かったです。拓と神社の石段に腰掛け対話するシーンにおいて、さり気なく腰を下ろす段を一段落として拓に目線を合わせ少しでも寄り添おうとする五代さんは素敵でとても好きだし、総じてこの2人の対話シーンはとても良かったなぁ 悩めばいいんだよ、という言葉をここまで人の心に染み入る形で温かく送ってあげられる五代さん、優しいよほんと

 

  • 教師の務め

拓のクラスの教師としてEPISODE11、12に登場した神崎先生が久しぶりの再登場となりましたが、五代さんのおかげで再び教師としての熱を取り戻した神崎先生が、変わっていく生徒の在り方に対し真摯に向き合い頑張ってる姿をこうして描いてくれるだけで本当にもう、凄く嬉しいですよね...生徒達の在り方をしっかり見極め色んなことを考えながら向き合おうとする神崎先生、眩しいなぁ クウガはこういうゲストキャラ、サブキャラに乗せたドラマ性を一度きりで終わらせず改めて活かしてくれるのが好きで好きで。五代さんのことを深く信じていて拓のことを話す様や、みのりとの昔馴染みとしての楽しげなやり取りを交わす様など、キャラ同士の繋がりを感じさせる描写があったのもグーでした

 

今回の神崎先生のシーンにおいて印象的なのはポレポレにおける「生徒達はどこか差がなくなり大人しくなった」「悩んだり傷ついたりするのが怖いからそれを忘れさせるためのもので溢れてる」っていう言葉で、これらは現代の教育事情というところにおいても通ずるものがあるように感じられ、思わず聞き入りましたね。優等生であれと人としての在り方や進むべき道が画一化されたり、大人が難しいこと辛いことから遠ざけてしまうあまり子供は自分自身と向き合う機会が減ったり...と、言うなれば決められたレールとか過保護すぎる親とか、そういう話は今でもままあることだと思いますし

またそんな神崎先生の話に桜子さんやみのりの言葉が加わり更に深みが増していく会話劇としての良さがあったのも好きなところで、特に幼稚園の先生という神崎先生と同じ子供と向き合う立場からの「小さい頃は色んな表情がある」「それぞれの家庭で親が子供に向き合うのが一番なんだけど厳しいより優しい方が親にとって楽なのかもしれない」というみのりの言葉もまた、この問題のある種の正鵠を射ていて良い台詞回しでした。こういうそのキャラの設定や独自の視点が活きる演出は良いなぁ

拓のために必死で奔走したり、五代さんを通じて先生の言葉が拓の笑顔に繋がりその背中を押したりと、良い描写に溢れてて嬉しい再登場でした

「“君が生きてる限りずっと、今生きてるそこが君の居場所だよ”」

「その場所でさ、自分が本当に好きだと思える自分を目指せば良いんじゃない?」

 

  • 『ゴ』襲来

さて、そんなドラマ性たっぷりな部分に若干食われた感もあるながらも、今回の話においてクウガの物語に投げかけられる新たな波紋として描かれた『ゴ』集団の大集合、今までのグロンギとは明らかに一線を画すような佇まいと演出を持って一堂に会する様は大幹部集結!!と言う感じの威圧感に溢れててインパクト抜群でしたね

そしてゴのデビューを飾ったブウロのゲゲルも、大勢の人間が普通に出歩き日常を過ごす中で知らぬ間に攻撃が為され次の瞬間には突然バタバタと倒れていくという、以前に同じような手法で行われたバヂスのゲゲル以上に静かなる凶行という趣のある演出や、クウガや警察のヘリ相手に見えない所から容赦ない狙撃を繰り返すガチムーブがあまりにも強烈で、ゴが圧倒的な強敵であることを印象付けるには十分すぎましたね...警察もほぼほぼ後手後手だったし強すぎる

クウガの攻撃を喰らってなお、すぐさま翼をもいで致命傷を避ける機転と尋常ではないガッツ、そして傷が癒えるのを読書を嗜みながら待つという冷静な姿など、ブウロ自身のキャラも非常に立っており、ドラマパート重視になった中でもなんだかんだで霞まない存在感が出てたのは凄い

 

そんなブウロの凶行に対し、今まで以上に連携を密にする警察(一条さん)とクウガの戦いぶりも目を惹いたところで、バイクのクウガがパトカーの一条さんからすれ違い様に銃を受け取るスタイリッシュな演出がめちゃくちゃにカッコ良かった2戦目は最高でしたね!ペガサス関連の銃のパスは「連携」が全面に押し出される分絶対的にカッコよくなっちゃいますな

 

  • ビリビリの緑

そしてブウロに対抗し初お披露目となった金の緑ことライジンペガサス。

初戦はブウロに先手を打たれ後手後手に回ったことから良いとこが見せられなかったものの、2戦目ではブウロの攻撃を華麗なバク宙で回避しながら河川敷に着地し、同時に返す刀で弾丸を連続で撃ち込み勝利を収める流れが最高にイカしてて素晴らしい活躍でした

しかし、より鋭敏化した超感覚によって索敵が更にパワーアップしてるけど、変身時間がいっそう短くなっててしかも痛覚も増してるから腕を一回撃たれただけでも死にそうなほど苦しむ、ってよくよく見るとリスキーすぎるな...()相変わらずオダジョーさんの苦しむ演技が迫真すぎて怖かったわい

 

 

以上クウガ25、26話、拓少年の緻密な心情描写や彼を取り巻く神崎先生達登場人物の会話劇、そしてそれを彩る数々の演出が美しいマッチを果たしたドラマパートがとても味わい深い名エピソードでした。『ゴ』の集結にしてゲゲル開始回、という割と大事なとこに被せてきたあたりは話の構成的に言えば正直良くも悪くも、と言えなくもないのですが、間違いなくクウガという作品の特色を濃く印象付けるに当たる、欠かせぬ回とも言えるでしょう。

またドラマパートに被せられたとはいえ、『ゴ』集団の集結やブウロの存在感、それに対し気を引き締める警察サイドの描写などなど、新たなる局面へ突入した戦いの緊張感を感じさせる演出もしっかりと印象深く描かれており、クウガの物語の転換点たる大事な位置付けの回としても面白かったです グロンギとの戦いは更に激化していく...!!

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた