AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

私達はスパイ

Princess Principal/プリンセス・プリンシパル(TVシリーズ)

作品総括

 

 

東西に分裂したロンドンで繰り広げられる、
少女たちのスパイアクション!

 

舞台は19世紀末、巨大な壁で東西に分断されたアルビオン王国の首都ロンドン。
伝統と格式ある名門、クイーンズ・メイフェア校には、5人の少女たちが在籍していた。
彼女たちは女子高校生を隠れ蓑に、スパイ活動を展開。変装、諜報、潜入、カーチェイス……。
少女たちはそれぞれの能力を活かし、影の世界を飛び回る。


「私たちは何?」
「スパイ。嘘をつく生き物だ」

 

※「プリンセス・プリンシパル」アニメ公式ホームページ イントロダクションより抜粋

TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』公式サイト

 

2017年3月にTV放送を開始したアニメ「Princess Principal/プリンセス・プリンシパル」。重厚で緻密な世界観と深みあるストーリー描写などで多くの視聴者の心を掴み人気を博し、放送後には大型のイベントも開催、更に先月2月には全6章構成の最終章の第1弾が劇場公開されるなど未だ勢いは衰えず、今なおファンを惹きつけ続ける人気作となっています。

かく言う私も本編の視聴からどっぷりとハマっていった本作のファンの一人なのですが、このたびの劇場公開に備えTVシリーズの全編視聴(3週目)と各話の感想レビューを行って改めて本作の魅力を堪能、加えてその興奮冷めやらぬままに最終章第1弾を鑑賞しプリンセス・プリンシパル熱は収まるところを知りません。プリプリ は良いぞ...!

今回はそんな本編視聴とその感想レビューを経た本作の総括を、自分なりに簡単ながらしたためておこうかなと。よろしくお願いします

 

 

まずざっくりとまとめると本作の魅力は、

①作品のテーマ性を十二分に引き出す、

    緻密に組み上げられた強固な世界観設定

②キャラクター達の繊細な心情描写により

    織り成されるビターながらも

    心打つドラマ

この2つに大別されるでしょう。この2つが徹底されていたからこその飛び抜けた魅力のある作品になったなと思います。

①作品のテーマ性を十二分に引き出す、

    緻密に組み上げられた強固な世界観設定

スチームパンク」「スパイアクション」

とオサレでスタイリッシュなイメージの濃い2種類のジャンルをテーマとする本作ですが、

「19世紀末、産業革命により蒸気機関等の工業が発展したロンドンを舞台に、革命で東西に分裂したロンドンの各方面の勢力がスパイを送り込み合う「影の戦争」が繰り広げられている」という、スチームパンクとスパイアクションの双方のジャンルの持ち味を強く引き立てる唆る設定を根幹に据えつつ、

作中を生きる人々の生活や立場、建築物や機械のビジュアルの雰囲気など、それを取り巻く細部のディテールが設定考証担当のスタッフの配置の下でその時代の情勢・発展具合を反映させて緻密に表現しており、しっかりと構築された世界観・設定が本作のダークでダーティな雰囲気をグッと引き立てているのが実に魅力的な部分であると感じました。

貧富の差や階級意識などの見えない壁が人々を阻む世界の中、趣ある建築物が立ち並び機械が絶え間なく駆動する蒸気立ち込めるロンドンの街を密かに、且つ華麗にスパイの少女達が駆け抜ける  これがしっかりと表現されているのが面白いんですよ!

