AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

Extinction

「ゼロワンOthers 仮面ライダー滅亡迅雷」

(一先ずの)感想レビュー

 

※本レビューはネタバレを多分に含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

 

 

冬の劇場版「REAL×TIME」を経て、滅亡迅雷.netを軸に据える形で公開となりました、仮面ライダーゼロワンのVシネマ作品「仮面ライダー滅亡迅雷」。

劇場公開当初の評判をちらほら見るとどうも賛否の大きく分かれそうな雰囲気があり、内容に少し触れた感想的なものをある機会に少し拝見した際にもなかなかどうしてとんでもない内容になっていそうという空気感を感じ取ったりと少々不安要素の大きかった本作でしたが、視聴し終わった僕個人の率直な感想としては、否寄りの印象、というか(まだ)なんとも言えないというのが正直なところでした。

 

その印象の一番の要因はやはり、本作の主役・滅亡迅雷.netの面々の

人間は滅ぼすべき存在ではないと一度は心に決めた彼らが、ヒューマギアを道具として利用するリオンに立ち向かうために自ら再び「人類の敵」となって牙を剥くという決意、

および人類への宣戦布告じみた言葉やリオンの殺害、仮面ライダー滅亡迅雷への変身に伴い空っぽとなった自分達の身体の破壊、そしてZAIA本社の破壊活動といった、どんどん後戻りできない方向へ向かっていくような行動の数々でしょう。

いやぁ、これは何も知らずに観た方々は相当にショッキングだったろうなぁ...自分も鑑賞した方々の評判から察せられる雰囲気や、本編内容についてほんの僅かながらも耳に入れていたことなどからある程度身構えてはいたので思いの外驚きは少なかったものの、やはり衝撃的であることには変わりはなかったですし

 

彼らのこの決断と行動については、
彼らが人間は滅ぼすべきではないと知ったTV本編の展開、

本作冒頭での迅の「皆が笑顔でいられるようになればアークが生まれることはもう無い」という希望、

リオンによる「アークは最早時代遅れ、これから始まるのは正義と正義のぶつかり合いによる戦争」という言葉、

など、その要因になったと思われる描写が多く存在していたので、深掘りするとなんとなく察することはできますね。

今回の戦いがリオンの言うように悪意が起点となって生じた軋轢ではなく、「悪意を乗り越えた者達かつて人々に恐怖をもたらしたテロリスト達を倒そうとするという社会一般に対する大義名分を背負い立ち向かう者達の正義vs正義の戦い」である以上、そのかつてのテロリストであり、且つそこから人間を滅ぼすべきではないと気付いた自分達がリオンに立ち向かうことは、多くの人間やヒューマギアにとっての心象という意味でも、自分達が一度決めた信念を曲げてしまうという意味でも許されないことなのだと、滅亡迅雷の面々は気付いたんでしょう。

そして、そうだとしてもこの戦いがヒューマギアの自由のために決して避けて通ってはならないものである以上、自分達はもう2度と人間とヒューマギアの笑顔の輪の中には戻らない、人間に牙を剥く悪として君臨するという覚悟の下で、こういう結論へ至ったと...ううむ辛い リオンの殺害やZAIAの破壊完全に人間に牙を剥く存在となるべく一線を越えるため、そして自分達の身体の破壊自分達が人間やヒューマギアの仲間であった頃の象徴であり居場所でもある自らの身体を砕くことで、もう2度と戻らないと決断するため、だったんだろうなぁ...

そうして覚悟を決める上で滅が、自分達が全てを傷付ける存在となった時どうするかと不破さんに問うシーンがあるのですが、ここで「迷わずぶっ潰す」と彼が答えてくれたのを聞くことができたのは、滅にとって凄く安心しただろうなぁとも思う。自分達が強大な悪になろうとも、人間やヒューマギアの平和のためにそれを食い止め倒す、正義の戦士がいてくれると分かったのだから...こういう形で2人の信頼が描かれるなんて

 

そんな彼らの決意の象徴とも言える新ライダー・仮面ライダー、ソルド達のマスブレインがモチーフとなった姿から、電子的な英語の音声を読み上げる無機質な威圧感が、良い存在感でした。

当初のビジュアル公開時は「ご当地ヒーローの敵っぽい」と言ってる声も見かけた(自分も「ご当地ヒーロー臭あるデザインだな...」とちょっと思ったことを白状します)ものですが、本作の展開を踏まえると「敵っぽい」という印象は抱いて然りだったなと。ある意味ゼロワン作品の裏ボスとして君臨することとなったわけですしね...
戦闘に関しては徒手空拳多めでちょっと新鮮味はなかったのでそこは惜しいですが、ここは次作に期待。

そんな仮面ライダー滅亡迅雷、上述した電子音声読み上げによる無機質な威圧感が強く印象付けられてたからこその、ラストでZAIA本社の残骸の上に立ち、滅亡迅雷4人の悲痛な慟哭をダブらせながら叫ぶ姿は痛々しかった...例え決断しつつも、自分達がもう2度と皆の下へ戻れないというのは、辛いのだろうな...

と、つらつらと本作のショッキングな部分にして魅力たる部分を細かく言語化し書き連ねてみましたが、個人的な素直な気持ちを言うとこの展開にする必要あったのかなぁ...と思う部分はあり。

自分自身ゼロワンという作品には個人的なハマらなさもあって愛着的なものは少ないものの、(物凄く曲がりなりに、という感じではあるながらも)TV本編の物語を経て滅亡迅雷が至った結末、そこから転じて描かれた劇場版での彼らの仲間達との奮闘には多少なりと思い入れはあったので、そこをここに来て崩してしまったことには色々思うところはあるんですよねぇ。TV本編ラストで亡はAIMSに、雷は宇宙センターに、と受け入れられ、滅迅は人類の監視に、と人間社会の中で頑張っていこうとする姿が描写されたのに、今になって「元テロリスト」の部分を引っ張り出してきて陰鬱な方向へ持っていくのはちとモヤるというか。(それ自体は未消化のしこりのピックアップという意味でも、彼らの徹底的な掘り下げという意味でも凄く意義があることだと思うけど、TV本編でその点に触れずに4人が人間社会に溶け込んだような描写で締めておいて、後出しの話でそこをつついてきてこういう話に持っていくのはなんか好みではなかった)

TV本編でなまじそういう部分に触れずに綺麗に締めたならそこはあまり揺らがさないで欲しかったなと(滅亡迅雷が人間社会へ溶け込むことへの人々の不安、そしてそこから少しずつ受け入れられていく流れ、などが少なからず本編で描かれた上で、それでもまだ不安や恐怖を抱く人々もいる、として本作のエピソードに近い展開の番外作品とするなら個人的にはアリという感じです)

 

まぁ上述したようにストーリー展開の中でのメッセージ性の描き方はかなり味があると思いますし、意義ある展開だとは思っているので不満タラタラということではないです。強いて言えば、もう30分増しくらいの尺でもっと掘り下げや過程をしっかり描き、この1作品でスパッと収めるくらいにしてくれれば良かったなと思ったりします

 

あとはリオンのあのキャラはちょっとお気に入りだったりします。あの小物感バリバリの分かりやすすぎるくらい大袈裟なキャラ付けは個人的な好みでいうとちょっとビミョーなのだけど、あのキャラだったからこそのシリアスさとシュールさの混然とした雰囲気は独特の味がありましたし、絶妙に印象に残ったなという感じですw 滅亡迅雷vsザイアのシーンで思いの外ボコボコにされて及び腰になりながらも「カモォン...カモォン!(引きつった声)」ってイキるの好き

或人・滅・エスが「正義」で悪意を乗り越えたという点に注目しそこを活かして、アークを否定しながらも利用し暗躍する様は新鮮で面白く、本作の展開を転がす上でも大事な存在でしたしね 何より仮面ライダーザイアへの変身プロセスの動きがキレあってカッコいいのが加点高めですわ。最後にサングラス外す動き良いですよねぇ!

 

しかし今回も平然とのさばると思ってたアズ、あっさり倒れてしまったなぁ...あれほど暗躍し続けてたのに

ぶっちゃけアズはTV本編・劇場版と媒体を跨いでなおあまり痛い目も見ずにあざとすぎるキャラで調子に乗り続ける様があまり好みでなくこれ以上同じ感じで描かれ続けるのは自分としてはあまり望ましくなかったので、とてつもなく個人的なキャラへの好き嫌いに基づいた印象ではありますが、ここで一杯食わされての退場は溜飲も下がったなという感じです(アズ好きな方々はゴメンね)

キャラ的にちょっと呆気ない感じはあるものの、リオンvs滅亡迅雷を演出する上で「正義vs正義」を少なからず強調しアークを時代遅れとしたのは大事な展開だと思うので、やはりここで終わり...なのかも

 

 

などなど色々述べましたが「仮面ライダー滅亡迅雷」、本編後のエピソードでのこの大波乱や、前後編の「前編」を前提とした引きなど、賛否は大きく割れる作品なのは間違いなく自分としては否寄りながらも、込められたメッセージ性の濃さは良いなという感じです。とりあえずハッキリとした結論・評価自体は後編となるバルカン&バルキリーの視聴を経た上で決めたいなと。それまでは一旦保留です

 

「Metsubou Jinrai will be extinct.

(滅亡迅雷は、滅びる。)」

自身へ向けて滅亡迅雷.netが示した意志を、不破はどう受け止めるのか。

そして唯阿は仮面ライダーとして、この戦いに如何に立ち向かうか。

物語は、更なる局面へ...

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた