AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

本と剣の物語

仮面ライダーセイバー

総括

 

 

文豪にして剣豪!!
すべては一冊の本から始まった。
はるか昔、世界は大きな力を持った一冊の本から作られた。その本はあらゆる物語の源となり、神話や生き物、科学技術、そして人間の歴史のすべてが詰まっていた。聖剣に選ばれし剣士たちがその本を守ることにより世界の平和は保たれていた。
ある時、争いが起き大きな力を持った本は分冊されバラバラに散りその多くは失われ世界の均衡は崩れ去った。力を持つ本は失われ伝説となった。しかし、力を持つ本をめぐる戦い終わっていなかった。戦いは長きにわたって続き、今もなお終わりをむかえてはいなかった。
そして今、一人の青年が聖剣と出逢い、世界の運命が大きく動きはじめる。

 

仮面ライダー公式ポータルサイト「Kamen Rider WEB」シリーズ紹介-仮面ライダーセイバーより抜粋

仮面ライダーセイバー | 仮面ライダーWEB【公式】|東映

 

プロデューサー高橋一浩×メインライター福田卓郎のコンビをはじめとする「仮面ライダーゴースト」の制作陣を中心に据えた布陣、剣と本をテーマとしたファンタジックさが目を惹く世界観、多人数ライダーの群像劇というポイントを強く押し出したストーリー、などなど多くの見所を引っ提げて繰り出された令和ライダー2作目、仮面ライダーセイバー」。近未来的な作風で織り成される世界観が特徴であった前作ゼロワンから雰囲気を一新したファンタジー風味の作風等の面から注目を集めた一方、2020年当時猛威を奮っていた某ウイルスの蔓延による情勢の悪化で多くのドラマが制作に苦労している苦境の中でのスタートという最大の苦境に対面しながらのスタートとなった本作でしたが、この度の2021年8月29日、無事に全49話の放送を走り切りました。

本編中には情勢の変化による影響を少なからず感じさせる描写などが見受けられ、放送後に発売された「フィギュア王」におけるセイバー制作の詳細を語った制作陣のインタビューでも作品制作における数々の心残りが証言されるなど、実際に様々な苦労があったことが分かる本作ですが、今回の作品総括ではあくまでも純粋にリアルタイムで追って行く中で感じた印象・評価について取りまとめていこうと思います。

また本作は全49話のほぼ4クール構成という中で、およそ1クールごとにざっくりとした章区切り的なものが為されていた印象があるのですが、この章ごとにけっこう趣というか、 視聴テンション的なところがけっこう上下しやすい作品ではあったので、それに倣い今回の総括はクールごとの印象について触れながら掘り下げていこうかなと思っております。

最後までお付き合いいただければ幸いです。

 

 

 

◯開戦・メギド&カリバー台頭編(第1〜15章)

文字通り物語の幕開けとなった序章パート。主人公である小説家・神山飛羽真がセイバーとなり、ソードオブロゴスの剣士達と次々に出会い共に力を合わせメギドと戦う中で、自身の失われた記憶にまつわる謎に迫り始める...といった大筋で進む内容となっていました。

 

様々なライダー/剣士達との出会いと交流のエピソードを順繰りに展開しつつ、近年のライダーシリーズでは最早定番となった序盤の怒涛の玩具販促ラッシュを複数のライダーの活躍と共にテンポ良くこなしていく作劇が特徴で、初期蓮のなんとも言えないとっつきにくさ親しみにくさを筆頭とした所々のキャラ描写のクセなど多少の引っ掛かる面はあるながらも、飛羽真とソードオブロゴスの剣士達の交流にはそれなりにしっかりとした尺が取られていてドラマ部分は割とスッキリと楽しむことができたし、戦闘パートもライドブックを使った能力の演出や3DCG等を豪勢に駆使したワンダーワールドの演出がまさしく「本から飛び出した」ような表現になってて見ていて楽しかったしと、割りかし手堅く纏ってはいたのでなかなか面白かったパートでしたね。何より、次々に登場してくる6人くらいの仮面ライダー達が早々にしっかり協力し合って敵と戦う、というこの序盤の体制は、ストーリー展開上ライダー同士の足並みがなかなか揃わなかったりすることも多い近年ではかえって新鮮で、ライダー達の連携により繰り広げられるヒーロー活劇的な面白さを純粋に楽しめたという点で特に良かったなと。足並みがしっかり揃っているのでシンプルに観ていて引っ掛かりが少ないところは大きかったです。序盤にこういう作劇を取ってたからこそ、冬映画の劇場短編は「6人の仮面ライダー達による世界を救うための一大バトル」という部分に注力した展開運びをスムーズにテンポ良くやれたと思うしね

 

ただストーリーが第11〜15章辺りのカリバーの正体や目的に迫るという物語の本筋を進めるフェーズに移ると、カリバー/上條が自身の目的についてぼんやりとした表現ばかり用いるせいで飛羽真達との同じような押し問答が連続してしまい、進行してる感が無くて見ていてスッキリしなかったりカリバーの正体を巡って乱れる賢人の心情の動きや言動が展開ありきのやや強引なものになってあまり感情移入できなかったり、といった感じでキャラの言動やストーリーの展開運びがやや冗長な感じになってしまい、やや締まりが悪い感じになってしまったのは勿体無かったところ。他にも「飛羽真・倫太郎・賢人の3人で共に戦う誓いを立てたことで一度は焦りを見せていた賢人が持ち直す」という流れをわざわざ印象深く描いたのにそれと同じ回の中でまた賢人が荒れ始める下りに持ってしまう、といったような、肩透かしを食らわされる感じの風情が無いように感じられる展開運びもあったりして、どうにもモヤモヤする、もう一つ盛り上がり切れない、という感じに向かって行ってしまったのがなんとも惜しいところでした。上條の目的も賢人の精神の乱れも展開として意味あるものとして描かれたものではあったし、冷静でいられない状況下での意思疎通の難しさ的なところを意図的に描いた面もあったのかもしれないけど、理屈として納得できる面はきちんとあってもそれを映像上での流れとして気持ち良く観れたかというと微妙なところだったというか。

伏線張りやキャラの今後の動向の示唆など色々な要素を印象深く描こうとしていたのは感じられたけれど、巻くところは極端に巻くし、かと思えばスッと進んで欲しいところではやたら引き伸ばすような流れになる、といった感じで1クール目終盤ら辺はお世辞にも上手い話のテンポの取り回しができてたとは言い難く、最後の最後に少しモヤッとしてしまった点が尾を引く形となった印象でした。

 

 

◯光の剣士・古の竜登場-剣士争乱編(第16〜27章)

カリバー/上條との決着を経て組織に疑念を抱いた飛羽真と、玲花の誘導により飛羽真を危険視した倫太郎達の対立、という急展開を軸に、光の剣士・ユーリ/最光の参戦、刃を交えたことで理解し合いより強い絆を結んでいく飛羽真と剣士達、哀しみに満ちた古の竜の物語と飛羽真の対峙、など様々な出来事が次々と繰り出された本パート。ある意味本作の評価が良くも悪くも二分したところと言えましょう。

 

忌憚なき感想としては、ライダー達の連携の気持ち良さが一つの大きな魅力となっていた序盤から続く流れとして飛羽真と剣士達の対立という少々ジメジメした展開を初っ端から描く形となった本パートの出だしはあまり印象が良くなかったというのが正直なところ。飛羽真と剣士達が対立する流れにはきちんと心情の動き等の論理性自体が伴っていたし、そもそも章を区切ったタイミングで前の章において築いたものを敢えて崩し新たな波乱とする展開自体は色々な作品において存在する手法なのであくまでこの展開自体は変ではないのですが、「剣士達が飛羽真への疑念こそ抱くものの、それを信じられずまず飛羽真にそれとなく問いただそうとする」みたいな前パートにおける信頼値の積み重ねみたいなものを感じさせる過程が大きくすっ飛ばされていたために、一連の物語の流れとして納得できず、モヤモヤの方が勝ってしまって悪印象を抱いてしまった、という感じでした。一気に展開巻いて対立というところまで持っていこうとした結果、その過程を描く暇が無かった、という印象をなんとなく受けたんですよね

その後の展開も、メギドそっちのけで会話少なに飛羽真と剣士達が対立するお世辞にも気持ち良いとは言えない流れが数話に渡って描かれ続けカタルシスに欠ける形となってしまい、当時の視聴テンションとしてはドン底状態だったのを記憶しています。言葉や態度のすれ違いによる飛羽真と剣士達の対立や、それによってメギドへの対処が遅々として進まなくなる展開自体は話を観てれば意図的に描いてるものであることが分かるのですが、それをほぼ毎回くどいくらいに描き、それでいて映像に落とし込む上での巻くか引っ張るかの描写のバランスなどといった肝心な部分の詰めが微妙に甘いとなるとやっぱり観ていてモヤッとするものの方が大きくなるというのが率直な印象だったんですよね またそんな対立構図の発生と長期化をもたらすポジションであったこの頃の玲花の言動が、あまり感情のこもってない機械的なものでキャラとしてあまり面白くはなかったのも個人的には大きなマイナスとして働いたポイントでした。剣士達の対立という構図を牽引するに足る侮れなさや魅力的なキャラ性が押し出されていればストーリー展開的にもキャラ的にも多少なりと面白さが増したと思うんだけど、ただただ機械的に進めるだけなせいでストーリーにも玲花というキャラにも悶々とするものしか感じなかったというか(今では評価する声も多い玲花だけど、自分の中ではこの頃のカタルシスを欠く展開の中心であったことやその中で淡々と繰り出される面白味の薄いキャラの印象が強すぎるせいで未だにどうしても好きになれないというのが本音。実力者な一面やマスターロゴスのことで声を荒げる忠誠心の高さなんかが早期に描かれてればなぁ、と思う)。

 

と、開始当初は色んな意味であんまりな印象だったという感じだった本パートでしたが、話が更に進むと、互いの剣を交える「決闘」によって、飛羽真が剣士達に自身の信念や思いの強さを伝え、それにより飛羽真を理解し今一度彼を信じることに決めた剣士達が飛羽真の元へ仲間として集ってくる、という展開が描かれるフェーズへと突入。一度は飛羽真の元を離れた剣士達が飛羽真の持つ真の強さを直に感じ取り、それを信じ再び仲間として戻ってくる流れや、飛羽真自身も剣士達との決闘を経て新たな強さを学び成長していく流れが熱いドラマに乗せて描かれるようになって、物語への没入度が一気に持ち直していく運びと相成りました。本作を象徴する要素として強調されていた「剣」を効果的に活用し、言葉ではなく戦いを通じて理解し合うという少年漫画的なロジックをストーリー展開の中へとはめ込むという作劇のストレートな熱さがガッチリとハマったことに加え、その過程で飛羽真を理解していく剣士達の心情を細やかに描き出した丁寧な作劇がドラマを情緒豊かに彩ったことが、そこに至るまでのフラストレーション高めな展開とのギャップでよりグッと引き立ったのが非常に良きポイントだったなと感じます。飛羽真を信じると決めた大秦寺さんや尾上さん達ベテラン勢が再び集ってくる頼もしさや、飛羽真が彼らとの決闘から更なる高みへ至っていく成長の様子、組織を信じるあまり頑なになる倫太郎に対し芽依が剣士とは関係のない一般人の仲間として愚直に向き合っていく過程が良きでしたね 最初の方のフラストレーション高めな展開運びは販促との兼ね合わせで上手く進められなかった面もあったかもしれないとは思うので、それがある程度過ぎてじっくり取り回せるようになったとこもあったのかなと。

 

またそんな色んな意味で波乱続きだった展開の中、本パートにおいて電撃参戦したユーリの存在はドラマ面の支柱及び清涼剤として大きな役割を果たした面が大きかったなとも感じるところ。最初こそキャラのクセの強さをストーリーの流れに乗せるまでにちょっと時間を要した部分はあったものの、悶々とする面も少なくはなかった当時のストーリー展開を現代文化や常識とのズレによるシュールな言動でコミカルに和ませつつ、仲間達との離別で精神的にも戦闘力的にもやや不安定になりがちだった飛羽真を一時相棒としてサポートするなど、本パートのシリアス期間を安定させた功績は無視できないものだったなと感じています。ユーリがいるから観られる、という声も当時はちょこちょこ見かけた覚えがあるし、事実として良い働きはしてたなと。加えて飛羽真達との交流で新しい価値観を得て変化していき、剣士として成長していく様も描かれるなど準主役級の扱いも受けており、セイバーの物語の人間ドラマを盛り上げる上でもかなり活躍していたのはグッドでした。ユーリのこの変化の描写は後の展開の中でもコンスタントに描かれており、個人的にもなかなかに注目していた部分だったので、評価ポイントの一つですね

 

そしてそれに続いて展開された、古の竜=プリミティブドラゴンとの対峙も物語をより大きく盛り上げたポイントとして良かったところ。悲しみに満ちた結末に苦しむ物語のキャラである古の竜に対し、飛羽真が悲しみに終わらない新たな結末へと導きその手を取ることで向き合う、という飛羽真の「小説家」というキャラクター性を巧みに昇華させた展開運びを、暴走フォーム克服という仮面ライダーシリーズにおける一種の黄金パターンに見事にマッチさせ描き上げたところは素晴らしかったし、飛羽真のキャラ描写において型式ばった主人公らしい言動の方が目立ち始めていてなかなか感情移入しづらくなっていたこのタイミングで飛羽真独自の魅力を押し出し個性を発揮させられたのは良い傾向だったので、この辺りは本当に作劇が巧みだったなぁと改めて思い返しても感じ入りますね。

 

という感じで、前半は前のパートからの積み上げを崩してしまうような流れや冗長としていてフラストレーションの溜まる展開運びが非常に息苦しかったものの、後半は物語の取り回しも上手くセイバー独自のテーマ性や要素を活用したドラマが目を惹き盛り上がった、というなんとも評価が上下する局面となったパートでありました。

 

 

◯激動-マスターロゴス暗躍編(第28〜35章)

組織への思い入れから葛藤しながらも飛羽真を信じ再び立ち上がったことで覚醒した倫太郎の姿や、闇黒剣の見せる絶望の未来を止めるべく動く賢人の動向、遂に本格的に動き出す運びとなったマスターロゴス/イザクの暗躍を描いた激動の本パート。全体的には終盤に向けての諸要素の整理がメインとなっていて比較的見やすい時期だったかなと感じますね

 

本パートから脚本家陣に内田裕基さんが新たに参入、倫太郎覚醒回となる第32章および各キャラの動向の整理の回の第33章を担当されていたのですが、程良いテンポ感での作中情報や各勢力の動向の分かりやすい提示ちょっとした言動や他キャラとの絡み等によってキャラクターの性格・個性を際立たせる作劇の展開、などといったきめ細やかな作劇からこの内田さんの担当された回はなかなかに観易く、本パート引いてはストーリー全体への理解度やキャラ一人一人への没入度が増したというところでかなり大きな役割を果たしたなと個人的には思いました。頭に入ってきにくい情報開示のテンポ感のちぐはぐさとか、たまに大味になっていってる感を少々感じてしまうキャラの動かし方といった部分がセイバーの作劇の弱点だと自分的には思っていた(ほぼ同じ面々で構成されたゴーストでも同じようなことを感じていたのでこの座組の癖かもな、とは)のですが、そういった部分を手堅くサポートして作品によりのめり込めるようにしていたという感じがあったのでなかなかに好感触だったんですよね 特に飛羽真・賢人・ルナ周りの関係性や思い入れの程度の描写に関しては、今までの作劇では飛羽真をはじめとした作品中の登場人物達の理解ばかりが優先されて視聴者である我々はどのくらいのものなのかなどが理解し切れずあまり感情移入できてなかったのですが、第33章で観ている我々も没入しやすい取り回しをしてくれていたのでかなりありがたかったです。時折散発的に描かれていた単独行動中の蓮とデザストの奇妙な関係性についてもより大きな動きが描かれ注目度が高まったのは第33章だったし、良い仕事だったなと感じました。

 

また神代兄妹の登場による更なる聖剣の登場やマスターロゴス/イザクの聖剣とブック総取りのための暗躍といったストーリー展開によって、作中に登場する各種アイテムを作劇と絡めて印象深く描いていた点も大きかったかなと。特に神代兄妹の聖剣はギミックの面白さや造形の妙も相まって商品化の際には強い購買意欲を示していたのが当時見受けられたため、結果として大成功だったなと感じますね 特に界時抹消ギミックなんかは演出上でもなかなかにカッコ良く描かれ続けてたしハマる人はハマっただろうなぁ

 

悪い方寄りの意味で語り草となってしまった伝説の第35章(各話レビューの時にかなりボロクソに言った記憶があるのでここではあえて深くは語らずにおきます この回単体で物語全体が破綻したってわけではないしね)がなまじ区切りの良い部分となったが故に締まりは悪くなってしまったものの、基本的に終盤に向けての重要な要素にもしっかり注目できたし、 盛り上がりはキープできてたの思うので概ね満足だったかなと

 

 

◯剣士集結 最終決戦編(第36〜最終章+増刊号)

大いなる力を手にしたイザク、更なる力を手にし最大の敵として君臨してきたストリウス、そして迫る世界の滅びの運命という最悪の危機の連続に対し、想いを一つにした剣士達が結集し共に力を合わせて戦う展開を描い最終パート。

前パートの節目の第35章の印象が尾を引き、その後のキャラ描写やストーリー展開に乗り切れるだろうかと不安になってたところはあったのですが、イザクやストリウス、そして全知全能の書の破滅の運命といった世界の危機を前に遂に剣士達が一同に会し力を合わせ立ち向かっていく、という趣がストーリー面で徐々に濃くなっていく様はこれまでの流れを経た上でのカタルシスがしっかり創出されており、クライマックスの展開としては素直に面白かったですね。

 

そんな展開を描き出す上での一番の見所だったのはやはり、各登場人物のドラマやキャラ性を細かく深めようとしていた作劇だったなと。「世界の均衡を乱す者はたとえ忠義を尽くすマスターロゴスであろうとも倒す」という信念を示す形で少しずつ飛羽真達と足並みを揃えていった神代兄妹世界の破滅という未来を目にしそれを防ぐために自身を犠牲にすることすら考えていたところで、飛羽真の持つ可能性や父・隼人の言葉に動かされ、破滅という結末を変えられると信じ共に戦うことを決めた賢人迷走しながらも真の強さの意味を求めて突き進み、他の剣士達とはまた異なる道を見出した蓮、といった感じで、これまで飛羽真達とはなかなか道が交わることのなかった剣士達の信念や決意、成長がフォーカスされ、強い信念を持って共に戦う仲間として徐々に集まってくる様は作劇として非常に盛り上がるものはあったなと感じます。特に賢人が飛羽真達の下へ戻ってくるまでの一連の描写に関しては、「物語の結末を決めるもの」という飛羽真の決め台詞にも通ずる作品のテーマの一つをグッと引き締めた感があり、群像劇という本作の魅力を一気に昇華し、且つ作品の持つテーマ性を引き立てたここの作劇は素晴らしかったポイントと言って良いかなと。

また剣士とは違うながらも、シンパシーを感じた蓮と行動を共にする内に奇妙な信頼で結ばれていき、共に剣を交えることで不確かだった自身の存在証明に至れたデザストの物語も終盤では大きな存在感を発揮していて多くの視聴者を惹きつけていたのも特徴でしたね。正直デザストの諸々の動かし方については個人的には全面的に良いものだったとは言いかねるものではあるのですが、それでも群像劇の深みを高めるに足る魅力は多くあったと思うので、なかなか重要なキャラではありました

 

そんな剣士達が信念を示し共に戦うようになっていった展開の象徴として、それぞれの聖剣が集い生まれたセイバーの最終形態・クロスセイバーも良い存在感でした。ストーリー中での文脈がしっかりと乗った劇的さもさることながら、玩具的にも非常に豊富だった覇王剣のギミックを存分に本編中で描き上げることによって、最終フォームに相応しい頼もしい実力をしっかり発揮して展開を盛り上げていたところも良かったなと。近年の最終フォームは何かと活躍面で不遇に甘んじることとなる場合が多かったので尚更クロスセイバーの大活躍が長きに渡ったことは嬉しかったし、ここは自分としても純粋に大きな評価ポイント。

 

そして開幕する最終決戦。増刊号を除くラスト3、4話のストリウスとの戦いを軸にした怒涛の展開運びは、 王道の燃える展開をここぞとばかりに入れ込んだ捻り少なめの直球な作劇も相まって、かなり視聴者の方々のテンションが上がっていたのを記憶しており、クライマックスの流れの取り回し方としてはなかなかに良かったなと感じますね。自分は作品への没入度的にあまりハマれてはいなかったものの、それでも熱量の高さはしっかり伝わってきておりその点での評価は高い

また本作のラスボスとなったストリウスを通じ、本作のテーマの一つであった「物語」という要素に一気に深みを持たせたのも良かったところ。飛羽真とストリウスの関係、飛羽真のアイデンティティの一つであった小説家設定の昇華、人と物語の在り方、など様々な面でいっそう魅力的な部分が増えたので、ここのクライマックスにおいてストリウスは個人的にかなり好きなキャラになりましたし、作品の一キャラとして果たした役割もとても大きかったと思います。前持ってもっと細かく描いておいた方がもっと面白くなったのにな、という要素も色々あったのでそこは勿体なかったけれど、それでも盛り上げとしては申し分なしかなと

 

こうして壮絶な戦いを経て、最後には様々な苦境を越えて多くの登場人物達が笑顔で触れ合う最高の大団円を迎えました。なんだかんだありながらこうして気持ちの良いオチに持っていったところ、そのオチに対する納得度が曲がりなりにもしっかり高い形に仕上がっていたことは、ここまでのあれやこれを抜きにして一つの作品としてとても素晴らしかったと評価できるところ。

物語の結末はやっぱりハッピーエンドで!的な意味合いとしても、この点は仮面ライダーセイバーという作品を象徴するこれ以上なく満足度の高い締め方だったなと思います。

 

 

 

以上、仮面ライダーセイバー総括になりました。かなりの長文になってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

総じて本作は、それぞれ強い信念を持った剣士達が剣を交えて想いを一つにしていく群像劇や、人間達に喜びや他者との繋がりといった様々なものをもたらす物語という空想の素晴らしさを伝えるストーリーが作品全体の大きな魅力となっていたと言え、それを壮大な世界観設定の下、多くのキャラクター達の活劇によって熱く、時にしみじみと描き出す流れは全体的に見てみてとても沁み入る魅力があったなと感じますね。

ただ個人的な評価としては、その多くのキャラクター達の魅力を十二分に伝える(視聴者にとって各キャラを魅力的たり得るほどに描き出す)には掘り下げを行い切れなかったと感じる部分も多かった(もっと言うと各種スピンオフや公式Twitterにおけるデザスト関連の企画など、TV本編外での掘り下げに委ねすぎた面が大きく感じた)と感じたことや、キャラの心情や関係性を納得できる形で描き切れてなかったり、無理矢理に話を押し進めようとしてるかのような忙しない展開運びが目立ったりといった、特定の流れありきといった感じの風情に欠ける展開の取り回しが多くて乗り切れない局面がちょくちょくあったことなどが作品全体の大きな欠点として挙げられるところであり、この辺は本作の制作陣が以前に携わったゴーストとも通ずるものがあったので、ここがもっと洗練されていればもっとハマれたかもなぁ、とは思うところ。この制作陣特有のクセみたいなものかもだけど、世界観やキャラ面を大きく広げて肝心のTV本編内で扱いきれなくなるほど壮大にするならば、もっとコンパクトにしてまとまり良くした方が良いかな、と個人的な好みとしては思ってしまう

とはいえ、全話放送後に発売されたフィギュア王での制作陣のインタビュー的な特集でも語られていたように本作は昨今の情勢の影響などもあって諸々の急な変更を余儀なくされたりした面もあり、それらの欠点が必ずしも悪かったとは言えないし、それを抜きにしてもこの厳しい状況の中、本作を曲がりなりにも気持ち良くまとめ上げ、全体として非常に満足度の高い視聴感の残る作品に仕上げたところは高く評価できると思います。試行錯誤しながら生み出したアイテムやギミック、設定、キャラクター達は実際多くの視聴者を惹きつけており、実に悪くない価値ある一作を生み出したことは大きいなと。

という感じで、個人的には不満な部分こそ多いという印象にはなったものの、一つの作品としてのキャラの描き方やテーマ性の昇華の仕方には目を見張るものも多く、1年間楽しむことのできた作品になりましたね、仮面ライダーセイバー。まだまだ映画やVシネなどの展開は続きますが、一先ずTV本編の総括として、ここで締め括ろうと思います。

制作陣の皆様、お疲れ様でした!

 

そして今まで以上に長々としてしまった本記事を最後まで読んでくださった皆様、改めてありがとうございました!感謝。

 

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた

 

 

物語の結末は、俺が決める!!