普通に本編のストーリーを追っていても、前述したような貧富の差や階級意識、国柄といった作品世界を構成する空気感趣ある建築物や精密な機械がそこらに存在する蒸気立ち込める街といったビジュアル部分など、作品の雰囲気を感覚的・視覚的にグッと印象付ける作劇・カットがしっかり表現されているのが実に良いポイントで、多様で難解な内容の全てを理解しきれずとも、作品のテーマ性を感じ取りグッと没入できるようになっているのが好印象だなと思いました。不明瞭な部分を外部での説明に委ねるようなことをせずとも、肝心の本編の中でそれを感じさせられている、というのは非常に大事なところですしね。

とはいえ、公式サイトの解説やスタッフのインタビュー、設定資料集等の媒体に記載されている世界観や設定のより詳細な掘り下げについても、知れば知るほど本作への没入度が高まるようになっていて非常に価値あり。その練り込み具合を体感してより作品を楽しむという上で、是非それらに積極的に触れることをオススメします!

 

そんな作品の雰囲気の表現において、美麗且つ非常によく動くハイレベルなアニメーション梶浦由紀さんによる壮大で深みのある劇伴が実に大きな力を発揮していると感じました。

奥行きのある街並みや駆動する機械を繊細な作画やCGで事細かに描写し、戦闘・隠密などのスパイの少女達の立ち回りの数々を緩急の効いたスタイリッシュな動きの描写により表現するなどアニメーションが作品をビジュアル面で魅力的に表現するのに非常に大きな役割を果たしていて、加えて梶浦さんの劇伴が登場人物達のシリアスな対話の時には物悲しく、緊迫した戦闘や突入の時にはボルテージ高めに、と場面ごとの雰囲気に的確にマッチさせる形で入ってきて作品をグッと引き締めている、このコンボはとても良かったですね...これがあったからこそ魅力がいっそう深まったなと

 

またそれらの拘りや表現の素晴らしさに影響されて、本作において大きな存在感を発揮し作品の魅力の一つとして強く機能した要素であると個人的に感じるのが「ケイバーライト/Cボール」。

主人公アンジェが主武装の一つとしてたびたび利用する無重力発生物質/装置、としてあくまで作中の一要素として登場する本要素ですが、まず第一に、緑光を纏いながら浮遊し華麗にフィールドを駆け巡り敵を翻弄するというアクションや、もぬけの空な部屋の中の埃を浮かせてかつての部屋の構造を暴き出すスパイらしいテクニカルな応用のシーンなど、前述の美麗でよく動くアニメーションにより表現される本要素のスパイアクションとしての活用描写がとにかくカッコいいんです!Cボールのいかにもスチームパンクなビジュアルと合わせ、本作のジャンルを意味あるものとしてグッと引き締めてたなと思います。また、SF色強めでフィクション的な味わいが濃く、ともすれば浮いてしまいそうな面もある本要素ですが、作中の世界観や本編が時代背景などを基に緻密に構築されている土台があるからこそ、作品を構成する純粋にスマートでオシャレ要素として自然に馴染んでいる点も実に良いなと思いますね

本作を本作たらしめる独自の魅力がぎゅっと詰まった実に重要な要素だなと

 

とまぁ色々言いましたが、総合すると、世界観や設定が細部まで作り込まれていることでの見応えがあるからこそ作品のテーマ性やダークさ・ダーティさに溢れる雰囲気がしっかり表現されているし、それを映像として表現するアニメーションや劇伴がハイレベルであるが故にいっそうそれらの魅力が引き締まっている、という感じですね。凄く惹かれます

 

 

 

②キャラクター達の繊細な心情描写により

    織り成されるビターながらも

    心打つドラマ

物語に登場する数多くの魅力あるキャラクター達の抱く様々な心情一つ一つを情感豊かに描き上げ、それらが繋がり絡み合う中で生まれる深みあるドラマ、これもまた本作の魅力と言えるでしょう。

まず作品のメインを飾るアンジェ、プリンセス、ドロシー、ベアトリス、ちせのチーム白鳩の5人。彼女達は物語の序盤においては、

大切な友人と共にいられるよう国を変えるべく自分の正体を隠して敵国のスパイに身を置くプリンセス、

そんなプリンセスへの強い想いを胸に嘘で身を塗り固めてスパイとして世界と戦うアンジェ、

従者としてプリンセスの身を案じアンジェ達に疑念を抱くベアトリス、

仲間であるプリンセスのことを組織の命で疑わなければならない葛藤を隠しながら接することとなるドロシー、

仲間達に思惑を隠して接する後ろめたさと仲間からもどこか信じてもらえないもどかしさに苦悩するちせ、

とそれぞれが自身の立場や背景故の目的・想いなどを隠しながら相手への後ろめたさや疑念を少なからず抱いた、「嘘」に取り巻かれた関係性の下で行動を共にする緊張感ある様が描かれていましたが、そこからストーリーが進み共に接する中で、今度は相手が抱く紛れもない「本当」の信念や人柄を感じ取っていき、心から信頼し合う、強い繋がりを持ったチームへと転じてゆく様が描写され、「黒とグレー」が常に揺らめく嘘と疑念に満ちたスパイの世界で、信じ合える「白」の信頼で繋がった仲間、チーム白鳩となっていく様が見所となっていました。

各人を様々な疑念や憂いが取り巻く「嘘」「スパイ」という作品のテーマを軸に据えたストーリーを展開しつつ、それらの障壁を越えて彼女達が信じ合い一つになっていく、いわば対となるカタルシスで魅せる様が沁みるんですよね

また白鳩のメンバー各人にフォーカスしていっても、幼い頃の思い出と壮絶な出来事から互いに深く強い友情で結ばれたアンジェとプリンセスのエモーショナル極まりない関係性をはじめ、ことごとく救われない結末のメイン回をあてがわれながらも様々なエピソードの中に温かな優しさを感じるドロシースパイとは最も程遠い人柄ながらもそれ故に真っ直ぐな想いが響くベアトリス愚直なまでに筋の通った人となりで魅せる生き様や他者との交流が素敵なちせ、とどれも様々な魅力に溢れていて、それぞれの物語もまた胸にくるんです

 

そしてその心情描写やドラマ性という部分は、作中に登場する様々なサブキャラやゲストキャラにも同じく当てはまっており、これらの細かな描写もまた本作の良さをグッと引き締めていると言って良いでしょう。

貧困や立場という世界の理不尽に苦しみながらも精一杯に生きる者達。

決して譲れない信念や目的を抱いて戦い、時にその中に拭えない情を見せる者達。

どうしようもない状況に荒れ狂い、絶望しながらも愛する者・憧れの者への想いを心の底に大切に秘める者。

作中の世界観や設定に即した様々な事情や想いを抱き生きる彼らの心情や生き様の繊細な描写はそれぞれ違った形で心を打つものばかりであり、それらがアンジェ達と関わり合うことで描き出される、時に悲しく、時に温かなドラマはどれも最高でした。

 

本作は1クール全12話の物語ながらも、全体通して描かれるメインキャラ達の心情や関係性の変化、各エピソードの中で織り成されるキャラクター達のドラマの深みによって、1クールとは思えないような重厚さと深みが作品単位で生まれているなと感じます。本当に素晴らしい作品です。

 

 

と、以上でプリンセス・プリンシパル総括として纏めさせていただきます。

実質初めての総括ということで正直きちんと纏まったか怪しいところがありますし、自分の文章で本作の魅力をまとめきれただろうかと不安にもなりますが、一ファンとして感じた本作の素晴らしさを精一杯詰め込ませていただきました。

プリプリ自体は最終章がまだまだ続くということでこの先も盛り上がりを見せていきますが、一先ずは多くのファンを魅了したTVシリーズの視聴体験に関して本総括を通じ、そこで得た想いをこうして形にできたことで一つの区切りとできたので良かったです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。同じプリプリファンとして楽しんでいただけたり、想いを共有できたりしたら幸いです。

これからも一緒に、プリンセス・プリンシパルを楽しんでいきましょう!

 

 

というわけで今回はこの辺で

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた