AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

実らない恋から見出せるものもある

ウルトラコスモス

第18話「二人山(にびとやま)伝説」

感想レビュー

 

 

ウルトラシリーズお馴染みの古き伝承を軽んじて開発のために祠や石碑を勝手に破壊し神獣や妖の類を復活させるタイプの人間だぞ!速やかに火刑に処せ!!

どうでも良いけど刀石の爆破に来た人がほっかむり被ってるのあまりにイメージがステレオタイプすぎるでしょ()

 

立場の違い故に結ばれない無念から心中した戦の真っ只中の2つの国の若殿と姫の成仏されない魂が化身した怨霊鬼・戀鬼が封じられた二人山を舞台に繰り広げられる今回のストーリー。ざんばら髪に真っ白な肌、甲冑を纏った身体に折れた矢が痛々しく突き刺さっているという、落武者をそのまま巨大にした姿の戀鬼はいつ見てもホラー感高めでインパクト大なんですよねぇ。鉛色に曇った空の下で髪をゆっくりとたなびかせて歩んでくる戀鬼の演出は、仄かにセピアがかった感じの画面の色合いも相まって生気が感じられない不気味さを存分に醸し出してて実に秀逸

因みに、コスモスの3作前のTVシリーズ「ウルトラティガ」の第16話にて霊体的な存在となって登場する、宿那鬼を封印した男・錦田小十郎景竜という人物が、今話においても戀鬼を封印したという武士・錦田景竜として名前のみではあるものの存在が示されている、というのはディープなウルトラシリーズファンの間では有名な今話の小ネタ。宿那鬼の話も今回の戀鬼の話も川上秀幸さんが脚本を担当されてる回であり、且つティガとコスモスには世界観的繋がりが無いので、川上さんが分かる人向けにファンサ的な感じで仕込んだ小ネタでしょうけどこういうのは面白いですよねw 更に補足ですが、景竜はティガの外伝小説「白狐の森」においても登場しており、「ウルトラマンガイア」にも登場するガンQに変化した呪術師・魔頭鬼十朗の退治に向かっていたことが描かれていたり(「白狐の森」を執筆されたのもガイアのガンQ回を担当されたのも川上さん)と、実質的に世界観の異なる平成ウルトラシリーズに3作跨いで関わっていることになっており、マルチバースを股にかけて複数の並行世界で活躍していた人物なのでは?とファンの間で冗談めかしく言われていたりしますw ウルトラマンゼロを先取りしすぎでは()

 

今回はEYESの新メカとして、地底潜航マシン・ランドダイバーが登場。ウルトラシリーズでは時折登場する地底メカ枠として、岩壁破壊や地底への潜航のシーンを迫力ある特撮で表現していたのはカッコよかったけれど、戀鬼の魂が眠る風穴を探り当てたまでが山場という感じで正直活躍としてはしょっぱかったのは残念なところ。戀鬼が通常攻撃の効かない敵ということで戦闘面でも活躍できたとは言えなかったし、ちょっと食い合わせの悪い回に出ちゃったのが惜しかったなーと 個人的なイメージだがウルトラシリーズの地底メカ水中メカってどうしてこうも受難傾向なのだろうか

 

今回のストーリーは戀鬼以外にもう一つ、シノブリーダーと彼女の防衛軍時代の元チーフ・竹越の関係性が軸となって展開されました。自分を厳しくも導いてくれる良き上司であった竹越に次第に上司として以上に惹かれるようになっていったことが見て取れるシノブリーダー、妻との死別で憔悴していた自分を支えてくれたシノブリーダーに特別な想いを持っていたことが示唆される竹越、と両者が互いを強く意識していることが感じられる描写はなんか普通に大人の恋愛ドラマっぽいテイストがあってとてもムーディでしたね(シノブリーダーや竹越の心情とかについては最低限の言動から視聴者に分かるように描かれてるレベルで、どのタイミングで相手を意識するようになったのかとかは尺の都合もあってか詳しくは描写されてないのだけど、それがかえって二人の関係性などについての想像を膨らませるのも面白いところでした)

竹越の娘・みどりの、シノブリーダーのことをお姉さん的な感じで慕っているけど父と一緒に暮らすことになるかもしれないのはちょっと複雑な気持ちで、でも父の幸せのために半ば自分に言い聞かせるように2人が一緒に暮らすことに賛成する(でも母の墓前では自分の素直な気持ちが少し出るところが良い感じに人間味濃くて好き)、という描写もこれらのドラマに深みを与えていて、この辺当時の子供達はどのくらい理解できてたんだろうか、とちょっと思ったり 自分もリアタイ勢だけどこの回は戀鬼の印象が強くてドラマパートの当時の印象はあまり覚えてなかった

 

そんな関係性の2人だったけれど、シノブリーダーがみどりのことを気遣ったのもあってか「TEAM EYESの一員として精一杯に戦う今が幸せ」と竹越への恋慕の気持ちに自分の中でケリを着ける、という形で幕が引かれることとなりました。彼に想いをさり気なく伝えられた時に色々な感情を巡らせたような表情を見せる瞬間もあったりして、シノブリーダーもみどりのことは気にかけつつもかつて慕ってた人ともう一度繋がれるかもしれないこととの間で葛藤したりしたんじゃないかな、などとも思えてこの辺の心情については凄く深みがあるなと。かつての想い人のことを巡って、自分の幸せを取るか誰かのための幸せを取るかで惑う、という、なんかほんとに恋愛ドラマのそれだよなぁ

 

そこから、自分が誰かを愛する気持ちが決して思うようにはならないことをしっかりと噛み締めつつ、誰かのための幸せを取ったシノブリーダー自分達が結ばれないことへの怨念から他者を悲壮な憎しみと共に呪おうとする戀鬼の対比が生まれ、戀鬼の行いを見かねたシノブリーダーが自分の想いと準えるように紡いだ言葉で「人を愛すること」を説いたのが戀鬼の攻略へと繋がるという展開運びはなかなかに面白い文脈の作り方でした。シノブリーダーの戀鬼に向けた熱と想いのこもった言葉はとても見応えアリでした(戀鬼の行いを「自分が悲しいよ」と涙ながらに諌めるところは、ある意味戀鬼のように実らない恋故に誰かを憎んでしまう自分の中の感情に対し言い聞かせてた部分もあったのかもな...と思ったりする。オーブで戀鬼のリメイク怪獣である紅蓮騎が登場した回のサブタイである「私の中の鬼」に通ずる意味合いを感じますね)

戀鬼の境遇って普通に見れば同情的に感じられるものであり、コスモスの作風的にもそこで寄り添う形にするのが鉄板に思えるけど、そこで戀鬼に寄り添うような展開にはせず、戀鬼を「結ばれない苦しみから自ら逃げたにも関わらず、その哀しみを他者や世界に対し憎しみとしてぶつける者」とした上で今回の話を経たシノブリーダーが咎める形にしたのはユニークな作劇だよなぁと。でも戀鬼がああして怨念のままに自分達を引き裂こうとする全てを呪わんとする存在となってたのを思うと、そんな他者からの同情という優しさは戀鬼からすると聞き入れ難いものだったと思うし(だからこそコスモスのフルムーンレクトが効かず鎮まらない展開が入ったんだろうな)、そこで全てを諦め他者に怒りを見出すしかなくなった戀鬼の歪んでしまった恋そのものを厳しく咎め諌める形にしたのは正解だったと言えると思うね(普通にやったらともすれば戀鬼を咎める側が傲慢な感じに取られかねないかもだけど、今回のストーリーの筋がしっかり通っていて、それを経たシノブリーダーの存在も強く活きてるからこそ、説得力のある作劇となってるのが巧いと感じる)

他者を救うこととは、必ずしも優しく寄り添うだけが正解ではないのだなぁ

シノブリーダーに説き伏せられ、悲しむように膝から崩れ落ち消滅した戀鬼から2つの輝く魂が寄り添い合うように昇天していったのが良い構図でした

 

最後はシノブリーダー自ら、踏ん切りをつけた自身の想いを告げ、みどりとも笑顔を交わし合う、という形で気持ち良く締め。

因みに今回、シノブリーダーが竹越やみどりと話すシーンにおいて、レトロな電車が後ろの方の高架や駅の線路を走る画を引きで描く演出があり、これが田舎の雰囲気を良い感じに引き立てていて個人的になんとも好きでした。撮影の調整とか大変だろうけど凄く風情あって良かった

 

 

以上、コスモス18話でした。かつての上司へに秘めたる恋慕、それに対する彼女なりのケリの付け方、そしてそこからくる想いを込めた言葉で戀鬼を咎め諌める姿など、シノブリーダーを中心として「恋」をテーマにちょっと大人なテイストで進む話が印象深い話でした。シノブリーダーの大人な女性としての存在感が良く出ていてたまらんかったですな 彼女については、この後の展開においてある形でもっと深められていくので、そちらもまた楽しみにしております

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた